「太陽戦隊サンバルカン」第1話「北極の機械帝国」感想

2024年12月9日月曜日

太陽戦隊サンバルカン 東映特撮YoutubeOfficial

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あらすじ

世界各地で異常現象や大規模な事故が巻き起こり、その背景には機械帝国ブラックマグマの存在があった。事態を重く見た国連は、太陽戦隊サンバルカンの結成を決定。
3人の若者をサンバルカンのメンバーにするが、その情報は既にブラックマグマに流れていた。

陸・海・空の勇者がここに集う!太陽戦隊ここに誕生!

「電子戦隊デンジマン」の成功を受け、「戦隊」の名と、デンジマンが創出した「ゴーグル・ヒーロー」のデザインラインを継承し、「スーパー戦隊シリーズ」という路線を確固たるものとした作品こそ、「太陽戦隊サンバルカン」だ。

「太陽戦隊サンバルカン」は、先祖から受け継がれた運命に導かれた若者が集まり宿命を果たすため戦うドラマチックな展開が魅力だった「デンジマン」から一転、グループ・ヒーロー路線の元祖である「秘密戦隊ゴレンジャー」や「ジャッカー電撃隊」の路線に回帰するように、組織が結成した「戦隊」が悪の組織の陰謀に立ち向かう、スパイ・アクション的な路線を打ち出した。
そして同時に、陸・海・空の勇者が集い、シャープなアクションで目まぐるしく戦うカラフルで賑やかな作風は、「スーパー戦隊シリーズ」のフォーマットを一気に完成させている。

「スーパー戦隊シリーズ」でも数少ない、前年の作品の世界観やキャラクターを一部受け継いだ世界観になっているのも特徴であり、この第1話の段階では語られていないものの、デンジマンがベーダー一族を滅ぼした後の世界を舞台に新たな戦いが繰り広げられることになる。
それは、ヘドリアン女王という、「悪の女王」の頂点に立つ偉大なキャラクターの再登板に伴う仕掛けでもあった。だがこれは、ヘドリアン女王の復活回でまた触れることにしよう。

デンジマンの活躍でベーダー一族が滅び、平和を取り戻した地球だったが、北極に本拠地を置く機械帝国ブラックマグマが台頭したことで、世界は再び混乱の渦に飲み込まれることになった。
火山国である日本の地熱を狙い、日本侵略を開始したブラックマグマの魔手から世界を救うべく、国連は地球平和守備隊を結成、その精鋭を集めた特殊部隊「太陽戦隊サンバルカン」を組織した。
そして、陸・海・空の勇者が招集され、結成された太陽戦隊は極秘裏に訓練を開始した。
しかし、太陽戦隊結成の情報は既に、ブラックマグマが知るところになっていたのである。
ブラックマグマはなぜ、最高機密であるはずの太陽戦隊結成を知っているのか。
果たして太陽戦隊は、ブラックマグマを倒し世界を救えるのか。
明日の世界に太陽の陽を灯すため、太陽戦隊の戦いが始まろうとしている。

「太陽がもしもなかったら」というフレーズがサスペンス感を演出するOPテーマが印象的なオープニング。地球に住まう生命全てを照らし出す太陽の輝きの素晴らしさを謳い、その太陽のように俺たちの魂も燃えていると謳うことで、全ての生命の未来のために戦うヒーローの精神性を謳った歌詞は、ヒーローソングを一段と進化させたと言っても過言ではない。

グリーンランドと、エルズミア島の沖合に永久凍土がある。
ところがこの1年、北極海の大流氷群が北太平洋にまで南下し始めたのだ。
地球平和守備隊の原子力潜水艦が、調査のために北極海に赴いた。
それを感知した、永久凍土の奥深くに要塞を建設していた機械帝国ブラックマグマは、その要塞である「鉄の爪」を浮上させ、原子力潜水艦を沈没させた。
その知らせを受けた捜索機も機械帝国ブラックマグマによって撃墜される。
その指示を出していたのは、ブラックマグマのリーダーであるヘルサターン総統だ。
ヘルサターン総統の黒尽くめのヘルメットの姿は、映画「スター・ウォーズ」のダース・ベイダーを想起させる、まさに悪の権化にふさわしいデザインワークとなっている。

やがて、世界各地を異常気象が襲った。海底火山の爆発で、津波が押し寄せる。
国連平和機構はサミットを招集し、細菌続発する怪事件を協議した。
そこに、ヘルサターン総統からのメッセージが届く。それはまさに、世界への宣戦布告だった。
機械帝国ブラックマグマの宣戦布告に、サミットはブラックマグマと戦うための、地球平和守備隊の精鋭部隊、太陽戦隊サンバルカンの結成を満場一致で決議した。
サンバルカン結成までの経緯をスピード感溢れる演出で見せる冒頭のシークエンスは、そのスピード感が機械帝国ブラックマグマの脅威をサスペンスフルに演出している。

