「仮面ライダー (新) (スカイライダー)」第3話「勇気だ!コウモリ笛の恐怖」感想

2024年11月4日月曜日

仮面ライダー (新) (スカイライダー) 東映特撮YoutubeOfficial

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あらすじ

怪人・コウモルジンの吹く不気味なコウモリ笛の音。
それを耳にした子供たちが次々と連れ去られた。ネオショッカーは子供の血液中に存在するRHBを採取し、それを原料とする毒ガスを製造しようとしていたのだ…。

子供を狙う恐怖の蝙蝠怪人 少年の勇気がライダーに力を与える!

今回のネオショッカーの怪人は、蝙蝠の改造人間であるコウモルジン。
口から吐き出す溶解液や、噛みついた人間の意識を奪う毒を持つ牙、催眠音波を放つコウモリ笛といった多彩な能力を持つ、強豪改造人間である。
そんなコウモルジンの任務は、子供を拉致し、その血液に存在するRHBを採取、それを原料とした特殊な毒ガスを生成することでネオショッカーの兵器にすることである。
そのために、公園の管理人の老人に化け、公園で遊んでいる子供たちに声をかけていた。

そんなコウモルジンに襲われたのが、サトル少年だ。
気弱で臆病なサトル少年は、友人にからかわれて落ち込んでいたところを筑波洋と出会い、励ましの言葉をもらう。そして、友人がコウモルジンに拉致されたところを目撃し、勇気を振り絞って筑波洋に事件を伝える。サトル少年の振り絞った勇気が、筑波洋に力を与えるのだった。

平和な公園で、犬の散歩をしていた親子。
だが、不気味な老人とすれ違った途端、犬は殺気を感じて逃げ出してしまう。
逃げた犬を追った先で、少女は不気味なコウモリの怪物に襲われる。
コウモリの怪物、コウモルジンは口から溶解液を噴射し、犬を溶かしてしまう。
そして、少女を気絶させてしまうのだった。

帰ってこない娘を心配した母親の眼の前で、少女がアリコマンドによって拉致された。
偶然通りかかった筑波洋は、母親の頼みでアリコマンドが操るトラックを追う。
トラックはコウモリアジトへ子供たちを運んでいた。
だが、筑波洋の尾行に気づいたアリコマンドは、突如トラックを逆走させ、筑波洋のバイクと正面衝突させる。筑波洋はバイクごと崖に落下するが、変身して仮面ライダーとなった。
「筑波洋は、ベルトの風車が回転すると、仮面ライダーに変身するのだ!」

アリコマンドは筑波洋の死体を確認すべく崖下へ向かった。
そこに、スカイターボに乗って仮面ライダーが現れる。
「仮面ライダーがこの世にいる限り、貴様たちの悪事は許さん!」
仮面ライダーはアリコマンドを次々に蹴散らしていく。
仮面ライダーが投げ飛ばしたアリコマンドが地底に埋まっていく描写が面白い。仮面ライダーの投げの威力の高さの表現か、アリの改造人間であるアリコマンドが地底へと撤退していく描写か。

仮面ライダーがトラックの荷台の扉を開くと、コウモリが飛び出してきた。
そして、冷凍された荷台には、気絶した子供たちが多数横たわっていた。
仮面ライダーが向かってくるコウモリを蹴散らしていると、トラックはその隙に逃亡する。

ネオショッカーのアジトでは、ゼネラルモンスターが大首領に作戦を説明していた。
コウモルジンは、気絶させた子供たちを冷凍車で輸送し、新鮮なまま保存。
コウモリアジトへ連行したら溶解マシンにかけて解凍し、採血機で血液を抜き取る。
その新鮮な血液から毒ガスを生成するのが、ネオショッカーの計画だった。子供の血液には、大人の血液にはないRHBが大量に含まれており、RHBが特殊毒ガスを作るのに必要不可欠だという。

志度博士が、娘を攫われた母親を公園で励ましていると、怪しい老人が声をかけてきた。
老人は公園の管理人だという。だが、子供が拉致されるという、管理も何もあったもんじゃない公園の惨状に、温厚そうに見えていた志度博士もキレて、老人を問い詰めるのだった。
そこに戻ってきた筑波洋から、娘を奪回できなかったことを聞かされた母親は泣き崩れる。
筑波洋は、自分の無力感とネオショッカーへの怒りで唇を噛むのだった。
母親に娘の救出を懇願され、筑波洋は決意を新たにした。
しかし、その様子を、公園の管理人だという老人は嘲笑うのだった。

志度ハングライダークラブの女性陣は、子どもの誘拐事件はネオショッカーの仕業だとか、自分はネオショッカーと戦う決意をしたんだだとかいう話で盛り上がっていた。
筑波洋は地図でネオショッカーが子供たちを拉致した場所の位置関係を調べていた。
そのうち、子供たちまで毒牙にかけるネオショッカーへの怒りが爆発した筑波洋は、改造人間としての力を暴走させてしまい、無意識に握っていた灰皿を粉砕してしまう。
筑波洋はこの力に、改めて自分が普通の人間ではなくなってしまっている現実を思い知る。
「仮面ライダー」第1話「怪奇蜘蛛男」の本郷猛の苦悩をオマージュしたシーンだ。

