あらすじ
鏡の中に出現する謎の老婆は、奇妙な呪文で鏡の中と現実の人間を次々と入れ替えていた。
洋は老婆を尾行するが、彼女は古い洋館の姿見の中に消えていく。
その鏡はベルサイユ宮殿にあったという呪いの鏡で…。
呪いの鏡が人々を攫う 鏡の中に消えた人々を救え!
怪談シリーズ最終作となる今回は、呪術用具としても使用されていた鏡を題材とする。
今回のネオショッカーの怪人は、トカゲの特質を持ったカガミトカゲだ。
かつてのショッカーの改造人間、毒トカゲ男を思わせる襟巻きを持った容姿を持つカガミトカゲは、その襟巻きが名前の通り鏡になっているのが特徴である。
分身能力を持って敵を混乱させる能力を持つ他、現実世界と鏡の中の世界を自在に行き来する能力を持っており、自らの境遇や世の中に不満を抱く者たちを鏡の中の世界へ幽閉、代わりに邪悪な性格を持ち、少しの衝撃で粉々に砕ける分身を現実世界に送り込み、世界の混乱を引き起こそうとしていた。自らの容姿にコンプレックスを持ったアキも、その標的になってしまう。
鏡の世界に幽閉した人間を奴隷のように扱き使い、王のように振る舞うカガミトカゲから人々を奪回すべく、洋は鏡の世界へと乗り込んでいく。
しかし、そこはカガミトカゲのテリトリー。自身の能力を使いこなすカガミトカゲは手強い。
そして、その戦いをも自らのデータにすべく、アブンガーがまたしても戦いを監視していた。
果たしてスカイライダーはカガミトカゲを倒し、鏡の世界から人々を救えるのか…。
夜、鏡の前で髪をといていたアキは、もう少し美人になれたら…と、誰もが一度は思うようなことをぼやいていた。どうでもいいが、この後鏡写しになった偽物のアキが出現し、アップリケの文字が鏡写しになることを表現するためとはいえ、「ア」「キ」と自分の名前がアップリケされたシャツを着ているのが、なんだか凄いセンスだ。
すると突然鏡が発光し、鏡の中に老婆が映し出され、アキに語りかけてくる。
それは、もっと美しくなりたいなら、外の世界にいるアキと、鏡の世界にいるアキを入れ替えるという誘惑。アキは老婆の言うまま、入れ替わるための呪文を口にしてしまう。
すると次の瞬間、アキは鏡の中に閉じ込められ、現実世界には、アップリケの文字が鏡写しになった、もうひとりのアキがいた。アキは鏡の中から脱出することができない。
同じように、鏡の前でスイングのフォームを見ながら練習し、ホームランを打ちたい、野球がうまくなりたいと願った少年の前にも、鏡の中の老婆が現れた。
そして、仲間たちの前に姿を現した少年のユニフォームは、背番号が鏡写しになっている。
少年はとんでもない威力のスイングを見せ、打った打球で仲間たちを怪我させる。
怒った仲間がバットを少年に叩きつけると、少年の体は粉々に砕けてしまった。
砕けた後に残ったのは、鏡の破片のみ。
車の中でため息を付いていた運転手の男の前にも、ルームミラーから老婆が姿を現す。
次の瞬間、男は豹変し、車を暴走させ親子を跳ね飛ばす大事故を起こしてしまった。
ブランカの面々が様子を見に行くと、運転手の姿は何処にもない。
車内に残されていたのは、先程の少年と同じく、粉々に砕けた鏡だけだった。
しげるがブランカの電話で事故の通報をしていると、アキが現れた。
だが、アキは突然ナイフを手にして、しげるの顔を刺そうとする。
駆けつけた洋が割って入り事なきを得たものの、逃げ出したアキは救急車と激突。
すると、アキの身体も粉々に砕け、鏡の破片へと姿を変えてしまった。