元・地球平和守備隊の空軍将校、大鷲龍介を謎の怪人物が襲った。
投げナイフや火薬玉を駆使して大鷲を狙った怪人物は、大鷲の反撃を受け撤退する。
大鷲が怪人物の正体を訝しんでいると、そこに招集指令を告げる通信が入った。
その通信を受信したブレスレットには、鷲のレリーフが刻まれていた。

同じ頃、元・地球平和守備隊のレンジャー部隊将校、豹朝夫も同じ怪人物に狙われる。
食事をする豹の近くにいた子供が持っていた風船の内部に、時限爆弾が仕掛けられていたのだ。
そして、豹にも招集指令を告げる通信が入った。そのブレスには、豹のレリーフが刻まれている。

元・地球平和守備隊の海軍将校、鮫島欣也は、港でギターを爪弾いていた。
そこに、海底から銛が放たれ、さらにウェットスーツに身を包んだ刺客が現れる。
鮫島は刺客の腕を切断し、なんとか刺客を撃退した。
その刺客の腕の断面からは機械部品が覗いており、刺客の正体はアンドロイドだったことが判明する。そしてその様子を、大鷲や豹を襲った怪人物が監視していた。
鮫島にもまた、招集指令を告げる通信が入る。そのブレスに刻まれたレリーフは、鮫だ。

スナックサファリでは、スナックのマスターが店先で子供たちとベーゴマで遊んでいた。
店を訪れていた豹は、マスターが作るカレーに夢中になっていた。
そこに大鷲も現れる。ブレスからの指令では、このスナックが集合場所だったのだ。
そして、そんな大鷲を、先程の怪人物がまたも尾行していた。
大鷲が店に入ると、カレーに夢中になった豹が腹ごなしに腕立て伏せをしておかわりを要求するものの、米びつは既に空っぽ。おかわりが打ち止めになった豹は「ひょひょ~」と落胆する。
そして、既に店に集合していた鮫島は1人ギターを爪弾いていた。

大鷲はマスターに、鷲のレリーフを見せる。すると、マスターはレリーフをセットする装置を取り出した。鮫島と豹も、それぞれレリーフをセットする。
装置が示す方向ヘ向かい、大鷲たちは店の奥に隠されていたエレベーターに乗り込んだ。
エレベーターの先のリフトに乗り、基地へと移動していく3人。
スナックに隠された秘密基地へ移動していくシーンは、否応なくワクワクさせられる。
「秘密戦隊ゴレンジャー」のゴレンジャー基地が、スナックゴンの地下にあったことのオマージュとなるシーンでもあり、秘密組織の特殊部隊であるリアリティーある演出だ。

大鷲龍介、25歳。国連平和機構、地球平和守備隊の空軍将校である。
大鷲の操縦技術は、空軍でもNo.1。まさに、空を飛ぶために生まれてきたような男である。
鮫島欣也、23歳。地球平和守備隊の海軍将校である。
鮫島は海洋学者でもあり、最近の潮流の異変を、いち早く突き止めていた。
豹朝夫、19歳。地球平和守備隊のレンジャー部隊に所属。
豹は、どんな絶壁でも軽々と上り下り出来る、まるで豹のような俊敏な運動神経を持っている。

リフトを降り、地球平和守備隊の基地内に到着した大鷲たち3人。
その先には、地底にプールが有り、美女がそこで泳いでいた。
嵐山美佐と名乗るその女性に、豹はすっかり夢中となって窘められる。
美佐の案内で、基地内の長官室に通された3人を待っていたのは、スナックのマスターだった。
マスターの正体は、太陽戦隊サンバルカンの長官である嵐山大三郎だったのである。
このあたりも、「ゴレンジャー」の江戸川総司令をオマージュした設定だ。
嵐山長官を演じるのは、「怪奇大作戦」や「帰ってきたウルトラマン」、「ファイヤーマン」で特撮ファンにはお馴染みの名優・岸田森氏。
子供たちや動物たちといった守るべきものへの限りなき優しさと、敵対者への苛烈さを併せ持つ、地球防衛を担う長官としての姿を確かな演技力で演じきっている。

