「仮面ライダーストロンガー」第30話「さようならタックル!最後の活躍!!」感想

2024年9月16日月曜日

仮面ライダーストロンガー 東映特撮YoutubeOfficial

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あらすじ

魔女怪人・ドクターケイトの毒液によって、電波人間タックルの体の自由が利かなくなった。
自分が残り少ない命であることを悟ったタックルは、ストロンガーの言葉も聞かず、命を賭した必殺技を繰り出し、ドクターケイトを倒す決意を固め…。

女戦士を蝕む妖花の呪い 閃光と共に散った生命

鋼鉄参謀を亡き者にしたドクターケイトは、ついに本格的に城茂へ挑戦を開始した。
城茂は、ドクターケイトに毒の材料にするため捕らわれた子供たちを救うべく、ドクターケイトのアジトへと潜入するが、罠に嵌って体が痺れてしまう。
絶体絶命の危機に、タックルが駆けつけ、城茂が子供たちを避難させるまでの時間稼ぎを請け負った。だが、タックルはドクターケイトの毒液をその身体に受けてしまう。
激しい痛みと、身体の自由が利かなくなる苦しみがタックルを襲う中、ドクターケイトはさらに毒ガスを放ち、タックルの命を完全に奪わんとするのだった。

そして、ドクターケイトと共にストロンガーを襲うのが、ドクロ少佐だ。
ジェネラルシャドウの口利きで、ドクターケイトと手柄を山分けする条件で共同作戦を申し出たドクロ少佐は、ジェネラルシャドウをしてデルザー軍団きっての殺し屋と言われる実力者。
ドクロ少佐の手で、ストロンガーはタックルと分段されてしまい、タックルには異様な執念でタックルの命を完全に奪おうとするドクターケイトが迫る。もはや、タックルの命は風前の灯だった。

これまで、勝ち気な態度で城茂に手柄を競うような負けん気の強さを見せていたユリ子。
だが、内心ではいつも城茂の足手まといになってしまっていることへの引け目と、自分への無力に対する忸怩たる思いがあり、おやじさんはそれを察していた。
そして今、ドクターケイトの手で命が尽きようとしている中でも、せめて城茂の足手まといにならないために自らがドクターケイトの毒に侵されたことを隠そうとする。
だが、ドクターケイトの猛威の前に、自分を人質にされたことでストロンガーがドクターケイトを攻撃できないことを悔やんだタックルは、悲壮な決意を固める。
既にまともに戦えない身体である自分が、これ以上ストロンガーの足手まといにならないために。
そして、最愛の相棒を救うために、最期の技を繰り出してドクターケイトを倒す決意を…。

デルザー軍団を壊滅させるべく、アジトを探して奇厳山を彷徨う城茂。
ドクターケイトは、そんな城茂の様子をアジトから監視し、嘲笑っていた。
そんなドクターケイトは魔王に捧げる生贄にするべく、大勢の子供たちを捕らえていた。
真夜中、奇厳山を彷徨う城茂は、目が赤く光る不気味な髑髏と、自らの名が刻まれた墓石を発見する。その背後から人魂が現れ、さらに改造魔人・ドクロ少佐が姿を現した。
ドクロ少佐配下の戦闘員が襲いかかるが、城茂はそれを排除し、ストロンガーに変身する。
ドクロ少佐配下の戦闘員は、骸骨の仮面が特徴。
ドクターケイト配下の戦闘員と同じく、主人と同様の意匠が特徴だ。

ドクロ少佐は不気味な笑い声を上げながら、ストロンガーに襲いかかる。
ストロンガーがエレクトロパンチを繰り出しても、緑に燃える人魂になって手が出せない。
ドクロ少佐はそのまま撤退する。
「ストロンガー。手並みはわかった。改めて勝負をしよう…」
翌日、城茂は改めて昨晩の墓石のあった場所を訪れていた。
墓石の下に仕掛けがあると睨んだ城茂が墓石の埋まった土塊を叩いて調べると、金属音が響く。
墓石は開閉式の扉になっていることに気づいた城茂は、扉の中へと踏み込んでいくのだった。

