「仮面ライダー (新) (スカイライダー)」第2話「怪奇!クモンジン」感想

2024年10月27日日曜日

仮面ライダー (新) (スカイライダー) 東映特撮YoutubeOfficial

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あらすじ

新たに現れたネオショッカーの怪人・クモンジンによって誘拐された真一は、仮面ライダーに救われた。だが、執拗なクモンジンは弟の健二に目をつけ、彼を人質にして仮面ライダーと真一をおびき寄せる。世を拗ねる真一に、仮面ライダーは命をかけて人生を生きるように訴え…。
 

勇者は教える、命をかけて人生を生きる意味を

今回のネオショッカーの怪人は、原点回帰という意味での蜘蛛の怪人であるクモンジン。
サブタイトルの「怪奇!クモンジン」も、言うまでもなく「仮面ライダー」第1話の「怪奇蜘蛛男」のオマージュだ。しかし、このエピソードでは、ネオショッカーによる怪人の素体候補・スペア人間に選ばれ、世を拗ねて厭世的な考えに凝り固まった青年・真一とその弟・健二にフォーカスを当て、人生に生きる意味を見いだせない真一に仮面ライダーが命をかけて人生を生きる意味を教える、感動編として「怪奇蜘蛛男」の焼き直しと言わせない独自の作劇を見せている。

ネオショッカーの大幹部・ゼネラルモンスターは、ストックしてあるスペア人間を素体とし、新たな改造人間として蜘蛛の能力を持つクモンジンを生み出した。
クモンジンはネオショッカーがリストアップした改造人間候補を拉致する任務を命じられる。
その中のひとりとして拉致された青年・真一は、厭世的な考えを持ち人生に生きる意味を見いだせない冷めた若者だった。一方、数奇な運命に導かれ、新たな仮面ライダーとなった筑波洋は、クモンジンの暗躍を知り、クモンジンに拉致された真一を救うことになる。
しかし、生きる意味を見いだせない真一と、その弟である健二はなおもクモンジンに狙われた。
果たして仮面ライダーは健二を救い、真一に命をかけて生きる意味を伝えることが出来るのか。

「仮面ライダー・筑波洋は改造人間である!人類の自由のために、悪の秘密結社・ネオショッカーと戦うのだ!」
ナレーションも第1話から変更され、OPの基本フォーマットが完成した。
変更されたナレーションはシリーズの伝統的な文面に則ったものになっている。

ネオショッカー秘密基地では、ゼネラルモンスターが新たな改造人間のモチーフを蜘蛛に、コードネームを「クモンジン」に決定していた。
さらに、アジトにストックされていた改造人間候補のスペア人間を選出。
白いアリコマンドによって改造手術が行われ、新たな改造人間・クモンジンが誕生する。
その頃、筑波洋はハングライダーに乗り、自身を改造したネオショッカーの基地を探していた。

完成したクモンジンは、ゼネラルモンスターとの面通しを行っていた。
ゼネラルモンスターはクモンジンに、ネオショッカーへの忠誠を誓わせる。
「ネオショッカーに忠誠を誓い、困難に立ち向かうか?」
「誠意を持って、任務を尽くします」
クモンジンの忠誠を確かめたゼネラルモンスターは、その実力を試すことにした。
「よし。硬い話は抜きにして、まずは腕試しだ」
「お偉いさんにしては、話せますなあ」
何故か無駄に馴れ馴れしいクモンジンは、ゼネラルモンスターの怒りを買ってぶん殴られる。
クモンジンは妙に台詞が人間臭く、妙にキャラが立っている怪人だ。
ゼネラルモンスターはクモンジンに、改造用のスペア人間を拉致するように命ずる。
その目標となったのは、高校野球で名の通った高森真一だ。

