あらすじ
ネオショッカーの大幹部・魔神提督が南米から日本にやってきた。
彼は怪人・シビレイジンの体内に秘められた100万ボルトの電流を発電所に流し、東京中の電気器具から火を吹かせて大火災を発生させようとしていた。
新たな大幹部・魔神提督の挑戦!電撃怪人を打ち倒せ!
前回、仮面ライダーに敗北したゼネラルモンスターを用済みとして始末した、新たなるネオショッカーの大幹部・魔神提督が初登場となるエピソード。
ショッカーの大幹部・地獄大使のオマージュキャラクターであろう彼は、ネオショッカー南米支部で多くの功績を上げ、その実績を買われ仮面ライダー抹殺のため日本支部に招聘された実力者だ。
冷酷非情たる彼は、ゼネラルモンスターのように役立たずと見做した存在を容赦なく処刑していき、それは仮面ライダー抹殺に失敗したプロフェッサー・ドクも例外ではなかった。
そして、仮面ライダーに度重なる敗北を喫したネオショッカー日本支部の改造人間たちの不甲斐なさから、ネオショッカー海外支部で成果を上げた改造人間を次々に招聘する戦略を取る。
今回の怪人であるシビレイジンも、そんな海外支部で成果を上げた改造人間だ。
シビレエイの特性を持つシビレイジンは、南米・リオデジャネイロで成果を上げた改造人間。
全身から100万ボルトの高圧電流を放っており、身体に触れた者を感電させ、その電気の力で仮面ライダーの必殺技・スカイキックすら無効化してしまう。
さらに、武器の鞭であるシビレイムチを敵の身体に巻き付け電流を流して攻撃するほか、電線にシビレイムチを巻き付け、身体そのものを電気に変えることで電線を通って移動することすら可能とする電送改造人間なのだ。仮面ライダーも、その電気の力の前には苦戦を免れない。
さらに、前回退場したみどりとユミに代わり、ブランカのアルバイトとして2人の女性レギュラーキャストが加入。合気道を得意とする伊藤ナオコと、バトントワリングを特技とする小沢アキだ。
「仮面ライダー」のライダーガールズを思わせる、一芸を身に着けたレギュラーキャストの加入で、番組当初からレギュラーキャストをほぼ一新した「仮面ライダー (新) (スカイライダー)」。
このエピソードから、仮面ライダーの新たなる戦いが始まるのだ。
ネオショッカー日本支部に着任した新大幹部・魔神提督。
彼は、南米大陸のネオショッカー大幹部であり、悪魔のような頭脳で数々の作戦を立案、世界各地を転戦し、全世界のネオショッカーの中で、No.1の実績を挙げていた。
その功績を見込まれ、作戦が進行していない日本支部に招聘された魔神提督が最初に行った組織改革は、ゴキブリジン、そしてヤモリジンを改造しながら仮面ライダーのデータを見誤り敗北を喫したプロフェッサー・ドクの処刑だった。
ネオショッカー内の裁判官にあたる白装束の男たちがプロフェッサー・ドクの死刑に賛成する中、1人の男は口ごもる。だが、魔神提督はその男をも処刑してしまった。
結局、プロフェッサー・ドクの死刑は決定する。
「お待ち下さい魔神提督!この私が、いったい何をしたというのですか!死刑とはあんまりだ!」
「聞かせてやろう…お前は無能じゃ!ワシは無能が嫌いじゃ…!」
命乞いをするプロフェッサー・ドクの処刑のため、シビレイジンが呼び出された。
シビレイジンは魔神提督の「電気椅子」による処刑に応じると、膝を曲げて椅子のような態勢になる。プロフェッサー・ドクはそこに腰掛けさせられ、シビレイジンの体に流れる100万ボルトの高圧電流によって跡形もなく消滅させられてしまった。
シビレイジンの電気椅子処刑シーンは、電気椅子になる怪人という点では、「ロボット刑事」の名バドーロボット・コシカケマンを思わせる。
シビレイジンはそのまま、自分の100万ボルトの高圧電流を発電所の電力に加え、東京重を電気攻めにする計画を立案した。シビレイジンの持つ高圧電流の前では、ヒューズやブレーカーも役には立たず、東京中の電気器具が発火してしまう。
魔神提督はこの作戦で、東京中を火の海に変えてしまおうと目論んでいた。
発電所で働く技術者、三田は、妻と娘と家族団らん、平和な日々を過ごしていた。
