「電子戦隊デンジマン」第37話「蛮力バンリキ魔王」感想

2024年10月9日水曜日

電子戦隊デンジマン 東映特撮YoutubeOfficial

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あらすじ

へドリアン女王の水晶玉に不吉な予兆が現れた。
やがて、黄山、緑川、青梅は次々と正体不明の敵に襲われ、警戒中のあきらも重傷を負う。
アイシーの助けで危機を逃れた電子戦隊。襲撃者の正体は、最強の敵・バンリキ魔王だった。

宇宙の破壊者、バンリキ魔王襲来!電子戦隊最大の危機!

ヘドリアン女王は、星占いで凶兆を占う。
その占いが予見した存在こそ、今回より登場する宇宙の無法者、バンリキ魔王だ。
地獄の使者、宇宙の用心棒と呼ばれ、圧倒的な武力とそれに裏打ちされた傲岸不遜な態度は、まさに「魔王」を名乗るに相応しい風格と気迫を感じさせる。
ベーダー怪物の卵を珍味として食することから、ベーダー一族にとっても同族を殺す存在として危険視されており、ヘドリアン女王に対しても不遜な態度で接する。
また、美しい星であるデンジ星に住むデンジ星人を目の敵にしていたことから、その子孫であるデンジマンと戦うために地球を訪れたと称し、彼らを1人ずつ襲撃して重症を負わせていく。
自由に巨大化も可能であり、ダイデンジンとも互角に渡り合うその力は、まさに最強の敵だ。

アイシーすらも恐れるその力は、デンジマンが5人揃わねば絶対に勝てないと断言されるほど。
だが、デンジマンはバンリキ魔王による事前の襲撃で重症を負ったあきらを欠いたまま、街を破壊し尽くす勢いで暴れるバンリキ魔王との戦いを余儀なくされてしまう。
果たしてデンジマンは、この最強最悪の敵を相手に生き残ることが出来るのか。
そして、突然地球に現れたバンリキ魔王の目的とは、一体何なのか…?

子供たちと天体観測をしていた黄山は、望遠鏡に映る巨大な光を目撃する。
そして、その光は巨大な瞳の影になって激しい閃光を放ち、黄山の目は激しい熱に襲われた。
メディカルコンピューターで失明の恐れはないことはわかったが、黄山はしばらく行動不能に。
黄山は、正体はわからないが、何か恐ろしいものが地球に訪れたことを仲間に警告する。

その頃ベーダー魔城では、ヘドリアン女王が水晶玉で星占いをしていた。
その結果、ヘドリアン女王は1つの凶星が地球に現れることを予見。
それがベーダーに仇なす者か否や、女王にもわからない。
星占いなど信じないほうが良いと言うヘドラー将軍に、ヘドリアン女王は自分の星占いが当たることを確信し、この凶星が地獄の星ではないかと危惧する。

山道を歩いていた緑川が、強風に襲われた。強風は刃となり、緑川の体や衣服を切り刻む。
強風の吹く方向には、巨大な口の幻影が浮かんでいた。
そして、釣りをしていた青梅は、水面から現れた腕に首を捕まれ、水中に引きずり込まれる。
間一髪、赤城とあきらが駆けつけ青梅を救ったが、緑川も青梅も重症を負ってしまった。

デンジマンが次々に何者かに襲撃されていることを知ったヘドリアン女王は、自らの星占いがあたったことを確信する。地獄の星が光り、バンリキ魔王の到来を伝えたというのだ。
バンリキ魔王の名を聞いたヘドラー将軍は戦慄する。
ヘドリアン女王は、バンリキ魔王がデンジマンを襲うためだけに地球に来たとは思えなかった。
バンリキ魔王は宇宙をさまよう地獄の使者、悪魔の使い。行くところ必ず禍を齎す存在である。
ベーダーすら禍を齎しかねない悪魔の到来に、ヘドリアン女王は一同の気を引き締める。

仲間たちを次々に襲われた赤城は、自らが囮となって襲撃者を誘き出して敵の正体を暴く策を立てた。襲撃された青梅は、正体不明の不気味な敵の恐ろしさを警告する。
かくして、デンジレッドは正体不明の襲撃者を誘き出すべく、1人でデンジマシーンに乗ってパトロールを行い、デンジピンクが遠くからそれを監視して襲撃者の正体を掴もうとした。
すると、デンジマシーンを尾行する正体不明の霊柩車が現れる。
霊柩車をデンジスコープで透視したデンジピンクは、車に誰も乗っていないことを確認。
連絡を受けたレッドは、人気のない場所まで霊柩車を誘い出す。

