あらすじ
街の人々に、サンタクロースがくれたテニスボール。そのボールには大変な秘密が隠されていた。なんと、触れた者に悪夢を見せ、恐怖に震えさせる「夢薬」が含まれていたのである。
一也もまた、その「夢薬」の作用によって、幼い頃に負った足の傷の悪夢に苦しんでいた。
バクロンガーはさらに、貯水池に夢薬を投入して東京全都民を自殺に追い込む計画を企てていた。
この窮地に、一也は自分の弱い心を乗り越えるため、玄海老師の元、必死の特訓に臨む。
聖夜に仕掛けられた悪夢!一也よ、己の恐怖心を超えろ!
今回のドグマ怪人は、貘の特性を持った改造人間であるバクロンガー。
クリスマスに浮足立つ街にサンタクロースに化けて潜入し、触れた者に悪夢を見せ、恐怖に震えさせる作用を持った「夢薬」を表面に含んだテニスボールを配布し、多くの人間に悪夢を見せ、世界の行く末に絶望させることで夢と希望を奪い、自殺に追い込もうとする作戦を実行した。
良やチョロも夢薬の毒牙にかかり悪夢を見る中、一也も幼い頃に負った足の傷の悪夢に苦しむ。
悪夢によってまともに戦えない一也は、己の恐怖心を乗り越えるべく修行に励むが、なかなか効果を挙げられない。焦りに心乱れる一也の前に、玄海老師が姿を現した。
玄海老師の導きの元、自分の弱い心を乗り越える荒行に励む一也。
だが、バクロンガーは次なる作戦として、貯水池に夢薬を投入し、都民全員を集団自殺に追い込もうとしていた。果たして一也は己の恐怖心を乗り越え、バクロンガーを倒せるのか。
スーパー1は悪夢に苦しめられていた。
谷やハルミ、チョロたちが、奇妙な虫を自分たちに飛ばしてくる悪夢。
その虫は次々にドグマファイター、そして怪人バクロンガーに姿を変えて襲いかかる。
スーパー1は徐々に追い詰められていき、虫が変化した鎖に絡め取られる。
そして、左足をバクロンガーに痛めつけられ、抵抗できずに倒されてしまうのだった。
悪夢から目覚めた一也だが、夢で痛めつけられた左足には、実際に痛みが走っていた。
そして良も、学校で通信簿がオール1、落第を言い渡され、級友から嘲笑われる悪夢を見る。
うなされる良を心配するハルミだが、良は学校に行かないと叫ぶのだった。
翌朝、チョロの様子もおかしくなっていた。なんでも、あと一日で世界が滅ぶという。
そこに、良を連れて一也も谷モーターショップに現れる。良は悪夢を見た影響で、学校に行くくらいなら車に轢かれて死んでしまおうと思うまでに追い詰められていた。
チョロの様子がおかしいのも、昨晩地球が滅びる悪夢を見たからだった。
さらに、ビルの屋上で女性が飛び降り自殺を図る事件が起きる。
一也と谷はなんとか女性を救出するが、女性もまた昨晩悪夢を見ており、自分が不治の病に罹患していてもう助からないと思い込んで、自ら命を断とうとしていた。
多くの人々が悪夢に苦しみ、自ら命を経とうとしてしまっているこの一連の事件は、ドグマ怪人・バクロンガーの実験によるものだった。バクロンガーは日本中の人間を死に至らしめようと嗤う。
一也の足が痛むのも、チョロや良の様子がおかしいのも、全て悪夢を見たかだった。
なぜ、谷モーターショップで一也とチョロ、良だけが悪夢を見たのか。
ハルミは数日前、一也たちだけがテニスボールに触れ、青い字が手に浮かんでいたことを思い出す。そのテニスボールは、商店街で良がもらってきたものだった。
一也は商店街で配られたテニスボールに、ドグマの策謀を感じ取る。
その頃、ドグマのアジトでは、不気味な青い薬がテニスボールに浸透させられていた。
それは、バクロンガーが発明した、触っただけでたちまち、普段自分が最も恐れていることの夢に取り憑かれ、生きるのが嫌になって自ら命を断ってしまう「夢薬」だった。
一也も、良も、チョロも皆、夢薬の影響で悪夢を見てしまったのである。
一也は、幼い頃に崖から落ちて足の骨を折ったことがあり、その時の痛みや恐怖心を悪夢としてみてしまった結果、怪人に足を痛めつけられる悪夢を見たのだ。
