「電子戦隊デンジマン」第36話「勇気ある仔犬の詩」感想

2024年10月6日日曜日

電子戦隊デンジマン 東映特撮YoutubeOfficial

t f B! P L

あらすじ

ベーダーの次なる作戦は、現代社会の地中に濃縮されて残ったヘドロガスを使った東京爆破作戦。
偶然、ベーダーがヘドロガスを集める現場に居合わせた黄山は敵の手に落ち、東京に危機が迫る。
そんな中、ゆみ子が拾った野良犬・ゴローが黄山の危機を命がけで伝えようとしていた。

自身を救った命のために、小さな命が懸命に駆ける

今回のベーダー怪物は野良猫のベーダー怪物であるノラネコラー。
公害を克服したはずの現代日本において、それでも除去しきれず都市部の地下に濃縮されたヘドロガスを集めて爆破し、東京を火の海に変えることを任務とするベーダー怪物だ。
嗅覚に優れており、ヘドロガスの匂いを嗅ぎ分ける能力でこの作戦に抜擢されている。

そんなノラネコラーたちがヘドロガスを集める現場に居合わせたのが、アスレチッククラブに通うゆみ子が拾った、怪我をしていた野良犬のゴローと黄山だ。
自宅でゴローを飼うことが出来ず悲しんでいたゆみ子のために、黄山がたまたまゴローを匿うための場所として選んだ廃ビルにおいて、ノラネコラーたちがヘドロガスを集めていたのだ。
黄山はゴローの世話をしている途中、ベーダーを発見し単身捕らわれてしまう。
ゴローは黄山を追い、ベーダーに黄山が捕らわれたことを知らせるべくゆみ子の下へ走る。
果たして、ゴローは傷ついた身で黄山の危機を伝えることが出来るのか…。

ヘドラー将軍は、かつて地球で公害が大気を蝕んでいた際に噴出していたヘドロガスに着目し、人間が処理しきれず地層に染み込んで地中深くに溜まったヘドロガスが、地熱と土の圧力で高濃度に圧縮されていることを突き止め、猛毒ガスへ変化したと推測していた。
そこで、ベーダー一族はベーダー怪物でも最も鼻の利くノラネコラーを生み出し、ヘドロガスが埋蔵されている地点を突き止め、ヘドロガスを集めようとしていたのだ。

その頃、アスレチッククラブに通う子供たちは、珍しく喧嘩していた。
野良犬を見つけた彼らは、なんと尻尾に爆竹を付けて遊ぶという、子供ならではの残酷性を見せていたが、ゆみ子は怪我をした野良犬を憐れみ、必死に庇っていたのだ。
そこに居合わせた黄山は、動物だろうが人間だろうが、弱いものいじめをする奴は最低であると叱る。ゆみ子は野良犬を家に連れ帰るが、団地では動物は飼えない規則だ。
母親に叱られたゆみ子は、怪我をしている野良犬を捨てることが出来ない。
そこで黄山は、雨を凌ぐことが出来る屋根のある廃工場で犬を飼うことを提案。
基山とゆみ子は、犬をゴローと名付けて飼うことにした。

その夜、ミラーとケラー、そしてノラネコラーがゴローのいる廃工場を訪れていた。
ノラネコラーの調べでは、ここに濃縮ヘドロガスが溜まっているのだという。
翌朝、アスレチッククラブに出勤した電子戦隊の面々を、アイシーが出迎えた。
だが、アイシーは不機嫌だ。なんでも、自分の朝ご飯がないのだという。
アイシーの朝ご飯は、黄山とゆみ子がゴローのために廃工場へ持ってきていた。
だが、そこにゴローの姿はない。黄山とゆみ子はゴローを探す。
すると、黄山は不審な物音を聞きつけ、ダストラーの足跡を発見した。
ベーダー一族が廃工場付近にいることを知った黄山は、ゴローの捜索を引き受け、ゆみ子を学校へと向かわせる。廃工場を調べた黄山はゴローを見つける。
だが、ゴローに気を取られた隙にノラネコラーに襲われ、重症を負ってしまうのだった。
ゴローは黄山の危機をゆみ子に伝えるべく、ゆみ子の家へ向けて駆けていく。

アスレチッククラブの料理教室では、青梅が先生の黄山が不在なことを生徒の主婦に叱られていた。アイシーは、黄山の身に何かがあったことを悟る。デンジマンは黄山の捜索に乗り出した。
一方、学校が終わったゆみ子は廃工場に戻るが、ゴローのためのご飯が減っていないことから、黄山がゴローの捜索を投げ出して何処かに行ってしまったのだと不審がる。
黄山を探すゆみ子。だが、黄山はベーダーに捕まっていた。
いくら探しても黄山は見つからず、ゆみ子は自分との約束を破った黄山に幻滅する。

ゆみ子が家に帰ると、玄関先でゴローが待っていた。
だが、母親はゴローを諦めきれないゆみ子を叱る。
ゆみ子は仕方なく、家から離れた場所にゴローを置いて立ち去った。
無力な自分に涙しながら…。
ゴローはゆみ子を懸命に追いかけるが、ゆみ子はそれを振り切って帰宅の途につく。