だが、物陰に隠れて霊柩車を待ち受けていたデンジピンクは、デンジレッドが乗ったデンジマシーンの背後にいたはずの霊柩車がいなくなっていることに気づく。
するとそこに、車のエンジン音が響いてきた。
霊柩車はデンジマンたちの裏をかき、デンジピンクの背後に回り込んでいたのだ。
霊柩車に追突されたデンジピンクは、急崖を落下、地面に叩きつけられる。
罠に嵌ったことに気がついたデンジレッドはピンクを助けに向かうが、突然いくつもの大爆発が起こり、ピンクの元へ向かうことが出来ない。さらに、例の霊柩車が突撃、自爆してきた。
そして、その爆煙の中から、1人の怪人が姿を現す。その怪人こそ、バンリキ魔王だ。

「何者だ、貴様!」
「宇宙の用心棒、地獄の使者!バンリキ魔王!」
バンリキ魔王は二本の刀を投げつけ、そうかと思うと猛烈な勢いで体当たりを仕掛ける。
パワーとスピードを兼ね備えたバンリキ魔王の猛攻に、デンジレッドも真空蹴りやデンジパンチで立ち向かうが、バンリキ魔王はそれをノーガードで受け止め、平然と立っていた。
デンジレッドはそれでも怯まずにデンジパンチをバンリキ魔王の腹部に叩き込む。
だが、反撃の大剣によって大地に叩き伏せられ、なんとか逃れても念力で爆発を起こされ、デンジピンクを助けに行くことすらままならない。力の差は、絶望的なほどに歴然だった。
しかしそこに、アイシーが駆けつけ、超能力でバンリキ魔王の動きを封じた。
デンジレッドはその隙にピンクを救い、デンジランドへと撤退する。

あきらは重症を負い、赤城は自身の作戦ミスを悔やむ。
そこに現れたアイシーは、バンリキ魔王について話し始めた。
へび座をシンボルとするバンリキ魔王は、宇宙に生きとし生ける者全てを呪い、喰らい尽くさないではおかない地獄の使者である。とりわけ、デンジ星人の血を引く者への呪いは凄まじい。
そして、デンジ星と同じように美しいこの地球への憎悪を燃やし、全てを喰らい尽くし滅ぼした後には、ベーダー一族さえも喰らい尽くしかねない、最大最強の敵なのだ。

その頃、ベーダー魔城にも異変が起きていた。
ダストラーたちが次々に息絶え、ミラーとケラーも恐ろしい力で身体の自由を奪われる。
それは、ベーダー魔城に現れたバンリキ魔王の仕業だった。
「これはヘドリアン女王。相変わらず、お美しいことで…」
「ええい!それはベーダー怪物の卵!」
「こいつには目がなくてのう。ほんに、宇宙一の珍味じゃ…」
バンリキ魔王はベーダー怪物の卵を割り、中身を吸って食べてしまう。
同族の卵を殺されたヘドラー将軍は怒り、バンリキ魔王に剣を向ける。
バンリキ魔王も受けて立ち、互いの剣技は互角だった。
このままではどちらかが死ぬ。ヘドリアン女王は両者を静止した。
「バンリキ魔王!可愛いベーダー怪物の卵を食べることだけは許さんぞ!二度とこんな真似をしたら、全ベーダーを敵に回して戦わねばならぬと思え!」
「わかったわかった、そう怒るな!腹が減っておったので、つい手が出たのだ…何しろ、50年間何も食ってなかった。すまん!二度と卵には手を出さん!」

ヘドリアン女王は、バンリキ魔王に地球に来た目的を尋ねる。
バンリキ魔王によれば、50年間眠って宇宙を彷徨っていたが、血の匂いで目が覚め、地球にデンジ星人の血を引く者がいたことに気づき、この地球へとやってきたのだという。
バンリキ魔王は腹ごしらえを済ませ、デンジマンを始末すると宣言。
ヘドラー将軍に挑戦的な態度を取り、バンリキ魔王は姿を消した。
ヘドラー将軍はその様子に、デンジマンを倒すのは自分だと怒る。

突然、いくつもの街に隕石が落下し、街は火の海に包まれた。
赤城は、この攻撃が無差別攻撃ではなく、襲われた地点を地図上で結ぶと、バンリキ魔王のシンボルであるへび座の形になることに気づき、最後に狙う地点は、へび座が狙うヘラクレスの腕に当たる部分、地獄谷であることに気づくと、バンリキ魔王を止めるべく飛び出していく。
青梅たちはそれを追おうとするが、アイシーはそれを静止した。
バンリキ魔王はあまりにも強く、デンジマンが5人揃わねば絶対に戦ってはならない相手なのだ。
あきらが重症を負い意識を取り戻していない今、デンジマンに勝ち目はない。
だが、赤城は止めて止まるような男ではない。まして、5人揃わねば戦ってはならない相手なら、なおのこと1人で行かせるわけにはいかない。青梅たち3人も後を追い、地獄谷へ向かった。

地獄谷に辿り着いたデンジレッドたち4人。その前に、爆炎と共にバンリキ魔王が現れた。
高らかに名乗りを上げるデンジレッドたち。
だが、デンジピンクを欠き4人しかいない今、切り札のデンジブーメランも使えない。
絶望的な戦いが始まろうとしていた。
一方、デンジランドではあきらが目を覚ましたが、アイシーは完全に回復したわけではないあきらを戦わせまいとする。だが、あきらが仲間たちが戦いに行ったことを悟り、死ぬも生きるも一緒と誓った仲間である決意を語ると、アイシーもその想いに応え、戦場の場所を教えるのだった。