嵐山長官は、大鷲たち三人を太陽戦隊サンバルカンに任命し、世界各地に怪現象を起こしていると目される、機械帝国ブラックマグマと戦う任務を与える。
こともなげに海底火山を爆発させ、津波を引き起こす機械帝国ブラックマグマの科学力はまさに脅威だった。豹が強敵に発奮し腕立て伏せを始めると、そこに美佐のペットである犬、シーシーが現れた。シーシーは、美佐に言葉を教えられて日本語を話すことが出来るのだという。
犬が苦手な豹は、すっかりたじろいでしまうのだった。
名前からしてアイシーの後継キャラクターであるシーシーだが、アイシーと違って組織の中心メンバーとまでは設定されていない。言葉を話せるのも、実はサイボーグ犬だかららしい。

嵐山長官は、ブラックマグマに対抗する巨大ロボ・サンバルカンロボの合体訓練を命ずる。
そして、大鷲たちにバル強化服を与えた。大鷲たちは、バル強化服を身に纏う。
大鷲は空の勇者、バルイーグルに。
鮫島は海の勇者、バルシャークに。
豹は大地の勇者、バルパンサーに。
ここに、陸・海・空に優れた3人の勇者、太陽戦隊サンバルカンが結成された。
嵐山長官はさらに、大型空母ジャガーバルカンと、そこに内蔵されたメカ・コズモバルカンとブルバルカンの存在を伝え、バルイーグルにコズモバルカンを、バルシャークとバルパンサーにブルバルカンの操縦を命ずるのだった。コズモバルカンとブルバルカンが合体し、巨大ロボとなるのだ。

機械帝国ブラックマグマの本部は、北極海の氷の奥深くにあり、鉄壁を誇っていた。
ヘルサターン総統のもとに、太陽戦隊を尾行していた怪人物が帰還する。
その名はゼロワン。スパイ活動を行う、女性型のメカ人間の1人だった。
ゼロワンは、地球平和守備隊の中に入り込んでいるというスパイ、ダークQから得た太陽戦隊の訓練の模様をヘルサターン総統に伝える。
ヘルサターン総統はサンバルカンロボの戦力を警戒し、まだ訓練が完了していないうちに捻り潰すことを画策。ゼロワンたちゼロガールズに、機械生命体を誕生させた。

機械生命体は、ブラックマグマ基地内の装置で、機械元素体と動植物の生命を合成して作られるブラックマグマの尖兵である。今ここに、機械生命体第1号、ジムシモンガーが誕生した。
ヘルサターン総統は太陽戦隊を誘き出すため、ジムシモンガーに地球平和守備隊の基地攻撃を命令し、ジムシモンガー率いるブラックマグマの軍団の攻撃が始まった。

警備を突破し、基地に突入したジムシモンガーたち。
だがそこに、太陽戦隊の3人が立ちはだかった。
「輝け!太陽戦隊!サン!バルカン!!」
各々がモチーフとする動物の特徴を取り入れた名乗りポーズがド派手かつカッコいい。
個々のキャラクター性を強めた名乗りは、それぞれが陸・海・空に秀でているというわかりやすさもあって、サンバルカン3人の特徴を強く印象付けている。

バルイーグルは空を翔け、ブラックマグマの機械兵士・マシンマンに突撃。
バルシャークは太陽ジャンプで水面より現れる鮫のように飛び跳ねる。
バルパンサーは大地を駆け、壁を蹴って宙返りする機敏な動きを見せた。
さらに、バルイーグルのイーグルウイングからの太陽パンチが。
バルシャークのシャークジョーズが、マシンマンの内部メカを次々に粉砕した。

ジムシモンガーは陸上戦車型のジムシータンクに変形しサンバルカンに突撃する。
だが、サンバルカンは3人同時の太陽キックで反撃。
続く攻撃も太陽ジャンプで回避すると、必殺のバルカンボールを繰り出した。
バルイーグルがバルカンボールをキックサーブし、バルパンサーがレシーブ、バルシャークがさらにそれをトスする。そして、肩を組んだバルシャークとバルパンサーを踏み台にし、高く飛翔したバルイーグルが、バルカンボールをスパイクした。
バルカンボールはジムシモンガーに直撃し、ジムシモンガーは大ダメージを負う。
3人の連携で放たれるバルカンボールは、ゴレンジャーハリケーンを思わせる技。
チーム全員で力を合わせて放つ技というのは、グループ・ヒーローならではだ。

ジムシモンガーは内部メカを起動させ、巨大化システムで巨大化した。
サンバルカンもまた、ジャガーバルカンの発進を要請する。
地下より獣の顔を持つ、巨大母艦ジャガーバルカンが発進し、戦場に降り立った。
名挿入歌「ファイト!サンバルカンロボ」のアレンジBGMが流れており、第1話の段階で既に挿入歌の制作が決定していたことが窺える。
サンバルカンはジャガーバルカン二内蔵されたコズモバルカンとブルバルカンに乗り込む。
そして、ジャガーバルカンのミサイルでジムシモンガーを足止めしている間に、コズモバルカンとブルバルカンを発進させた。2つのメカが母艦の内部に収まっている美しさが見事過ぎる。