だが、そこにシビレイジンの影が密かに忍び寄る。シビレイジンは三田の家の周辺の鉄塔に通る電線にシビレイムチを絡みつかせると、身体を電気分解し、電線を通って三田の家へと向かった。その目的は、三田の家に保管されている発電所の配電図である。
身体を電気分解したシビレイジンが電線を通り移動する描写は赤い光が走る合成で表現され、なんだか格好良い。「電光超人グリッドマン」でパサルートを通るグリッドマンの描写っぽくもある。
三田の家の家電製品が異常な反応を見せる中、シビレイジンが姿を現した。
そして、金庫から発電所の配電図を盗み出すと、再び電線を通って姿を消す。
配電図が盗まれたことを知った三田は、偶然通りかかった洋に事情を説明する。
その頃、ブランカでは、谷がアルバイトの面接に来た2人の女子大生を迎えていた。
2人も雇う余裕がないと渋る谷に、ナオコとアキという2人は、2人で1人前の給料でいいからと調子の良いことを話し、なしくずし的にアルバイトの座に収まる。
なんでも、ナオコは合気道が、アキはバトントワリングが得意らしい。
特技として一芸を備えているあたりが、伝統的なライダーガールズらしさか。
そこに洋からの電話が鳴り、谷も電気の怪人が出たことを知る。
三田は、配電図を盗まれたことを心配し、発電所の様子を見に行こうとした。
洋は、相手はネオショッカーであり、危険だと訴えるが、三田も技術者としての責任を感じており、自分の作った発電所を守りたい気持ちを訴える。
その言葉に心を打たれた洋は、三田の娘に父を守ることを約束し、共に発電所へ向かった。
こういう細かい部分で子供との交流が描かれているあたり、筑波洋の子供たちにとっての良き兄貴分としてのキャラクター描写が徹底していることが窺える。
発電所へ向かう洋と三田は、発電所へ通っている電線に赤い光が走るのを目撃する。
洋がその光を追うと、待ち伏せしていたアリコマンド部隊が現れた。
そのアリコマンド部隊は、腕に電極を備えており、洋の身体すら感電させる。
三田は洋がアリコマンドを引き付けている間に、発電所へ急行した。
やがて、電線から火花が飛び散り、シビレイジンが姿を現した。
「待っていたぞ筑波洋。南米はリオ・デ・ジャネイロから現れたシビレイジンだ!どうだ、電気で痺れて、変身も出来まいが!仮面ライダーに変身できぬお前は、俺のパワーの10分の1もない!」
シビレイジンはシビレイムチで洋の身体を絡め取り、高圧電流を流して感電させる。
勝利を確信したシビレイジンは、発電所に自分の電流を加えて東京中に超高圧電流を流し、一面を火の海に変える計画を話す。だがそこに、谷がジープで突っ込んで洋を救出した。
ジープに飛び乗った洋は、車上で変身する。
変身した仮面ライダーだが、シビレイジンの体には常に高圧電流が流れており、仮面ライダーが打撃を加える度に、逆に感電してダメージを負ってしまう。
「仮面ライダー、恐るるに足らずだ!」
シビレイジンはさらに電極アリコマンド部隊を向かわせ、仮面ライダーを感電させる。
仮面ライダーはなんとか電極アリコマンド部隊を蹴散らすものの、シビレイジンは倒れた電極アリコマンド部隊に自らの電気を分け与え充電、復活させる。
倒しても蘇り、自らを感電させてくる電極アリコマンド部隊をなんとか躱した仮面ライダーだが、シビレイジンの内蔵する高圧電流によって、勝機を見いだせずにいた。
そして、ついにスカイキックすらも電気の力で無力化されてしまう。
だが、シビレイジンは突如再び身体を電気分解して電線の中へと姿を消した。
仮面ライダーは発電所にシビレイジンの高圧電流が加わった際の地獄絵図を想像し、なんとしてもシビレイジンの作戦を阻止すべく、シビレイジンを追う。
その頃、ブランカではなんだかよくわからないがナオコとアキ、茂が電気の実験をしていた。
姉が退場したにも関わらず、茂は貴重な子役レギュラーキャストとして番組に残留した。
一方、シビレイジンを発見したかに思えた洋は、逆にシビレイジンの待ち伏せを受け、シビレイムチで身体を絡め取られてしまう。有利な状況にもかかわらず突然撤退したのは、自分に有利な場所で洋を待ち伏せするための罠だったのだ。
