あらすじ
人類の宇宙開発の夢のために、自ら志願して惑星開発用改造人間・スーパー1となった沖一也。
そのスーパー1を手中に収めようとする闇の王国・ドグマは、国際宇宙開発研究所を壊滅させる。
ただ一人日本に脱出した一也だが、彼は未だスーパー1への変身を完全に会得していなかった。
果たして一也は、スーパー1への変身の呼吸を習得する事が出来るのか。
夢を力に変える時――惑星開発用改造人間・スーパー1誕生!
「仮面ライダースーパー1」の物語は、アメリカ国際宇宙開発局から始まる。
来たるべき人口爆発、食糧危機という困難に備え、彼らはその解決策を宇宙に求めていた。
遠く遥か銀河に輝く未知の惑星、S1探索の計画を進めていたのである。
しかし、遠い銀河のS1の環境は、生身の人間には過酷すぎるものであり、そのテラフォーミングは困難を極めるものになる。アメリカ国際宇宙開発局はその解決策を、人間科学の粋を集めた惑星開発用改造人間を生み出すことに見出すのだった。
惑星開発用改造人間、すなわちスーパー1とは、これまでの悪の組織に力を植え付けられた仮面ライダーたちと異なり、人類の科学が生み出した、ポジティブなライダーなのだ。
アメリカ国際宇宙開発局の科学者である沖一也は、宇宙開発を志していた今は亡き父親の遺志を継ぎ、人類の未来を賭けた惑星S1探索のための、惑星開発用改造人間への改造に自ら志願。
彼の強い意志を知る恩師・ヘンリー博士によって、夢のために人ならぬ身となった沖一也は、惑星開発用改造人間、スーパー1へとその姿を変える。
スーパー1とは、過酷な環境に耐えるための装備として備えた、両腕を5つの形態に変化させ、様々な能力を発揮することが出来るファイブ・ハンドによってあらゆる状況に対応する事が可能である、人類の宇宙への夢が生んだ、人類の英知の結晶なのだ。
だが、彼が銀色の身体で目覚めた日、世界は星のない闇だった。
そんなスーパー1の力を狙い、新たなる悪の組織もまた、行動を開始していたのである。
絶対的支配者・帝王テラーマクロに支配され、価値のない人間の抹殺を掲げる優生思想に基づいた恐怖の王国、闇の王国ドグマ。美しい者、優れた者だけが生き残ったユートピアを生み出さんとするドグマは、スーパー1の優れた能力に目をつけ、それを手に入れようとしていたのだ。
そしてドグマの刺客として、大幹部のメガール将軍がヘンリー博士を脅迫したのである。
ヘンリー博士はドグマの要求を拒絶するが、ドグマはついに開発局の研究所を襲撃。
ドグマに脅された科学者によって変身制御コンピューターを破壊されてしまい、一也はスーパー1に変身することが出来ず、ドグマの怪人・ファイヤーコングに抵抗する術を持たなかった。
次々と仲間を殺される中、果たして、一也は脱出し、スーパー1となることが出来るのか?
今、人類の未来を守る、新たな「スーパーライダー」の戦いが始まろうとしている。
OP映像は、電動変形ギミックが搭載された大型マシン、Vジェットが疾走する迫力の映像。
そこにカットインするスーパー1の内部図解図が、メカニックライダーの魅力をアピールする。
スーパー1最大の特徴である、ファイブ・ハンドの色を取り入れた歌詞も素晴らしい。
アメリカ合衆国にある、国際宇宙開発研究所。
そこに所属する青年科学者、沖一也は、星が輝く夜空を見上げていた。
そして一也は、研究所の職員が見守る中、ヘンリー博士に手術を受ける。
それは、惑星開発用改造人間・スーパー1を生み出すための、人類の英知の結晶たる手術だった。
国際宇宙開発研究所の秘密プロジェクトチームの一員である沖一也は、自ら志願して人の体を捨て、その体を惑星開発用改造人間に変えたのである。
それまでのライダーが自分の意志とは関係なくその体を改造人間にされ、そのことで苦悩する一面を持ち合わせていたが、一也は人類の宇宙開発の夢のために自ら人の体を捨て、惑星開発用改造人間となった。ポジティブな理由で誕生した、初のライダーということになる。
ヘンリー博士を演じるのは、「大鉄人17」のハスラー教授や、様々な特撮作品で外国人キャラクターを演じてきた大月ウルフ氏。後の「仮面ライダードライブ」では、ヘンリー博士のセルフオマージュとして、マッハドライバーを開発するハーレー・ヘンドリクソン博士を演じている。
ヘンリー博士以下、10名の科学者で構成される極秘プロジェクトチームに課せられた任務とは、来たるべき人口爆発に伴う食糧危機などと言った様々な困難を打開すべく、宇宙に資源や新天地を求め、惑星S1に前線基地を作ることだった。
だが、宇宙の果ての惑星S1には、人類の想像を超えた困難が待ち受けているかもしれない。
そこで彼らは、あらゆる障害に耐えられる、超人間的な改造人間の研究に着手したのである。
一也は自らこの改造人間手術第1号に志願した。
ヘンリー博士は、その手術を受ければ二度と人間に戻れず、普通の生活は出来ないと警告する。
だが、一也の意思は固かった。彼は幼い頃に科学者である両親を失い、孤児として宇宙開発研究所で育った負い目から、自分を犠牲にしようとしているのではないか?
