あらすじ
羅門博士は新エネルギー・シグマを開発するが、宇宙からの侵略者・銀河王の円盤に襲われる。
羅門博士は死ぬ直前、犬のエレナにシグマの方程式を記憶させて脱出させるが、エレナはネオショッカーに捕らわれてしまう。筑波洋はネオショッカーのアジトに乗り込むのだが…。
富士山麓の大決戦 8人ライダー対ネオショッカー大要塞!
「仮面ライダー (新) (スカイライダー)」の劇場用新作であり、東映ヒーロー初の40分台の長編作品として制作されたのが、この「仮面ライダー 8人ライダーVS銀河王」だ。
原作者・石ノ森章太郎氏を総監督に迎え、新エネルギー・シグマエネルギーを狙って現れた宇宙からの侵略者・銀河王と、同じくシグマエネルギーを狙っていたネオショッカーに対し、8人の仮面ライダーが集結し、富士山麓に建造されたネオショッカー大要塞を舞台に、銀河王・ネオショッカー連合軍と8人ライダーの死闘が展開される大娯楽編となっている。
この映画の最大の見所が、TVシリーズに先駆けて、明るい体色にモデルチェンジした新たなるスカイライダー、強化スカイライダーが登場することだ。
そして、いわゆる再生怪人軍団として、改造人間Ⅱ世部隊も登場。
改造人間Ⅱ世部隊のリーダーであるジャガーバンと、ネオショッカー戦車を操るアルマジーグという2体の新怪人も登場し、8人ライダーとの死闘を演じることになる。
そして、新エネルギー・シグマエネルギーを狙って地球に来襲し、同じくシグマエネルギーを狙っていたネオショッカーと手を結んだ宇宙からの侵略者こそ、銀河王である。
機械の体を持つ銀河王は、配下として宇宙生命体サドンダスを従え地球に来襲。
銀河王とサドンダスは後に、オマージュキャラクターが映画「仮面ライダー×仮面ライダー フォーゼ&オーズ MOVIE大戦MEGA MAX」に登場したことで近年のシリーズのファンにもおなじみだ。
ここに、シグマエネルギーを巡って、8人ライダーとネオショッカー、そして銀河王の三つ巴の戦いが始まろうとしている。果たして、8人ライダーは銀河の王を打ち倒すことが出来るのか。
OPは、ささきいさお氏が歌唱する「輝け!8人ライダー」をバックに、8人ライダーが改造人間Ⅱ世部隊を相手に死闘を演じるシーンを見せていく迫力の演出。
放送日程として、既にTVシリーズに姿を見せていたストロンガーやV3はもちろん、1号たち栄光の7人ライダーが揃い、スカイライダーとバイクで並走するシーンは胸を熱くする。
そして「特別出演 石森章太郎」のクレジットも、原作者への最大の敬意の現れだろう。
無限に広がる大宇宙。宇宙ステーション・実験衛星「天界」では、石油に代わる新エネルギー・シグマを研究していた羅門博士が、シグマの実験を行おうとしていた。
「天界」はシグマエネルギーを光線として発射し、小天体を破壊して見せる。
だがそこに、密かに謎の宇宙船が迫りつつあった。
「天界」では、実験の成功により、シグマエネルギー実用化の目処がついたことを祝う、ささやかな祝宴が催されていた。石森章太郎氏は、「天界」に滞在する宇宙飛行士役として出演している。
シグマを見事に実用化にこぎつけた羅門博士は、同じく「天界」に滞在していた愛犬のエレン、そして石森章太郎氏が演じる宇宙飛行士と共に、シグマの実用化を喜び合う。
「新エネルギーが、世界平和に利用されることを祈って…」
だが突然、「天界」を謎の爆発が襲った。そして、何者かの声が不気味に響く。
「シグマを…エネルギーの製造法を渡せ…エネルギーの製造法の秘密を渡せ…」
緊急配備に付いた宇宙飛行士たちの前に、翼を持った、悪魔のような怪物が現れた。
怪物・サドンダスによって、宇宙飛行士たちは倒され、「天界」は破壊されていく。
羅門博士は、完成したシグマエネルギーを生み出すための方程式をエレンの脳に記憶させる。
だがその様子を、一人の男が見ていた。その男は、宇宙飛行士に化けていたアリコマンドだ。
不気味な声は、なおも崩壊を続ける「天界」に響き渡る。
「我は『銀河王』…エネルギーの秘密を教えろ…教えなければ全てを破壊する…」
羅門博士はエレンを脱出カプセルへ乗せ、地球へ向かわせた。
だが、羅門博士は直後にサドンダスに襲われ、「天界」も爆発し、宇宙の塵となる。
宇宙船に乗っていた機械生命体「銀河王」は、カプセルを追うように指示するのだった。
筑波洋は、父の羅門博士を失った羅門家を訪ねていた。