シビレイジンはシビレイムチに流す電流を徐々に上げていき、洋を焼き殺そうとする。
ついに、洋は意識を失ってしまい、アリコマンドに連行された。
シビレイジンはアリコマンドに命じて洋を井戸の中に投げ捨てると、さらに井戸の中に岩を投げ入れさせ、洋の身体を完全に埋もれさせようとする。
ついに井戸は一杯になり、洋は完全に身動きを封じられてしまうのだった。
ついに、シビレイジンは電線を通って発電所内に姿を現した。
三田も発電所に到着し、多くの同僚が犠牲となった惨状に言葉を失う。
制御盤に辿り着いたシビレイジンだが、扉を開く鍵が開かずにいた。
高圧電流で鍵を溶かしてしまえば、制御盤まで巻き添えを食って使用不能になる。
だが、三田を見つけたシビレイジンは、鍵を渡すように脅迫。
三田は決然とそれを拒絶するが、シビレイジンは業を煮やしてシビレイムチから電流を流す。
その悲鳴を聞きつけた洋は、懸命に井戸からの脱出を試みるのだった。
ブランカに戻った谷は、ナオコたちの電気の実験を見る。
水がアースの働きをして電気を無効化する様子を見た谷は、シビレイジン対策を思いつく。
一方、三田は懸命にシビレイジンの拷問に耐え続けていた。
だが、シビレイジンは徐々に電圧を上げていく。
しかしそこに、脱出した仮面ライダーが駆けつけた。
シビレイジンに「どうやって出てきた!?」と尋ねられる仮面ライダーだが、無視。
ある種、ストロンガーの「そんなこと俺が知るか」なみに理屈抜きの展開だ。
三田の頑張りを称えた仮面ライダーは、その頑張りに応えてシビレイジンを倒す闘志を燃やす。
電線を通って逃げていくシビレイジンを追って、仮面ライダーはスカイターボを飛ばす。
スカイターボジャンプで電線を切断し、シビレイジンを引きずり出した仮面ライダー。
さらに、電極アリコマンド部隊の猛攻も躱していくが、倒しても倒してもシビレイジンの充電によって復活する電極アリコマンド部隊に苦戦を強いられる。
それでもなんとか電極アリコマンド部隊を沈黙させた仮面ライダーは、駆けつけた谷から手渡された電極をシビレイジンの体に逆に絡めつかせ、アースで地面へと流す。
体内に蓄えた電気を急速に失ったシビレイジンに、逆襲していく仮面ライダー。
そして、弱ったシビレイジンに、スカイキックを叩き込むのだった。
「魔神提督…シビレイジン…もう…駄目だぁ~!」
魔神提督は、シビレイジンの不甲斐なさに憤っていた。
だが、シビレイジンの敗北すらも、魔神提督は見越して次の作戦を開始していたのである。
なんと、いつの間にかスカイターボに強力時限爆弾が仕掛けられていたのだ。
魔神提督の作戦を、仮面ライダーはまだ気づいていない。
危うし、仮面ライダー。この危機を、どうするのだ!
新たなる大幹部・魔神提督の登場に合わせ、これまでネオショッカー日本支部で改造人間を開発していた(のであろう)プロフェッサー・ドクの処刑、そして海外で功績を上げている改造人間たちが招聘されるというスケールの大きな展開を見せ始めたエピソード。
初代「仮面ライダー」でのサボテグロンにあたる存在とも言える今回のシビレイジンは、冒頭のプロフェッサー・ドクの電気椅子処刑で多大なインパクトを演出するだけでなく、身体から放つ高圧電流をそのまま武器にするのはもちろん、電極アリコマンド部隊を充電で復活させ、自らの身体を電気分解して電線を移動すると、およそ電気で連想する能力の全てを余すところなく見せつけ、仮面ライダーすら感電させて攻撃を無効化する強敵ぶりを見せてくれた。
そして、電気の弱点たるアースで敗北するあたりも、電気を武器にする怪人として非情に美しい。
そして、ここまで強敵だったシビレイジンを倒してなお、魔神提督はさらなる罠を仕掛けていたというサスペンスで、次回への引きを強く演出しているのも見事。
幾多の作戦を立案、成功させてきたという、魔神提督の智謀遠慮も見事に演出されている。
果たして仮面ライダーは、この危機を脱することが出来るのか。
海外までそのスケールを広げ始めたネオショッカーとの戦いは、ますます激化していく。