あらすじ
ドグマは人間の少年の頭脳を組み入れた、世界一の生体コンピューターを作ろうとしていた。
そして、少年・健一は捕らえられて機械に組み込まれてしまった。
彼を助けようとする一也の前に、怪人・アリギサンダーが立ちはだかる。
人間を機械にする悪夢!スーパー1よ、鋼のグローブを砕け!
今回のドグマ怪人は、蟻の特性を備えたボクシング怪人・アリギサンダー。
素行の悪さからライセンスを剥奪され、ボクシング界を追放されながら、強さとその強さを発揮する場所を求めていたボクサーを素体に改造された怪人である。
ボクサー由来のボクシングスタイルの戦闘スタイルを、右腕の鉄球で更に強化している。
蟻に由来する能力である、頭部の触覚から放つ蟻酸はあらゆるものを溶解させ、ボクサー時代に培ったボクシングスタイルによって打ち出される右パンチの破壊力は絶大。
赤心少林拳の達人であるスーパー1とはまさに異種格闘技戦の様相を呈している。
そんなアリギサンダーの勧める作戦は、ドグマに拉致され、人間の脳を機械と接合させた人間コンピューターの開発を脳波コントロールによって強制させられていた山下博士の研究を完成させ、優秀な人間の頭脳を接合したドグマ式人間コンピューターを作り出すこと。
そしてそのために、機械に適合する人間の子供を探し、拉致することだった。
そしてその適合者とは、山下博士の息子、健一だったのである。
ドグマによってコントロールされ、息子を生きたコンピューターに変えようとする山下博士。
果たしてスーパー1はアリギサンダーを倒し、親子の間に平和を取り戻すことが出来るのか。
町でロードワークに励むボクサーがいた。だがそのボクサーは、トレーニングに励む空手部の学生にわざとぶつかって因縁をつけ、空手部の面々をを殴り飛ばしてしまう。
彼はその素行の悪さでプロボクサーとしてのライセンスを剥奪されながら、強さへの渇望とその強さを誇示したい自己顕示欲に囚われていたのだった。
そんなボクサーに、黒スーツに身を包んだメガール将軍が接触する。
メガール将軍はボクサーの素性を調べ上げ、「世界一強い男になってみたくはないか」と声をかけ、ボクサーをドグマ怪人の素体にしようとしていたのだ。
どのようなキックもパンチも跳ね返す鋼鉄の鎧と、ボクサーのパンチを活かす鋼鉄の鉄球。
そして、鉄やコンクリートをも溶解させる蟻酸。
強さに取り憑かれたボクサーは、ドグマ怪人への改造手術をまたとない機会と承諾する。
こうしてボクサーはドグマ怪人・アリギサンダーと化して、子どもたちの前に姿を現した。
蟻酸を放ち、子どもたちの自転車を一瞬にして溶解させたアリギサンダーは、ドグマファイターに命じて子どもたちを拉致させる。果たして、その目的は何なのか。
アリギサンダーたちはさらに、広場でサッカーを楽しむ子どもたちの前にも現れる。
ドグマファイターは次々に子どもたちを捕らえ、アリギサンダーはサッカーのコーチをしていた男を、右拳に備えた鉄球で殴りつけるのだった。
その現場に偶然居合わせたチョロは、「化け物が子どもたちを捕らえた」と話を聞く。
チョロから、蟻の化け物が子どもたちを攫った話を聞いた一也。
さらに谷は、子どもたちが攫われた新聞記事を一也に見せる。
一也はこの一連の事件を、ドグマの仕業だと察知するのだった。
その頃、ドグマのアジトでは、科学者・山下博士が実験を行っていた。
それは、人間の脳をコンピューターに接続し、人間コンピューターを作り出す研究である。
だがそれは、大人の脳ではどうしても適合することが出来ずにいた。
実験台にされた人間は、拒絶反応から発狂してしまう。
そこでドグマは人間コンピューターを完成させるために、子どもたちを拉致したのだ。