博士の娘、レミは、唯一脱出カプセルに乗って地球に帰還したエレンを洋に紹介する。
博士の助手である真樹泉も博士の死を悲しんでいた。
博士の息子であるブンも、ギターを爪弾き自らの悲しみを慰めるように歌を歌う。
すると、突然エレンがどこかへ走り去ってしまい、レミや泉もそれを追った。
エレンは、シグマエネルギーを狙っていたネオショッカーが送り込んだアリコマンドの気配を察知していた。レミたちの悲鳴を聞きつけた洋とブンは、悲鳴の元へ急ぐ。
不気味な動きでレミや泉を襲うアリコマンドたち。
洋が駆けつけたときには時既に遅く、泉はアリコマンドによって殴打されて倒れており、レミとエレンはネオショッカーに拉致されてしまった。洋は泉をブンに任せ、レミとエレンを探す。
レミとエレンを捕らえるべく、ネオショッカーの新怪人・ジャガーバンが現れた。
だがそこに、「天界」で宇宙飛行士を襲った怪物・サドンダスも現れる。
サドンダスは、ジャガーバンごとレミとエレンを銀河王の宇宙船に連れ去ってしまった。
洋は銀河王の宇宙船を目の当たりにし、ネオショッカーを超える脅威に戦慄する。
銀河王はジャガーバンと接触し、ネオショッカーもまたシグマエネルギーを狙っていること、そしてネオショッカーはスパイとして潜り込ませていたアリコマンドから、エレンの脳にシグマの製造方程式が記憶されていることを知る。そして、シグマ方程式の解読に協力することを申し出、ジャガーバンにネオショッカー基地へ案内するように命じた。
銀河王の宇宙船は、富士山麓に建造されたネオショッカー大要塞に着陸する。
洋は八方手を尽くしたものの、レミとエレンの行方は杳として知れなかった。
そこに、ネオショッカーの基地が富士山の地下にあるという、何者かからの電話がくる。
罠かもしれないと警告するブンを振り切り、洋は富士山麓へ向かった。
洋を心配するブンと泉も、車に乗って後を追うのだった。
バイクを飛ばし、富士山麓へ急行する洋。
だがその前に、地響きを鳴らしながら巨大なネオショッカー戦車が現れた。
それを操るのは、ネオショッカーの新怪人アルマジーグである。
洋は、鮮やかな体色を持つ新たなる姿、強化スカイライダーへと変身。
アルマジーグはネオショッカー戦車にスカイライダーを砲撃させる。
するとそこに、ストロンガーとアマゾンライダーも各々のマシンに乗って現れた。
ネオショッカー戦車は後部の砲台を分離させ、ストロンガーたちを砲撃。
「ストロンガー!アマゾン!来てくれたのか!」
「君に電話したのは私だ!ここでネオショッカーが世界征服の巨大プロジェクトを進行中という情報を手に入れ、やってきたんだ!」
スカイライダーにネオショッカー大要塞の情報を連絡したのはアマゾンライダーだったのだ。
「スカイライダー!陽動作戦だ!」
3人のライダーは散開し、ネオショッカー戦車の砲撃を一箇所に集中させない作戦を行う。
そして、一瞬の隙をついてスカイライダーのスカイキックがネオショッカー戦車を破壊した。
ネオショッカー戦車を倒した3人ライダーはネオショッカー大要塞へ急ぐ。
だが、ネオショッカー戦車を倒されたアルマジーグも、スカイライダーへの復讐を誓っていた。
そして、車で洋の後を追うブンと泉の車を、球状形態になって強襲。
車は崖から落とされ、ブンと泉は捕まってしまうのだった。
その頃、ネオショッカー大要塞に案内された銀河王は、魔神提督と結託し、シグマの製造方程式を解読。ネオショッカーはシグマエネルギーを爆薬に転用したシグマ爆弾が作り出していた。
「シグマの数式を解読して、既にシグマ爆弾の製造に取り掛かっている!いやあ、こんなに早くやれたのも、銀河王!みんなあんたのおかげだ!我々ネオショッカーとしても、大変、感謝しておる!流石スケールが違う!」
口では銀河王を称える魔神提督だが、返事をしない銀河王に内心では不満を募らせていた。
「(ケッ!無愛想な奴だ…コンピューターの化け物め!)」
そして、ジャガーバンも銀河王への不満を口にする。
「何が銀河王だ、どうせどっかの星を食い詰めたならず者のくせに!」
だが、銀河王は自分への侮辱を聞き逃さず、怒ってアリコマンドを念力で吹き飛ばす。
「我々の力、見たか…魔神提督、早くシグマ爆弾を使って地球を征服しろ。ミサイルはどこだ」
魔神提督は、東京へ打ち込むための、建造中のミサイルを見せる。