真一は、弟の健二とドライブをしていた。彼らは、ハングライダーで翔ぶ洋を目撃する。
洋が着陸した先には、志度博士とみどり、そして杉村ミチという女性がいた。
志度博士は身を隠すため、「志度ハングライダークラブ」を結成、隠れ蓑にしていたのだ。
「おいおい、博士はやめてくれよ。今の私は、志度ハングライダークラブの会長だぞ?」
「しかし信じられませんね、博士がその昔、大空に憧れた飛行少年だったとはね」
ネオショッカーのアジトは見つからず、志度ハングライダークラブは撤収する。
みどりとミチは既に洋と打ち解けており、そのうちハングライダーを教わると約束していた。

志度ハングライダークラブの面々が乗る車を、真一と健二が乗る車が煽り、追い越していった。
それでも安全運転、マイペースを崩さない志度博士。妙におおらかなところがある。
真一と健二が乗る車がトンネルから出ると、そこに待ち構えていたクモンジンが蜘蛛の糸を伸ばし、真一をオープンカーから引き上げて捕まえてしまった。
車に残された健二は、暴走するオープンカーから降りられなくなってしまう。
車に追いついた志度ハングライダークラブの面々は、間一髪、健二を救出した。
健二の口から、兄が突然消えたことを教えられた洋は、ネオショッカーの暗躍を感じ取る。

ネオショッカーの基地では、真一や、その他ネオショッカーにスペア人間として狙われた人々が囚われていた。文句を言う真一の前に、クモンジンが現れる。
「俺を見て驚かんのか?」
「別に」
「強がりを言うな。震えているではないか!」
せっかく改造人間になったので怖がってほしいらしいクモンジンは、真一に絡む。
「お前の運命は俺が握っているのだ!」
「殺したければ殺しなよ。生きてても大して面白いこともなさそうだしよ」
「まだ若いくせにそういう考え方は良くない!」
「攫っといてお説教かよ!」
厭世的な態度を持つ真一に、何故かそういう態度は良くないと説教してしまうクモンジン。
死の恐怖で怖がらせたいのに、殺したければ殺せと言われてしまい調子が狂ってしまったらしい。
どういう立ち位置での説教なんだと、文句を言いたくなる真一の気持ちもわかる。
クモンジンはなんとしても真一を怖がらせたいのか、アリコマンドを呼びつけ、口から溶解液を吐いてアリコマンドを処刑する様を見せつけるのだった。

健二の話を聞いた洋は、周囲にネオショッカーのアジトがあると踏んで捜索していた。
そこに、アリコマンドの群れとクモンジンが現れる。
クモンジンの一撃を受け、蜘蛛の巣に囚われた洋は、仮面ライダーに変身した。
すると、洋が同じ改造人間であることを知ったクモンジンは、仮面ライダーを仲間と勘違いする。
「待て待て、良く見ろ!あれが人間か?俺たちの仲間だ!」
クモンジンも改造されたてなので、仮面ライダーの存在を知らなかったらしい。
「いやあ、失礼した…なにせまだ、よく知らぬものでな…クモンジンだ。お前は?」
「仮面ライダー。様子を見てくるように命令を受けた。アジトに案内してもらおう」
仮面ライダーは全く動揺せずに、この状況を利用してアジトに踏み込むことにした。
まだ第2話なのに、異様に肝が座っている。

仮面ライダーはクモンジンに、スペア人間を保存する部屋に案内された。
「ほーん…化け物がふたつか」
「黙れ!お前もいずれはこうなる身の上だ!」
冷淡な態度の真一に、キレるクモンジン。だが、仮面ライダーは真一を脱出させる。
「ああ!何をする!大事な獲物だぞ!」
「連れていく!」
「おお!ゼネラルモンスターのところにか!」
完全に仮面ライダーを同類だと思い込んでいるクモンジン。なんだか無駄に人が良い。
「いいや!弟のところにだ!」
「仮面ライダー!正気か、お前は!」
「仲間でなくて、生憎だったな!」
逃亡を開始した仮面ライダーは、追手のアリコマンドを蹴散らしながら真一を逃がす。
そこに、飛田今太が通りかかった。
クモンジンを目撃した飛田今太は気絶。今回もそれだけの役回りだ。
そんなこんなの間に脱出し、専用マシン・スカイターボの元に辿り着いた仮面ライダー。
クモンジンは面子を潰され、復讐を誓うのだった。