その頃、ドクロ少佐はジェネラルシャドウと会見していた。
「ドクロ少佐。夜の散歩は、面白かったかな?」
「フハハハ…相変わらず、油断も隙もない男よ。鋼鉄参謀までが、ライダーストロンガーにやられたと聞いてな。一度奴の面を見たくなったんだ」
「鋼鉄参謀は手柄を急ぎ、ドクターケイトの恨みを買い、彼女に足を引っ張られ、負けたのだ…」
「魔女は執念深い。ましてケイトの毒ときては、この俺でも寒気を感じるからな…」
「そこで、相談だが…デルザー軍団きっての殺し屋である貴公が、ケイトに協力していただければ、まずストロンガーは助かるまい。いかがかな?」
「言われるまでもない。既に、ストロンガーを誘い込む手は打ってある」
「ほほう。流石は、ドクロ少佐…」
ドクロ少佐とジェネラルシャドウ、互いに腹に一物を抱えた者同士の油断のならない会話は、緊張感溢れる演出で見ごたえがある。
ストロンガー抹殺さえ果たせば誰がこの場でリーダーになろうとも構わないジェネラルシャドウの策謀は、ドクロ少佐を上手く操ることが出来るのか。

その頃、ユリ子とおやじさんは、城茂の名が刻まれた墓石の下へ辿り着き、主なきカブトローを発見した。墓石が開いた扉をアジトへの地下道と踏んだユリ子たちは、中に入ることにする。
地下道を進むストロンガーは、そこで地下牢に捕らわれた子供たちを発見した。
地下牢の鉄格子を破壊すべく、エレクトロファイヤーを仕掛けたストロンガー。
だが、鉄格子の破壊で、ストロンガーは電気エネルギーを使い果たし変身が解けてしまう。
そこに、ドクターケイトが現れた。城茂は、子供たちを庇いながら懸命に逃げる。
そこに、ユリ子とおやじさんが合流した。
ユリ子とおやじさんは、この場を引き受けて城茂と子供たちを逃がす。
だが、この判断が、後に取り返しのつかない悲劇を招いてしまうのだった…。

電気エネルギーを完全に失った城茂は、子供たちに肩を借りながらアジトを後にする。
ユリ子に、ドクターケイトのマントと杖に気をつけるように言い残して。
そして、ドクターケイトがそこに追いついてきた。
「おのれ…生意気な小娘が、殺してやるわ!」
ユリ子は戦闘員相手に合気道で奮戦し、おやじさんも懸命に立ち向かう。
だが、ドクターケイトはユリ子へ向け、杖から毒液を噴射した。
ユリ子は毒液をまともに浴びてしまい、激しい苦痛に襲われ始める。
「アタシの毒の恐ろしさがおわかりかい…?お前の身体にはもう、アタシの毒が回り始めている…やがて、お前は死ぬのさ!」
苦痛の中でドクターケイトに抵抗するユリ子。だが、ドクターケイトはそんなユリ子を嘲笑う。
「暴れれば暴れるだけ、毒の回りは早くなるよ?ほぉら、毒の効き目が出てきたよぉ、ねえ!」
苦しむユリ子に愉悦の笑みを浮かべるドクターケイトだが、ユリ子がアジトにあったろうそくを手に取ると、突然、先程までの余裕が消え怯え始める。
その様子を見たおやじさんは、ドクターケイトが火に弱いことを突き止めるのだった。

ロウソクを投げつけ、ドクターケイトが怯んだ隙にアジトを脱出したユリ子とおやじさん。
だが、ドクターケイトの追跡は執拗に迫る。
ユリ子はタックルに変身するが、ドクターケイトは頭部からケイトガスを噴出。
毒液を浴びた苦痛に加え、ケイトガスによって体が痺れ始めるタックル。ついに、視力すらも奪われ始める中、ドクターケイトはタックルにとどめを刺そうとマントを投げつける。
だがそこに、電気エネルギーを回復させた城茂が駆けつけた。
「変…身…ストロンガー!」

ストロンガーは、タックルからドクターケイトが火に弱いことを教えられる。
ストロンガーはおやじさんから投げ渡された枝に、電気ビームで火を付けてドクターケイトに突きつける。火に怯えたドクターケイトは撤退した。
だが、タックルもまた、力なく崩れ落ちてしまう。
おやじさんはそれに気づくものの、タックルは手当てを拒否した。
「いいのよ。どうせあたしは、助からないんだから…」
「何を言ってるんだ!」
「さっき、ケイトが言っていたでしょ。あたしの身体には、ケイトの毒が回ってるのよ…」
死を覚悟したタックルの様子に、目を背けるおやじさん。
教え子が成すすべもなくその生命を散らそうとしていることに、おやじさんも絶望する。
「お願い…このことは、決して茂には、言わないでいてね…お願い…」
自分がケイトの毒に侵されていることを知れば、城茂は必ず自分を助けようとし、また危険の中へと飛び込んでしまう。最期の瞬間まで、相棒の足手まといになりたくない。
おやじさんは、ユリ子の目から、その想いを汲むのだった。