銀河王も、それには一応満足するのだった。
シグマ爆弾を搭載したミサイルが打ち込まれれば、東京は一瞬で消えてしまう。
このミサイルを全世界に打ち込むことが、ネオショッカーの狙いだった。
だが、そんなネオショッカー基地に警報が響いた。スカイライダーが大要塞に接近しているのだ。
スカイライダーがネオショッカーにとって邪魔者であることを知った銀河王は、自分の星で最も凶暴な生物であるサドンダスを、スカイライダー抹殺に向かわせることにした。
魔神提督もジャガーバンをスカイライダー抹殺に向かわせる。
スカイライダーの前に現れたジャガーバンは、改造人間Ⅱ世部隊を呼び寄せた。
「集まろう!集まろう!驚いたか!ネオショッカーの技術陣が生み出した、改造人間Ⅱ世部隊だ!これでお前の最後だ!」
改造人間の群れに取り囲まれるスカイライダー。
だがその時、爆音とともに勇者が集結した。
仮面ライダー1号。仮面ライダー2号。仮面ライダーV3。
そして、ライダーマン、Xライダー、アマゾンライダー、ストロンガーが駆けつけたのだ。
「うおっ!? 仮面ライダーが8人!?」
8人ライダーがここに結集し、改造人間Ⅱ世部隊に敢然と立ち向かった。
スカイライダーはジャガーバンをエアプレーンスピンに捉えるが、球状になったアルマジーグの体当りを受けてしまう。ジャガーバンはそのままアルマジーグに球乗りし、スカイライダーを踏み潰そうとするが、スカイライダーに蹴り飛ばされるのだった。
球乗りされたアルマジーグはジャガーバンに文句を言う。
「痛いよバカ!」
「バカ!我慢しろっ!」
喧嘩しながらも、アルマジーグがスカイライダーを羽交い締めにした隙に、ジャガーバンが剣と盾を取り出し、スカイライダーを刺し殺そうと迫るコンビネーションを見せる2怪人。
そこに、V3が助けに入り、スカイライダーにブンと泉が捕まったことを伝えるのだった。
地下牢に囚われたブンと泉は、そこで監禁されていたレミとエレンに再会した。
そこに、銀河王と魔神提督が現れる。
「お前たちより高等動物だ…」
魔神提督から、人間の「女」について説明を受けた銀河王は、泉の身体に触れ回る。
変態タイプの機械生命体という、救いのない生き物だ。
さらに、泉を念力で気絶させた銀河王は、地球人を分析して資料を作ると言い出した。
手術台に囚われたブンと泉は、電流を流し「実験」を開始する。
改造人間Ⅱ世部隊と死闘を繰り広げる1号はスカイライダーをブンたちの救出へ向かわせた。
そして、ついにスカイライダーはネオショッカー大要塞の入口付近に辿り着く。
銀河王は、サドンダスにネオショッカー大要塞の守備を命じるのだった。
「今頃来ても遅いぞ…仮面ライダー…新エネルギー・シグマの方程式は、この犬の頭から我々が頂いた…」
ストロンガーの電キックが、V3のV3ダブルキックが怪人に炸裂する。
そして、銀河王たちが大要塞の守備に向かい不在になった隙を突き、ブンと泉はスカイライダーに手術台の場所を伝えるべく行動を開始した。
アマゾンライダーの大切断がコゴエンスキーの腕を切断する。
ブンと泉は電極をスパークさせ、電流の痛みに耐えながら自らを縛る枷を破壊しようとする。
一方、魔神提督はスカイライダー到着前にシグマミサイルを東京に撃ち込もうとする。
なおもスカイターボを飛ばすスカイライダーの前に、アルマジーグが行く手を阻むべく現れたが、そこにライダーマンが駆けつけ、ロープアームでアルマジーグの動きを封じた。
今度はジャガーバンがスカイライダーを阻もうとするが、1号が助けに入る。
なんだかさっきから、いつまで経っても大要塞入口に着かない気がする…。
2号のライダーパンチがサイダンプを粉砕し、1号のライダーキック、XライダーのXキックも次々に怪人たちを撃破していく。そして、スカイライダーもついに大要塞の入口に辿り着いた。
そこに、銀河王の手下であるロボットクルーたちも出現するが、スカイライダーはそれも撃破。
大要塞の何処かに囚えられたレミを探し、大要塞の奥へ突入していく。
その前に、サドンダスが現れた。
1号とライダーマンは、協力してジャガーバンとアルマジーグと戦う。
そして、1号はアルマジーグを投げ飛ばし、頭を地面にめり込ませると、そこにライダーキックを叩き込んでアルマジーグを撃退するのだった。