直立型タンク・ブルバルカンは、全身から俺はロボットの足になるぜ!!という意気込みを感じるメカ。クレーンやアンカーを出し、ジムシモンガーと格闘戦を演じている。
さらに、コズモバルカンも空中からジムシモンガーを攻撃した。
そしてついに、サンバルカンはコズモバルカンとブルバルカンを合体させる。
デルタ型戦闘機・コズモバルカンの三角形の機体が降りたたまり、四角いロボットの上半身になる変形はいつ見ても美しく、メカニズムの魅力に溢れたシーンだ。
「チェンジ!サンバルカンロボ!」

ついに完成したサンバルカンロボは、巨大な盾・バルシールドと、巨大なトンファーであるバルトンファを装備。ジムシモンガーの武器を、バルシールドを回転させ破壊する。
ジムシモンガーは再びジムシータンクになって突撃するが、サンバルカンロボは空へ逃げてそれを回避し、鎖がついたマジックハンド、バルハンドでジムシモンガーを投げ飛ばした。
そして、必殺の一撃を叩き込む。
「太陽剣!オーロラプラズマ返し!」
バルイーグル、バルシャーク、バルパンサーの三人が技名を復唱、さらにサンバルカンロボも技名を叫ぶと同時に、太陽剣がサンバルカンロボの額から出現。
太陽剣はオーロラの輝きを纏い、ジムシモンガーを一刀両断した。
こうして、太陽戦隊とブラックマグマとの初戦は、太陽戦隊の勝利に終わったのだ。

基地に帰還したサンバルカンを、嵐山長官たちは労う。
だが、嵐山長官は、この中にスパイがいると宣言した。
ブラックマグマは明らかにサンバルカンロボを狙っていた。太陽戦隊が結成され、サンバルカンロボの合体訓練が行われているという情報を漏らした者がいる。
それは、嵐山長官の傍にいた助手だった。
美佐が透視光線を浴びせると、助手の体の内臓メカが顕になった。
助手の正体は、機械帝国ブラックマグマが作り出したスパイ、アンドロイドのダークQだったのだ。正体が露見した以上、自爆して基地を吹き飛ばそうとするダークQだったが、嵐山長官は基地の防衛システムを作動させ、ダークQを基地の外へ排除する。
ヘルサターン総統は、目論見が外れたことを悔やむのだった。
戦いが終わったのもつかの間、1話から組織にスパイが入り込んでいたというサスペンスが緊張感ある展開。ゼロワンたちゼロガールズや、ダークQといったスパイを送り込むブラックマグマとの戦いを通し、スパイ・アクション的な要素も強く強調されているのも、「ゴレンジャー」へと回帰した作劇といえるだろう。

嵐山長官は、太陽戦隊の面々を基地の上部にあるサファリパークへ案内する。
平和とは、動物が安心しての山を駆け巡られる環境のことをいう。
動物たちの命を奪う機械帝国ブラックマグマに、嵐山長官は怒りを燃やしていた。
太陽戦隊もまた、その使命に命をかける決意を固める。
だが、豹だけはやってきたシーシーに驚き、カッコいいまま終われずにいた。

ブラックマグマのヘルサターン総統は、火山エネルギーの多い日本を、機械帝国の基地にしようと狙っている。そして、地上の命あるもの全てを抹殺しようとしている。
戦え!太陽戦隊!サンバルカンロボ、発進せよ!

エンディングテーマの「若さはプラズマ」も、友情の素晴らしさを爽やかに謳った名曲。
1人より2人、2人より3人。多くの力を合わせる意義や強さを謳った歌詞は、グループ・ヒーローのテーマ性を的確に捉えた不朽の名曲である。

スピーディな展開で太陽戦隊の結成とブラックマグマの脅威をサスペンスフルに描いた、スリリングかつ目まぐるしい展開が見応え抜群の第1話。
スパイを地球平和守備隊の中枢にまで入りこませ、太陽戦隊という脅威の誕生を察知し、早期に壊滅させることを狙うブラックマグマの恐ろしさと、それに立ち向かう太陽戦隊の活躍をテンポ良く描き、太陽戦隊とブラックマグマの攻防をスリリングに描いている。
なんとかジムシモンガーを倒したのも束の間、基地の中にスパイが入り込んでいることが発覚する油断のならない展開は、ブラックマグマの恐ろしさを強烈に印象付けたと言えるだろう。
こうして、地球を照らす太陽のように熱き闘志を抱いた、太陽戦隊の戦いが始まった。

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