山下博士は、子どもを容易に犠牲にしようとするドグマに恐怖し、なんとしても子どもを実験台にすることを拒む。だが、メガール将軍は山下博士の頭部に全身コントロール装置を取り付け、人間コンピューターの研究を進めさせた。操られた山下博士は、子どもたちの脳波測定を開始する。
山下博士を演じたのは、「機動戦士ガンダム」の主題歌「翔べ!ガンダム」「永遠にアムロ」や、「グロイザーX」、「バトルホーク」主題歌を歌唱したことでおなじみの池田鴻氏。
ソフトなお声が、自身の悪魔の研究に心を痛める科学者という役どころにマッチしている。
帝王テラーマクロに謁見したメガール将軍は、人間コンピューター計画の遅れを叱責されていた。
人間コンピューターとは、機械と人間とを結びつけた、生きた機械。
これが完成すれば、ドグマの理想郷建造に大いに役に立つという。
ドグマはそれを完成させるため、5年前に山下博士を事故に見せかけて拉致していた。
しかし、機械に適合した脳波を持つ人間が見つからず、計画が遅滞していたのである。
帝王テラーマクロは、純粋無垢な子供の脳とドグマの機械技術を融合させることで、理想郷建設のために、自らのインスピレーションを超えた発想を生み出すことに期待していた。
自分のインスピレーションを超えた発想を周囲のスタッフ陣に求めるあたりは、どこか庵野秀明氏の映画作りの姿勢を思わせる…気もする。
メガール将軍はアリギサンダーに、山下博士を連れて脳波が適合する子どもを探すように命じる。
その頃、山下博士の息子である健一は、良に誘われてキャッチボールに興じようとしていた。
健一は、5年前に行方不明になった父親のような科学者になることを夢見ていた。
しかしその前に、アリギサンダー率いるドグマファイターたちが現れる。
アリギサンダーに捕まった健一は、行方不明の父親がドグマに捕まっていたことを知る。
山下博士は懸命に息子が人間コンピューターに適合していないと庇うが、アリギサンダーは自ら脳波を測定し、健一をアジトへ拉致してしまった。
アリギサンダーは、父親の山下博士に、息子を犠牲にさせることを面白い趣向だと嗤う。
パトロールをしていた一也は、良が助けを求める声を聞きつけ、助けに入った。
ドグマファイターを蹴散らした一也だが、アリギサンダーはボクサーの動きで一也を翻弄し、右腕の鉄球で一也にダメージを与える。しかし、追撃を躱した一也は、スーパー1に変身した。
スーパー1変身時に流れる「スーパーライダー」と聞き取れる電子音は、近年の仮面ライダーシリーズで様々な音声を話す変身ベルトの先駆けとも言えるだろう。
赤心少林拳を使いこなすスーパー1と、ボクシングスタイルを得意とするアリギサンダー。
改造人間同士の異種格闘技戦が幕を開けた。
アリギサンダーの右ストレートの破壊力は強大で、コンクリート壁に大穴を開ける。
それにスーパー1が怯んだ隙をつき、アリギサンダーは山下博士を連れて撤退した。
一也に助けられた健一は家に帰り、父親が生きていたことを母親に訴える。
だが、5年前の飛行機事故で死んだはずの山下博士が生きているなど、容易に信じられない。
すると、健一の耳に健一を呼ぶ山下博士の声が聞こえてくる。
声に導かれて、近所の公園に向かった健一を、アリギサンダーが待ち受けていた。
健一は母親とともに、ドグマファイターに捕まってしまいそうになる。
だがそこに、アリギサンダーを追跡していたスーパー1が現れた。
アリギサンダーはスーパー1に向かって蟻酸を噴射するが、スーパー1はそれを躱す。
しかし、アリギサンダーの強烈なパンチの威力は絶大だ。そのパンチが公園のトーテムポールを倒し、健一と母親がその下敷きになりそうになる。