一方、サドンダスは姿を消す能力でスカイライダーを撹乱するが、スカイライダーはDアイの能力でその姿を捉え、スカイキックを叩き込むと、さらに新たに習得した投げ技、「パイルドロップ」でサドンダスの脳天を地面に叩きつけ、撃退するのだった。
ジャガー剣を振るうジャガーバンに対し、ライダーマンはロープアームで攻撃する。
だが、シグマミサイル発射準備完了まで、後1分に迫っていた。
スカイライダーはネオショッカー大要塞奥深くまで進んでいくが、妨害も激しい。
その頃、ジャガーバンはライダーマンに投げ飛ばされ、そこに1号のライダーキックを食らう。
「天は我を見放した…!」
映画「八甲田山」で有名なセリフのパロディを辞世の句とし、ジャガーバンも倒れるのだった。
なにげに、1号が新怪人を2体も撃退しているのは、流石に初代の風格か。
もしくは、諸事情で単独客演エピソードが存在しない分の埋め合わせなのかもしれない。
銀河王はシグマミサイル発射を成功させるべく、自らスカイライダーの前に姿を現した。
「ここから先には行かせん、ライダー」
「お前は!?」
「宇宙から来た、銀河王。これを受けてみろ!」
銀河王は念力でスカイライダーを攻撃し、スカイライダーの攻撃を瞬間移動で躱す。
そしてついに、シグマミサイル発射スイッチが押されてしまう。
スカイライダーは間一髪、ミサイルが完全に飛び立つ寸前でミサイル発射装置を破壊し、シグマミサイル発射を阻止することに成功する。
ネオショッカー大要塞が崩壊する中、スカイライダーはなんとかブンや泉、レミとエレンを救出。
その道程に、生きていたサドンダスが現れたものの、既にパイルドロップで致命傷を負っていたサドンダスは、何も出来ないまま爆散する。そしてそこに、7人ライダーも救援に駆けつけ、一同は無事に、崩壊するネオショッカー大要塞から脱出することに成功する。
魔神提督もまた、崩壊するネオショッカー大要塞から脱出していくのだった。
シグマエネルギーを手中に収めることに失敗した銀河王は、宇宙船に戻り脱出を図る。
だが、飛び立った宇宙船は、ネオショッカー大要塞の爆炎に焼かれ炎上。
銀河王もまた、自らの宇宙船と運命を共にするのだった。
「残念、無念…」
こうして、ネオショッカー大要塞と銀河王の野望は、共に潰えたのである。
羅門博士が作り上げたシグマエネルギーの悪用も阻止され、日本も守られたのだ。
「日本を象徴するあの富士山が、我々を守ったんだ…」
こうして、ネオショッカー大要塞を打ち砕いた8人ライダーは、世界の平和と人間の自由を守るため、再び世界へと散っていった。8人ライダーの果てなき戦いは、これからも続くのだ。
宇宙からの侵略者・銀河王との対決、そして8人ライダーの活躍が描かれた映画作品。
映画として見ると、中盤以降、随分と長い間スカイターボをネオショッカー大要塞入口へ向けて走らせ続けるスカイライダーや、崩壊を始めたネオショッカー大要塞の爆発に長い尺が割かれていたりと妙な場面も多いものの、レミと泉を襲うアリコマンドの不気味な動きや、それぞれの必殺技を披露する8人ライダー、1号とライダーマンの共闘という珍しいシチュエーションと面白い場面も多く、今回改めて見直すと新鮮な印象だった。
サドンダスやジャガーバン、アルマジーグといった新怪人は映画用新怪人だけあってどれもシャープな造形で格好良いだけに、ジャガーバンとアルマジーグは長く活躍してくれて嬉しい一方、サドンダスはその格好良さのわりにあっさりと倒された印象はある。
崩壊する大要塞脱出時に、倒されたと思ったサドンダスが現れるのはちょっとびっくりしたものの、結局パイルドロップが致命傷になっており、すぐに倒れたのももったいない気はする。
第3勢力として宇宙から現れた銀河王だが、直接対決していればスカイライダーをも翻弄する超能力の片鱗を見せつけつつ、結果的に直接対決を避けて逃亡を図ったがために、「残念、無念…」と宇宙の塵となってしまうことになった。その力の全貌は、今後明かされることもないのだろう…。
いろいろと書いたが、東映ヒーロー初の長編映画作品だけに、スケールの大きなネオショッカー大要塞のセット・ミニチュア特撮や、ネオショッカー戦車と3人ライダーの攻防、宇宙規模の物語というスケールの大きな展開、TVシリーズに先駆けた8人ライダーの勢揃いや強化スカイライダーの登場といった映画ならではのイベント要素と、見どころも多い映画だった。
そして、8人ライダーとネオショッカーの戦いは、TVシリーズへと続いていく。