仮面ライダーによって無事に帰宅した真一は健二と再会した。
真一は健二に恩人として仮面ライダーを紹介するが、ライダーにはすぐに帰るように言い放つ。
怪しい奴を見たら逃げるように忠告する仮面ライダーに、真一はまたも厭世的な態度を見せる。
「逃げようが逃げまいが僕の勝手だ…お節介はやめてくれ」
仮面ライダーは健二に再会を誓い、スカイターボで去ろうとする。
そんな仮面ライダーを呼び止めた健二は、真一が本当は心が優しい青年であること、だが、大学受験に失敗して世を拗ねていることを教える。
健二が兄を慕っていることを知った仮面ライダーは、自分も真一を好きになると約束。
そして、改めて去っていくのだった。

自宅に戻った洋を、クモンジンが襲撃し、蜘蛛の巣で動きを封じた。
「まず貴様を殺す、次に逃がした小僧を取り戻す。あのひねくれは、ネオショッカーの改造人間にもってこいだ!」
自分は妙に人が良い割に、真一のひねくれを気に入ったらしいクモンジン。
クモンジンは蜘蛛の巣に絡まり身動きの取れない洋を、ビルの屋上から突き落とそうとする。
だがそこに、ゼネラルモンスターが現れた。
「その男は、ワシに任せなさい」
何故か妙に優しい口調のゼネラルモンスターは、クモンジンを真一のもとへ行かせた。

「さあて、筑波くん」
「馴れ馴れしく呼ぶな!」
「心を入れ替えて、ネオショッカーの一員にならんか?」
「無理な話だ。影の組織など、まっぴらだ!」
ゼネラルモンスターは、筑波洋の優秀さを惜しいと考え、ネオショッカーに勧誘しに来たのだ。
「その影の組織は、世界中に広がっている…ネオショッカーに入れば、生き延びることも出来るのだ。この世界は、今のままでは人間が増えすぎ、食べ物が不足して飢え死にで全滅するのだ。そこで、我々優れた者が生き残るために、人口を3分の1に減らす。駄目な奴らを消してしまうことにしたのだ!」
ネオショッカーの目的は、優生思想に基づき、優れた人間を選別、選ばれなかった人間たちを改造人間によって抹殺し、人口を削減してしまうことだった。
だが、洋がそんな思想を許すわけがなかった。
「人間、誰しも生きる権利がある…僕は、あくまでネオショッカーと戦う!」
交渉は決裂した。
「やれやれ、せっかくのワシの好意を断るとはな…せめて、ワシの手で処刑してやろう!」
ゼネラルモンスターは手に持ったスティックから火を放ち、洋を屋上から突き飛ばす。
だが、洋は空中で仮面ライダーに変身し、セイリングジャンプで空を翔び脱出した。
「驚くべき仮面ライダー。空を飛べるとは!」
仮面ライダーは真一と健二を助けるべく、真一たちの家に急いだ。

家で読書をしていた健二は、クモンジンに襲われる。
真一の行方を訪ねられたが口を閉ざした健二は、クモンジンに拉致されてしまう。
駆けつけた仮面ライダーも一歩遅く、家はもぬけの殻だった。
そこに真一が帰宅し、クモンジンのメッセンジャーである蜘蛛が現れる。
クモンジンは蜘蛛を通し、真一に健二を助けに来るように要求した。
だが、真一はどうせ脅かしだと、冷淡な態度を取り続ける。
「君は相手の恐ろしさを知らないんだ!」
「恐ろしいものなんかあるもんかよ!」
「君を尊敬し、慕っている健二くんが心配ではないのか!」
「はん。尊敬されるような人間じゃないんだよ、僕は!」
「どうして君は、まっすぐに物事を見ようとしないんだ!」
厭世的な態度でやけになる真一を、仮面ライダーは叱責する。
すると、真一もついに本音を吐露し始めた。
中学、高校と野球に打ち込んだにも関わらず、大学受験に3度も失敗したことで、これまでの人生全てに絶望した真一。仮面ライダーはその頑張りを称賛するが、真一は世を拗ね続ける。
自分たちに関わらないように告げる真一だが、クモンジンはタイムリミットとして午後3時を提示。1秒でも遅刻すれば、健二の命はない。