スーパー1はトーテムポールを受け止めるが、その隙に健一は攫われてしまった。
しかし一也は、健一の服のポケットに小型の無線探知機を仕込んでいた。
チェックマシーンで体の機能を点検した一也は、探知機の反応を追ってVジェットを飛ばす。
ついに、ドグマのアジトに連行された健一。頭部に身体コントロール装置を取り付けられた山下博士は、最愛の息子を人間コンピューターの実験台にすることを強制される。
スーパー1はアジトにたどり着くものの、そこにアリギサンダーが立ちはだかった。
アリギサンダーにけしかけられたドグマファイターの群れを、スーパー1は蹴散らしていく。
「俺様の右ストレートで、貴様を殺してやる!」
ついに、アリギサンダーとの決戦の時。アリギサンダー最大の武器である右腕の鉄球、そして強固な胸の装甲は、スーパー1のスーパーハンドでも破壊することが出来ない。
その頃、操られた山下博士はついに、息子を人間コンピューターの実験台にしようとしていた。
スーパー1もアリギサンダーに苦戦を強いられ、右ストレートをもろに食らってしまう。
スーパー1最大の危機。
「俺様の体は特別な金属で出来ているのだ!」
金属の肉体を誇るアリギサンダーの言葉に、スーパー1は逆転の活路を見出した。
「チェンジ!冷熱ハンド!超高温火炎!」
冷熱ハンドの超高温火炎がアリギサンダーの体を焼き、その金属の肉体を温める。
アリギサンダーはたまらず、ドグマファイターに命じて水で体を冷やさせる。
それこそが、スーパー1の作戦だった。
高温状態から急激に温度を下げたことで、アリギサンダーの金属ボディが金属疲労を起こしたのである!スーパー1はそこに、「スーパーライダーダブルキック」を決めた!
スーパーライダーダブルキックを食らったアリギサンダーの装甲にヒビが入る。
「アリギサンダー!熱した金属を急に冷やすと、脆くなることを知らなかったと見えるな!」
追い詰められたアリギサンダーは、蟻酸を噴射するが、スーパー1には通用しない。
だが、人間コンピューターの完成まで、もはや幾ばくの時間は残されていない。
スーパー1は高速で前転して蹴り飛ばす「スーパーライダー前方回転蹴り」を炸裂させ、更にとどめの「スーパーライダー日輪キック」をアリギサンダーに決め、ついにこの難敵を打ち破った。
人間コンピューターの実験は進行していたが、メガール将軍はアリギサンダーの敗北を知り、アジトの放棄を決定した。なんだか知らないけど妙に諦めが良い。
スーパー1の助けで健一は助け出され、山下博士も正気を取り戻す。
ドグマによって5年間、離れ離れになっていた親子は、スーパー1の助けで再会できたのだ。
改造までの経緯が描かれ、ボクシングスタイルの戦闘スタイルと頑強なボディでスーパー1をギリギリまで追い詰めたアリギサンダーのキャラが立っていたエピソード。
赤心少林拳を極めたスーパー1との、改造人間同士の異種格闘技戦は非常に見応えがあり、鉄球状の右ストレートの破壊力はスーパー1にすら大ダメージを与え、あわやスーパー1敗北か!?とハラハラさせられる。その強固なボディを打ち破る理由付けとして、ファイブ・ハンドの冷熱ハンドを用いた金属疲労が描かれているのも丁寧な作劇だった。
人間コンピューターの道具として子どもたちを拉致し、子どもたちを理想郷建設のための道具とするドグマの恐ろしさの演出もまた、秀逸なエピソードだった。
前半、ドグマに拉致され集められた子どもたちがいったいどうなってしまったのか、その後語られていないことにも恐ろしさを感じる。脳波を測定した結果適合しないことがわかり開放されたのか、あるいはそのまま実験台にされてしまったのか…。
未来ある子どもたちを自分たちの野望達成の道具にするドグマは、決して許してはいけない。