「電子戦隊デンジマン」第33話「吸血楽器レッスン」感想

2024年9月29日日曜日

電子戦隊デンジマン 東映特撮YoutubeOfficial

t f B! P L

あらすじ

ベーダーは美術品連続爆破を計画し、デンジマンは警察と共に美術品の警備にあたる。
しかし、怪物・サキソホンラーは外部から音波メスを利用して壺を破壊する。
デンジマンはサキソホンラーを探し出そうとするが…。

怪しいレッスンにご用心 美術品を音波から守れ!

今回のベーダー怪物は、サキソフォンの怪物であるサキソホンラー。
美しいものを憎むヘドリアン女王の命を受け、地球の美術品を破壊することが任務だ。
音波メスを使うことで離れた場所からも標的を破壊することが可能であり、その威力は音波遮蔽装置の鉄すらも切り刻むほどで、この音波メスで美術品を破壊する作戦を実行する。

しかし、この音波メスはサキソホンラーにとってもエネルギーを消耗する技だった。
そこで、ベーダー一族は黄山の隣人である三郎を利用することを思いつき、彼の所有するサックスにサキソホンラーを憑依させ、三郎の生命エネルギーをサキソホンラーに吸収させる。
さらに、三郎にサックスのレッスンをつけると騙し、野外でサキソホンラーが憑依したサックスを演奏させることで、デンジマンの警戒を掻い潜り音波メスを美術品へ向けて放つ計画を立てた。
果たして黄山たち電子戦隊は、三郎の楽器に潜むサキソホンラーを発見できるのか。
そして、狙われた美術品をベーダー一族の魔手から守ることができるのか…。

ヘドリアン女王は、デンジマンの面々に挑戦状を叩きつけた。
午後12時に、迎賓館の黄瀬戸の大壺を破壊するというのだ。
デンジマンたちは急ぎ、警察とともに迎賓館の警護にあたった。
しかし、迎賓館の付近には不審な点はなく、爆弾などを仕掛けた形跡もない。
狙われた壺は、平安時代に唐の国から渡来した貴重な壺だった。
もし割られてしまえば、文化的な大損失だ。

そして、厳重な警戒の中、指定された午後12時が訪れた。
ベーダー怪物・サキソホンラーは離れたビルの屋上に姿を現す。
正午を告げる鐘が鳴る中、怪音波が迎賓館へ向けて放たれ、デンジマンたちも苦しむ。
そして、怪音波を集中して浴びせられた大壺は、木端微塵に砕かれてしまった。
デンジレッドはデンジスコープでサキソホンラーを発見、ビルの屋上へ向かう。

デンジマンと相対したサキソホンラーは怪音波攻撃でデンジマンを苦しめる。
デンジマンはサキソホンラーを取り囲み集中攻撃を仕掛けるが、瞬間移動で逃げられる。
だが、サキソホンラーは突然全身の力が抜けてしまい、ベーダー魔城へ撤退した。

もののみごとに大壺を破壊したヘドリアン女王はご満悦だった。
デンジマンの阿呆面を見たことで、こんな痛快な気持ちは久しぶりだと高笑い。
サキソホンラーの超音波メスの威力は、ヘドラー将軍も認めるほどだった。
やはり技名の元ネタは、ガメラシリーズに登場した超音波怪獣ギャオスだろうか。
美しいものを憎むヘドリアン女王は、この調子で全国の美術品を傷物にしてしまうように命ずる。
しかし、サキソホンラーにも、一度超音波メスを使うとエネルギーを激しく消耗し、半病人のようになってしまうという弱点があった。そこで、それを補うべく人間に憑依し、そのエネルギーを吸い取ることになり、ヘドラー将軍の指示でケラーが憑依先の屈強な若者を選ぶことになった。

アパートの自室で寝ていた黄山は、隣人である青年、三郎の吹くサックスの音色で起こされる。
三郎の吹くサックスの音色は、目覚まし時計よりも耳障りな音色だった。
騒音による睡眠妨害だと文句を言う黄山だが、三郎はもう昼近くだと悪びれず、黄山にサックスの調子が悪いので調子を診てもらうように頼む。
黄山が、三郎がタダ同然で買ったというサックスの調子を見ると、リードやキーが傷んでいた。
これでは音程が狂って当たり前で、練習にもならないはずだ。
三郎の彼女であるヨーコは三郎が音楽で大成し、ニューヨークに連れて行ってもらうように約束していたと言うが、こんな楽器ではとても無理だという。
自動車工場で働いていた三郎は、工場長にどやされるのだった。

