あらすじ
突然子供たちをいじめだしたスカイライダー。それはネオショッカーの新たな策略であった。
ミンダナオ島から呼び寄せられた軟体怪人・ドロリンゴがにせスカイライダーに変身し、子供たちをいじめ、スカイライダーは敵であるというイメージを植えつけていたのだ。
スカイライダー炎上案件!?本物のライダーの力を見せてやれ!
今回のネオショッカーの怪人は、フィリピンのミンダナオ島から招聘されたドロリンゴ。
アメーバの改造人間であり、粘液に覆われた軟体ボディはあらゆる衝撃を受け流すだけでなく、自由に変形し、さらに分裂することすら可能である。
そんなドロリンゴが行う作戦は、軟体ボディを変化させ、にせスカイライダーに変身。
子供たちに暴行を働くことでスカイライダーの悪評を世間に流し、スカイライダーを社会から孤立させ、行き場を失ったスカイライダーをネオショッカーに勧誘することにある。
かつてのショッカーライダーを思わせる黄色のマフラーやグローブ、ブーツを身に着けたにせスカイライダーは、子供たちをいじめ、アイスを無理やり食べさせるなどのしょうもない蛮行を決行。
さらににせスカイライダーは、スカイライダーの正義を信じてスカイライダーを弁護していた少年をひき逃げし、徹底的にスカイライダーの品位を貶める。
SNSが普及した現代なら、スカイライダーは完全に炎上。近年のシリーズで言うなら、「仮面ライダーガヴ」でビターガヴが悪事を働きガヴの名誉が貶められた案件が近いだろう。
スカイライダーへの憎悪を掻き立てられた子供たちは、ネオショッカーの手先の煽動によってスカイライダーを憎むようになる。もはや、がんがんじい=矢田勘次の必死の弁護も届かない。
スカイライダーは、にせスカイライダーを倒し、この炎上案件を収めることが出来るのか?
公園では、多くの子供たちが楽しく遊んでいた。
すると、そんな子供たちの前に、突然スカイライダーが現れる。
子供たちは本物の仮面ライダーに会えて興奮するが、スカイライダーはあろうことか子供たちを跳ね除け、下卑た笑いを浮かべながら子供たちをいじめ始めた。
あまりにもしょうもない蛮行を働くスカイライダーは、洋が子供たちの良き兄貴分として演出されてきたことを思うとあまりにも落差があり、ショッキングな映像ではある。
スーパーでナオコと沼さんが買い出しに出かけていると、なんと、スカイライダーが嫌がる子供の口にアイスを押し付け、無理矢理にアイスを食べさせようとしていた。
「つべこべ言うなよ大好きなアイスクリームだろ!食えよ!どんどんどんどん食えよ!そんでお腹壊しちゃえよほら!どんどんどんどん喰うんだよ!食ったらどうだよ!」
あまりにもしょうもない蛮行に、ナオコと沼さんも開いた口が塞がらない。
ブランカでは、谷と将棋を指すアキが、素っ頓狂なことを言って呆れられていた。
そこに買い出しから帰ったナオコたちがスカイライダーの蛮行を話す。
いくらなんでも身に覚えのなさすぎる蛮行を聞かされた洋も、呆れ顔だ。
だが、スカイライダーの蛮行は子供たちの心に確かなショックを与えていた。
スカイライダーのお面とベルトのおもちゃをつけた、スカイライダーファンの少年である広介少年が、スカイライダーが好きという理由だけでいじめられていたのである。
通りかかった洋は広介を助けるが、そこにスカイライダーがスカイターボに乗って出現する。
スカイライダーは洋を追いかけ回し、広介を轢き逃げする。
子供たちの味方であるスカイライダーがバイクで子供を轢き逃げするのはあまりにも痛ましい。
スカイライダーを慕う少年の心を踏み躙る蛮行に、洋は怒りを隠せなかった。
病院に運ばれ、緊急手術を受けた広介の出血は酷く、洋は自身の血を輸血する。
その頃、ネオショッカーのアジトに先程のスカイライダーが現れた。
子供たちに蛮行を働くスカイライダーは、子供たちのスカイライダーへの信頼を失わせるため、魔神提督が考案した偽仮面ライダー作戦を実行する、にせスカイライダーだったのである。
そしてその正体は、ミンダナオ島より呼び寄せられた軟体怪人、ドロリンゴだった。
ドロリンゴはさらににせスカイライダーの姿で悪事を働き、スカイライダーへの信頼を失わせて社会的に孤立させ、最終的に洋をネオショッカーに勧誘しようと目論んでいたのだ。
捕らえて洗脳するのではなく、社会的に孤立させて仲間に引き入れようとするのが面白い。
仮面ライダーの正義を信じる広介の身を案じる洋の輸血もあり、広介の手術は成功する。
だがそうしている間にも、にせスカイライダーの子供いじめは進んでいた。
逃げ惑う子供の髪を掴み、子供のおもちゃを踏み潰す。
スカイライダーへの子供たちの評判は、今や地に落ちていた。
そして、子供たちへのスカイライダーの憎悪を煽動する男まで現れる。
仮面ライダーは子供たちの敵であると唱え、スカイライダーの看板を殴るように先導する男の口車に乗って、子供たちのスカイライダーへの憎悪は、ボルテージを高めていった。
するとそこに、がんがんじい=矢田勘次が珍しく、鎧を着ずに現れ、スカイライダーは悪い奴ではないとスカイライダーの弁護を行う。ここであえて正体を隠すのでなく、素顔を晒し、自身の発言に責任を持ったうえでスカイライダーの弁護を行っているのが熱い。