ヘンリー博士の問いに、一也はきっぱりと首を横に振る。
一也の真意は、人類の未来を宇宙にかけていた、父の遺志を継ぐことにあったのだ。
そこに、一筋の流れ星が降る。
「流れ星だ。遠い宇宙から父が僕を呼んでいる、使いの星だ」
ヘンリー博士はその熱意に絆され、一也を改造人間手術第1号に抜擢するのだった。
そして、惑星開発用改造人間の改造手術は無事に完了した。
ヘンリー博士たちが見守る中、コードネーム「スーパー1」となった一也は目を覚ます。
ヘンリー博士が変身制御コンピューターを操作すると、一也の身体は眩い光を放ち、やがて銀色の体を持った改造人間へとその姿を変えた。惑星開発用改造人間・スーパー1の誕生だ。
スーパー1のボディカラーは、メカニックライダーらしい、シャープな印象の黒と銀が鮮烈だ。
また、ツリ目の複眼もこれまでのライダーにはない特徴で、凛々しさを演出している。
ちなみにモチーフはスズメバチとのこと。
スーパー1はヘンリー博士たちに感謝を示す。
ヘンリー博士はその能力をテストするため、研究所外の実験場へスーパー1を向かわせた。
だが、一人の職員が不審な動きを見せ、外部より怪しい男を招き入れてしまう。
宇宙開発用に様々な機能を与えられたスーパー1、その最大の機能は、両腕を5つの形態に変化させることで、様々な機能を発揮することが出来るファイブ・ハンドである。
基本形のシルバーハンド=スーパーハンドは、破壊力300tのスーパーパンチを放つことが出来る。
未知の惑星で遭遇するかも知れない宇宙怪物との戦いに備えた装備だ。
続いて、レッドハンド=パワーハンド。50tの物体の落下を受け止め、空の果てまで投げ飛ばす剛力の腕である。しかし、まだその機能に慣れていないスーパー1は、パワーハンドの使用に鋭い痛みを感じるのだった。人ならぬ身になった痛みを表現している描写が秀逸だ。
ヘンリー博士は、変身を重ねることで痛みは消えていくと、スーパー1を安心させる。
そして、ブルーハンド=エレキハンド。手をかざすことで、電流を発生させモーターや電気を点ける事が出来る、超小型の発電システムである。
惑星探検中に何らかの障害で電流がストップしても、即座に復旧させることが出来るのだ。
そして、最大出力で放てば、落雷に匹敵する3億ボルトの稲妻放電を放つことすら可能である。
次に、グリーンハンド=冷熱ハンド。右腕からは鉄をも溶かす超高温火炎を噴射し、左腕からは超低温の冷凍ガスを放つ万能装備である。
炎の惑星や氷の惑星での活動を前提とした、宇宙開発用の装備だ。
最後に、ゴールドハンド=レーダーハンド。偵察用ロケット=レーダーアイを空に発射することで、半径10km四方の情報をキャッチし、手の甲部分のスクリーンに映し出すことが可能である。
また、緊急時にはレーダーアイを小型ミサイルとして用いることも可能な、隠し武器だ。
さっそくレーダーハンドの能力をチェックしていたスーパー1は、研究所から500m離れた崖の上に、怪しげな一段の影をキャッチする。銀の鎧を着た男に率いられた謎の一団の出現。
そして、ヘンリー博士は科学者の中に、先程部屋に入ってきた怪しげな男を発見。
彼が謎の一団のスパイであると察知し、科学者たちに後を追わせる。
しかし、結局男は逃走し、謎の一団も忽然と姿を消すのだった。
翌日、ヘンリー博士が帰宅するため車を走らせていると、その前に怪しげな車が立ちはだかった。
そこから降りてきたのは、研究所に潜入した怪しい男。
自らを闇の王国ドグマの使者、猿渡と名乗る男は、メガール将軍の命でヘンリー博士を連行すると宣告する。もちろんヘンリー博士はそれを拒絶し、車を走らせようとする。
だが、猿渡は素手で車を押し留め、博士のボディガードの銃撃にも全く怯まない。
やがて、猿渡はドグマ怪人・ファイヤーコングの正体を表し、火炎放射で博士のボディガードを抹殺。そのままヘンリー博士を拉致してしまうのだった。
今回登場するドグマ怪人はゴリラの特性を備えたファイヤーコング。
