あらすじ
カマキラーが進める異次元転換実験により、人間が次々と超異次元へと送り込まれてしまう。
そして、父親を異次元に送り込まれた雷太少年もまた、姿を消してしまった。
雷太を探す青梅は偶然次元トンネルを発見し、敵空間に乗り込み…。
魔空空間は男の戦場 超異次元空間の死闘!
今回のベーダー怪物はカマキリの怪物であるカマキラー。
その任務は、異次元転換装置を作成し、人間をベーダー一族のテリトリーである超異次元空間へと転送・拉致して、捕らえた人間をヘドロの海で泳がせ苦しめることである。
異次元転換装置は、「バトルフィーバーJ」でエゴスが用いていた怪人製造機と酷似した外見をしており、プロップの改造によって(世界観的には独立した作品同士だが)悪の組織同士のつながりを感じさせるものになっている。怪人製造機の内部が異次元空間だったことから、エゴスの遺したテクノロジーをベーダー一族が得て、それを改良した…と想像するのも面白い。
カマキラーは次々に人間を超異次元空間へと拉致していく。
呑兵衛の父親を持つ少年・雷太もまた、眼の前で父親が超異次元空間に消えたのみならず、自らも超異次元空間へと拉致されてしまうのだった。
雷太から父親が行方不明になった相談を受けた青梅は、雷太を探し、次元トンネルを発見。
青梅を演じる大葉健二氏が人々を救うために悪の組織が生み出した異次元空間へ飛び込んでいくというシチュエーションは、後年の「宇宙刑事ギャバン」を思わせるもので、「宇宙刑事シリーズ」の作品カラーを打ち出した小林義明監督と上原正三氏のタッグで生み出されたこのエピソードは、「ギャバン」のプロトタイプとも言えるかもしれない。
ヘドリアン女王が「異次元空間に引きずり込むのじゃ!」と言うのも、「ギャバン」の名フレーズである「魔空空間に引きずり込め!」を思わせ、後の展開を思うと面白い。
果たして青梅は雷太を異次元空間から見つけ出し、ベーダーの陰謀を打ち破れるのか。
ランニングをしていた男たちのうちの1人が、突然宙に浮かび消えてしまう怪事件が起きた。
男が気がつくと、そこは牢獄の中。そして眼の前にいたのは、ベーダー怪物カマキラーだ。
カマキラーは異次元転換装置を使って男を超異次元空間へ転送・拉致してしまったのだ。
さらに、車で暴走行為を行っていた竹の子族の男たちも、それを追っていたチーコたちのパトカーの前で消失してしまう。緑川がチーコから連絡を受け、電子戦隊は怪事件の捜査を開始した。
デンジマンが調査に乗り出したことを知ったヘドラー将軍は、カマキラーに命じて異次元転換戦法のテストを開始する。カマキラーが異次元転換装置を作動させると、デンジマンは超異次元空間に飲み込まれてしまった。光と熱が支配する超異次元で、巨大なカマキラーの幻影が襲いかかる。
カマキラーは今に地球全体をひっくり返すと宣言し、デンジマンたちを幻惑しながら攻撃。
デンジマンはカマキラーの実体を掴めずに、翻弄されるがままになるが、デンジレッドがデンジスコープで超異次元空間を透視したことで、超異次元空間内のベーダー基地を発見。
ヘドラー将軍は慌ててデンジマンたちを現実の空間へと押し戻す。
ベーダー魔城では、暴飲暴食を尽くすバンリキ魔王に、ヘドリアン女王が苛立っていた。
バンリキ魔王の持つ剣が光を反射し、ヘドリアン女王の目を眩ませて余計に苛立たせる。
「女王。こっちに来て、一杯やらんか?」
「無礼者!宇宙の用心棒風情がなんたる口の利き方…!」
「やれやれ…気位の高いおばさまじゃ…」
「何ぃ…さっさと立ち去れ!」
「せっかく来てやったのだ。電子戦隊を捻り潰すためにな!」
「デンジマンは我々ベーダー一族が倒す…そなたの手助けなどいらぬわ!」
「フハハハ…口達者なおばさまじゃ!」
圧倒的な実力に裏打ちされたバンリキ魔王の傲岸不遜な態度は、ヘドリアン女王すらも恐れず「おばさま」と言ってのける程のものだった。だが、デンジマンを捻り潰すと言いつつ、暴飲暴食を尽くしてベーダー魔城から出ないバンリキ魔王は、一体何を考えているのだろうか。