次の日、ドグマが化けたサンタクロースが、商店街で夢薬入りのテニスボールを配っていた。
一也は人々の前でサンタクロースの正体がバクロンガーであることを暴露し、直接対決に挑む。
だが、バクロンガーはドグマファイターを呼び出し、一也の左足を執拗に痛めつける。
一也はスーパー1に変身するが、左足の痛みは重く、満足に動くことが出来なかった。
バクロンガーは鼻の大砲「バクロン砲」で、動きの悪いスーパー1を攻め立てる。
だがスーパー1は冷熱ハンドにチェンジし、冷凍ガスでバクロンガーたちを撤退に追い込んだ。
しかし、スーパー1の左足は、徐々に動きを悪くしていく。
谷の知り合いの科学者によって、夢薬が一緒の自己催眠剤であることを突き止めた一也。
過去に足を折った痛みや恐怖心が、夢薬によって再び目覚め、自己催眠によって歩けないと思い込んでしまい、一也は満足に戦うことができなくなっていた。
こんな恐ろしい薬が水道にでも混ぜられれば、日本中で自殺が蔓延してしまう。
一也はそれを阻止するべく、精神力で自分の弱い心を乗り越える修行に挑んだ。
坐禅を組み、過去の恐怖心を思い返す一也。
だが、どうしても足の痛みの妄執を取り払うことが出来ない。
悩み苦しむ一也の前に、玄海老師と弁慶が現れた。
玄海老師は火炎の行で救いの道を開くように助言する。
火炎の行とは、燃え盛る炎の中を歩いて渡る、荒行の中の荒行。
極限にまで精神を集中していなければ、全身焼かれて死ぬ、決死の行である。
一也は玄海老師が見守る中、火炎の行に挑んだ。
赤心少林拳の呼吸とともに、火炎の中に踏み出していく一也はついに炎を渡り切る。
「よくぞ自分に打ち勝った。一也。もはや恐れるものは何もない!行け!そして、邪悪な夢に苦しむ人々を救うのだ!」
一也はチェックマシーンで体の機能をチェックし、もはや一切の異常も見られなかった。
万全の体制を整えた一也は、バクロンガーへのリベンジを誓う。
だが、ドグマは既に、貯水池に夢薬を混入する作戦を開始しようとしていた。
帝王テラーマクロも、満足そうに笑う。
「東京中の人間にとっては、とんだクリスマスプレゼント…さぞ良い夢を見ることじゃろうて…」
一也は変装して、バクロンガーのアジトへ潜入することに成功。
自身の恐怖心を乗り越え、万全の動きになった一也は、スーパー1に変身する。
ドグマファイターを華麗な技で次々に倒していくスーパー1。
そしてついに、バクロンガーとの決戦の時。
オートバイを操るバクロンガーに対抗すべく、スーパー1もブルーバージョンを呼び出す。
熾烈なバイクチェイス。バクロンガーのバクロン砲をブルーバージョンの超スピードで躱したスーパー1は、「スーパーライダーダブルキック」でバクロンガーをバイクから蹴り落とす。
そして、パワーハンドにチェンジし、バクロンガーのハサミを怪力で引き裂いた。
大ダメージを負ったバクロンガーに、とどめの「スーパーライダー月面キック」が炸裂。
こうして、東京中の人間を悪夢に苦しめようとしたバクロンガーも倒された。
強敵・バクロンガーは、決死の特訓で破った。
行け!スーパー1!人類の未来を守れ!
玄海老師と弁慶の再登場により、己の弱い心を乗り越える人間の心の強さを描いたドラマが非常に見応えのあるエピソード。夢薬の見せる悪夢によってかつての恐怖心を呼び覚まされた一也が、厳しい修行により己に克ち、恐怖心を克服するドラマは、拳法とそれが養う心の強さをテーマにする「スーパー1」ならではの作劇で、秀逸である。
もちろんスーパー1のもう一つの魅力であるメカニックライダーとしての魅力もおろそかにされていない。早くも万能兵器である気もしてきた冷熱ハンドの冷凍ガスや、怪人の武器を破壊してしまうパワーハンドの怪力など、ファイブ・ハンドの能力描写も非常に秀逸である。
バクロンガーのバイクに対抗して呼び出されたブルーバージョンの迫力あるバイクアクション描写も見応えがあり、スーパー1が持つ様々な魅力を十全に楽しめるエピソードだった。