あらすじ
怪物・トリカゴラー扮するサバイバル評論家・五代万作。
彼にそそのかされた三太たちは、山中のサバイバル訓練へと出かける。
しかし、へドリアン女王の怒りを買い、三太たちはそのまま山中に取り残される。
強さは愛だ 人と獣を分かつ、他者への優しさ
今回のベーダー怪物はトリカゴラー。彼の口車に乗り、脱出不可能な山中に取り囲まれてしまった子供たちの状況を鳥籠に例えたうえでのモチーフ選択と思われるベーダー怪物だ。
サバイバル評論家・五代万作に化けたトリカゴラーは、TVに出演し、子供たちに悲観的な未来予想図を提示し、21世紀は地獄のような時代になると伝え子供たちを絶望させようとする。
だが、子供たちはベーダーの思惑以上にたくましかった。
電子戦隊が働くアスレチッククラブに通う三太たちは、トリカゴラーが伝える絶望の未来を生き抜くために、今から備えようと山中のサバイバル訓練を思い立ったのである。
この三太たちの行動に、自分たちが伝えた絶望に怖気づかないことに怒りを覚えたヘドリアン女王は、三太たちを標的に地獄のサバイバル訓練を強制することを思いつく。
ミラーとケラーに命じ、トラックで三太たちを山中まで乗せていった挙げ句、三太たちが持ってきた荷物を奪って右も左もわからない山中へと取り残してしまったのだ。
電子戦隊の面々も三太たちが家出したことを知って捜索を開始し、青梅が野生の勘でいち早く子供たちと合流したものの、子供たちは空腹でお互いにいがみ合うようになってしまう。
他の電子戦隊の面々が妨害工作で青梅たちと合流できない中、子供たちは空腹のあまりお互いを思い合う心を失っていた。そして、病弱な体質のミユキに目もくれず、自分たちの空腹や喉の乾きを癒そうといがみ合う三太たちに、ついに青梅は愛ゆえの叱責を行う。
強い者は、弱者を思いやって生きていく。それこそが人間なのだ。
その優しさを失ってしまえば、獣と何も変わらないのだと。
果たして青梅の叱責は子供たちの心に届くのか。そして、電子戦隊は合流できるのか?
テレビでは、サバイバル評論家の五代万作が子供たちに21世紀の暗黒の未来について論ずる番組が放送されていた。そのスタジオに集められた子供の中には、アスレチッククラブの三太もいた。
サバイバルの意味を尋ねられた三太は、いまいちその意味もわからない。
五代万作は、21世紀に明るい未来はないと言い始めた。
人口爆発と食糧危機、水不足。21世紀は地獄の未来。
そんな未来に生き残る自信はあるかと問われる子供たちは不安に襲われる。
その番組を見ていた赤城たちは、人を不安にさせるようなことばかり言う五代万作が、ベーダーの手先ではないかと疑い始めるのだった。
案の定、五代万作はベーダー怪物・トリカゴラーの変装だった。
人間どもに未来は地獄だと吹き込み、日本中の人間を絶望させようとするベーダー。
だが、バンリキ魔王は子供というものはあんがいへこたれないものだと、ベーダーの作戦の甘さを指摘する。その指摘は当たっており、三太たちはお上品に育ってきた自分たちが21世紀を生き抜くために、山中でサバイバル訓練を行う計画を話し合っていた。
絶望せず、なんとか生き残ろうと思う生意気さに、ヘドリアン女王は怒り、荒れ果てた地球に生き残るのはベーダーだけだと思い知らせるようにヘドラー将軍に命ずるのであった。
三太たちはアスレチッククラブの空手の稽古をサボり、家出してしまった。
その中には、青梅の生徒であり、病弱な体質のミユキもいた。昨日、五代万作のテレビに出た子供が示し合わせて家出したことに不安を覚えた電子戦隊は、手分けして三太たちを探し始める。
一方、山へと向かっていた三太たちに、ケラーが変装したトラック運転手が声をかけてきた。
その誘いに乗って、トラックの荷台に乗せてもらうことにした三太たち。
ミユキは、発車の勢いで防止を道に落としてしまう。
その帽子を見つけた青梅は、仲間たちにそれを伝えると、先行して三太たちの後を追った。
三太たちは一泊二日で山を超える計画を立てていた。
三太は炊飯器を丸ごと持ってくるなど、ある程度の準備は整えていた。
しかし、トラックが停車した先には、ミラーたちベーダー一族が待ち構えていた。
子供たちを車から下ろしたミラーたちは、三太たちから荷物を奪い、山中に置き去りにする。
右も左もわからない山中に、何の荷物もなく置き去りにされた三太たち。
なんとか山道を進んでいくが、病弱なミユキは遅れがちになってしまう。
助けを求めて叫ぶ子供たちをデンジスコープで感知したデンジブルーだが、そこにトリカゴラーが襲撃してきた。トリカゴラーは子供たちにサバイバル地獄を味わわせようとしていたのだ。
デンジブルーはダストラーの銃撃や、トリカゴラーの卵爆弾で崖から落下してしまう。