ドクターケイトを追跡するストロンガーだが、ケイトの行方はわからなかった。
ドクターケイトは密かにドクロ少佐と合流していたのだ。
「ドクターケイトも散々だったなあ…」
「ドクロ少佐。アタシをからかいにきたのかい?」
「おおっと。仲間喧嘩はよそう。実は力を貸そうと思ってな」
「余計なお世話さ」
「そう言うな。手柄を山分けということにすれば、悪い話ではあるまい」
「山分けなんぞにするもんか…」
手柄争いに燃え、互いを信頼せず足を引っ張り合うデルザー軍団の改造魔人の姿は、互いを信頼し、信頼しているからこそ足手まといになりたくないとするユリ子と対比になっている。
仲間を信頼せず、手柄を独り占めにしようとするドクターケイトの心の醜さは、相棒の足手まといになりたくないと願ったユリ子との対比でより強調されている。

城茂はユリ子たちと合流し、コーヒーを淹れて一息ついていた。
今日のコーヒーは、ユリ子が淹れたものだ。
「コーヒーが入ったわ…飲む?」
「へえ…珍しいことがあるもんだな…ユリ子とは長い付き合いだけど、コーヒーなんか淹れてもらったのは初めてだぜ!」
「ねえ、茂…いつか、悪い怪人たちがいなくなって、世の中が平和になったら…」
ユリ子は、穏やかな笑みを城茂へと向ける。
「平和になったら?」
「二人で、何処か遠い…美しいところへ行きたいわ…」
「いいねえ、俺も行きたいよ…」
「本当に、約束してくれる?」
「ああ、約束だ!」
ユリ子は静かに涙ぐみ、薪を集めていたおやじさんも、その様子に言葉を失う。
「おやじさん、何、湿っぽい顔してんだい?」
「ああ?薪が湿ってるから、煙くってしょうがねえ…」
「あ、美味いコーヒーがあるんだ!今日はちょっと珍しいことが起こってねえ…」
そこで初めて、顔を伏せていたユリ子の顔を見た城茂は、その表情に何かを悟る。
城茂がユリ子に声をかけようとしたその時、コーヒーカップに注がれたコーヒーの液面に、なんとドクロ少佐の顔が浮かんでいた。ドクロ少佐が襲撃をかけてきたのだ。

巨大な鎌を持って襲いかかるドクロ少佐は、城茂を岩山のアジトへと誘き寄せる。
分断されたユリ子とおやじさんに、ドクロ少佐配下の戦闘員が襲いかかった。
苦しみながら、決して悲鳴を上げることなく戦うユリ子。
「やめろ!今の身体じゃ無理だ!」
「茂のために、食い止めなきゃ!」

ドクロ少佐を前に、城茂はストロンガーに変身。
だが、ドクロ少佐は髑髏へ姿を変え、ストロンガーを幻惑する。
一方、タックルは最後の力を振り絞り、電波投げでドクロ少佐配下の戦闘員を排除。
しかし、増援が次から次へと現れ、徐々に追い詰められていくのだった。
猛毒の苦痛に苦しむタックルの前に、ドクターケイトが姿を現す。
一方、ドクロ少佐も人魂になってストロンガーに襲いかかる。

タックルは枝に火を付けてドクターケイトに挑むものの、既にその身体に力は残されておらず、ドクターケイトの杖によって打ちのめされる。
ドクロ少佐と戦っていたストロンガーはそれに気づき、タックルを助けるべく、ドクロ少佐を振り切ってドクターケイトへ向かっていく。
タックルはストロンガーを助けるべく、ドクターケイトを羽交い締めにしようとするが、それは容易に振りほどかれてしまい、逆にドクターケイトに捕まってしまった。
「あたしに構わず攻撃して!」
「いかん…このまま攻撃したら、タックルが危ない!」

ドクターケイトは、身動きの取れないストロンガーを抹殺すべく、ケイトガスを噴射。
体が痺れたストロンガーを前に、勝利を確信したドクターケイトはタックルを打ち捨て、杖でストロンガーを殴打しとどめを刺そうとする。それを目の当たりにしたタックルは打ちひしがれる。
「いけない…あたしのために、ストロンガーが!」
体が痺れてまともに反撃できず、甚振られるストロンガー。
「このままでは、ストロンガーがやられてしまう…ようし!」
タックルは、最後の力でドクターケイトに組み付くと、その首筋に手刀を打ち込んだ。
「ウルトラ、サイクロン!!」

