あらすじ
デンジレッドはベーダーの手から1人の少女を救う。
その少女は海の支配者・人魚族の人魚姫で、一族のしきたりを嫌い、自由な地上へ出てきたのだ。
人魚族の超能力を利用しようと目論むベーダーは、人魚姫の誘拐を計画する。
自由を求めた人魚姫 安らかなる海底世界を守れ
今回のベーダー怪物はボートの怪物であるボートラー。
その任務は、海底世界の支配者である人魚族の姫である人魚姫を誘拐し、超能力を持つ人魚族を脅迫してベーダー一族の味方につけ、デンジマンを打倒すること。
そのために、自由を求めて地上に出た人魚姫を付け狙うのだった。
そんなボートラーに狙われた人魚姫は、海底世界でひっそりと生きてきた人魚族の姫君だ。
超能力を持っており、またその涙は真珠となる。
彼女は一族の厳しいしきたりを嫌い、人間の姿になって自由な地上の世界に来たのだった。
そして偶然赤城と出会い、彼を奔放に振り回す。
だが、ベーダー一族に狙われたことで、地上にも自分の居場所がないと感じるのだった。
赤城はそんな彼女の心を救い、ベーダーから守って再び海底へ送り出すことが出来るのか。
赤城は、度重なるベーダーの攻撃に備えてデンジランド周辺をパトロールしていた。
すると、可憐な雰囲気の少女がひとり佇んでいる。
彼女は、空と海、陸全てを見物しにきたのだと、掴みどころのない様子で話す。
赤城はその様子に何処か不思議なものを感じながら、パトロールの続きに向かった。
少女は、赤城を見て、あれが人間の男なのかと感心する様子だった。
少女が海岸を探索していると、デンジランドを捜索するベーダー一族と出くわした。
デンジランドの入口をなんとかして掴もうとするベーダーは、入口があると思われるこの海岸に監視カメラをセットし、なんとしてもデンジランドの入口を発見しようとしていた。
少女は悪戯めいた笑みを浮かべ、貝殻を笛として鳴らす。
すると、念力によって隠されていた監視カメラが顕となった。
さらに、叱責されたダストラーたちも少女の念力によって翻弄される。
ミラーとケラーは只事ではない事態に、ベーダー怪物・ボートラーを呼び出した。
ボートラーが物陰にいた少女を発見し、近寄ろうとすると、そこに赤城が現れた。
赤城はデンジスパークし、デンジランド偵察を目論むベーダーと戦う。
少女はデンジレッドの強さに感心し、不利を悟ったベーダーは撤退した。
おめおめと逃げ帰ったボートラーたちは、ベーダー魔城でヘドリアン女王に叱責されていた。
バンリキ魔王は、少女にしてやられたボートラーたちに嫌味を言う。
ヘドラー将軍は念力を使い自分たちを翻弄した少女について、調査を開始するのだった。
赤城がアスレチッククラブで子供たちと朝の稽古をしていると、そこに少女が現れた。
可憐な服装で着飾った少女は、赤城を遊びに誘う。
青梅たちも、赤城があんなにモテるわけがないと狐につままれた様子だ。
すると、三太は少女が立っていたところに、さっきまでなかった水たまりがあることに気づく。
黄山はその水たまりが、海水で出来ていることを訝しむのだった。
赤城を街に連れ出した少女は、路上に駐車してある車に乗せるように頼んできた。
まるで要領を得ないお願いに赤城が困惑していると、そこにチーコが現れる。
なんと、少女はお金を払わずに服や靴を店から持ち出し、警察に手配されていたのだった。
だが、少女はそんな様子を気に留めることもなく、新しい服に興味津々だ。
赤城は仕方なく、少女が持ち出した服や靴の代金を払うことになってしまう。
さらに、少女は今度は赤城に着せるための服を持ってきた。
もちろん赤城は断るが、少女は決然と服を着るように頼んでくる。
結局、服と靴を売りたい店員にも乗せられてしまい、赤城はさらに服と靴を買わされてしまう。
ひどい店員だ…。
結局、言われるがままにスーツ姿にドレスアップされた赤城は、少女に笑顔で手を引かれていく。チーコたち警官がその様子に呆れていると、少女の行く跡になにか落ちているのを見つけた。
そこに駆けつけた黄山とあきらは、それが魚の鱗であることに気づく。
海水の水たまりの次は、魚の鱗。果たして、少女は何者なのか?
