あらすじ
人間の耳を奪う怪人・ミミンガーが出現した。
魔神提督は1000組の耳を集め、大首領にささげようとしていたのだ。999組の耳を集めたミミンガーが最後の耳に狙いを定めたのは、ほかならぬスカイライダー、洋の耳だった。
人の耳を求める怪異!洋の耳も消え失せるのか?
「耳なし芳一」を題材とした、怪談シリーズ第3弾となるエピソード。
今回のネオショッカーの怪人は、巨大な耳を持つ象の怪人、ミミンガー。
象のような顔つきに、平安後期~鎌倉時代の武士を思わせる甲冑を纏っているのが特徴だ。
長い鼻の内部には仕込み刀が入っており、接近戦でその威力を発揮する。
平家の悪霊をアリコマンドに憑依させ、呪いの力を与える能力を持っている。
そんなミミンガーの目的は、ネオショッカー大首領に捧げる供物として、人間の耳を1000組集めること。そして、1000組目の耳として、スカイライダー=筑波洋の耳を奪おうとすることだ。
人々の耳を奪い、人々から耳喰いお化けと恐れられたミミンガーは、1000組目の特別な耳として、これまでネオショッカーの怪人を次々に撃破した洋の耳を狙っていたのである。
ミミンガーがブラジルのジャングルで習得した悪霊寄せの術によって平家の悪霊がアリコマンドに宿り、その呪いの術と念力が洋を追い詰めていく。
そこで洋は、谷に紹介された住職の協力で、「耳なし芳一」よろしく全身に梵字を書き込み、この呪いの力に対抗。もちろん、「耳なし芳一」の反省で耳にも梵字は書き込まれた。
呪いの術を完全に封じた洋は、奪われた人々の耳を取り戻すためにミミンガーに挑む。
果たしてスカイライダーはミミンガーを打倒し、人々の耳を取り戻すことが出来るのか。
真夜中、公園で逢瀬を楽しんでいたアベックの前に、不気味な人魂が出現した。やがて人魂は平家の悪霊へ姿を変え、それを率いるようにネオショッカーの怪人・ミミンガーが出現する。
「耳が欲しい…1000の耳が欲しい…!お前たちの耳を、俺にくれ!」
ミミンガーはそのまま、アベックから耳をもぎ取ってしまう。
これまでの怪談シリーズが子供たちを驚かすだけにとどまっていたのに対し、ミミンガーは耳をもぎ取ってしまうのをビジュアルで見せており、物理的な痛みを伴う恐怖感がある。
翌朝、洋たちはアベックがミミンガーに襲われた公園の調査をしていた。
何故、平家の悪霊がこの公園に現れ、人間の耳を求めるのか。
ナオコたちの話では、ミミンガーは耳喰いお化けとして既に世間を恐れさせているらしい。
だが、洋は幽霊の存在を信じようとせず、ミミンガーを探しに出ようとする。
するとそこに、洋の知り合いである少年、タカシがやってきた。
タカシはお化けに興味があるらしく、よせばいいのに耳喰いお化けに興味津々らしい。
ナオコたちに早く帰るように促されたタカシが帰宅していると、突如、背後からタカシの耳に手が伸び、タカシの耳を引きちぎらんとした。それはもちろん、ミミンガーの仕業だ。
学校では耳喰いお化けの被害が世間を騒がせているのを受け、親が子供たちを迎えに来ており、アキもまた、弟のオサムを迎えに来ていた。だが、当のオサムは耳喰いお化けが出ても石をぶつけて退治してやると、事態を軽く考えていた。浦沢投石だ。石投げちゃおっと!