激しい稲光とともに、タックルの電波エネルギーがドクターケイトの体内に注ぎ込まれ、その細胞組織を破壊した。そして、タックルはドクターケイトの身体を投げ飛ばす。
ドクターケイトは爆発した。
だが、それを見ていたおやじさんは、タックルの最期を悟り、慟哭する。
ウルトラサイクロンとは、タックルにとって、最期に残された攻撃手段であった。
相手とともに、自分の命も捨てる。
文字通り、捨て身の攻撃、ウルトラサイクロンをタックルは使ったのだ。
電波エネルギーの共振作用により、タックルの身体もまた、ドクターケイトに与えられたダメージと同じダメージを受け、その生命を犠牲としたのである。

おやじさんは、ユリ子の亡骸に駆け寄り、声を掛ける。
「ユリ子!何故だ…何故あんなこと、やったんだ!」
最期まで目を見開き散ったユリ子。城茂は、その瞳を静かに閉じさせる。
「ユリ子…何故死んだんだ…」
「茂。ユリ子はな、ケイトのアジトで戦った時、ケイトの毒でやられたんだ…もう長く行きられないことを、知ってたんだよ…」
自身の無力に、拳を震わせるおやじさん。
「それを、何故黙って…」
「ユリ子は、足手まといになることばかり、気にしていた…だから、苦しくとも隠してたんだ。このことは、決して茂には言わないでくれと、俺に頼んでた…」
ユリ子の想いを聞いた城茂は、その気遣いに気付けなかった悔恨と哀しみに、身を震わせる。
「すまん…俺の力が、足らなかった…ユリ子!」

沈む夕日に、城茂は決意を固めていた。
つかの間の青春を、ストロンガーの協力者として、人類の敵との戦いに捧げ、儚く散っていったタックル=岬ユリ子。彼女を失った、限りない怒りと、哀しみを胸に。
城茂は、今こそデルザー軍団に対する復讐を、固く心に誓うのだった。

ドクターケイトの妄執に襲われ、ついに岬ユリ子=電波人間タックルはその命を散らした。
改造途中で救出されたことから、改造人間としてのスペックに劣り、熾烈な戦いの中で常に苦戦を強いられてきたタックル。城茂に対して、勝ち気な態度を見せてきたものの、その内心では、ストロンガーの足手まといになっているという自責の念があった。
そしてこの最終局面で、タックルはドクターケイトに人質にされてしまい、ストロンガーは窮地に追い込まれてしまう。タックルの自責の念は、ここで頂点に達してしまった。
既に残り少ない命を捨ててでも、ストロンガーを助けてみせる。
その決意が、最期の必殺技・ウルトラサイクロンの使用を決断させたのは、あまりに哀しい。

ユリ子の内心を伝え、自身の無力に拳を震わせるおやじさんもまた、あまりに哀しい描写。
7人の仮面ライダーの戦いを見守ってきた中で、モグラ獣人に続き、ユリ子までも失ったことは、どれほどまでも哀しみであったことだろう。
おやじさん、立花藤兵衛はこの「仮面ライダーストロンガー」を最後に仮面ライダーシリーズから退場するが、この喪失が悪との戦いから身を引く決意をさせたのかもしれない。

こうして、デルザー軍団の脅威の前に、自身が追い詰められただけでなく、最愛の相棒までも失ってしまったストロンガー。このままでは、デルザー軍団の前に何も守れない。
己の無力を悟ったストロンガーは、デルザー軍団を打ち破る力を得るために、次回、一か八かの賭けに出ることになる。デルザー軍団登場の27話から4話、放送期間にして1ヶ月間にわたって展開された絶望的な展開が溜めとなって、次回以降の大逆転のカタルシスを演出することになる。

「いつか、悪い怪人たちがいなくなって、世の中が平和になったら。二人で何処か遠い、美しいところへ行きたい」という約束。それは、ブラックサタンとの戦いの中で出会い、戦いの中でしか相棒との絆を知らなかったユリ子にとって、世界に平和が訪れ、戦いがない世の中になったとしても、自分たちは無二の相棒であるのだと信じたい想いの表れだった。
城茂が、「俺も行きたい」と答えたことは、ユリ子にとって、城茂との絆が戦いの中だけのものではなかった証であり、死を間近にした、孤独な魂への救いだったに違いない。

「仲間はタックル」
エンディングテーマとして使用されてきた、「きょうもたたかうストロンガー」のフレーズ。
それは、孤独なヒーローだった「仮面ライダー」というヒーロー像の変化の表れでもあり、「ふたり」だからこそ悪と戦える、相棒がいることの素晴らしさを謳った歌詞だった。
だが、次回から、ストロンガーはひとりで戦わなくてはならないのだ。
さようなら、電波人間タックル。さようなら、岬ユリ子…。

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