「太陽戦隊サンバルカン」第9話「怪物になったパパ」感想

2025年1月5日日曜日

太陽戦隊サンバルカン 東映特撮YoutubeOfficial

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あらすじ

海水から金を取りだす装置を開発した鮫島の恩師・小坂教授がブラックマグマに誘拐された。
小坂は自白装置にかけられ、ショック死してしまう。
ブラックマグマはダークQを小坂に変装させ、家族に入り込ませる。

父の顔を奪ったダークQ 最愛の父を奪われた家族を救え!

鮫島の大学時代の恩師である小坂教授の海水から金を抽出する装置の発明が話題となった。従来の方法がコストが折り合わない、海水から金を抽出する世紀の発明だ。
しかし、その装置を狙ったブラックマグマが小坂教授を拉致してしまう。
ブラックマグマによって自白装置にかけられてしまい、装置の設計図を書くように拷問された小坂教授は、拷問に耐えられずショック死してしまうのだった。
そこでブラックマグマは、装置の設計図が収められたマイクロフィルムを狙い、小坂教授の姿に成り代わったダークQを小坂教授の研究所へと送り込む。
そして、偶然ダークQの正体を見抜いた息子の浩一とその母は危機に陥ってしまうのだった。
鮫島は浩一たちを救い、恩師の仇を討つことが出来るのか。

スナックサファリでは、今日も嵐山長官が子供たちとベーゴマで遊んでいた。
そんな時、大鷲は新聞記事で鮫島の恩師である小坂教授が、海水から金やウランを取り出す画期的な装置を発明、海洋学術会議で発表する新聞記事を見つける。
海水から金を取り出すことなどとても信じられない子供たちだが、美佐は海水には金や銀、ウランにニッケルといった様々な物質が溶け込んでいることを教える。
嵐山長官は補足として、金を取り出すことは可能だが、現代の技術では、海水から100円の金を取り出すのに1万円ほどかかり、コストが折り合わないことを話すのだった。
実際、海水には50億円ほどの金や多数のレアメタルが溶け込んでいるらしいが、海水1トンに対し金は1mg程度しか含まれていないことから採算が合わず、実用段階にはないらしい。
現代の日本では、海水からではなく海底の鉱物を採取するプロジェクトが進んでいるそうだ。
現実の科学的な知識を踏まえた台詞が、作中世界にリアリティを生んでいる。

だが、小坂教授の発明した装置を使えば、多大なコストを払うことなく、海水から金を効率的に採取することが可能なのだという。まさにそれは、画期的な発明だった。
しかしそれを知ったブラックマグマのヘルサターン総統は、小坂教授の発明した装置を作らせるために、機械生命体サソリモンガーを生み出すと、小坂教授の拉致を命ずるのだった。

鮫島はギター片手に海を見つめていた。挿入歌「海が呼んでいる」が叙情的な雰囲気だ。
小坂教授は大学時代、鮫島に海の素晴らしさを教えてくれた恩師だった。
鮫島と小坂教授が旧交を温めていると、そこに小坂教授の妻と、息子の浩一もやってきた。
浩一は鮫島のことを兄のように慕っており、サッカーを教えてもらうのを楽しみにしていた。
だが、鮫島が浩一と共に公園に行った隙を見計らい、小坂教授をサソリモンガーが襲った。
うつ伏せになると蠍のシルエットになるサソリモンガーのデザインと造形が秀逸だ。
小坂教授の妻の悲鳴を聞きつけた鮫島は急いで引き返したが、既に小坂教授は攫われていた。

南極のブラックマグマの基地に連れ去られた小坂教授は、ヘルサターン総統やヘドリアン女王によって、自白装置に繋がれ、金を海水から取り出す装置の設計図を書くように拷問される
それを拒絶する小坂教授だが、自白装置の働きによって、設計図は研究所に保管してあるマイクロフィルムに収められていることを話してしまうのだった。
秘密が収められることに定評のある、昭和特撮作品おなじみのマイクロフィルムが今回も登場している。ヘドリアン女王はマイクロフィルムの在処を問い詰めるが、小坂教授はそれを話すまいと必死に抵抗し、自白装置はスパークして壊れてしまうのだった。

父を攫われた浩一は、父が愛した海に向かって父を呼ぶ。
一方、小坂教授は自白装置により与えられる苦しみに耐えかね逃走しようとするが、ヘルサターン総統によって殺害されてしまうのだった。
ヘルサターン総統は急ぎ、小坂教授の顔をコピーしたダークQを作らせた。
ここで、これまでのエピソードで暗躍してきたダークQの製造過程が明かされる。
組立工場で製造されたメカ人間の中から、最も優れたものがダークQの任務を与えられる。
検査室で徹底したメカニズムの点検を受けたメカ人間が、ダークQとして組み上げられ、その後、最終チェックとして性能テストが行われ、様々な妨害に対して最後まで生き残ったものが、機械帝国の戦略を実行するスパイ・ダークQとして完成させられるのだ。
今また、2体のダークQが作り上げられ、1体は小坂教授の顔と指紋を与えられた。
そして、小坂教授となったダークQが、南極基地より送り出されたのだった。

ダークQ=小坂教授は、ボートで漂流していたところを漁船に発見され、救出された。
嵐山長官は、鮫島を小坂教授の元へ向かわせる。
教授の妻と浩一は病院で小坂教授と再会し、小坂教授がダークQと知る由もない鮫島も、その様子に笑顔を見せるのだった。そこに、医者が現れ、小坂教授の身体に異常はないと太鼓判を押す。
だが、その医者も、ブラックマグマが送り込んだダークQであり、小坂教授に化けたダークQを本物の小坂教授と思わせるための偽装工作を行っていたのである。

