「仮面ライダー (新) (スカイライダー)」第25話「重いぞ!重いぞ!! 50トンの赤ちゃん」感想

2025年1月21日火曜日

仮面ライダー (新) (スカイライダー) 東映特撮YoutubeOfficial

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あらすじ

ある日、洋は産気づいた妊婦を病院へ連れていく。
だが、分娩が終わると母親が姿を消してしまう。残された手紙には、ある事情で洋に子供を預けて姿を消すと書かれていた。その裏にはネオショッカーの影があり…。

優しさを踏みにじる策謀 絆を呼び覚ますハーモニカの音色

今回のネオショッカーの怪人は、ゾウガメの特性を持つゾウガメロン。
バミューダ海域の秘密基地から日本に招聘された怪人であり、その重量を活かした「必殺岩石落とし」を武器にするゾウガメロンは、筑波洋の子供への優しさを蹂躙する作戦を遂行した。

ゾウガメロンは、人間の女性、エルザに自分のゾウガメの特性を受け継がせた息子・ボンゴを産ませるように仕組み、産気づいたエルザを洋が助けることを見越してエルザを洋に接触させる。
そして、ボンゴを出産した後、エルザに姿を消させ、洋がボンゴを育てるように仕向けた。
子供への優しさをこれまでの回でも見せてきた筑波洋は、1日ごとに急速に成長していくボンゴを、ネオショッカーの怪人ではないかと怪しみながらも、愛情を注いで育てていく。
そして、母親であるエルザと再会させるために、力を尽くすのだった。

だが、ゾウガメロンはそんなボンゴに接触し、洋に肩車してその動きを封じるように命じる。
怪人としての本能でゾウガメロンの命令を聞いたボンゴは、洋に肩車をせがみ、急成長していく体重で、「父親」である洋の身体を押し潰そうとしてしまうのだった。
自分の息子を道具として使う卑劣なゾウガメロンに、洋の怒りが爆発する。
だが、ボンゴはみるみるうちにその体重を増していき、洋は徐々に押し潰されるのだった。
果たして洋はこの危機を脱し、ゾウガメロンを倒すことが出来るのか。
そしてボンゴは、洋との日々で芽生えかけていた人間の心を取り戻すことが出来るのか…。

とある雨の日。洋は雨の中、日課のパトロールに出かけていた。
その途中、洋は道で女性がうずくまっているのを発見。
女性は産気づいており、洋は急いでその女性、エルザを産婦人科医院まで送り届けた。
エルザは無事に赤ん坊を出産する。
看護師は洋を赤ん坊の父親だと勘違いし、必要な物品の購入を頼むのだった。

ブランカに戻った洋は、谷たちに赤ん坊が生まれ、哺乳瓶やミルクが必要だと話す。
谷は当初、洋が飼っているハムスターの赤ん坊のことかと勘違い。
ハムスターを飼っているなんて、洋も意外と可愛らしいところがある。
ナオコとアキは洋が結婚していたのかと騒ぐのだった。

必要な物品を揃えた洋たちが産婦人科医院に戻ると、なんとエルザが行方を眩ませていた。
生まれたばかりの赤ん坊を置いて何処かに消えたエルザに、看護師も怒りを見せる。
エルザは洋宛てに、息子の名前がボンゴであること、そして自分は事情があって姿を隠すことを伝える書き置きを残していた。洋は慌てて、エルザを探し始める。

洋は何処かへ向かおうとするエルザを発見し、その後を追う。
だがそこに、ネオショッカーの怪人、ゾウガメロンが現れた。
ゾウガメロンは球状の姿となって洋のバイクを執拗に追いかける。
結局、ゾウガメロンに足止めされている間に、洋はエルザを見失ってしまうのだった。

ボンゴは結局、洋と谷が預かることになった。
だが、ボンゴは1日で急激に成長し、眠っていたベビーベッドを破壊してしまう。
ボンゴは洋を「ママ」と呼び、ミルクを求め始めた。
生まれて1日で言葉を話し始めたボンゴを、流石のナオコとアキも気味悪がる。
だが、洋は自分に懐くボンゴを、母親代わりに世話を始めた。
これまでも幼き子供に優しさを見せてきた洋は、ボンゴにも愛情を注いでいく。
だが、ボンゴはその間にも急激に成長していき、用意していた衣服がすぐにサイズが合わなくなっていた。洋はそれを、順調に成長している証なのだと思い甲斐甲斐しく世話をしていく。