バンリキ魔王の力は圧倒的だった。デンジマンたちの攻撃は弾き返され、念力で起こす大爆発や火炎放射がデンジマンを寄せ付けない。しかしそこに、デンジピンクが駆けつけた。
「私たちはいつも5人よ!死ぬも生きるも一緒!」
「デンジマンの真の力を見せてやる!見よ!電子戦隊!デンジマン!!」
5人揃ったデンジマンは、個々の得意技を一斉に炸裂させる。
デンジレッドの真空蹴りが、ブルーのスクリューキックが、イエローのイエローヘッドバットが、グリーンのグリーンスピンキックが、ピンクのデンジサンダーが叩き込まれた。
デンジマンは間髪入れずに、5人で肩を組みショットガンで突撃。
バンリキ魔王の体当たりと互角に渡り合ったデンジマンはデンジタワーを組み、ドラゴンフライを決めると、最後のトドメのデンジブーメランを放った。

しかし、バンリキ魔王は死んではいなかった。
巨大化したバンリキ魔王に対し、デンジタイガーが発進。
「ゴーゴーデンジタイガー」が流れ、久しぶりにデンジランドからデンジタイガーが発進、さらにデンジタイガーからデンジファイターが発進してダイデンジンに変形するシークエンスが流れた。
ダイデンジンはデンジ剣を取り出し、バンリキ魔王との剣戟に挑む。
剣と剣の打ち合いは一進一退の攻防。
力で勝るバンリキ魔王に、ダイデンジンはデンジ剣から衝撃波を放つ技で対抗する。
ダイデンジンは勝負を決するべく、電子満月斬りを放った。
だが、バンリキ魔王はなんと電子満月斬りを素手で受け止めてみせた。
怪力でデンジ剣を掴むバンリキ魔王のパワーに、ダイデンジンのエネルギーも限界に達する。
このままでは決着がつかない。バンリキ魔王はベーダー魔城に撤退する。

バンリキ魔王は、デンジマンとの決着をつけるまでベーダー魔城に間借りすることになった。
「ヘドリアン女王。デンジマンを倒すまでは、厄介をかけるぞ」
「よかろう。どちらが先にデンジマンを倒すか、楽しみじゃ…」
余裕の構えを崩さないヘドリアン女王だが、ヘドリアン女王の支配下にない異物がベーダー魔城に定住することに、ヘドラー将軍は心中穏やかではなかった。
油断のならないバンリキ魔王を迎えたことが、ベーダー一族にどのような運命をもたらすのか。

果たして、バンリキ魔王が地球にやってきた真の目的は何か。
底知れぬ謎を秘めた、世にも恐るべき敵が、また1人デンジマンの前に立ち塞がった。
ベーダーの攻勢はますます激しさを増すであろう。負けるな、デンジマン。
戦え、電子戦隊デンジマン!

上原正三氏が得意とし(今回の脚本は曽田博久氏担当だが)、この後「太陽戦隊サンバルカン」や「宇宙刑事シャリバン」、「時空戦士スピルバン」でも同様の展開がシリーズ後半より導入され、多くの作品のシリーズ後半のドラマを盛り上げてきた敵方の第三勢力の登場と内部抗争のドラマ。
その先駆けとなったスーパー戦隊シリーズ初の敵の第三勢力・バンリキ魔王がついに登場した。
ヘドリアン女王をしてベーダー一族にすら禍を齎しかねないと恐れるほどのその力は、デンジレッドのデンジパンチを真正面からノーガードで顔面に受け止めても動じないことで印象的に演出され、レッドたち4人がデンジピンク不在では勝機を見いだせなかったほどの強敵である。
さらに、ベーダー怪物の卵を食べてしまう描写からは、ベーダー一族からすれば同族を食する生理的嫌悪感を隠しきれない存在であることがこれ以上なく伝わってくる。
ヘドラー将軍もその存在を最大限に警戒しているが、将軍一人では抑えきれないほどの力なのだ。
デンジマンはここに、新たな脅威を迎えることになった。

一方、そんな強敵の出現で重症を負い、なんとか意識を取り戻したものの、傷が癒えていないあきらが、世界を守るために死地へ向かった4人の仲間たちのために、再び戦場に向かうシーンで電子戦隊5人の固い絆も強調されているのが白眉である。
幾多の戦いを共に潜り抜け、自分たちが同じデンジ星人の子孫という「きょうだい」であると確信した電子戦隊5人は、死ぬも生きるも一緒と誓い合った絆を確立していた。
その絆が5人揃った時に発揮され、バンリキ魔王を退けることで、「力と技と団結の」素晴らしさが、シリーズの原典たる「秘密戦隊ゴレンジャー」より継承されているのが素晴らしい。

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