次々に起こる人間が砕けて消える怪現象の不穏なムードは、なかなかの緊迫感だ。
人間が消えて、鏡の破片が残る怪現象は、各地で次々に起こっていた。
普通に暮らしていた人が、ある日突然恐ろしい殺人鬼に変貌し、鏡となって消えてしまう。
アキが粉々になって消えたことに、ナオコやユミは悲しむ。
アキの家を訪ねたナオコは、アキの部屋の鏡の前に座る。
すると、鏡の中に閉じ込められた本物のアキが、鏡に映し出された。
必死に助けを求めるアキだが、そこに老婆が現れ、アキと会いたければ、呪文を唱えるようナオコに嘯く。ナオコも呪文を唱えそうになってしまうが、そこに洋が駆けつけ、呪文を中止させた。
老婆こそが一連の怪事件の犯人であることを知った洋だが、老婆は鏡の世界へ消えてしまう。
その頃、がんがんじいはどこから入ったのか、古い洋館の敷地内でミニバイクを飛ばしていた。
がんがんじいのバイクが落ちていた鏡の破片を踏みつけると、そこから先程の老婆が姿を現す。
老婆はがんがんじいに目撃されたことを意に返さず、がんがんじいを行かせてしまうのだった。
だが、がんがんじいは飛田今太と違い、本筋に関わるタイプのキャラクター。
なんとなく怪しい気配をキャッチしたがんがんじいは、物陰から洋館の様子を窺う。
するとそこに、老婆を探していた洋も現れた。
鏡の中から現れた老婆について教えられた洋は、がんがんじいとともに老婆の後を追う。
がんがんじいの存在が洋にとって助けになっているのが、地味ながら嬉しい描写。
善意の人の善意が報われていると、ちょっと嬉しい。
洋館の中に潜り込んだ洋は、そこで老婆が姿見の中に消える様子を目撃する。
それは何の変哲もない鏡でしかないようだったが、がんがんじいが鏡を殴っても割れないその鏡は、人間の力だけでは打ち砕けない魔力を持っていた。
谷の調べで、その鏡は、かつてヴェルサイユ宮殿にあった呪いの鏡であったことがわかる。
そして、アキを救出するには、自らも鏡の中に入って助け出すしかなかった。
その頃、ネオショッカーのアジトでは、老婆が魔神提督に謁見していた。
メキシコ支部から招聘されたカガミトカゲは呪いの力でパワーアップしたらしく、既に1000人以上の人間を鏡の中に引き込み、代わりに現実世界に出現させた分身体に悪事の限りを尽くさせ、社会を混乱させることが、カガミトカゲの作戦だった。
「ふう~!疲れた疲れた、全くふんぞり返って威張ってばかり、魔神提督の前に行くとどうも肩が凝るわい!」
鏡の中の世界に戻ったカガミトカゲは、魔神提督についての愚痴をこぼす。
そして、鏡の中に引き込んだ人々を奴隷とし、マッサージや身体の鏡を磨き上げるように命令するのだった。アキはもうすぐ仮面ライダーが助けに来てくれると皆を励ますが、先程の運転手がついにこの状況に耐えかね、暴れ出してしまう。
運転手はついに、カガミトカゲによって見せしめとして処刑されてしまうのだった。
老婆のアジトである洋館に再度乗り込んだ洋と谷。
洋は、もう二度と現実世界に戻ってこれない危険性を承知で、鏡の中の世界に入り込むため意識を集中する。そして、老婆がナオコに唱えさせようとしていた呪文を思い出し、その呪文が鏡の中の世界に入るための鍵であると察知すると、呪文を唱え、ついに鏡の中の世界に乗り込むのだった。
カガミトカゲのいる世界に飛び込んだ洋。だが、カガミトカゲは無数の鏡でひろしを幻惑する。
「鏡の中は、このカガミトカゲ様の思い通りになるのだ!お前の命くらい…この鏡爆弾で!」
カガミトカゲは、爆弾と言いつつ光線である鏡爆弾で、洋を攻撃する。