ドグマ怪人は基本的には動植物をモチーフとしているが、それぞれが特殊な超能力を持つ。
ファイヤーコングの場合は、額から高熱の炎を放ち、拳法にも長けているのが特徴だ。
ファイヤーコングによってドグマのアジトに連行されたヘンリー博士の前に、ドグマの大幹部、メガール将軍が現れた。しかし、メガール将軍はヘンリー博士を丁重に連れてくるという任務を果たせなかったファイヤーコングを叱責し、ヘンリー博士を縛る縄を解かせる。
「博士。ご無礼の段、平にご容赦願いたい」
ヘンリー博士にやけに丁重な態度で接するメガール将軍だが、これはドグマが優れた能力を持った人間には価値を見出す一方、無価値と断じた人間を抹殺することを厭わない優生思想を掲げた組織であり、ヘンリー博士はそのお眼鏡にかかった人材ということだろう。
「我ら闇の王国ドグマに生まれ、帝王テラーマクロに忠節と絶対服従を誓いし者だ!我らは、人類を破滅から救い、ユートピアを地球に打ち立てようとする者だ!」
「一体君たちはどんなユートピアを目指しているのかね!」
「我らは、身体の弱い者や頭の悪い者を憎む!そのような人間を抹殺して、美しい者、優れた人間たちの王国を建設する!」
「何だと!?弱い者を抹殺して、美しい者、優れた者の王国をだと!?」
「そうだ博士!豚のような愚かな人間どもが、鼠のように繁殖して、地球を破滅に追いやろうとしている。我々は、その危険から人類を救おうとしているのだ!」
「待ってくれ!人間は誰でも一つは優れたものを持っている!優しい愛を秘めているんだ!誰にも、人間を区別することなど、許されてはおらん!」
メガール将軍とヘンリー博士の問答は、役者さんの熱演もあってかなり見応えがあるもの。
近い将来の人口爆発や食糧危機に対して対処しようという点ではコインの表と裏であるヘンリー博士とドグマだが、宇宙に新天地を求めそれを解決せんとするヘンリー博士と、優生思想に基づき劣っていると判断した人間を抹殺することを厭わないドグマが相容れるわけがない。
メガール将軍は、帝王テラーマクロからの命令を伝える。
それは、改造人間スーパー1をドグマに提供しろというものだった。
決然と拒否するヘンリー博士だが、メガール将軍は6時間の猶予を与え、ヘンリー博士を帰す。
するとそこに、帝王テラーマクロが姿を現した。
「メガール将軍。ヘンリー博士をなんと見た?」
「はっ。人間の一部には、決して我らに服従しないものがおります!」
「ヘンリー博士はその一部と申すのだな…殺してしまえ、殺すべきだ!我らの味方にならなければ仕方がない、その時は殺してしまえ、バラバラにな…」
顔面蒼白、椅子に座り指示を出す帝王テラーマクロの姿は、何処か「人造人間キカイダー」のプロフェッサー・ギルを思い出させるものがある。
カメラワークや照明に凝り、暗闇の中で顔面蒼白のアップが多用された不気味さの演出が見事だ。
研究所では、一也がトランポリンを飛び、スーパー1への変身の呼吸を習得しようとしていた。
するとそこに警報音が響く。先日、猿渡を研究所に招き入れた科学者・坂田が、スーパー1の変死制御コンピューターを破壊してしまったのだ。
坂田は家族をドグマに人質に取られ、脅迫されていたのである。
しかしこれで、一也はコンピューターの指令で変身することが不可能になってしまった。
ヘンリー博士は一也に、強力なジェット噴射を可能にするスーパーマシン・Vマシーンを見せる。
そして、一也に、残り5時間の間に変身の呼吸を掴むように頼むのだった。
一也は研究所内のトレーニングルームで鍛錬を行うが、一向に変身することが出来ない。
一方、ヘンリー博士は、とある場所に国際電話をかける。
それは、かつてスカイライダーと共にネオショッカーと戦った谷源次郎が新たに開店した、谷モーターショップだった。メカニックのチョロや従業員のハルミと共に谷モーターショップを営む谷のもとに、ヘンリー博士からの電話がかかってくる。