小坂教授は海水魚の研究をするため、研究所である小坂海洋科学館に、助手である妻や息子の浩一と一緒に住んでいた。家族が食卓を囲む、一家団欒の時間が過ぎる。
だが、浩一は父親の笑顔の裏に、ダークQの不気味な機械の顔を感じ取った。
自分を見つめてくる父親の不審な笑顔に、浩一は不安を隠せない。

夜になり、小坂教授に化けたダークQは、海水から金を取り出す装置の設計図が収められたマイクロフィルムを探し始めた。一方、眠れずにいた浩一も、ダークQの影に怯える。
そして、ついに浩一はダークQとしての正体を現したダークQに襲われた。
母親に、父親がダークQであることをを伝えようとした浩一だが、ダークQは母親を殺されたくなければこの事実を誰に話さないようにと浩一を脅すのだった。
浩一はさらに、ドアを封鎖されたことで自分の部屋に閉じ込められてしまう。

真夜中になり、ふと教授の妻は目を覚まし、隣で寝ていたはずの夫の不在に気づいた。
そして、夫がダークQに成り代わられていることに気づいてしまう。
部屋に閉じ込められた浩一を助けようとした教授の妻だが、部屋の扉は開かず、やむを得ず教授の妻は浩一に部屋の隅に隠れるように伝える。
教授の妻を追いかけてきたダークQは、浩一の部屋に隠れていると思い込み、部屋の扉を破壊。
隠れていた浩一を殺そうと襲いかかった。
浩一は、助けに入った教授の妻と共に部屋を脱出するが、ダークQは執拗に追ってくる。

透視能力を使い、浩一たちを追い詰めるダークQ。
なんとか研究所の外に脱出し、車に乗り込んだ浩一たちだが、ダークQは車の前に立ちふさがって脱出を阻んだ。そこに鮫島がやってきて、研究所の異変を察知し浩一たちを探し始める。
海岸まで浩一たちを追い詰めたダークQは、マイクロフィルムの在処を詰問する。
答えようとしない教授の妻を、ダークQが殺害しようとしたその時、バルシャークが駆けつけた。
「設計図は先生の頭脳に隠されていたんだ!設計図を守るため、先生は自らの命を…!」
バルシャークは、恩師を殺された怒りの一撃をダークQに叩き込む。
設計図発見の任務に失敗したダークQは、用済みとみなされブラックマグマに消されるのだった。
用済みとなれば処分されるダークQは、いくらでもスペアが存在する、メカ人間の悲哀とブラックマグマの非道を描いたシーンとして印象に残る。

サソリモンガーが出現し、バルシャークに襲いかからんとしたその時、バルイーグルとバルパンサーが駆けつけた。3人揃った太陽戦隊は、太陽ジャンプを決める。
「輝け!太陽戦隊!サン!バルカン!!」
バルシャークはフライングシャークでマシンマンを蹴散らし、海へダイブ。
バルイーグルの太陽パンチや、バルパンサーの軽業も決まる。
バルシャークはサソリモンガーと一騎打ちになり、必殺のシャークジョーズを決める。
そして、サンバルカンはバルカンボールを叩き込み、サソリモンガーを倒した。

サソリモンガーの巨大化回路が作動し、大モンガーとなった。
サンバルカンはジャガーバルカンの発進を要請する。
戦場に到達したジャガーバルカンからコズモバルカンとブルバルカンが発進した。
「合体!グランドクロス!」
サンバルカンロボと大モンガーの決戦が始まった。
大モンガーはうつ伏せになって大地を這い回り、サンバルカンロボを撹乱する。
そこで、サンバルカンロボはバルハンドで大モンガーを捕らえ、投げ飛ばした。
さらに、大モンガーの攻撃をバルシールドで防いだサンバルカンロボは、太陽剣を取り出す。
「太陽剣!オーロラプラズマ返し!」
必殺のオーロラプラズマ返しが決まり、大モンガーを切り裂いて勝利した。

鮫島は、父を失った浩一を励ますように、共に遊んでいた。
海を愛した、小坂教授は死んだ。だが、鮫島は少年の目に希望を見た。
父の遺志をきっと、この少年が継いでくれるに違いないと…。

ようやく太陽戦隊の面々個人を主役にしたエピソードが挿入され、まずはバルシャーク=鮫島欣也を主人公に、鮫島の恩師を襲った悲劇を描いたハードな作劇が展開された。
これまでのエピソードでも人間社会に入り込んでスパイ活動を行い、鮮烈な印象を残してきたダークQの製造過程が明かされると同時に、優しかった父親に成り代わり執念深く襲ってくるという、少年の平穏な日常が非日常に侵略され破壊される恐怖の演出が秀逸だ。

また、いくら顔を小坂教授そっくりに偽装しても、息子である浩一にはダークQであることを見抜かれるという展開は、人間の血の繋がり、心の繋がりはその絆を破壊する邪悪な陰謀を見抜くことが出来るという人間の心の素晴らしさを描いており、用済みとなればダークQを容赦なく破壊する機械帝国の冷徹さも、それと対比して強調されていた。
平穏な日常を破壊する冷徹な暴力に対抗できるのは、人の心の暖かさだけなのだ。

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