泣きながら走るゆみ子と出くわした赤城とあきらは、黄山の行方を尋ねる。
黄山に失望していたゆみ子はつっけんどんな態度で立ち去ろうとするが、あきらから黄山が行方不明であることを聞かされ、ふたりでゴローを飼おうとしていたことを話すのだった。
一方、ベーダー一族のヘドロガスの採取は完了していた。
さらに、東京の各地でヘドロガスをさらに集め、必要量に達し次第爆破。
東京を絶滅させる恐怖の作戦が進行しようとしていたのである。
更に、黄山も濃縮ヘドロガスの爆破に巻き込んで始末してしまおうとしていた。

黄山はヘドロガスを積んだガスボンベと共に輸送用トラックの荷台に載せられていた。
すると、荷台にゴローが乗り込んできた。ゴローは黄山のことを見捨てられずにいたのだ。
やがて、黄山とゴローを乗せたトラックは、次のヘドロガス採取地点へ向かってしまう。
一方、ゆみ子の案内で、廃工場へ向かった赤城たちは、そこに充満するヘドロガスや、仕掛けられていた爆弾から、この場所でベーダーが暗躍していたことを知るのだった。
ゆみ子もまた、黄山が自分をベーダーの危険から守るべく連れ出し、ゴローは黄山の危険を自分に知らせようとしていたことを悟り、黄山やゴローの真意を慮れなかったことを悔やむのだった。

その間に、ベーダーは次々に移動して濃縮ヘドロガスの採集を続け、爆破ポイントにヘドロガスを充満したガスボンベを集積していた。黄山はゴローに、ここから逃げるように促す。
ゴローは、黄山の危機を知らせるべく、怪我をした身で懸命に川沿いを走り続けた。
河原を転がり落ち、夜の闇に包まれながら。
傷つきながら、ゴローは失意のまま彷徨っていたゆみ子と再会する。
赤城たちはゆみ子が抱いたゴローから、潮の香りを感じ取り、ゴローが海から川沿いを歩いてきたことを知ると、川を下って黄山を捜索することを決意。
ゴローの頑張りに応え、黄山を助けるべく、デンジマンは海へと向かった。

黄山を囲むように、濃縮ヘドロガスが充填したガスボンベが並べられた。
ここで濃縮ヘドロガスが爆発すれば、東京は一瞬にして死の街になる。
ついに導火線に火が点けられ、爆破の瞬間が迫る。
しかしそこに投げ込まれたデンジスティックが、導火線の火を消した。
デンジマンが間一髪間に合ったのだ。
救出された黄山は、ゴローの頑張りに応えるべく、ベーダーを倒す決意で変身する。

「見よ!電子戦隊!デンジマン!!」
海岸を舞台に、デンジマンとベーダーの戦いが始まった。
デンジマンはデンジタワーを組み、ドラゴンフライでダストラーを蹴り飛ばす。
ノラネコラーは逡巡な動きでデンジマンを撹乱。高所からの急降下攻撃を仕掛ける。
デンジブルーは猫の動きを模したブルーキャットでノラネコラーに対抗。
猫対猫の死闘は、デンジブルーにデンジマン全員が加勢してブルーの勝利に終わった。
大ダメージを負ったノラネコラーは細胞組織を組み替えて巨大化。
デンジマンもデンジタイガーを呼び、ダイデンジンが降臨する。

「戦う電子戦隊デンジマン」をBGMに、ダイデンジンとノラネコラーの最終決戦が始まる。
ノラネコラーの俊敏な動きは、ダイデンジンも捉えきれない。
デンジ剣を取り出したダイデンジンだが、ノラネコラーはデンジ剣の切っ先に飛び乗り、未豪鬼の取れないダイデンジンに至近距離から火炎放射を浴びせた。
そこで、ダイデンジンはデンジボールを取り出す。ノラネコラーは猫の習性か、デンジボールに飛びついて無防備になった。ダイデンジンはそこに電子満月斬りを炸裂させ、勝利するのだった。

手厚い看病と、みんなの祈りが通じて野良犬ゴローはたくましく生き返った。
この世に、生きとし生けるものは全て等しく生きる権利がある。
この素晴らしい地球を、決してベーダーに渡してはならない。
デンジマンは決意も新たに誓うのだった。

公害を題材とした特撮作品といえば、1971年の「ゴジラ対ヘドラ」が金字塔として知られている。そこから10年近く経とうとしていた1980~1981年放送の「電子戦隊デンジマン」で、人間はなんとか公害を克服しようとしたが、処理しきれなかったヘドロガスがベーダー一族によってまたしても人間に害をなそうとしているという展開が描かれたことに、70年代の公害という社会問題が現代社会に与えた影響の大きさを感じずにはいられない。

自分を助けてくれた黄山への恩義を果たすために懸命に走るゴローが感動的な話でもあった。
ゴローが黄山のために懸命に走らなければ、東京が火の海となっていた事は想像に難くない。
生きとし生けるもの全てに優しい黄山のゴローへの優しさが東京都民を救い、黄山自身も救ったことに、情けは人のためならずということわざを思い出さずにいられない。
他者への思いやりは、困っている相手のためだけでなく、巡り巡って自分をも幸せにする。
幸せのリレーを繋ぐために、電子戦隊は小さな命を守り抜いて戦うのだ。

QooQ