街の楽器屋で、素晴らしいサックスを見つけた三郎に、ケラーが変装した女性が声をかけてきた。
若手ミュージシャンの発掘に命をかける敏腕マネージャーを騙るケラーは、三郎をオーディションに連れていく。そこで待っていたのは、音楽プロダクションを騙るヘドラー将軍とミラーだった。
ヘドラー将軍たちは三郎の肺活量に目をつけ、三郎が三日三晩の麻雀で鍛えたという体力と根性を見込んで、サキソホンラーの憑依先へと選んでしまった。
ヘドラー将軍は一通りレッスンを受けさせ、オーディションに合格すれば二年間ニューヨークで修行させるという好条件をちらつかせることで、三郎を信用させることに成功する。
スーツを着込んだヘドラー将軍がとてもいい男で格好良い。流石は元・スパイダーマンだ。

電子戦隊の元に、またしてもベーダー一族からの挑戦状が送られてきた。
送られてきた穴の空いたテンプレートを新聞に当てると、文字列が浮かび上がる。
それによれば、重要文化財である、大正記念美術館の「紫雲の白馬」という絵画が狙われる。
電子戦隊は、今度こそベーダーの魔手から美術品を守るべく、手分けして大正記念美術館の周囲を厳重に警戒、パトロールを開始。ビルの屋上にも監視の目を光らせていた。
その頃、三郎はヘドラー将軍たちから連絡されたレッスンの場所へ移動していた。
そこは高台で、三郎は急な傾斜に苦しみながら夢のためにレッスン場所へ到着する。

検問でも怪しい車は発見できず、周囲のビルにもベーダーの影はない。
デンジマンはピンクを絵画の護衛に当たらせて、4人は美術館周囲を守ることにした。
一方、三郎はレッスンの時間と指定された時間に、新たに手に入れたサックスを吹き鳴らす。
楽譜には、南南西に向けてサックスを吹くように指定されていた。
三郎がサックスを吹き鳴らすのを、ケラーが陰から監視する。
そして、正午の鐘が鳴ると同時に、三郎のサックスからサキソホンラーの超音波メスが放たれた。
三郎が南南西に向けてサックスを吹いた先に、大正記念美術館が位置していたのだ。
超音波メスに苦しむピンクの声を聞いたデンジマンたちは助けに向かうが、以前よりもその威力を増した超音波メスに抗うことが出来ず、絵画も成すすべなく破壊されてしまう。

ヘドリアン女王は全てを破壊するように命じ、荒れ狂う超音波メスが標的の絵画以外にも、大正記念美術館に展示されていた多くの美術品を次々に破壊していく。
サキソホンラーの超音波メスは音波遮蔽装置の鉄すらも切り裂き、多くの美術品が破壊される。
美しいものを数多く粉砕したヘドリアン女王は、勝利の高笑いを浮かべていた。

デンジランドに戻った電子戦隊。黄山は破壊された美術品を分析した結果、ベーダーの音波が極めて特殊な、レーザーのように焦点を絞り込むことでエネルギーを収束したものと解明する。
だが、目に見えない超音波メスを、一体どうやって防げば良いのか。
赤城は、超音波メスを放つサキソホンラーを発見するしかないと判断し、アイシーのアドバイスでサキソホンラーが楽器への変身能力を持っている可能性へと思い至る。
電子戦隊は手分けして、怪しげな楽器の情報を探った。

その頃、ヨーコが三郎の部屋を尋ねると、三郎の部屋からは異臭がした。
そして、布団を被って寝ていた三郎の顔色は悪く、激しく憔悴しきっていた。
ヨーコは一生懸命病院へ連れて行こうとするが、三郎はそれを拒む。
すると、三郎が跳ね除けたヨーコの手がサックスに当たり、サックスに化けていたサキソホンラーがその正体を現した。三郎も、自分のサックスが怪物だったことに驚愕する。
逃げ出したヨーコは、通りかかった黄山に助けを求める。
黄山が三郎の部屋へ急行すると、そこに三郎とサックスの姿はなかった。
懸命に三郎を探す黄山だが、そこにベーダーが大観音を狙う予告を送ってきた通信が入る。