アキは夜に一人でトイレにもいけないのに強がるオサムを窘め、帰宅させようとするが、オサムたちは学校を休んでいるタカシのお見舞いに行くのだという。
オサムたちがタカシの家を訪ねると、不気味な老婆が彼らを出迎えた。
部屋の中も暗く、老婆も壁の中に消える不可思議現象に、オサムたちは恐れ慄く。
やがて、人魂と共に、耳当てを付けたタカシが姿を現した。
「いいなあ君たち、健康な耳を持ってて。この耳、僕欲しいなあ。僕にくれよ!」
今にもオサムの耳を引きちぎらんとするタカシに、オサムは恐怖で震える。
「冗談よせよ、痛いよタカシくん!」
「冗談じゃないよ、みんなの耳を僕にくれよ。そうしないと、僕の耳が元に戻らないんだ」
そう言って耳当てを外したタカシの耳は、ミミンガーに引きちぎられた痕跡が残るのみだった。
「ミミンガー!耳をくれ!」
タカシは念力でオサムたちの耳を引きちぎろうとする。一体何故、タカシにこんな力が?
しかしそこに、アキに呼ばれた洋が、オサムたちを助けに現れた。
だが、洋やアキも、念力によって耳を引きちぎられそうになる。
そこに、ミミンガーの不気味な声が響いた。
洋が声のする方向に椅子を投げると、平家の悪霊を従えたタカシがその実態を表した。
いや、それはタカシ本人ではない。
「俺はタカシではないぞ。耳なし芳一の霊じゃ!」
平家の悪霊たちが、洋の耳を求めて襲いかかる。そして、洋は念力で動けなくなり、スカイライダーに変身することも出来なかった。絶体絶命の危機!
しかしそこに、どこから騒ぎを聞きつけたのか、がんがんじいが現れ、洋を突き飛ばしたことで、洋はなんとか難を逃れる。しかしその代償に、がんがんじいの鎧の角が折れてしまった。
かろうじてタカシの家から脱出した洋たち。
洋はがんがんじいに礼を言うが、がんがんじいは角が折れたのが相当ショックだった。
「泣くながんがんじい。お前のおかげで助かったんだ。礼を言うぜ」
「なんぼ礼を言われたかて、角がなかったらスーパースターがんがんじいのイメージガタ落ちやがな!どないしてくれまんねん、これ!」
角が折れたのを気にしているのは可笑しいが、ここでがんがんじいは念力で動きの取れない洋を救うという大殊勲を上げている。がんがんじいが割って入っていなければ、スカイライダーに変身できない洋が悪霊に敗れていたのは想像に難くない。
ネオショッカーのアジトでは、ミミンガーが魔神提督の前で平家の悪霊を呼び出し、その呪いの力をアリコマンドに宿していた。魔神提督も、その呪術にご満悦だ。
「おお!流石だミミンガー!アフリカのジャングルの中で習得してきた、悪霊寄せの術、恐るべきものだのう!ミミンガー!1000組の耳を集めて大首領に捧げれば、我々ネオショッカーの願いは叶うのだ!早く1000組の耳を集めよ!」
ミミンガーが人の耳を求めていたのは、ネオショッカー大首領に捧げる供物にするためだった。
そして、ミミンガーは既に999組の耳を集めており、残るはあと一組。
ミミンガーは最後の1組として洋の耳をネオショッカー大首領に捧げようとしていたのである。
そしてミミンガーは、再びタカシの姿に化けるのだった。
ブランカに戻った洋は、ミミンガーに差し向けられた悪霊によって悪寒が止まらずにいた。
オサムは、谷に「耳なし芳一」の話を教えてもらう。
谷も最初は悪霊の話を信じようとしなかったが、悪寒が止まらない洋の様子を見て事態の深刻さを実感し、知り合いの住職に、耳なし芳一がやったように悪霊祓いをやってもらうことを提案する。
谷の知り合いの住職によって、洋は悪霊除けの御守りを授かり、24時間の瞑想を促された。
住職は洋の身体に秘められた力を見抜き、悪霊に動じることなく精神を集中するように諭す。
洋の、孤独な瞑想が始まった。
そこに、ミミンガーが操る平家の悪霊が現れる。
しかし、住職が授けた御守りがバリアとなり、平家の悪霊は洋に近づけなかった。
そこでミミンガーは風を起こして御守りを吹き飛ばし、洋に襲いかかる。
平家の悪霊を従えるミミンガーの力は強大だった。
「アフリカのジャングルの使者…ミミンガー!洋!御守りの力は消えた!貴様は動けん…1000組目の耳は、お前の耳だ!」
念力で動けない洋に、ミミンガーの刃が迫る。今度こそ、絶体絶命の危機!