青梅の後を追うデンジレッドたちだが、ダストラーの変装した村人に嘘の道を教えられる。
一方、三太たちは渓流に流れ着いていた青梅を発見する。
だが、三太たちの興味は青梅が食料を持っていないかどうかだけだった。
意識を取り戻した青梅は、三太たちがミユキを置いてきたことを気づく。
青梅は、動けなくなったミユキを見捨てて置いてきた三太たちを叱責するのだった。
その頃、デンジレッドたちは海に出ており、嘘を教えられたことに気づく。
三太たちは、ミユキを置いてきた山小屋に青梅を案内する。
横たわっていたミユキを介抱する青梅は、気まずい雰囲気の三太たちを叱責し、ミユキのために担架を作るように促すが、三太たちも何も食べておらず、そんな元気はない。
暗い雰囲気を吹き飛ばすために、自分も腹が減っていると笑う青梅は、食べ物を探しに出かけた。
三太たちはミユキに謝罪し、青梅は山小屋にいることを仲間に連絡する。
通信を受けたデンジレッドたちは山小屋に向かうが、看板はベーダーに向きを変えられていた。
食べ物を探す青梅は、木に果物があることを見つける。
しかし、それを獲ろうとした瞬間、果物はトリカゴラーに銃撃され、破裂した。
雨まで降ってきた寒さと空腹に子供たちは苦しむ。
頼みの綱の青梅も、びしょ濡れになったまま食料を見つけることは出来なかった。
さらに、ベーダーは青虫を集め、山小屋の窓から投げ入れる。
山小屋にいることもできなくなった子供たちは逃げ出すのだった。
一方、デンジレッドたちも山で迷ってしまい、合流を果たすことは出来ない。
岩肌が露出する山道に迷い込んだ三太たち。すると、そこに水筒があった。
喉の乾きに苦しむ三太たちは、弱っているミユキを優先し、皆で分けるように促す青梅の言葉に聞く耳も持たず、自分だけが水を飲み干そうと争い始める。
その様子に、ついに青梅は怒りを爆発させた。
「バカモン!恥ずかしくないのか!自分だけ良ければそれで良いのか!」
「強い奴だけが生き残るんだ!」
「それじゃあ…ベーダーと同じじゃないか!人間は違うぞ…!強い者は弱い者を守ってやらなきゃ…男の子は女の子を守ってやらなきゃ…それが人間だ…!」
自分たちの浅ましさに気づいた子供たちは、力なく空っぽの水筒を落とすのだった。
そしてそこに、ベーダーが現れる。青梅はミユキを三太たちに任せ、ベーダーを足止めする。
「皆は小さくても男だ!俺はそう信じてる!」
デンジレッドたちは看板が変えられていることに気づき、急行する。
その頃、ミユキはまたしても遅れがちになっていた。
三太はそれに気づき、ミユキをおぶって逃げ始めるのだった。
青梅の想いが、三太たちの心に届いたのだ。
懸命にトリカゴラーと戦うデンジブルー。そこに、レッドたちも駆けつけた。
「見よ!電子戦隊!デンジマン!!」
ベーダーと戦うデンジマン。一方、子供たちも力を合わせ、懸命に山道を逃げる。
デンジブルーの怒りのブルーロケット・スクリューキックがトリカゴラーに炸裂した。
トリカゴラーは巨大化し、デンジマンはデンジタイガーを呼ぶ。
子供たちも、最後まで協力を拒んでいたタケシも協力を始め、真に団結するのだった。
デンジマンはダイデンジンに乗り込んだ。
ダイデンジンの怒りの鉄拳がトリカゴラーに炸裂した。
そして、デンジ剣の火柱がトリカゴラーにスパークし、電子満月斬りで勝利する。
無事に地獄のサバイバルから生還した子供たちは、一回り大きく成長した。
皆の荷物を持ってあげる青梅や、赤城たちもその様子を嬉しそうに眺めていた。
強い者だけが生き残る世の中であってはならない。
デンジマンは人間の誇りを守るために、明日も戦う。行け!電子戦隊デンジマン!
青梅が子供たちに説く、人間としての在り方が胸を打つエピソード。
絶望を与えるために悲観的な未来を提示する五代万作の姿は、悲観的な未来をこれでもかと伝え続ける現代のマスコミのカチカチュアライズであり、そんな悲観的な未来に影響されて余裕をなくしてしまう子供たちの姿も、極めて現実的なものだろう。
生きるか死ぬかの状況に追い込まれる中、自分だけが水を飲めれば良いと争う三太たちの姿は、強い者だけが生き残ればいいというベーダーの思想に通じるものがあり、人間はそうであってはならない、弱い者を守ろうとする誇りがなくてはならないと唱える青梅の姿は、子供たちの将来を思う大人として、彼らの未来のために厳しいことを言う愛ゆえの叱責だと感じさせる。
強い者だけが生き残ればいいなら、獣と何も変わらない。弱い者と強い者が、それぞれの得意分野で助け合って生きるからこそ、人間は人間足り得る。困難に直面した時に、その困難に適合した強い者だけが生き残ることを容認すれば、待っているのは全体の破滅でしかないのだ。