あらすじ
怪人・タガメラスは少年たちを捕らえては、アリコマンド少年隊員として育成していた。
少年・マサオとサダオは、いじめっ子に勝ちたい一心でこれに入隊する。
タガメラスはアリコマンド少年隊員に、ナオコとアキを始末させようとして...。
アリコマンド少年隊募集中!? 少年の心に忍び寄る影!
今回のネオショッカーの怪人は、タガメの特質を持つタガメラス。
右手に備えた鎌の一撃や、口から伸ばした口吻から敵の体液を吸い取る能力を武器とする。
実はタガメの怪人は、「仮面ライダー」シリーズでは珍しいというか、こいつくらいらしい。
そんなタガメラスの任務は、子供だけの戦闘員集団「アリコマンド少年隊」の結成。
大人が嫌いな子供や、強くなりたいと願う子供を集め、戦闘訓練を課していた。
そんなタガメラスに目をつけられたのが、マサオとサダオという2人の少年。
いじめられっ子だった2人は、いじめっ子に勝ちたいという一心でタガメラスの誘いに乗り、アリコマンド少年隊員となって戦闘訓練を受けてしまう。
いじめっ子や大人を憎む心につけこまれ、アリコマンド少年隊に変わっていく子供たち。
果たして洋はタガメラスを倒し、彼らの心を救うことが出来るのか?
小学校では、先生がタガメについて授業を行っていた。
都会ではなかなか見られないタガメに、子供たちも興味津々。
だがそこに突然稲光が走り、タガメが発光を始めた。
そしてタガメは怪人・タガメラスに姿を変え、先生の体液を抜き取り殺害してしまう。
タガメラスは、子供たちの中に潜んでいたアリコマンド少年隊員に命じ、子供たちの中から見どころのある数人を選び出し、拉致してしまうのだった。
翌日、公園で一緒にお菓子を食べようとしていたマサオとサダオ、2人の少年は、大柄な体格のいじめっ子にお菓子を奪われてしまう。気弱な2人は、この蛮行に何も言い返すことも出来ない。
マサオとサダオが諦めてその場を去ろうとすると、アリコマンド少年隊員が現れた。
アリコマンド少年隊員は棒で子供たちを脅し、見どころのある子供をまたしても拉致する。
マサオとサダオはブランカを訪れ、谷からお弁当などをもらって釣りに出かけようとしていた。
マサオとサダオは両親が忙しく、そこで谷が面倒を見ているのだという。
池で釣りをしながら、いじめっ子にやられたことを思い出し、強くなりたいと願う2人。
するとそこにタガメラスが現れ、マサオを池の中に連れ去ってしまった。
サダオは急いでブランカに戻り、谷や洋に怪人が現れたことを伝える。一方、ナオコとアキは、サンドイッチがもったいないと、マサオが襲われた池に出かけてしまうのだった。
洋は家の美容室までサダオを送っていった。サダオはマサオがネオショッカーに攫われたことを母親に訴えるが、母親は忙しさを理由にサダオの相手をしない。
そんな母親の態度に、サダオは母親への、ひいては大人への不信感を募らせていくのだった。
その頃、マサオが襲われた河原では、マサオとサダオのために作られたサンドイッチを、がんがんじいが食していた。いくらなんでも拾い食いはあんまりな気はする。
そこにナオコとアキが現れ、がんがんじいを責める。がんがんじいがいつの間にやらナオコとアキにも素顔を晒しているが、正体が洋に露見したので正体隠しはどうでも良くなったのだろうか。
そこにタガメラスが現れ、ナオコとアキを襲う。がんがんじいは勇敢にもタガメラスに立ち向かうが、力の差は歴然。結局、足をすべらせて池に落下してしまうのだった。
タガメラスはなおも、ナオコとアキを追いかけ回し、2人をアジトまで拉致してしまう。
洋はなんとか池から這い上がってきたがんがんじいから、事情を聞く。
しかしその様子は、タガメラスにモニターされていた。
タガメラスはナオコとアキを改造し、自分の召使いにしようと目論んでいた。
思った以上に個人的な動機で2人を攫ってきたらしい。
そこに魔神提督が現れ、少年たちをもっと攫い、アリコマンド少年隊を増やすように命じる。
その頃、行方不明のマサオを心配する気持ちや、大人への不信感で、ローラースケートをしても気が晴れないサダオの前に、例のいじめっ子が現れ、ローラースケートを取り上げようとしてきた。
サダオが拒否すると、突き飛ばしてスケボーを奪おうとするいじめっ子。
絵に書いたようなクソガキだ。
するとそこに、マサオが現れる。いじめっ子に立ち向かうマサオはアリコマンド少年隊に姿を変え、仲間とともにいじめっ子を棒で叩き始めた。いくらなんでもやりすぎだ。
だがサダオはその様子に現れ、自分も仲間に入りたいと、力への誤った憧れを抱いてしまう。