そこに戻ってきたヘドラー将軍はバンリキ魔王を睨みつけると、ヘドリアン女王に異次元軸転換実験の成功を報告する。ヘドラー将軍は報告中もバンリキ魔王のことを強烈に意識し、作戦が順調な報告を受けたことを喜ぶヘドリアン女王は、バンリキ魔王に向けて勝ち誇る。
カマキラーはこの成功を受け、近日中にウルトラスーパー装置を完成させようとしていた。
ヘドリアン女王は完成したウルトラスーパー装置によって人間全てを超異次元であるベーダー次元に引きずり込み、ヘドロの海で泳がせる地獄絵図を見て楽しもうとしていたのである。
その頃、おでん屋で飲んだくれていた父親を、雷太少年が迎えに来ていた。
すっかり酔っている雷太の父親は小学生の雷太に酒を飲ませようとして雷太に咎められるが、自分は小学校の頃から酒を飲んでいたと嘯く。いかにも昭和の時代のやり取りだ。
もう一軒だけ行こうと言い張る父親に、雷太はまた母親と喧嘩になると叱責する。
良く出来たお子さんだが、そんな雷太の前で、父親が忽然と姿を消してしまった。
雷太は母親に父親が消えてしまったことを訴えるが、母親はすっかり父親に愛想を尽かしており、給料がなくなって酒が飲めなくなれば帰ってくると相手にしない。
雷太は仕方なく、自分で父親を探すことにした。
雷太は青梅たちに父親が消えてしまったことを相談する。
青梅は雷太を信じ、雷太の父親がベーダーによって超異次元空間に拉致されたと教える。
デンジマンの正体を知らない雷太は、このことをデンジマンに伝えようとするが、青梅は自分からデンジマンに頼んでおくと約束した。雷太からすれば、父親は飲んだくれの酒飲みではあるが、一緒にキャッチボールをして、釣りにも連れて行ってくれる良い父親なのだ。
青梅は雷太に、父親を見つけ出すことを約束するのだった。
翌日になっても、雷太の父親は戻ってこなかった。
雷太は心配のあまり、体育の授業にも身が入らない。
偶然、体育の授業中、グラウンドの外に出ていったボールを追いかけていった雷太は、その先でボールが突然消える瞬間を目撃。雷太が辺りを調べると、四角いパイプの中が激しく光っていた。
パイプの中を覗き込んだ雷太はその中に飲み込まれ、気がつくとまるで別の空間にいた。
雷太が覗き込んだパイプは、ベーダーが作り出した次元トンネルだったのだ。
雷太は超異次元空間の中で、父親たち超異次元空間に消えた人々がベーダーに囚われ、ハイキューの食料をもらうために列に並んで管理されている恐るべき現場を目撃。
父親が囚われている牢獄に近づいた雷太は、父親から自分たちがベーダーの実験台、モルモットにされていることを教えられる。ベーダーに超異次元空間に拉致され、囚われた人々は毎日ヘドロが含まれた食料を与えられ、異星生物へと作り変えられようとしているのだ。
ナチスの収容所を思わせるベーダーの人を人とも思わない管理・飼育描写は、反染色が強い作風を得意とする小林義明監督ならではの演出となっており、恐怖を抱かずにいられない。
ダストラーに見つかった雷太は、きっとデンジマンに助けを呼ぶことを誓って逃亡した。
その先で、オレンジ色のドアを見つけた雷太はドアを開き、その先へ飛び込む。
だが、その先は都市上空だった。道路へ落下した雷太は、車に跳ねられそうになる。
だが、車は雷太の身体を素通りしていった。雷太は自分がどうなったのかわからない。
都市の空間は不気味に歪み、雷太の存在に誰も気づかない。
異次元に肉体を残し、透明人間になったような感覚のまま、雷太は現実空間に迷い込んだ。
街中に落ちる傘や、突然現れるオレンジ色のドアなどの幻想的かつ、日常風景に異物が混ざる違和感を想起させる画作りも、「宇宙刑事シリーズ」の異空間描写に継承されることになる。
オレンジ色のドアから現れるダストラーの幻影から逃げ、オレンジ色のドアの中に入った雷太は荒野へと迷い込むが、そこにカマキラーが現れ、雷太は逃げ続ける。
やがて、自宅近くに辿り着いた雷太だが、雷太の母親は授業中にいなくなった雷太に怒っていた。その話を聞いていた青梅は、雷太も超異次元空間に迷い込んだ可能性に思い至る。
雷太はその様子を見ることは出来るが、声を届かせることは出来ない。