「一見平和な都会だが、こうしている間にも、罪のない子供がネオショッカーに狙われている…」
筑波洋が夜の街をパトロールしていると、そこにコウモルジンが操るコウモリが襲撃してきた。
コウモルジンはさらに、コウモリ笛で筑波洋の身体の自由を奪い、嬲り殺しにしようとする。
そこに通りかかった飛田今太。酔っ払いが殴り合いの喧嘩でもしているのかと思ったのかは不明だし、それが特ダネになるとも思えないが、とにかく特ダネと感じたらしい彼はフラッシュを焚いてカメラのシャッターを切る。すると、フラッシュの光がコウモルジンを怯ませた。
コウモルジンの姿を直視した飛田今太は怪物を目撃して気絶する。
筑波洋の助けになった分、今回はまだドラマに絡んだ方の出番だった。
筑波洋は気絶する飛田今太のカメラを借り、フラッシュを焚いてコウモルジンを撤退させる。
だが、コウモリ笛で身体の自由を奪うコウモルジンは、恐るべき強敵だった。

例の公園では、気弱なサトル少年が、オバケのお面をつけたいじめっ子グループにからかわれていた。徒党を組んで囲い、悪口を言うのは、普通に考えて友人ではない気もする…。
そこに、ネオショッカーを探していた筑波洋と志度博士が通りかかる。
サトル少年が他の子どもと一緒に遊ばないことが気になった筑波洋はサトル少年に声を掛ける。
「どうして皆と一緒に遊ばないんだ?」
「いじめるんだ…」
「なんだ、弱虫だな…」
「そう言って、からかうんだ…」
「いや、これは僕が悪かった。いじめられたら、やり返せば良い」
「出来ないよ…出来っこないよ。僕、臆病だから」
「臆病で、弱虫か…弱っちまったな。じゃ、頑張れよ」
弱虫とからかわれていることを気にしているサトル少年の心情を慮り、自分の失言を素直に謝罪して良き兄貴分でいようとする筑波洋の姿が印象的なシーン。
筑波洋は年少の子供たちを励ます良き兄貴分としての姿が印象深いが、こうやって見直すとシリーズの初期から意識して子供たちと絡むシーンが用意されていることがわかる。

志度博士に促された筑波洋が公園を離れたところを見計らい、公園の管理人だという老人がコウモリ笛を構えた。そう、あの老人こそコウモルジンの変装だったのだ。
子供たちを守るはずの公園の管理人が子供たちを誘拐していたなど、恐怖でしかない。
コウモリ笛の音色を聞いた子供たちは、自我を奪われ目も虚ろなまま歩いていく。
臆病だったがゆえに、怪しい音色に怯えて耳を塞いでいたサトル少年だけがコウモリ笛に操られることを免れたが、彼は友人たちが自我を奪われる様子に恐怖するのだった。
臆病だったがために助かったこともしっかりと描写していることで、臆病であることが悪いことだけではないという展開になっているのは良心的な展開と言えるだろう。

子供たちを操り誘き寄せたコウモルジンは、首に噛みつき気絶させる。
そして、アリコマンドに運ばせると再び老人の姿に戻った。
その様子を陰で見ていたサトル少年は、運悪く老人に発見されてしまう。
必死で逃げ、なんとか物陰に隠れたサトル少年だが、コウモルジンは喋れば生命はないと大声で叫んでサトル少年を大いに怯えさせるのだった。

そんなサトル少年に、筑波洋は声を掛ける。
筑波洋に恐怖を訴えるサトル少年だが、そこに老人が現れた。
その狂気の眼差しを見たサトル少年は、何も言えずに逃げ出してしまう。
筑波洋はサトル少年を追い、必死に問い質す。
「人間、誰だって、怖がりだし、弱虫だ。僕だって、弱虫だし、恐ろしいものを見れば怖いさ。だけどな、お兄ちゃんだって、これといった時には勇気を出すぜ」
「勇気?」
「そうだ、勇気だ!友達だって、君が勇気を見せれば、喜んで仲間にしてくれる!」
筑波洋から「勇気」を教えられたサトル少年は、その勇気を振り絞り、ついに老人が友人たちを怪しげな笛で操り、拉致してしまったことを打ち明けるのだった。

先程のシーンに続いて、少年に勇気を諭す筑波洋の描写が素晴らしい名シーン。
自分も弱虫で、恐怖を感じることもある。だが、いざという時には勇気を振り絞ることも必要だ。「君と同じ」で弱虫で臆病でも、勇気を振り絞る事が出来る。
だから、君も「僕と同じ」で、勇気を振り絞ってほしい。筑波洋の願いが、少年に通じた。
「宇宙刑事シリーズ」の歌などでも多く用いられる、ヒーローが少年少女に「君と同じ」普通の人間だけど、勇気を振り絞って頑張っていることを伝え、だから「僕と同じ」ように君も頑張って生きていこうぜという普遍的なメッセージを伝えてくれるシーンでもある。

