「電子戦隊デンジマン」第34話「哀しい捨子の物語」感想

2024年9月29日日曜日

電子戦隊デンジマン 東映特撮YoutubeOfficial

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あらすじ

町子は17年前に偶然赤ん坊を拾った。俊介という名前をもらった赤ん坊は高校生となるが、その正体は卵の状態で地球に飛来した怪物・ビーダマラーだった。
育ての母の願いも空しく、俊介のベーダー怪物化は進み…。

母の背で覚えた子守唄が響く 空に散った儚き生命

今回のベーダー怪物はビー玉の怪物であるビーダマラー。
その卵は、17年前にベーダー魔城から不手際で落ち、行方不明になっていたものだったが、ある日突然、その卵から孵化していたビーダマラーが出現、暴れ始める。
実は、ビーダマラーの卵は17年前に地球に辿り着いており、赤ん坊となっていた。
そして、夫を亡くした古川町子に発見され、その息子・俊介として育てられていたのである。
だが、ベーダー怪物としての血は人間として育てられてなお、抑えられるものではなかった。
ビーダマラーとして覚醒した俊介は、ベーダー魔城に迎えられることになってしまう。

緑川はビーダマラーを追う中で町子と俊介の親子と出会い、その哀しい生い立ちを知る。
夫を亡くし、独りで生きてきた町子にとって、俊介は実の息子と変わりがない。
だが、俊介は成長と同時にベーダー怪物としての血が強まるにつれて、非行に走るようになった。
そして今、ベーダー怪物・ビーダマラーとなってしまったのだ。
それでもなお、俊介の心に語りかけようとする町子を連れ、緑川は戦場へ走る。
果たして、母の愛は哀しい捨子へと届くのか…。

公園で、緑川は子供たちとビー玉を使って遊んでいた。
緑川の父親は刑事の仕事が忙しく、子供の頃の緑川と遊ぶ暇もなかった。
そんな時、緑川は母親とビー玉を使って遊んでいたのだという。
童心に帰って遊びに夢中になる緑川だが、その目前で、ビー玉が空に向かって飛んでいく怪現象が起きる。ビー玉は周辺の学校を襲い、窓ガラスが割れる。
さらに、ビー玉が巨大化して先生たちを襲い始めた。ベーダー怪物・ビーダマラーの仕業だ。

その頃、チーコたち婦人警官は、校内暴力の通報を受けてとある高校へと向かっていた。
なんでも、不良学生が先生を投げ飛ばし暴れたのだという。
チーコが職員室に向かうと、そこにいたのはビーダマラーだった。
ビーダマラーは何処かへ向かって走り去り、それを追ったチーコは、ビー玉を追った緑川と遭遇。チーコからベーダー怪物の存在を知った緑川は、その後を追う。
そこで緑川が辿り着いたのは、とある民家だった。

その民家の中では、高校生の俊介が激しい喉の乾きに襲われ、水を浴びるように飲んでいた。
母親の町子は、そんな俊介の様子に、また喧嘩でもしたのかと心配する。
そこに、緑川が民家を訪ね、怪しい怪物が逃げてこなかったかを町子に尋ねる。
町子は何も変わったことはないと答え、緑川は母一人子一人の境遇に、父親の多忙で母親と過ごしていた自身の幼少時代を思い出す様子を見せる。すると、民家の中から町子の声が聞こえてきた。

俊介は近頃学校にも行かなくなり、それを咎められると暴力を振るう非行に走っていた。
町子の苦労を思いながら、緑川は立ち去る。町子は、息子の変化を悲しんで涙していた。
一方俊介は自室の鏡を見つめながら、自分が何者なのかを自分に問いかけていた。
俊介は自分が古川俊介などではないという感覚に襲われ、その違和感の中で非行に走っていた。