だが、ボンゴはわずか5日間でみるみる成長し、分厚い電話帳を引き裂いてしまう怪力を発揮。
洋がいない場所では癇癪を起こし、椅子を持ち上げ暴れていた。だが、洋が持ってきたハーモニカを吹くと、その音色を聞いたボンゴは落ち着きを取り戻し、穏やかな笑顔を見せる。
洋のボンゴを思う優しい心がこもったハーモニカの音色が、ボンゴに届いていた。

だが、砂場でひとり遊んでいたボンゴに、怪しい男が接触した。
その男はゾウガメロンであり、ボンゴを肩車すると、肩車をした相手の体を締め上げて話さない訓練を施す。肩車をされたボンゴの姿は、子供の怪人になっていた。
ネオショッカーのアジトに、魔神提督の客人としてバミューダ海域の秘密基地から派遣されたゾウガメロンは、50トンの体重で仮面ライダーを押しつぶす暗殺指令を帯びて日本に来たのだ。

ボンゴは日に日に凶暴になり、公園で子供たちを襲い、肩車をして少年を押し潰していた。
肩車の訓練をしていたと悪びれず話すボンゴを洋は咎めるが、ボンゴはただ笑うだけだ。
谷は、そんなボンゴの様子を見て、ボンゴがネオショッカーの怪人の子供ではないかと推測。
洋もまた、普通の子供ではあり得ない成長速度のボンゴが、怪人の子供だと感づいていた。
谷は、怪人である以上、倒すしかないと促すが、洋はまだ子供であるとそれを拒絶する。
「ボンゴはまだ子供なんですよ!」
「それがネオショッカーの狙いだ!あれ以上大きくなったらどうなると思う!…奴らはお前のその優しさにつけこもうとしているんだぞ!」
「しかし先輩!子供のボンゴを倒すことは…」
「じゃあどうするんだ!お前を殺す怪人になることは、目に見えてるんだぞ!」
「そうなる前にエルザさんを見つけて、ボンゴを返します!ボンゴが大人になったら、その時、正々堂々と戦って倒します!何を言われても俺は、そうしたいんです!」
幼き命に優しさを見せてきた洋は、例え怪人の子供であっても、倒すことは出来なかった。
谷はその甘さを咎めるが、洋はボンゴを母親のエルザの下へ返すことを決意する。
そこに、沼が現れ、ブランカに届いた、エルザからの伝言が書かれたメモを渡してきた。
ネオショッカーに狙われていると助けを求めるエルザからのメッセージを読んだ洋は、これがネオショッカーの罠であることを承知で、ボンゴを連れてエルザの下へ向かう。
谷は、洋を止めることが出来なかった。
「バカヤロー!お前のその優しさが、命取りになるかもしれないんだぞ!」

ボンゴを連れ、ネオショッカーのアジトに向かった洋の前に、アリコマンドが現れた。
谷はそんな洋の身を案じ、ブランカにいても落ち着かない。
アジトに潜入した洋は、アリコマンドを尋問しエルザのいるアジトを突き止める。
だが、エルザのいるアジトに向かおうとしたその時、洋のバイクは攻撃を受け、車輪が外れて走行不能になってしまった。ボンゴはバイクの転倒によって左足に怪我を負う。
洋はボンゴに応急処置を行い、ボンゴを背負って徒歩でアジトへと向かった。
それが、ゾウガメロンの罠であるとも知らずに…。

急成長したボンゴの重みに苦しみながら、洋はエルザのいるアジトへ向かう。
すると、ボンゴは肩車をねだってきた。洋はボンゴを肩車する。
だが、洋が一歩前に進むごとに、ボンゴの体重は重くなっていった。
さらに、ボンゴは洋の首を手足で締め上げ、怪人の姿になってしまう。
ますます重くなるボンゴの体重によって、洋の足は大地にめり込み始めた。
一歩ずつでも歩かなければ、完全に身体が地面に沈んでしまう。