だが洋はそれを躱し、光線を鏡に反射させ逆にカガミトカゲを痛めつけた。
逃亡したカガミトカゲを追う洋だが、カガミトカゲが逃げ込んだ洋館は呪われており、無限に同じ空間をループする迷宮だった。洋は懸命に脱出を図るが、ループは断ち切れない。
そこで洋は、部屋にあった鏡を発見し、鏡に向かって体当りする。
すると、鏡の中は荒野の異空間に繋がっており、カガミトカゲもそこにいた。
「あの部屋のトリックを破るとは、只者ではあるまい!名を名乗れ!」
「俺の名は…筑波洋!」
「何?筑波洋!そうか、良いところに来た!貴様の命は俺がもらった!」
カガミトカゲの号令で、アリコマンドたちが洋に襲いかかる。
カガミトカゲもまた、鏡爆弾で洋を攻め立てるのだった。
洋はスカイライダーに変身し、カガミトカゲとの決戦に挑む。
「カガミトカゲ!例え鏡の中の世界でも、正義の力は負けんぞ!」
スカイライダーは次々に襲いかかるアリコマンドたちを蹴散らすが、鏡爆弾を連射してくるカガミトカゲになかなか近づけない。それでも隙をついて、スカイキックやスカイチョップを炸裂させるスカイライダー。だがカガミトカゲはその度に、砕けた鏡の破片へと姿を変えてしまう。
それらは全て、カガミトカゲの分身体でしかないのだ。
混乱するスカイライダーに、カガミトカゲの実体が襲いかかる。
その様子を、アブンガーが見ていた。
「ライダーめ、このピンチをどうやって切り抜けるか、とくと見届けてやる!」
アブンガーは再び、アブカメラを戦場に放った。
そうこうしている間にも、カガミトカゲは分身を駆使してスカイライダーを幻惑し続ける。
幾多の影分身を生み出し、迫ってくるカガミトカゲ。
そこでスカイライダーは、片手を大地につけ、カガミトカゲの呼吸音を地面を通して感知。
その呼吸音を通して、カガミトカゲの実体を掴むことに成功する。
アブカメラがスカイライダーの能力を記録する中、スカイライダーは空中を旋回して勢いをつけてからスカイキックを放つ99の技のひとつ、「スカイ大旋回キック」をカガミトカゲに決める。
実体を破壊されたカガミトカゲは、断末魔とともに爆発四散するのだった。
こうして強敵カガミトカゲを倒したスカイライダー。
だが、この戦いのデータで、ついにアブンガーはスカイライダーの全ての戦闘データを手中に収めてしまう。アブンガーとスカイライダーとの、決着の時は近い。
そして、アキや鏡の中に引き込まれた人々は無事に帰還し、ブランカにも笑顔が戻るのだった。
欲望に負け鏡の中に消えてしまう人々や、彼女たちと入れ替わった分身体が砕ける不気味な演出が怪奇ムードを高めている、怪談シリーズの最後を飾るエピソード。
恐怖演出だけでなく、偉ぶっている(といっても、実際に怪人よりは偉いのだが…)魔神提督に愚痴をこぼし、がんがんじいのことを全く意に返さないカガミトカゲもキャラが立っていて面白い。
鏡の反射を活かした光線である鏡爆弾や、いくつもの分身を駆使して戦うカガミトカゲの戦闘描写も面白いエピソードだった。それを打ち破る手法として、実体だけが行う呼吸音に着目し、それを感じ取って実体を見つけ出すスカイライダーの勝利も、ロジックがある勝利で素晴らしい。
だが、そんなスカイライダーの勝利は、アブンガーによって記録されてしまっていた。
スカイライダーの全ての戦力を把握したアブンガーが、次回いよいよ動き出すことになる。
果たしてスカイライダーはこの難敵を打ち破る事が出来るのか?
そしてアブンガーが見つけ出した、スカイライダー最大の弱点とはなにか…。