あらすじ
青梅が父のように慕っていたマジシャン・朝風天山が、怪物・ミミラーに殺される。
ミミラーは父の跡を継いでマジックを始めた娘・まりにも、その魔の手を伸ばす。
青梅とまりは怪物から逃れることができるのか。
父から受け継いだ夢 世界的マジシャン誕生秘話
今回のベーダー怪物は、宇宙的大魔術師を名乗るミミラー。
巨大な外耳のような姿をしたベーダー怪物で、道化師に化けて行動する。
その任務は、青梅大五郎を本当に胴を真っ二つにしてしまう胴切りショーにかけて処刑し、子供たちに夢を与えるマジシャンの幻想を破壊することにある。
しかし、自らがピエロやマジシャンに化けて青梅を処刑しようにも、デンジマンのデンジスコープにかかれば変装はすぐに露見してしまうことから、ミミラーは青梅が父のように慕うマジシャン、朝風天山に接触し、青梅の胴を実際に切断する胴切りショーを行うように迫るのだった。
そして、朝風天山の娘である駆け出しのマジシャン、朝風まりにもミミラーの影は迫る。
朝風まりを演じたのは、後に「宇宙刑事ギャバン」や「超人機メタルダー」にも同じく本人役で出演したプリンセス天功氏。この「電子戦隊デンジマン」における朝風まりとしての出演も、当時の芸名そのままの本人役として出演し、父の夢を受け継いでマジックを始める物語が展開される。
つまり、このエピソードは後に世界的マジシャンとなるプリンセス天功の誕生秘話でもあるのだ。
マジックを行いながら歌って踊るアイドル歌手としてデビューした朝風まり氏の魅力を存分に演出すべく、歌を披露するシーンも用意され、彼女の魅力が十二分に演出されている。
ミミラーによる青梅処刑ショーへの加担を拒んだ朝風天山はミミラーによって命を奪われ、娘のまりは大いに哀しみながらも、青梅から父の夢を聞かされて再起し、父の夢を叶えるためにマジシャンとしての活動を始める。だが、ベーダーはそんなまりにも毒牙を伸ばそうとしていた。
果たして、青梅たち電子戦隊は朝風まりを守り、朝風天山の夢を未来に繋ぐことが出来るのか。
世紀の魔術師・朝風天山のマジックショーが開催された。
朝風天山と旧知の仲である青梅は、舞台袖で胴切りショーの大成功を祝う。
病気で六ヶ月も入院生活を送っていた朝風天山にとって、これが再起第一回目のショーだったのだ。だがその様子を、一般人に変装したミラーとケラーが監視していた。
朝風天山の娘、朝風まりと青梅は久しぶりの復帰となった父親を気遣うが、天山は入院前と変わらぬぶっきらぼうな様子で強がりを見せ、青梅たちはそんな天山の様子を嬉しく思うのだった。
青梅はサーカス時代に朝風親子と生活をともにしたことがあり、青梅にとって天山は、父親にも思える存在だった。天山は、まりに近々、空中火炎脱出マジックショーを行うことを宣言。
青梅とまりは、病み上がりで体力が十分ではない天山にとって、過酷な空中脱出は時期尚早ではないかと心配するが、天山は夢を実現するまでは死にはしないと力強く答える。
天山にとって、それはささやかだが大きな夢だった。
その頃、ベーダー魔城では、ミラーとケラーが朝風天山の胴切りショーに青梅がいたことをヘドリアン女王とヘドラー将軍に報告していた。
青梅が朝風親子と家族同然の付き合いであることを知ったヘドラー将軍は、朝風天山に本物の胴切りショーを行わせることを思いつく。胴を切られるのは青梅だ。
朝風天山に、家族同然の青梅の胴を切断させる残酷な趣向を大いに気に入ったヘドリアン女王は、子供たちには残酷と恐怖を与えるべきだと高笑いする。
ヘドラー将軍は、ミラーとケラーに命じてマジック怪物ミミラーを誕生させる。
ミミラーはデンジマンたちに次々と化け、やがて道化師の姿になって空中浮遊を見せる。
巨大な外耳の怪物になったミミラーは、マジックの腕をヘドリアン女王に気に入られるのだった。
その夜、自室のベッドで休んでいた朝風天山の耳に、怪しい声が聞こえてきた。
その声の主こそ、ミミラーである。
ミミラーは朝風天山を空中浮遊させ、恐怖に怯えさせると道化師となって姿を現す。
自身を宇宙的大魔術師と名乗るミミラーは、朝風天山に本物の鋸を使った青梅大五郎の胴切りショーを行うように迫るが、朝風天山はそれを決然と拒否。