がんがんじいは戦力としては役に立たなくても、本当に善性を備えた人間なのだ。
だが、煽動する男によって、矢田勘次も子供たちの標的にされてしまう。
見かねた洋たちが矢田勘次の助けに入り、煽動する男もアリコマンドの変装であることが露見。
逃亡したアリコマンドを追った洋だが、アリコマンドはドロリンゴの粘液で口封じに溶かされてしまう。そしてそこに、にせスカイライダーも現れた。
「既に子供たちは仮面ライダーを憎み始めている。もう信用は取り戻せはしない!」
しょうもない作戦のように見えて、SNSで一度炎上すればどんな人間も著しく評判を落としてしまうことを思えば、わりと現代的な作戦と言えなくもない…気はする。
スカイライダーを社会的に孤立させ、ネオショッカーに引き入れようとするにせスカイライダー。
もちろん、洋がそんなことを承諾するはずがない。
するとにせスカイライダーは、最後の手段として広介を襲うことを宣言した。
広介を助けたければ地獄堂まで来るように言い残し、にせスカイライダーは姿を消した。
地獄堂にたどり着いた洋を待っていたのは、ドロリンゴたちに捕まった広介だった。
ドロリンゴは、自分たちの仲間になれば広介を助けると、洋を脅すのだった。
そしてそれを断れば、にせスカイライダーの姿で、広介のみならず、日本中の子供を殺すという。
洋はそれに屈し、仲間になることを承諾するが、ドロリンゴはその証拠として、ブランカ一同を抹殺するように命ずると、広介を連れ去り姿を消すのだった。
ブランカに戻った洋は、アリコマンドに促され刀を持たされる。
しかしもちろん、洋がネオショッカーの手先になることなどありはしない。
隙をついて見張りのアリコマンドたちを倒した洋は、ドロリンゴのアジトを聞き出すのだった。
ドロリンゴのアジトに向かった洋。その手には、仲間たちの頭が握られていた。
「頭か!これでお前も立派な殺人犯だ!どうあがいても、もう俺たちの仲間になるしかないわ!」
だがもちろん、その頭は偽物のスイカ。
洋は最初から、アジトを聞き出すために言うことを聞くフリをしていたのだ。
そして広介も、アリコマンドに変装した谷と沼に助けられる。
人質がいない以上、もはやドロリンゴに遠慮する必要はない。
逃亡したドロリンゴを追って、洋はスカイライダーに変身する!
ドロリンゴにスカイパンチが炸裂するが、ドロリンゴは逆に、溶解液でスカイライダーの腕を痛めつける。するとそこに、がんがんじいも現れる。
なんとかドロリンゴの溶解液を脱したスカイライダーだが、ドロリンゴはにせスカイライダーに変身した。しかも、なんと3人に分身してしまったのである。
「仮面ライダーが4人もいるやないか!」
3人がかりでスカイライダーを痛めつけるにせスカイライダー。
本物のスカイライダーの見分けがつかないがんがんじいの邪魔も相まって、戦場は混沌とする。
結局、がんがんじいはにせスカイライダーに投げ飛ばされ、戦線を離脱した。
にせスカイライダーはスカイキックを放つが、3人に分裂したことでその力は3分の1に下がってしまっており、本物のスカイライダーのスカイキックで骨が折れてしまう。
さらに、2人がかりでスカイタックルを仕掛けるが、やはり本物にはかなわない。
結局、3つに別れては弱すぎると、再び1人に合体したにせスカイライダー。
何の意味もない戦法だ…。
熾烈な格闘戦の果て、スカイライダーは相手を空中に投げ上げ、自らも空中で回転して連続チョップを当てる99の技のひとつ、「水平回転チョップ」でにせスカイライダーに大ダメージを与える。
そして、怪人に戻ったドロリンゴにとどめのスカイキックを決め、勝利するのだった。
「仮面ライダーはいつだって正義の味方だ!みんなにそう伝えてくれ!」
広介やがんがんじいにそう言い残し、スカイライダーは走り去っていく。
広介は、スカイライダーを信じていて良かったと、笑顔を見せるのだった。
にせスカイライダーの悪事は、それだけなら稀に見る勢いでしょうもない蛮行ではあるのだが、一方で、著名人がしょうもない行動をしたのをうっかりSNSに上げてしまって炎上し、評判を著しく落とす例が多い令和の現代を思うと、むしろしょうもない悪事でライダーの評判を著しく落とす作戦はかえって現代的なのかもしれない…と思わせるエピソード。
結果的に子供たちの仮面ライダーへの信頼はガタ落ちし、あろうことか、スカイライダーを好きというだけでいじめられるという現象まで起こしたことを思えば笑えない。
一方で、そうやって名誉が貶められたスカイライダーの弁護のために、素顔を晒して現れたがんがんじいこと矢田勘次の善性の描写が光るエピソードでもあった。
普段のように顔を隠すのではなく、自らの顔を晒してスカイライダーを弁護し、子供たちを諭そうとする姿は、本当に善意の人なのだということが伝わってくる。
戦力としては役に立たなくても憎めないキャラクターなのは、こうした描写のおかげだろう。
ショッカーライダーから受け継いだ伝統とも言える、偽ライダーのトレードマークとなる黄色は、にせスカイライダーにもしっかりと受け継がれている。
警戒色として使われる黄色が差し色となっているのが、一見ヒーローに見えるが信用してはいけない存在であることを本能的に感じさせる、見事な配色センスが継承されているのは嬉しい。