だが、サトル少年は勇気を振り絞った結果、勇気がオーバーランする。
なんと老人に直接子どもたちをどこに攫ったか、訪ねてしまったのである。
老人はコウモルジンとしての正体を現す。
そこに筑波洋と志度博士が駆けつけた。サトル少年を志度博士に任せ、筑波洋は変身する。
先程のサトル少年の勇気のオーバーランは、筑波洋がサトル少年に頼んで、コウモルジンの正体を暴いてもらおうとしたのだった。やることが極端ではある。

コウモルジンは、アリコマンドに仮面ライダーを足止めさせると、サトル少年を追った。
志度博士は成すすべもなくコウモルジンに殴られ、サトル少年は攫われてしまう。
仮面ライダーは志度博士に促され、サトル少年を追った。志度博士も転んでもただでは起きない性分で、こんなこともあろうかとサトル少年の身体に発信機を取り付けておいたのだという。

コウモリアジトへ連れ去られたサトル少年は、子供たちの採血現場を目撃して恐怖に慄く。
先に攫われた子供たちも採血をされすぎて、次の採血で死に至らしめられてしまうのだ。
コウモルジンは自分の邪魔をした罰として、サトル少年の全身から採血することを宣言。
全身から血を吸われた挙げ句殺されることを宣告され、サトル少年の恐怖はピークに達した。
「ヤダーッ!」と叫んでいると、まるで「ちいかわ」のようだ…。

コウモリアジトの入口の洞窟に辿り着いた仮面ライダーを、コウモリが襲う。
仮面ライダーはコウモリを跳ね除け、コウモリアジトの壁へライダーブレイクを敢行。
見事に壁を突き破り、サトル少年の元へと辿り着く。
だが、コウモルジンは再びコウモリ笛を吹き、仮面ライダーの身体の自由を奪う。
仮面ライダーは笛の音を消すべく、「スーパーライトウェーブ」を発動。
ベルトの風車から、閃光と共に放たれた超音波が、コウモリ笛の音色をかき消した。
テレビの光でベルトが回る。

サトル少年は、筑波洋の言葉を思い出し、友人を救うべく勇気を振り絞る決意をする。
コウモルジンの恐ろしさに震えながら、落ちていたアリコマンドの武器を拾い、採血機械を粉砕した。コウモルジンはサトル少年を怒りのままに襲おうとするが、ライダーに阻止される。
「ライダー。怪人を倒して!」
「君の勇気に負けないように、戦うぞ!」
筑波洋は嬉しかった。臆病だった少年が、友人のために勇気を振り絞ってくれたことが。
そして少年の勇気が、筑波洋の、仮面ライダーの戦う意思をさらに高めたのだった!

ライダーはアリコマンドの群れを蹴散らし、ついにコウモルジンとの決戦に挑む。
口から吐く溶解液でライダーを襲うコウモルジン。
ライダーは接近戦に持ち込み、組み合ったまま空高く舞い上がる。
空中なら自分のものだと勝ち誇るコウモルジン。
だが、ライダーもセイリング・ジャンプで天高く舞い上がる。
サトル少年の応援を背に、ライダーはコウモルジンにスカイキックを炸裂させた!
空中で激突するスカイキックの演出はかなりカッコいい。

コウモルジンの身体は溶け、ライダーは勝利した。子供たちはライダーの勝利を称える。
サトル少年は、コウモルジンに震えた自分がやっぱり臆病だと自嘲する。
「僕、とっても怖かったよ。やっぱり僕、弱虫なんだな」
「そうじゃない。立派に友達を助けたじゃないか。サトルくんは、勇気のある少年だ!」

一人の少年が勇気を知ったことが、仮面ライダーは嬉しかった。
仮面ライダーはゆく。ネオショッカーの陰謀を、叩き潰すまで!

子供たちを狙うネオショッカーに怒りを滲ませ、恐怖に震える少年を励ます、子供たちの頼れる兄貴分である筑波洋の魅力がシリーズ初期にして早くも確立された名エピソード。
弱き者を卑劣にも狙うネオショッカーの非道に怒りを滲ませ、改造人間である力を暴走させてしまう描写からも、筑波洋の優しい性分が強調されて演出されていると言えるだろう。

仮面ライダーの勝利を伝える締めのナレーションも、コウモルジンを打ち破ったこと以上にサトル少年が勇気を知ったことを強調して伝えており、このエピソードの骨子が仮面ライダー=筑波洋が一人の少年に勇気を教え、少年がそれに応え勇気を知ったことにあることを強調している。
仮面ライダーが少年に勇気を教え、少年の勇気が仮面ライダーに力を与える、ヒーローと少年の高め合いが描かれる、ヒーロー作品の王道を行く作風が清々しい気分になる名作エピソードだった。

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