自分は殺し屋などではなくマジシャンであるという矜持と、息子同然の青梅を自分に殺させようとする残酷に憤る天山だが、ミミラーはベーダー怪物の姿となると、天山の姿にも化ける変身能力を見せ、この依頼を断れば自分が天山に成り代わることを示唆し、なおも天山を脅す。
だが、ミミラーの変身能力も、デンジマンのデンジスコープの前では無力であるがゆえに、ミミラーやヘドラー将軍は天山本人に青梅の胴切りショーを行わせようとしていたのだった。
それでもなお拒否する天山に、ミミラーは死を宣告して姿を消すのだった。
アスレチッククラブにパトロールから帰還した青梅は、ベーダーが姿を見せないことに安心を見せていた。だが、赤城は姿を見せないときこそ要注意だと警戒を緩めない。
すると、天山がアスレチッククラブを尋ねてきた。
青梅と二人きりで話す天山は、あくまで空中火炎脱出ショーを行う決意を語る。
天山は、空中火炎脱出ショーを成功させてお金を集め、いよいよ積年の夢を叶えようとしていた。
その夢とは、トラックで全国を回り、旅先でマジックショーを開くマジックキャラバンである。
小さな漁村や、山の中に済む子供たちにもマジックを見せてあげたい。
そうして、全国の子供たちに夢を届けることこそが、朝風天山の夢だった。
青梅は天山の夢に賛同し、空中火炎脱出ショーの特訓に付き合うことにする。
青梅から話を聞いた黄山も立ち会い、朝風天山の空中火炎脱出ショーの特訓が始まった。
天山は、自分が失敗すれば、まりにその後を継いでショーを成功させてほしいと遺言めいたことを話す。まりは、父親が失敗するなどないと答えるが、どこか不安な様子だった。
そして、いよいよ特訓が始まった。
火炎抜けは3分以内に外から施錠された箱の中を脱出しなければ窒息死してしまう、危険な技だ。
まりは、父がきっと脱出に成功すると信じて、爆破スイッチを押す。
爆煙の後に炎が上がり、燃え盛る炎が箱を焦がしていく。だが、天山が脱出する様子はない。
待機していた消防隊が炎を消火し、箱が開かれたが、中の天山は酸欠で重症だった。
青梅たちは慌てて天山を病院へと運ぶ。だがそこに箱の中に隠れていたミミラーが現れた。
ミミラーが天山の脱出を妨害していたのである。
青梅と黄山はミミラーに立ち向かうものの、その動きに幻惑されてしまうのだった。
風車を爆弾にする怪しい技で動きを封じられた青梅と黄山は、ミミラーを逃がしてしまう。
青梅と黄山が病室に到着すると、天山は既に息絶えていた。
まりは大いに悲しみ、父を死に追いやったマジックに絶望してしまう。
だが、天山の埋葬が済んだ後、青梅は悲しむまりに天山の夢を伝える。
全国の子供たち、特に普段マジックショーが見られない地域の子供たちにマジックショーを見せるためにマジックキャラバンで全国を回りたいという夢。
夢を果たせずに死んだ天山の無念を知り、父親が生前に遺した、自分が失敗すればまりにその後を継いでほしいという願いを思い出したまりは、父の跡を継ぎマジシャンになることを決意する。
朝風まりは、亡き父の夢を果たすために、マジシャンになる決意をして特訓に励んでいた。
父譲りのマジックの才能を開花させ、様々な技を習得していくまり。
ミラーとケラーの報告でそれを知ったヘドリアン女王は、全国の子供たちにマジックで夢を与えようとするまりを許せず、子供たちに残酷と恐怖を与えるためにまりの抹殺を命じるのだった。
自室で髪をとかしていたまりが鏡を見ていると、突然髪が白髪に変わってしまった。
まりが恐怖に怯えていると、そこにミミラーの声が響き始める。
ミミラーはまりの髪を元に戻すのと引き換えに、青梅を本物の胴切りショーの舞台に引きずり出すように迫る。しかし、父を殺したベーダーに、まりも決然たる態度を見せる。
そこに姿を現したミミラーは、父同様の恐怖と死を与えることを宣告すると、まりに超魔術を賭け、まりの肌をみるみるうちに老化させてしまった。
鏡を見たまりは、老化した自分の顔が、さらに牛に変わる恐怖の光景を目の当たりにする。
まりが鏡を叩き割ると、まるで悪い夢を見ていたかのように、まりの顔はもとに戻っていた。
だが、まりに恐怖と絶望を叩き込んだミミラーは高笑いする。
そして、マジシャンとして大成した朝風まりのマジックショーが開催された。