そこに、エルザを伴ってゾウガメロンが現れた。
「筑波洋!まんまと罠に嵌ったな!バミューダ海域の暗殺者、ゾウガメロン!ボンゴは俺様の息子だ!エルザ!お前の役割は終わった!」
ゾウガメロンはエルザに自らの子供を産ませ、そうして産ませた息子のボンゴすらも仮面ライダー暗殺のための道具として利用していたのである。
「どうする筑波洋!立ち止まれば土の中に足がめり込むぞ!一歩歩く事にボンゴの体重が増えていく!膝を突けば二度と立ち上がれんぞ!歩け歩け!そのまま死んでしまえ!」
ゾウガメロンはさらに、自らも洋に飛び乗り押しつぶそうとする。
両腕を塞がれたことで、洋は仮面ライダーに変身することすら出来ない。
ついに、洋は重さに耐えかね片膝を突いてしまい、その身体は地面にめり込んでいく。

そこに駆けつけた谷は、必死にボンゴに呼びかけるが、怪人の本能に支配されたボンゴには、谷の言葉は届かない。しかし、谷はボンゴが洋のハーモニカの音色を好んでいたことを思い出し、ハーモニカを吹き始めた。音色を聞いたボンゴの脳裏に、洋との日々がフラッシュバックする。
「ママ」である洋が、ひたむきに自らに注いでくれた、たくさんの愛情も。
ボンゴはゾウガメロンを跳ね除け、洋を助けた。

ゾウガメロンは洋を殺すべく、球状になって体当りする「必殺岩石落とし」を敢行。
ボンゴは洋を守るべくゾウガメロンの前に立ちはだかり、それを助けようとしたエルザと共に、ゾウガメロンの下敷きになって致命傷を負ってしまう。
自らの息子を暗殺の武器として利用するだけでなく、抹殺したゾウガメロンに、洋の怒りが爆発。
非情のゾウガメロンを倒すべく、洋は仮面ライダーに変身した。

仮面ライダーはアリコマンド部隊が投げてくる手榴弾を躱し、次々にアリコマンドを倒す。
ゾウガメロンは球状になり必殺岩石落としを炸裂させるが、スカイキックで弾き返される。
そして、ゾウガメロンが手足を出してグロッキーになったところに、仮面ライダーはトドメのスカイキックを再度炸裂させ、卑劣な暗殺者・ゾウガメロンを倒すのだった。

洋と谷は、ゾウガメロンに利用され死んだ、ボンゴとエルザの親子を埋葬した。
「さようなら、ボンゴ。これからは本当のお母さんの胸で、安らかに眠るんだ…」
谷は、洋にハーモニカを手渡す。
洋は、暗殺の武器として生み出された悲劇の少年怪人に、鎮魂の音色を奏でるのだった。

ギャグのようなサブタイトルとは裏腹に、子供怪人の悲劇を描いたシリアスな展開。
脚本を担当した江連卓氏ならではの、筑波洋が変身を封じられギリギリまで追い込まれる苦境の描写や、幼き子供に優しい慈愛の心を見事に描き出した名作エピソードだ。
仮面ライダー暗殺の武器としてのためだけに生み出された命であるボンゴが、暗殺へ至る過程で注がれた洋からの愛情を思い出のハーモニカの音色で思い出し、人間としての心によって洋の危機を救うシーンには胸を熱くさせられる。人間の愛情の強さを見事に描いた名シーンだろう。

そして、仮面ライダー暗殺のためだけに子供を生み出し、自分の子供を仮面ライダー暗殺の武器として利用するゾウガメロン、ひいてはネオショッカーの非人道的な手口も強調され、その非道に怒る洋に感情移入せずにはいられない。子供たちの兄貴分として、これまでもゲストキャラクターの子供に優しさを見せてきた筑波洋だからこそ、ネオショッカーは暗殺のために子供を利用したのだろうし、その非道に激昂した洋の怒りは想像を絶するほどであろうこともわかる。
自らを庇い犠牲となったボンゴの亡骸を前に、怒りに身を震わせる洋の感情描写を村上弘明氏が見事に演じきっており、筑波洋というキャラクターの性格描写が定着を見せたと言って良い。
ボンゴとエルザの墓標を前に、ハーモニカを吹く洋の情感溢れる描写が、あまりにも見事だ。

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