必死に青梅にデンジマンに知らせてほしいと叫ぶ雷太。
青梅は、雷太が姿を消した場所へ向かい、そこで雷太が飲み込まれた次元トンネルを発見する。
その先でダストラーに遭遇した青梅はデンジブルーにデンジスパーク。
しかし、カマキラーも現れ、取り囲まれたデンジブルーは命乞いをするのだった。
カマキラーからその報告を受けたヘドリアン女王は、憎きデンジマンを極刑に処すように命じ、ヘドラー将軍は二次元送りの刑に処することを提言。
二次元送りの刑に処されれば、デンジブルーはのしイカのように二次元人間になってしまう。
ヘドラー将軍たちの前に通されたデンジブルーに、ヘドラー将軍は二次元送りの刑を宣告。
カマキラーが刑を執行しようとした瞬間、デンジブルーは突然態度を豹変させ、「ブルーインパルス・フルパワー」で手錠を破壊、デンジスティックを投げつけ異次元転換装置を破壊する。
全ては、異次元転換装置を発見・破壊するための芝居だったのだ。
「命乞いは芝居であったか!」
「あたりめえよ!てめえみてえな腰抜け野郎に、誰が命乞いなんぞするもんけ!」
何故か江戸っ子口調のデンジブルーは、一気にダストラーを排除。
カマキラーに対しても俊敏な動きで戦いを優勢に運ぶ。
基地を脱出したデンジブルーは、囚われた人々を発見。
そして、ダストラーたちの修理も虚しく、異次元転換装置は完全に破壊され、超異次元空間に転送された人々やデンジブルーは現実の空間へと帰還する。
雷太と父親が再開を喜ぶ中、カマキラーたちが人々を追って現実の空間へ現れた。
デンジブルーは人々を守り、単身ベーダーに立ち向かうが、流石に多勢に無勢。
しかしそこに、デンジレッドたちが救援に現れた。
「見よ!電子戦隊!デンジマン!!」
デンジブルーのスクリューキックが炸裂し、イエローのイエローブレーンバスターが決まる。
カマキラーはまたしてもデンジマンを幻惑し、閃光を迸らせて攻撃する。
だが、デンジマンはそれがカマキラーの目から放たれていることを察知すると、デンジスティックで火柱を走らせ怯ませたところに、ドラゴンフライを炸裂させる。
そして、最後のトドメのデンジブーメランを炸裂させ、カマキラーを倒すのだった。
だが、カマキラーは細胞組織を操作させ巨大化。デンジマンもデンジタイガーを呼ぶ。
ダイデンジンとカマキラーの最終決戦が始まった。
カマキラーは白い粘液を吐いてダイデンジンを苦しめるが、ダイデンジンはデンジシャワーでそれを洗い流し、電子満月斬りを炸裂させカマキラーを倒すのだった。
作戦の失敗を嘆くヘドリアン女王を、バンリキ魔王は嘲笑する。
電子戦隊は、今回の功労者である雷太に、青梅のストックしたアンパンをごちそうしていた。
デンジマンの活躍で、異次元魔空から雷太の父親は救出された。
だが、バンリキ魔王に作戦失敗を侮辱されたヘドリアン女王は、どんな謀略を企むのであろうか。
電子戦隊の危機は、さらに増す…。
幻想的な異次元空間の描写や、収容所を思わせるベーダーの人類「管理」を描く反戦色溢れる演出と、小林義明監督が東映特撮作品で描く作風がダイレクトに打ち出されたエピソード。
人間を超異次元空間へと拉致し、実験台にしてしまうベーダー一族の非人道的な行いはまさに戦争の恐ろしさそのものであり、それを打ち破るのが父親を心配する雷太少年の家族愛、ヒューマニズムであることに、人が人を思いやる心こそが、人を人とも思わぬ戦争の恐ろしさに対処することが出来るという、人の優しさの暖かさを信じるメッセージ性を感じることが出来る。
今回は実質的に青梅の単独ヒーロー回と言っても過言ではないほど、青梅大五郎活躍回となっている。異次元転換装置を発見するため、ベーダーに情けなく命乞いをして見せる演技力は、サーカスのスターとして活躍する中で磨かれた表現力の賜物だろう。
命乞いを信用させるのは、三枚目的な役回りもこなす青梅大五郎ならではの立ち回りであり、同時に少年に父親を助け出すことを約束する良き大人としての魅力も描かれ、大葉健二氏の温かい演技がそれらの多面的な魅力を見事に表現している。