その頃、ベーダー魔城では、ヘドラー将軍がヘドリアン女王に報告を上げていた。
17年前、ベーダー魔城からベーダー怪物・ビーダマラーの卵がこぼれ落ちた。
そして今、ビーダマラーが地球に姿を現したのである。
ヘドリアン女王はビーダマラーの無事を大いに喜ぶ。敵対者に対する執拗なまでの敵意と、同族に対する深い愛情という二面性を持つヘドリアン女王。
曽我町子氏の卓越した演技力だからこそ成立した、見事な「女王」キャラクターだ。
ビーダマラーははぐれベーダーであり、未だ自分がベーダー怪物である自覚がない。
ヘドリアン女王は、なんとしてもビーダマラーを連れ戻すように命ずる。
ミラーとケラーはビラを作り、ビーダマラーの捜索を開始した。

ミラーとケラーが作ったビーダマラー探しのビラは、怪しい動きをしていたダストラーを倒した赤城の手に渡ることになり、緑川はこのビラに乗っている怪物が学校を襲ったことを知る。
アイシーの指示で、電子戦隊はデンジランドの天文観測データを調べた。
そして、ビーダマラーの卵が17年前に地球に落下したことを知る。

その頃、俊介はカツアゲを行い、真面目な生徒からお金を巻き上げていた。
そこに、ビーダマラーを探すデンジグリーンが通りかかる。
すると突然、ビーダマラーが姿を現した。デンジマンは5人集合し、ビーダマラーと戦う。
だが、ビーダマラーは巨大なビー玉になってデンジマンを翻弄し、逃亡した。
それを追ったデンジグリーンは、またしても町子と俊介が暮らす民家に辿り着く。
デンジグリーンがデンジスコープで民家を透視すると、俊介が苦しんでいた。
町子は俊介が何をしたのかを問い詰めるが、俊介は誰も家に入れるなと反発する。
そこで、デンジグリーンはもう一度デンジスコープを発動し、俊介を透視した。
すると、俊介の身体にビーダマラーの影が浮かび上がる。
俊介こそ、17年前に地球に落ちたビーダマラーだったのだ。
デンジレッドは民家に踏み込もうとするが、グリーンはここは自分に任せるように告げる。

緑川は再び町子を訪ねていた。だがそこに、ミラーとケラーも現れる。
ミラーとケラーが怪しいビー玉を翳すと、そこから光が放たれ、俊介はビーダマラーとなった。
息子が怪物になる瞬間を目の当たりにした町子は卒倒し、緑川はビーダマラーに襲われる。
緑川は町子を庇って痛めつけられるが、デンジレッドたちがビーダマラーの行く手を阻んだ。
しかし、ビーダマラーはビー玉を飛ばしデンジレッドたちを怯ませ、ベーダー魔城に迎えられる。

ヘドリアン女王と対面したビーダマラーは、ようやく落ち着くべきところに落ち着いた、ベーダー一族としての喜びを味わい、ヘドリアン女王も立派になったビーダマラーに喜ぶ。
緑川は、小さい時に母親を亡くしたことで母子家庭だった町子と俊介にシンパシーを抱いていた。
町子は、俊介がベーダー怪物であった事実に大いに悲しむ。
緑川に17年前のことを訪ねられた町子は、静かにそれを話し始めた。

17年前、夏の夜の街を歩いていた町子は、とても美しい流れ星が落ちるのを目の当たりにした。
近づいてみると、そこには赤ん坊がいて泣いていた。
その2年前に夫を亡くし、子供もおらず寂しさの中で孤独に生きていた町子は、この出会いを神の恵みと考え、どんなことがあっても自分の手で育て上げようと決意したのである。
自分のしたことは間違っていたのだろうか?
そう問う町子に、緑川は人間らしい心を持った人にしか出来ないことをやったのだと称え、その気持ちが、ベーダー怪物となった俊介に通じるはずだと励ます。

だが、ベーダー怪物の本能に目覚め覚醒したビーダマラーは、街をビー玉爆弾で破壊。
ミラーとケラーはこの姿こそ、ベーダー怪物としてあるべき本当の姿だと称える。
この世を焦熱地獄に変えるべく、暴れるビーダマラー。
ミラーとケラーの手には、怪しいビー玉が握られていた。