健二を廃工場に捕らえたクモンジンは、健二を脅していた。
「ひねくれの兄だ。来るかどうかわからんな」
それでも健二は、真一が助けに来ると信じ続けていた。
仮面ライダーは、真一に人生をまっすぐに生きるように思いを伝える。
「真一くん、君も人生に命をかけてくれ。私も命がけで生きていく!」
仮面ライダーは、スカイターボでクモンジンの下へと急行する。
そして、真一もまた、健二を助けるべくオートバイに乗ってクモンジンの下へ向かった。
仮面ライダーの想いが通じたのだ。

仮面ライダーはアリコマンドオートバイ部隊を蹴散らし、真一を先に向かわせる。
クモンジンは蜘蛛の巣で真一の動きを封じた。
仮面ライダーは、健二の兄を呼ぶ声を聞き、その先へ向けてスカイターボを走らせる。
廃工場の壁を突き破る、ライダーブレイクが炸裂した。
ライダーブレイクは、セイリングジャンプに並ぶ見せ場として用意された、スカイターボで壁に突っ込み、壁を粉砕するド迫力の映像シーン。
セイリングジャンプで空を飛べるならバイクがいらない、という、恐らく空を翔ぶライダーが設定された際に出たであろう意見に対し、バイクの存在意義をアピールする要素でもある。
ただ、ライダーブレイクで突撃するのが壁に向けてであり、怪人に対する必殺技というわけではないので、なんだか微妙な立ち位置の技ではある。

ライダーブレイクで廃工場に突入した仮面ライダーはアリコマンドの群れを蹴散らし、健二を蜘蛛の巣から救出する。クモンジンは真一を攫い、アリコマンドにライダー抹殺を命じた。
仮面ライダーは健二を守りながら、アリコマンドの群れを打ち倒していく。
その過程で飛田今太がアリコマンドを目撃したが、例によってそれだけの出番だった。
仮面ライダーは健二を安全な場所に隠し、クモンジンから真一を奪回。
クモンジンとの最終決戦に挑む。
仮面ライダーは熾烈な格闘戦の末にクモンジンの蜘蛛の巣を跳ね返し、自分の蜘蛛の巣で動きを封じられたクモンジンにスカイキックを炸裂させ、勝利する。
真一と健二の兄弟は無事に再会し、真一はこれから一生懸命頑張ることを誓った。
仮面ライダーはセイリングジャンプで大空に去っていく。
あの兄弟の取り戻したものは、仮面ライダーにとっても希望に満ちた未来への門出であった。

仮面ライダーに懸命に生きるように問われ、世を拗ねていた青年が改めて人生をやり直すことを誓う感動の展開が描かれた名作エピソード。
何故か厭世的な考え方を改めるように説教してしまったり、仮面ライダーを仲間の改造人間だとギリギリまで信じ込んでしまうクモンジンの妙な人の良さも面白い。
ネオショッカーの優生思想に基づいた恐るべき目的も明かされ、生命を選別しようとするネオショッカーの傲慢に、人間の生きる権利と自由を守る仮面ライダーの戦う意義も明確にされた。
セイリングジャンプとライダーブレイクという、「仮面ライダー (新) (スカイライダー)」における見どころとして設定された2つのシーンも導入され、見どころに溢れた回と言えよう。

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