だがそこに、住職が数珠を投げつけ、悪霊を操るミミンガーを退けた。
先程から、この住職が只者ではない描写が積み重なっている。一体何者なのだろう…。
ミミンガーがタカシに化けていることを知った洋だが、悪霊の力は恐ろしい。
谷も、アフリカのジャングルに悪霊の力を操る怪人がいる噂は知っていた。
そこで住職は、「耳なし芳一」の話の通り、洋の全身に悪霊を払う梵語を書くことにする。
もちろん、「耳なし芳一」の轍を踏むことなく、耳にまで梵語が書かれた。
悪霊の力を払う梵語を刻んだ洋は、本物のタカシを助けるため、ミミンガーのアジトを探す。
その前に、平家の悪霊の力を宿したアリコマンドたちが出現するが、梵語を身体に刻んだ洋の前では、もはや平家の悪霊すら敵ではなかった。洋はアリコマンド部隊を突破する。
タカシの家に乗り込んだ洋の前に、ミミンガーと平家の悪霊たちが姿を現した。
ミミンガーはタカシを人質に、耳に書いた梵語を洗い流すように迫る。
洋はその取引に応じるしかなく、耳に書いた梵語を洗い流すのだった。
ミミンガーは洋の耳を切断しようとするが、ミミンガーの刃は洋の耳に届かない。
「無駄だ!悪霊除けの梵語は、耳の中にも記されているんだ!」
外耳の部分にしか目がいかなかったミミンガーのミスに乗じ、洋は反撃を開始する。
タカシを逃がした洋の前に、平家の悪霊とアリコマンド部隊が襲いかかる。
アリコマンド部隊の猛攻を躱した洋は、スカイライダーに変身した!
スカイライダーは棒術で襲いかかってくるアリコマンドたちの肩に飛び乗り、次々に肩を踏み砕いていく「必殺飛び石砕き」でアリコマンドたちを一掃する。
さらに、アリコマンドから奪った棍棒でミミンガーの刀を弾き飛ばした。
だが、ミミンガーの纏った鎧は防御力に優れており、スカイライダーの攻撃が通じない。
そこでスカイライダーはミミンガーを背負い投げして転ばせると、鎧の隙間を狙ったピンポイント攻撃で大ダメージを与え、99の技のひとつ、「風神地獄落とし」を決めた。
高速回転しながら飛び上がり、相手の脳天を地面に叩きつける大技、風神地獄落としの威力は絶大であり、悪霊怪人ミミンガーはついに倒れたのである。
こうして救出されたタカシの両耳は無事に元に戻った。
おそらく、他の被害者たちも無事に耳が元に戻ったのだろう。
これで耳喰いお化けに怯えなくて済むと、タカシやオサムたちに笑顔が戻る。
取り戻した一時の平和が、そこにはあった。
悪霊祓いに絶大な力を発揮し、耳なし芳一の反省でしっかりと洋の耳を守り抜いた住職の活躍や、人間の耳をもぎ取るミミンガーの恐怖描写が出色のエピソード。
悪霊を宿したアリコマンドを従え、念力によって洋を変身不能に追い込むミミンガーの強さは侮れず、それらを封じられても鎧の防御力でスカイライダーが苦戦を強いられる強豪怪人だった。
そんなミミンガーに対し、鎧の隙間を狙うピンポイント攻撃で勝機を掴んだスカイライダーの戦闘描写も見応えがあり、風神地獄落としのダイナミックな演出も素晴らしい。
未だその正体は謎に包まれたネオショッカー大首領だが、1000組の人間の耳を供物として捧げるしきたりがあることを思えば、その正体はかつてのショッカー首領のイメージとも異なり、完全に人外の存在であることを想起させる、最終局面で明かされる正体の伏線となっている。
1000の耳を捧げるしきたりもこの回限りではなく、後にもう一度触れられることになる。
その回限りの描写が多い昭和ライダーとしては、意外と珍しいパターンだ。