アイシーから、ビーダマラーがコンビナートを襲撃していることを知らされた電子戦隊。
だが、コンビナートへ向かおうとした緑川は、町子にその手を取られる。
「…殺すんですか?殺さないでください…貴方も言ったじゃないですか…きっと、私の気持ちが通じるって。そうだわ。あの子、決して忘れてなんかいない…」
町子は緑川に、17年前、赤ん坊の俊介の傍らに落ちていたというビー玉を見せる。
町子はそれを、俊介のお守りにし、俊介もそれを気に入ってふたりでよく遊んだのだ。
みなみらんぼう氏の「母の背で覚えた子守唄」が流れる中、町子と俊介の親子の姿が映る。
「ビー玉は大切にしまっていた…あの子の気持ちまで消えてしまったとは思いたくありません。あたしは信じます。あの子を信じます!」

デンジレッドたち4人はビーダマラーと戦うが、ビーダマラーは強い。
だが、町子がビー玉を見つめるのに呼応するように、ビーダマラーは苦しみ始めた。
そして、町子はビー玉に願いを込める。ビーダマラーは苦しみに耐えられず、逃亡した。
この様子に、ベーダー魔城のヘドリアン女王も困惑する。
ヘドラー将軍によれば、ビーダマラーの異変は「善のビー玉」のせいだった。
「悪のビー玉」はビーダマラーにもともと備わっており、ミラーとケラーがそれを使って俊介をビーダマラーに覚醒させた。そして、俊介の母である町子の持つビー玉に、母の愛が宿ったことで「善のビー玉」となり、俊介の人間の心を呼び起こそうとしているのだ。
町子は、俊介の心を呼び覚ますべく、緑川に頼んでビーダマラーの下へ向かう。

「母の背で覚えた子守唄」が流れる中、町子はビーダマラーへ向けて歩いていく。
ビーダマラーの脳裏に、母との思い出がよぎる。泣きじゃくるビーダマラー。
町子は、「善のビー玉」をビーダマラー、いや俊介に見せる。
だが、隠れていたミラーがパチンコ「悪のビー玉」を打ち出し、「善のビー玉」を破壊。
呼び覚まされかけた俊介の心は再び失われてしまう。

町子は、グリーンのビーダマラーと戦うことを許してほしいという願いを受け入れる。
そして、デンジマンが集結し、ミラーとケラーもダストラーを呼び出す。
「見よ!電子戦隊!デンジマン!!」
緑川の主役回らしく、緑川役の内田直哉氏が歌う「輝け!デンジマン」が流れる中、デンジマンとベーダー一族の決戦が始まった。デンジグリーンは旋風脚でダストラーを蹴散らす。
ビーダマラーを連携技で痛めつけるデンジマンだが、ビーダマラーもビー玉あられやビー玉爆弾で反撃。さらに、巨大なビー玉となって体当りする攻撃がデンジマンを苦しめる。
しかし、反撃のデンジスティック、そして電子稲妻落としが炸裂。デンジマンの勝利だ。

ビーダマラーは細胞組織を組み換え巨大化、デンジマンもダイデンジンに乗り込む。
ビーダマラーの杖を奪い、殴りつけるダイデンジン。
だが、ビーダマラーもビー玉爆弾の雨あられで攻撃、さらにビー玉となっての体当たりで攻撃する。ダイデンジンはそれにデンジボールで反撃すると、電子満月斬りで勝利した。

再び独りとなった町子は俊介の墓を作り、息子との美しい思い出を供養していた。
その墓には、夕日の光を浴びて美しく光るビー玉がひとつ、供えられていた。
人は、人を育み包む大いなるものを、母なる海、母なる大地と呼ぶ。
デンジマンは、この母なるものを守って、戦い抜くことを決意した。

「母の背で覚えた子守唄」が流れる叙情的な演出の中、二人きりで生きてきた親子の哀しい運命を描いた名作エピソード。人間として育てながら、成長するに伴いベーダー怪物としての凶暴性が顕となり、やがてベーダー一族によって完全にベーダー怪物に覚醒するビーダマラーの哀しい運命と、それでもなお息子の人間としての心が残っていると信じる母の愛が、大いなる感動を呼ぶ。
母子家庭である町子と俊介にシンパシーを覚えながら、善のビー玉を砕かれたことで完全にベーダー怪物となってしまった俊介を倒す選択をせざるを得ない緑川の苦渋の決断もドラマを盛り上げており、安易な救済はもたらされない、悲しい結末がドラマを引き締めている。

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