それは、一也をドグマから匿うように願うものだった。
一向に変身の呼吸を習得する事が出来ない一也。残された時間はあと1時間である。
ヘンリー博士はドグマの姿を一也に見せ、自分が掴んだドグマの情報が書かれたメモを渡す。
そして、研究所から秘密の通路で脱出するように促すのだった。
「ワシはここに残る…行くんだ!そして一日でも早く、変身の呼吸を身につけるんだ!」
ヘンリー博士に促され一也が脱出しようとした瞬間、ドグマが研究所を襲撃した。
ドグマの戦闘員・ドグマファイターによって次々に科学者たちが殺されていく。
そして、ヘンリー博士もまた、猿渡によって致命傷を追うのだった。
猿渡に向かっていこうとする一也に、猿渡は我流の拳法・猿渡拳の構えを取る。
猿渡と対峙する一也だが、未だ変身の呼吸を掴めていなかった。
「ダメだ…変身できない!変身さえ出来たら、皆を助けることが出来るのに!」
「変身だ…変身せよ、沖一也!」
しかし結局一也は変身できず、猿渡の猿渡拳が一也を痛めつける。
そこに、息も絶え絶えのヘンリー博士は、割って入った。
「行け!お前は人類の未来のために生きるんだ!行け!一也!」
ヘンリー博士の遺言に従い、脱出口へ急ぐ一也。
猿渡はファイヤーコングの正体を現し、火炎放射で一也を攻め立てる。
ファイヤーコングに向かっていった一也だが、力の差は歴然だった。
ドグマは研究所を爆破し、一也も爆炎の中に消えていく。
メガール将軍は帝王テラーマクロに、「流れ星消えた」の暗号を送るのだった。
その流れ星とは、人類の夢の流れ星たるスーパー1のことだ。
「そうか…惜しい男よのう…これも運命じゃ…」
しかし、沖一也は生きていた。絶体絶命の危機の中で、スーパー1に変身していたのだ。
スーパー1はVマシーンが変形したVジェットを飛ばし、日本へ急ぐ。
スーパー1こそ、仮面ライダースーパー1。スーパーライダーだ!
今、悪の王国ドグマ打倒を胸に秘めて、スーパーライダーは疾走を開始した!
エンディング映像は、スーパー1のもう一台のマシンであるブルーバージョンをフィーチャーした映像が印象的。ブルーバージョンは本格的なレース用のモトクロッサーがベース車として使用されており、その有り余るパワーを存分に活かしたジャンプで、ドグマファイターの群れや車を飛び越えるダイナミックな映像が目を引くものになっている。
新シリーズ第1話を実質的な前後編とすることで、ファイブ・ハンドというメカニック的な装備を持つスーパー1の能力を魅力的に演出し、沖一也が自ら惑星開発用改造人間となる決意を固めた心情描写も丁寧に演出。そして優生思想に取り憑かれた狂気の王国ドグマの恐ろしさも存分に描いた、ドラマチックな展開が目を引く第1話は見応え抜群だった。
同じ人類を救うという理想を掲げながら、そのやり方が決定的に相容れないヘンリー博士、一也と、ドグマの対立軸が明確に示されている作劇も非常に秀逸である。
変身制御コンピューターが破壊されたことで、肉体と精神の鍛錬によって変身の呼吸を習得しようとする沖一也の姿は、「人間というものは身体を鍛えられるだけ鍛えて、考えられる限りのことを考えて、そうして敵に打ち勝つんだ、ということを子供に教えたい主義」(講談社Official File Magazine 仮面ライダー Vol.5」より引用)である江連卓氏ならではのヒーロー像。
メカニックライダーであるスーパー1に、人間の精神力で変身するという要素を加えたことで、鋼の身体に人間の精神力を宿す新たなライダー像が見事に形成されている。
こうして、同じく人類を来たるべき人口爆発から救うという理想を掲げながら、宇宙開発に活路を見出し、夢のために戦うスーパー1と、弱き人間を抹殺することで強いものだけが生き残るユートピアを建設せんとするドグマとの戦いが始まった。
だが、スーパー1は未だ変身の呼吸を習得することは出来ていない。
スーパー1の長く苦しい戦いは、まだ始まったばかりなのだ。