赤城の車に乗った少女は、周囲の風景をまるで初めて見たかのように目を輝かせて眺める。
青梅と緑川はそれを尾行するが、青梅は、赤城がデートしているのに付き合わされているようで不愉快だった。だが、緑川は赤城に何か考えがあると見抜いていた。
赤城は少女に、何者なのか、どこから来たのかを尋ねるが、少女は答えようとしない。
何かを隠している様子の少女を必死に問い詰める赤城。
その様子を物陰から見ていたデンジブルーとグリーンは、デンジスコープで少女を透視。
すると、少女の体は鱗に包まれていた。少女の正体は人魚だったのだ。
そこに、赤城と少女が乗っていたボートが突然ひとりでに動き出し、赤城はデンジスパークして間一髪脱出するが、少女はボートに姿を変えて潜んでいたボートラーに捕まってしまう。
ボートラーは少女を人魚姫と呼んだ。
そこに、デンジイエローとピンクが合流し、ピンクが人魚姫を救出。
少女の確保に失敗したボートラーは撤退するのだった。
少女をデンジランドへ案内した赤城は、アイシーから少女が人魚族のプリンセスである人魚姫に間違いないと聞かされる。電子戦隊の面々は、人魚が実在していたことに驚く。
人魚族は地球の海の底で隠れ住んでいた、海の支配者なのだ。
ベーダー一族は人魚姫を人質に取り、人魚族をベーダー一族に協力させようとしていた。
海の支配者である人魚族を脅迫し、ベーダー一族に協力させれば、地球征服などあっという間に達成されてしまう。人魚族の兵士は抜群の超能力を持っており、味方にすれば兵力倍増だ。
ヘドリアン女王はヘドラー将軍に人魚姫を捕らえるように命ずるのだった。
赤城は人魚姫に、海底に戻るように伝えるが、人魚姫はそれを拒む。
人魚姫は、プリンセスとして自由のない暮らしを嫌って地上に来たのだった。
だが、ベーダー一族に狙われている危険があり、人魚族の人々も心配している以上、人魚姫は海底に戻らなくてはならない。赤城は懸命に人魚姫を説得するが、わかってもらえない。
それどころか、人魚姫に念力で大岩を呼ばれた赤城は、下敷きになってしまった。
だがそれでも、赤城は自分の救助よりも先に人魚姫を助けるように仲間に頼む。
その言葉通り、ベーダー一族が人魚姫を狙って現れていた。
青梅たちはデンジスパークし、ダストラーを蹴散らしてボートラーを足止めする。
ボートラーは不利を悟って撤退した。さっきから、なんだか妙に引き際が鮮やかだ。
デンジブルーたちは大岩を破壊し赤城を救出すると、人魚姫を捜索する。
一方、ボートラーたちも人魚姫の捜索の手を緩めようとしなかった。
夜の街にひとり佇む人魚姫は、海の底と同じく、地上でも自分は一人ぼっちであることを悲しむ。
そして、人魚姫が孤独を悲しみ流した涙は真珠となった。周囲の人々が大量の真珠に目が眩んで騒ぎになったことで、追手に発見された人魚姫は再び逃亡を開始した。
追手から逃げる人魚姫が力尽き倒れ伏すと、そこに赤城が現れた。
それも、あの時、人魚姫がエスコート役として選んだスーツ姿で。
きっと赤城が来てくれると信じていた人魚姫に、赤城はワルツを申し込む。
一夜限りのワルツの途中、赤城はデンジ姫の話を話す。
窮屈なお姫様暮らしをしていたが、ベーダーとの戦いに身を投じたことでそれを擲ち、青春の全てを犠牲にして戦い抜いた気高いデンジ姫の運命の物語を通し、赤城は人間には一人ひとり、持って生まれた運命があることを話す。そして、自分たちには電子戦隊として戦う運命があることも。
傷が痛む中、赤城はデンジマンとして戦う中、一時の安らぎであるこの時を大事にしようと、朝まで踊るように人魚姫に促す。人魚姫はその言葉に、「朝まで」踊ることを承諾する。
そして、朝が来れば、それぞれの運命を生きるあるべき場所に別れることも…。
翌朝。デンジマンは、人魚姫を海へと送っていた。
だがそこに、ボートラーたちベーダー一族が待ち構えていた。
デンジレッドは、人魚族をも戦いに巻き込もうとするベーダー一族に激昂する。
「海の底にまで、血の匂いを持ち込むことは許さん!見よ!電子戦隊!デンジマン!!」
高らかに名乗りを上げ、静かな海の底で平和に暮らす人魚族を守る戦いが始まった。
デンジレッドの真空蹴りを、スクリュー返しで跳ね返すボートラー。
人魚姫は笛を吹き、念力で地震を起こしてボートラーの動きを食い止める。
人魚姫を追いかけようとしたボートラーに、デンジレッドのデンジダブルパンチが炸裂。
デンジマンはさらに電子稲妻落としを決め、ボートラーを打ち破った。
だが、ボートラーは巨大化し、デンジマンもデンジタイガーを呼んでダイデンジンを発進させる。
ボートラーはオール型の武器や、ボート爆弾を飛ばして攻撃する。
ダイデンジンは「デンジボート爆弾返し」という、あまりにも跳ね返す対象がピンポイント過ぎる技でボート爆弾を跳ね返すと、電子満月斬りでボートラーを倒すのだった
戦いが終わり、電子戦隊が海岸に向かうと、そこには真珠で書かれた「サヨナラ」の文字が残されていた。赤城は、己の運命を受け入れて生きることを決めた人魚姫に、別れを告げる。
そして、打ち寄せる波が「サヨナラ」の文字を描く真珠を攫っていくのだった。
人魚姫は、きっと立派なお姫様になって、海の平和を守り続けるだろう。
地上の平和を守るのは、デンジマンの運命。
いつの日か、地球に平和が蘇る日を信じて、デンジマンは今日も戦う!
自由を求めて地上に出てきた人魚姫に、同じく窮屈なお姫様暮らしを行いながら、ベーダーとの戦いの運命を受け入れ、自分の青春の全てを犠牲にして戦ったデンジ姫の生き方を話すことで、人間にはそれぞれ持って生まれた運命があり、その運命を果たすために生きるべき場所があることを諭す赤城の説得が胸を打つエピソード。
そして、デンジマンとして戦う運命がありながら、ほんのひと時の安らぎのワルツを踊る今を大事にしようとする赤城の言葉を受けた人魚姫が、この地上での赤城との出会いをひと時の安らぎだと受け入れ、自分の運命を果たすべく海へ戻る決意をするドラマが情感たっぷりに演出されている。
人魚姫が最後に残した真珠の「サヨナラ」が波に攫われ消えるシーンは、それぞれの運命を果たすべく別れを告げた赤城と人魚姫の別離の切なさを見事に演出した名シーンだった。