あらすじ
看護婦・雪絵に化けたネオショッカーの怪人・キノコジンは、その胞子で洋を襲う。
そして同時に少女・久美子の目を傷つける。
一方、身に覚えのない雪絵はあらぬ疑いをかけられ、悲しみの淵に沈んでしまう。
幻覚を見せるキノコ怪人 もう一人の自分が暗躍する恐怖!
今回のネオショッカーの怪人は、キノコの改造人間であるキノコジン。
一度入った人間は生きて帰れないと伝説に謳われる悪魔峠で、300年にわたり繁殖した毒キノコを基に作られた、ゼネラルモンスターをして、最強の改造人間と謳われる改造人間だ。
幻覚を見せる胞子を最大の武器にしており、その胞子は改造人間の感覚すら狂わせてしまう。
人間が生きて帰れないという伝説をネオショッカーの仕業と疑い悪魔峠を調べていた洋を抹殺することを目論んだキノコジンは、看護師の三田雪絵に化けて洋に近づくことを計画。
そして、雪絵の姿になったキノコジンは、足を病んで入院中だった少女・久美子の見舞いに訪れた洋を抹殺すべく暗躍し、それに巻き込まれた久美子は目を負傷してしまう。
そこに戻ってきた本物の雪絵は、久美子の負傷が自分のせいだと周囲に誤解されてしまうのだった。だが、久美子は自分を襲った偽物の雪絵の手が冷たいことを感じ取っていた。
そして、本物の雪絵の手は、その優しい心のように温かいことも。
仮面ライダーは雪絵の無実を信じる久美子のために、雪絵に化けたキノコジンの企てを暴き、雪絵の無実を証明してキノコジンを倒すことが出来るのか。
古くから、悪魔が住むと言い伝えられている悪魔峠。
林の中に迷い込んだ者は、誰一人として生きて帰った者はいないという。
仮面ライダーは、その悪魔峠の伝説にネオショッカーが関与していると疑い、セイリング・ジャンプで上空から悪魔峠を探っていた。そして、その予感は当たっていた。
ネオショッカーは悪魔峠で300年にわたり驚異的な生命力で繁殖した毒キノコを基に改造人間を生み出そうとしていたのである。改造手術台で、また一人新たな改造人間が生まれた。
ゼネラルモンスターをして最強の改造人間と確信される、キノコジンである。
キノコジンは、捕らえられていた実験用人間でその魔力をテストする。
口から放たれた胞子の霧を浴びた人間は、肌が爛れて絶命した。
キノコジンは筑波洋を抹殺すべく、人間を利用することを思い立った。
悪魔峠の近くを車で通りかかった看護師・雪絵は、深い霧で立ち往生する。
すると、霧の中から目を怪しく光らせ、キノコジンが現れた。
その恐ろしさに気絶した雪絵の姿をコピーしたキノコジンは、瓜二つのニセ雪絵となる。
そこに駆けつけた洋は気絶した雪絵に声を掛け、雪絵の話から悪魔峠になにかあると確信する。
その頃、悪魔峠の近くの病院では、足を病んで入院中の少女、久美子をみどりとその弟の茂が見舞いに来ていた。そこに、久美子の担当看護師だった雪絵と、みどりと同じく見舞いに来た洋が現れる。だが、雪絵は鋭い目で洋を見つめる。そう、この雪絵はニセ雪絵なのだ。
洋は雪絵を伴い、久美子を車椅子で散歩に連れ出していた。
ふと、雪絵の手を握った久美子は、雪絵の手がいつもと異なり冷たいことに気づく。
それは、雪絵がキノコジンである証明だった。
ニセ雪絵は洋の隙を突き、洋に毒の胞子の霧を浴びせかける。
洋の身体が痺れて車椅子を離してしまい、コントロールを失った車椅子は久美子を乗せたまま階段を落下した。車椅子は久美子を乗せたまま完全に階段を縦回転しながら落下しており、正直首がへし折れていてもおかしくない、何がどうあっても無事では済まない落ち方をしている…。
そこに通りかかった志度博士によって、洋は助けられ、久美子もまた、緊急手術を行われ、なんとか一命を取り留める。だが、久美子の目は視力を奪われていた。
とても目が見えなくなる程度では済まない落ち方だった気はする…。
そこに、本物の雪絵が現れる。雪絵は、久美子が重症を負ったことを悲しんでいた。
一方、アジトに戻ったキノコジンは、なおも洋の抹殺に動こうと目論んでいた。
本物の雪絵は、身に覚えのないことで久美子が重症を負い、その犯人として疑われてしまう。
久美子の父親は、この病院の院長の親友である外交官で、今は仕事で海外に滞在している。
自分の留守中、親友の病院に娘を預けたにも関わらず、その信頼を裏切ってしまったのだった。
雪絵は必死に自分の潔白を訴えるが、どうすれば信じてもらえるかわからなかった。
だがそこに、久美子が雪絵を弁護する。
自分が発熱した際、毎日のように不眠不休で看病をした雪絵のことを、久美子は信じていた。
そして、雪絵の手を取った久美子は、その温かい手に改めて雪絵を信じることを誓う。
洋もまた、久美子の想いに応え、雪絵を信じることにしたのだった。
この回でも、洋と子供の交流が描かれ、子供の心を信じる洋の姿が描かれた。
このように、子供の純粋な思いをありのまま受け止めるからこそ、洋は子供に慕われるのだろう。
洋はこの一連の事件の裏に何らかの仕掛けがあることを感じていた。
だがそこに、先程までの様子と打って変わって冷淡な様子の雪絵が声をかけてくる。