歌って踊るアイドル歌手・朝風まりとしてのデビュー曲「ザ・マジック」が流れる中、様々なマジックを繰り広げ、観客を魅力するまり。
青梅は、一人前のマジシャンとなったまりの姿を天山に見せたかったと思うのだった。
だが、まりがマジックで出したキャンディを観客の子供たちへ向けて投げると、キャンディがクラッカーのように爆発。子供たちは恐怖におののき、一人の少女が火傷を負ってしまう。
それはもちろん、ミラーとケラーによる妨害工作だった。
子供たちに夢を与えるはずのマジックで子供たちを怖がらせたことに、まりは絶望する。
まりはアスレチッククラブで、ミミラーに青梅を胴切りにするように迫られたことを電子戦隊に打ち明けていた。青梅は、まりを怯えさせ、父の跡を継ぎ、子供たちに夢と希望を与えるマジックを諦めさせようとするベーダーの非道に激怒する。
そこに、黄山とあきらが、先程火傷を負った少女の治療を終えて戻ってきた。
まりは少女を怖がらせたことを謝罪するが、少女は、まりのマジックが楽しかったことを伝える。
自分のマジックが子供たちに夢を与えたことを知ったまりは、大いに励まされるのだった。
自室に戻ったまりを、ミミラーが待ち受けていた。
ミミラーは、次はもっと大惨事になるとまりを脅し、青梅を胴切りにするように迫る。
かくして、ミラーとケラー、ミミラーの前で、まりは本物の電動鋸を使った胴切りショーを開くことを強制されてしまった。電動鋸が本物であることを確かめたミラーとケラーは、まりが呼び出した青梅が到着すると姿を隠し、胴切りショーを陰から監視する。
青梅は練習台になるという名目で呼び出されていた。
まりと青梅はアイコンタクトを交わし、ついに電動鋸が起動する。
そして、電動鋸がついに青梅の身体に接触した。苦しみ、気絶する青梅。
ミラーとケラー、ミミラーはついに青梅を仕留めたと喜び、姿を見せる。
だが、青梅は生きていた。全てはまりが考案したマジックだったのだ。
そして、まりが投げた4色の風船が地面に落下すると、そこからデンジレッドたちが現れる。
青梅もデンジブルーにデンジスパークし、デンジマンが高らかに名乗りを上げる。
「見よ!電子戦隊!デンジマン!!」
デンジマンの怒りの反撃が始まった。ミミラーは道化師の姿になり、必殺花吹雪でデンジマンを幻惑する。さらに、ブルーの好物であるアンパン爆弾でデンジブルーを攻撃。
ブルーとの一騎打ちの果て、空中に逃げたミミラーだが、デンジマンは、4人が発射台となってデンジブルーを高く打ち上げるブルーロケットで追撃し、ミミラーに大ダメージを与えた。
ミミラーは巨大化し、デンジマンもダイデンジンを発進させる。
杖を使い、大地から火花を吹き出させ、砂煙を浴びせてダイデンジンを攻撃するミミラー。
だが、ダイデンジンはデンジ煙返しでそれを跳ね返すと、電子満月斬りでミミラーを倒した。
こうして一時の平和が戻り、朝風まりは再びマジックショーを開催した。
青梅たち電子戦隊が見守る中、「ザ・マジック」に合わせマジックを披露するまり。
子供たちは、そのマジックに驚嘆し笑顔を見せるのだった。
父の跡を継いで、朝風まりはマジシャンになった。
これから全国を周る予定である。亡き父、天山の夢を実現するために。
父親のように慕っていた天山の思いを伝え、父の命を奪ったマジックに絶望するまりを励ます青梅の優しさが印象深いエピソード。全国の子供たちに夢を与えるマジックキャラバンの夢に大いに賛同する様子からも、子供に優しい青梅の性格がよく表れている。
まりの再起を信じ天山の無念を伝えるシーンや、自分のマジックのせいで火傷を負った少女にマジックの楽しさが伝わっていたことを知ったまりを暖かく励ますシーンに見える優しさが素敵だ。
青梅と家族同然である天山やまりに青梅の胴切りを行わせ、残酷と絶望を撒き散らそうとするベーダー一族の非道と残虐さもまた印象深いエピソードだった。
自分たちの要求を拒否した天山を死に追いやり、まりに対しても老化現象や牛への変貌といった幻惑でその心を大いに惑わせ、マジックショーで子供たちに怪我をさせることで、まりがそれを気に病み苦しむことを見越した罠を仕掛ける非道さが恐ろしい。
恐ろしいベーダーの一味から、電子戦隊は人々の心も守らねばならないのだ。