群馬の高崎白衣大観音を守るデンジイエローは、三郎がサキソホンラーに魅入られ、ベーダー一族に利用されていると推理し、大観音の敬語を仲間に任せ、単身三郎を捜索する。
一方、大観音の近くに連れてこられた三郎に、ケラーはなおもサックスを吹くように迫る。
ニューヨークへ行く夢のため、今日だけは我慢しろと言い包めるケラーに迫られたことで、三郎はサックスが怪物であったことを知りながら、観念してサックスを構える。
そこに、デンジイエローが駆けつけるものの、三郎はサックスを吹いてしまう。
すると、たちまちサックスのベルが巨大化。
デンジイエローはサックスの中の亜空間へ吸い込まれてしまう。

三郎がサックスを吹き鳴らす中、デンジレッドたちが助けにやってきた。
デンジレッドはデンジスティックを投げつけ、サックスを三郎の手から叩き落とす。
サックスはサキソホンラーの正体を現し、デンジピンクは三郎を避難させる。
だが、サキソホンラーの体内にはデンジイエローがいる。
迂闊に手を出せないデンジマンだが、ベーダー怪物を取り囲み、逆さにして持ち上げ、頭を地面に向けて打ち付ける技・デンジスプレーでイエローをサキソホンラーの体内から救出する。

「見よ!電子戦隊!デンジマン!!」
5人揃ったデンジマンと、サキソホンラーの最終決戦が始まった。
デンジレッドのデンジパンチ、イエローのハンマーパンチ、ブルーのデンジドリル、グリーンのグリーンスピンキック、ピンクのデンジサンダーが次々にダストラーを吹き飛ばす。
サキソホンラーは、地響きを起こすほどの威力を持つミックス音波でデンジマンを苦しめる。
だが、デンジイエローはサキソホンラーが地面の木の根につまずいた隙に転倒させ、フライングアタックで組み付き、そこからのイエローパイルドライバーで大ダメージを与える。
そして、5人全員がバラバラに走ることで撹乱するデンジトリックでサキソホンラーを前後不覚にすると、そこからのショットガンで体当たりをぶちかます。そして、もはや抵抗する力のないサキソホンラーに、最後のトドメのデンジブーメランを決めるのだった。

細胞組織を組み換え巨大化したサキソホンラーに、デンジマンもデンジタイガーを呼ぶ。
そして、デンジファイターが変形、ダイデンジンが大地に降り立った。
久々にエレベーターでコクピットに移動するカットが入り、ダイデンジンに乗り込むデンジマン。
高崎白衣大観音が見守る中、最終決戦が始まった。等身大戦パートで印象的なロケーションが巨大戦パートのセットにも存在していると、ドラマとして一貫した流れを感じさせて嬉しい。
サキソホンラーは音符爆弾攻撃を仕掛け、巨大な音符爆弾がダイデンジンを襲う。
だが、ダイデンジンは巨大な五線譜を作り出し、音符爆弾を受け止めて投げ返す。
それでもなお、音波攻撃を仕掛けてダイデンジンを攻撃するサキソホンラーだが、ダイデンジンはデンジ剣を取り出し、デンジ剣音波返しでそれを跳ね返した。
第3クールより、ダイデンジンの能力として「超神ビビューン」のビビューンが使う、「スカイ剣〇〇返し」を彷彿とさせる「デンジ剣〇〇返し」が定着し、戦闘シーンを盛り上げている。
そして、トドメの電子満月斬りが炸裂。サキソホンラーは一刀両断された。

こうして、デンジマンは勝利し、美術品が狙われることはなくなった。
だが、三郎のサックスの腕前は、結局上達を見せることはなかったのだった。
だが、美術品を破壊することに利用されていたことを思えば、本人が一生懸命楽しんで演奏している今が一番幸せなのだろう。ヨーコも耳を塞ぎながら、三郎に寄り添う。
ベーダーの協力がなくても、三郎はやがて立派なミュージシャンになれるはずである。
ただし、若さと情熱と、努力があれば…。

高崎白衣大観音をロケーションにした等身大戦パートと巨大戦パートの戦場のシチュエーションのシンクロという、細部に気を使った演出が印象的な回。
多くの警官隊が動員され、ベーダーから美術品を守ろうと奔走するシーンが描かれるなど、デンジマンとベーダーの戦いが一般市民の間にも認知され、デンジマンを支援すべく人間たちも懸命に立ち向かう様子が描かれ、ヒーローと侵略者が戦う世界の世界観を描いている。
技術と楽器には恵まれないが、情熱と根性でミュージシャンになってニューヨークに恋人を連れて行く夢を追う三郎のひたむきさも、純粋な感動を呼んでくれるエピソードだった。

QooQ