そう、これはまたしてもキノコジンが変装したニセ雪絵なのだ。
本物の雪絵が苦悩する中、ニセ雪絵は洋を呼び出し、自分にもう構うなと宣告。
洋がその様子に不可解なものを感じていると、キノコジンが襲撃に現れた。
キノコジンは再び胞子の霧を吐きつける。
洋は変身しようとするが、アリコマンドの群れに変身ポーズを阻まれてしまい変身できない。
その間にも、キノコジンは猛攻を加えてくる。
洋は付近にあった消化器を噴射してキノコジンたちの目を眩ませ、撤退させた。
直接戦えば変身前の洋に及ぶまでもないアリコマンドだが、集団で取り囲み、変身を防ぐ連携を取ることで仮面ライダー対策を行っていることが窺える戦闘シーン。
戦闘員と言えども、決して油断の出来ない相手だ。
洋は病院の付近にネオショッカーが現れたことから、雪絵の事件にネオショッカーが関わっていることを確信した。しかし、どうやって雪絵の身の潔白を証明すれば良いのか。
洋は、久美子が事故を起こす前のニセ雪絵の手が冷たいと言っていたことと、その後、本物の雪絵を弁護した際には本物の雪絵の手が温かいと言っていたことを思い出し、この病院に、手の温度が異なる雪絵が二人いる可能性に思い至るのだった。
飛田今太はぎっくり腰で病院に来ていた。腰を抜かしてばかりいるせいらしい。
受付で雪絵に見送られた飛田今太は、その後、もう一人のニセ雪絵とすれ違うのだった。
今回はまだドラマパートに関わった出番だった。
ニセ雪絵は久美子の病室に入り込むと、久美子に怪しい薬を手渡し、洋に飲ませるように告げる。
ニセ雪絵が監視する中、洋は久美子の病室を訪ねた。
久美子は目が見えなくても、洋の気配はすぐにわかるようだった。
久美子はニセ雪絵に渡された薬を洋に渡し、洋はそれを飲んで苦しみ始める。
その様子を見ていたニセ雪絵は、倒れた洋の死を確認すべく病室に入った。
だがそこに、久美子の姿はない。これは、ニセ雪絵を誘き出さんとする洋の策だった。
そこに本物の雪絵と院長が現れ、雪絵の潔白は証明された。
トリックを暴かれたニセ雪絵は、キノコジンの正体を現し、窓から逃亡する。
姿を隠したキノコジンは直接現れずに、物陰から胞子の霧を噴射し続ける。
キノコジンを追う洋はそれを無防備に吸い込み続けてしまった。
キノコジンの胞子の霧を吸い込み続けてしまえば、改造人間である洋も幻覚を抱くようになってしまい、やがて神経を犯されて自分の命を絶ってしまうのだという。
幻覚によって、志度ハングライダークラブの仲間が自分を呼ぶ声に誘われる洋は、そのまま海の中へと入っていってしまう。このまま、洋を入水自殺させるのがキノコジンの狙いだった。
やがて、洋の身体は海中に没した。
だが、それによって、洋の身体に付着した胞子が洗い流され、正気に戻った洋は水中で変身する。
仮面ライダーが水中でも変身できることが、キノコジンの計算違いだったのだ。
仮面ライダーとキノコジンの最終決戦が始まった。
キノコジンは壁に溶け込んで姿を隠すが、仮面ライダーは壁にライダーブレイクを敢行。
キノコジンが隠れた壁の中へと突入した。追い込まれたキノコジンはプロレス技のラ・ケブラーダを思わせる連続キノコ返しを決めるが、仮面ライダーは反撃のスカイキックを決める。
こうして、キノコジンは倒されるのだった。
久美子の目は無事に回復し、再び雪絵や洋と対面することが出来た。
さらに、足も無事に回復し、外を元気に走ることすら可能になったのだ。
雪絵を信じる想いが悪い怪人に勝ったのである。洋はその心を失くさないように告げる。
久美子はさらに、夢の中で仮面ライダーに会い、手術中に励ましてくれたと話す。
仮面ライダーは、初めは怖かったが、とても優しい人だった。
久美子の回復を見届けた仮面ライダーは、夕陽に赤く染まった大空を翔ける。
ネオショッカーの野望は、仮面ライダーによって砕かれた。
久美子の人を信じる心、その小さな心が仮面ライダーに届いたのだ。
負けるなライダー!輝ける明日の太陽になれ!
キノコジンの、アリコマンドに命じて変身ポーズを妨害させたり、直接対決を避けて洋に胞子を浴びせ、幻覚を見せることで戦わずして始末しようとする狡猾さが印象的だった。
仮面ライダーが水中でも変身できることだけが計算違いだったものの、洋は胞子の影響下にある間は完全に幻覚に囚われており、もしベルトの風車が水中で起動できなければすべてが終わっていたことは想像に難くない。知恵が回るという点では、これまでで最強の改造人間というゼネラルモンスターの評価もそう間違ってはいない強豪怪人だった。
雪絵に化けて暗躍するキノコジンの企てを粉砕するのが、久美子の人を信じる心、人の心の暖かさを手の暖かさを通して感じ取る心にあったというのも美しい展開だ。
キノコジンの工作により雪絵と久美子の間の絆は寸断されるところだったが、雪絵のこれまでの懸命な看護と、それに感謝し、雪絵を信頼する久美子の心がそれを打ち破ったのである。
人の心の暖かさを素直に描いた、王道のヒーロー活劇が見ていて清々しいエピソードだった。