そして、その心の隙に、ネオショッカーがつけこもうとしていた。タガメラスはサダオに囁く。
「タガメラスです。ところで、お前が望むならアリコマンド少年隊員にしてやるのだが…?」
「なりたい!強くなって、僕をいじめた奴や、大人たちに復讐してやるんだ!」
「なりたいのか!本当に!では一緒に来い!」
アリコマンド少年隊員に、アジトまで連行されるサダオ。しかしそこに、洋が現れる。
「その子を返してもらおう!」
「いや!この子は自分の母親や大人たちを恨んでおる!その上、何が何でも強くなりたいと思っておる!つまり、アリコマンド少年隊にぴったんこなのだ!」
タガメラスの命令で、アリコマンド少年隊員が洋に棒を持って襲いかかった。
もちろん、洋は子供たち相手に本気で戦うことは出来ない。
その隙に、タガメラスはサダオをアジトまで連れ去ってしまった。
アリコマンド少年隊員は、各所で次々に見どころの有りそうな子供たちを拉致していった。
タガメラスのアジトで訓練を強制される子供たちは、過酷な訓練でアリコマンド少年隊員に変えられていく。そして、落伍者はタガメラスによって体液を吸い取られ、殺されてしまった。
子供を手に掛けることを辞さないタガメラスの暴虐に、囚われのナオコとアキも言葉を失う。
子供がはっきりと犠牲になっている描写はシリーズでも珍しく、一方的に訓練を課しておきながら、落伍者を処刑することを厭わないタガメラスの恐ろしさを表現している。
その頃、ネオショッカーのアジトを探していた洋は、がんがんじいが偶然見つけたアジトの入口に踏み込む。しかし、訓練に合格した子供たちは既に、アリコマンド少年隊員に改造されようとしていた。魔神提督によって、ネオショッカーに忠誠を誓わせられるアリコマンド少年隊員たち。
タガメラスは改造の成果を確認するため、サダオたちに、ナオコとアキを殺させようとする。
そこに、洋が駆けつけた。
「筑波洋!よくアジトを嗅ぎつけてきた!今度こそミイラにしてやるわさ!」
洋はナオコとアキを逃がすが、アリコマンド少年隊員がそれを追う。
タガメラスはアジト内のプールに洋を引きずり込み、得意の水中戦に持ち込もうとする。
ナオコとアキはがんがんじいに連れられ、アジトを脱出。
一方、洋もスカイライダーに変身し、タガメラスとの決戦に挑んだ。
またしてもスカイライダーを池に引きずり込もうとするタガメラス。
それが失敗すると、今度は右手の剣でスカイライダーに襲いかかる。
その頃、ナオコやアキたちも、アリコマンド少年隊員に取り囲まれていた。
がんがんじいはアリコマンド少年隊員に、よってたかって棒で叩かれまくる。
そこにスカイライダーが駆けつけ、がんがんじいを助け出した。
スカイライダーは素早い動きで動き回ることで、それを追おうとするアリコマンド少年隊員の体力を消耗させ、アリコマンド少年隊員を傷つけずに無力化する。
残ったタガメラスに対しても、99の技のひとつ、「スカイフライングソーサー」を炸裂させ、子供を殺すことも厭わない凶悪怪人タガメラスを、見事に打ち倒すのだった。
そして、タガメラスの死とともに、アリコマンド少年隊員も普通の子供に戻った。
誤った強さを求め、ネオショッカーに利用されたサダオを、洋は諭す。
「サダオくん、よくわかっただろう。あいつらは地球の敵、人類の敵なんだ。あんな奴らの力を借りて強くなっても、なんにもならない。それどころか、自分も他人も不幸にするだけだ!」
そして、他のアリコマンド少年隊員にも、洋は言葉を尽くす。
「いいか、みんなよく聞いてくれ!君たちはネオショッカーのものすごい訓練にも、立派に耐えることが出来たじゃないか!その根性を、正しい方に使えば、きっと強い立派な人間になれる!」
洋の言葉に心打たれたサダオたちは改心し、構ってもらえない寂しさや、いじめっ子にも負けない、本当の心の強さを持つことを誓い、明日に向かって叫ぶのであった。
寂しさやいじめっ子への憎しみという心の隙を突かれ、誤った強さを求めてしまった子供たちを諭す、筑波洋の言葉が大いなる感動を呼ぶ秀作エピソード。
いじめっ子を見返したい、親に反抗したいという思いを正しい方向に使い、立派な人間になってほしいと願う筑波洋の、子供たちによって良い道を示そうとする姿勢が素晴らしい。
タガメラスのユーモラスな口調と、それと相反するような凶暴性も印象的なエピソード。
子供すらも落伍者であれば平然と殺害するその冷酷さは、ユーモラスな口調で人間味を感じさせるゲンドウだからこそより恐ろしく演出され、冒頭の授業で語られた、凶暴性を持つタガメがモチーフの怪人らしさとして演出されており、強い印象を残している。