あらすじ
大学時代の友人だった沖一也を激しく憎む、ノーブル科学賞候補の若手科学者・小針正博士。
彼は一也への憎しみのあまりドグマに魂を売り、怪人・ライオンサンダーに生まれ変わる。
ライバルサンダーの猛攻、その憎しみの力に、スーパー1は窮地に追い込まれる。
友よ、君はなぜ悪魔に魂を売ったのか?怪人と化した親友の末路
今回のドグマ怪人は、ライオンの特質を持つライオンサンダー。
スフィンクスのような頭部の額からは、人間をダイヤル操作で最大40分間自在に操る事が出来る洗脳光線「C(コントロール)光線」を放つことが可能で、さらにそのダイヤルを最大にセットすれば強力な破壊光線として放つことも可能という能力を持っている。
また、両手には鋭い爪の「ライオンサンダー鉄の爪」を備えており、口の牙を引き抜けば「ライオンサンダー電磁剣」という武器として振るうことも可能な、実力派怪人だ。
そんなライオンサンダーの素体としてドグマに選ばれたのが、ノーベル賞ならぬ、ノーブル科学賞候補に日本人として初めて選出された天才科学者・小針正。
一也はかつて、彼とともに拳法や勉強を学んだことがあり、親友として友情を感じていた。
だが、小針の方はそうではなかった。自分より優れた能力を持っていた一也に劣等感を感じていた小針は、いつからか一也に激しい憎悪を抱くに至っていたのである。
ドグマはそんな小針に目をつけ、一也を倒す格好の機会としてドグマに加わるように唆す。
一度はその誘いを断った小針だったが、心の支えとも言えるノーブル科学賞受賞という栄誉を逃したことでその自尊心が完全に崩壊。自分の優秀さを示すため、一也を倒すべくドグマに魂を売り、改造手術を受けライオンサンダーに変貌してしまう。
そして、ノーブル科学賞を自分から奪ったコットン博士の暗殺を行おうとしていることをあえて一也に予告し、コットン博士を守れるか、知恵比べ合戦を挑むのだった。
果たして一也は、心歪んだかつての親友を倒すことが出来るのか。
今日も朝から鍛錬に励んでいた一也は、新聞で大学時代の学友だった小針正が、日本人で初となるノーブル科学賞候補に選ばれたことを知り、まるで我が事のように喜ぶ。
一也にとって、小針は勉強でも運動でも良きライバルである、親友であった。
しかし小針にとって、一也は親友などではなかった。研究でも、拳法でも、一也は小針の上をゆく達人であり、小針は内心、そんな一也に劣等感と敗北感を覚えていたのである。
そんな小針の一也への憎しみ、恨みに、悪魔が目をつけた。
紳士に変装したメガール将軍たちドグマが、小針に接触したのである。
メガール将軍の案内で帝王テラーマクロに謁見した小針は、優れた頭脳と一也への強い憎しみを買われ、一也=スーパー1を倒すためのドグマの一員にスカウトされたのである。
小針はノーブル科学賞を受賞することで一也より優れていることを証明してみせると、ドグマの誘いを拒絶する。しかし、ドグマ親衛隊はほんの1時間前にアメリカのコットン博士がノーブル科学賞を受賞すると決まったことを告げ、小針のプライドを粉微塵に打ち砕く。
心の拠り所を失った小針は、ドグマに魂を売ることを決意し、改造手術を受けるのだった。
小針に残されたものは、常にナンバーワンになりたいという虚栄心だけである。
改造手術を受けた小針は、ドグマ怪人・ライオンサンダーへと生まれ変わった。
それは、ナンバーワンを望む小針に相応しい、地上最強の猛獣・ライオンの怪人である。
帝王テラーマクロも、その出来栄えに大いに満足する。
そしてライオンサンダーの額には、小針=ライオンサンダーが自ら設計した秘密兵器「C光線」を放つ装置が埋め込まれていた。それは、光線を浴びたものの身体のコントロールを奪い、最大40分間、ライオンサンダーの意のままに操ってしまう洗脳光線である。
そして、C光線を最大出力にすれば、脅威の威力を秘めた破壊光線となるのだ。
こうして悪魔に魂を売ったライオンサンダーは、一也に挑戦するため出撃する。
街をパトロールしていた一也の前に、小針が姿を現した。
小針は問答無用とばかりに一也に襲いかかり、一也もその様子に以前の小針と違う殺気を感じる。
人間の身体能力を超えた威力の技を振るう小針は、ついにライオンサンダーに変身。
ドグマ怪人と成り果てた小針の姿に、一也も驚きと困惑を隠せない。
「何故だ!何故ドグマなんかに魂を売ってしまったんだ!」
「貴様を倒すためだ!みんな貴様のせいだ!」
その鉄の爪を躱すべく、一也もスーパー1に変身した!
ライオンサンダーは「ライオンサンダー電磁剣」でスーパー1に襲いかかるが、スーパー1も鋭い反撃を決める。だが、スーパー1は苦しむライオンサンダーの顔に、親友であったはずの小針の顔を思い出してしまい、追撃をためらってしまう。
ライオンサンダーはその隙を逃さず、スーパー1に電磁剣の一撃を炸裂させた。
変身が解除された一也は、小針とは友達だったはずだと、懸命に呼びかける。
だが小針もまた、内心に抱えていた一也への劣等感と憎悪を顕にし、勝利を宣言するのだった。
一也は傷つきながらも立ち上がり、小針はその気の強さに免じて、あえて一也を見逃すのだった。
あと一歩でスーパー1を始末できたにも関わらずとどめを刺さなかった小針を、メガール将軍は叱責していた。だが、力において一也に勝利を収めた小針は、今度は頭脳でも一也に勝つことで、一也に対して完全なる勝利を収めようとしていたのである。
帝王テラーマクロはその小針の不遜な態度に大いに満足し、褒美に次なる任務を与える。
それは、小針からノーブル科学賞を奪い取った、コットン博士の暗殺だった。
コットン博士の研究は、ドグマにとって将来の危険になるものだったのである。
一也はチェックマシーンで身体のダメージを点検し、修理を完了する。だが、親友だと思っていた小針から憎しみを向けられていたという事実は、一也の心に影を落としていた。
一方、コットン博士のもとに、ライオンサンダーから処刑を予告する矢文が届く。
そして谷モーターショップにも、ライオンサンダーからの挑戦状が届いていた。
ライオンサンダーは、あえてコットン博士の暗殺を一也に予告した上で暗殺を成功させ、暗殺を阻止しようとする一也に無力感を味わわせ、完全なる勝利を収めようとしていたのである。
小針からの挑戦を受けた一也は、コットン博士を守るための計画を練り始めた。
決戦は、明日の正午の鐘の音が鳴り止んだ時。
そして翌日。コットン博士の警護のため、多くの警官隊が配備されていた。
一也もコットン博士の滞在するホテルに到着、警戒厳重な警備の様子を確認する。
だがライオンサンダーは、多くの人々をC光線で洗脳し、C光線を反射する反射板をホテルの周囲に設置させる。一也はその様子に、ライオンサンダーがC光線を反射板で反射させ、コットン博士を外から狙い撃つつもりであることに気づくのだった。
だが、既に正午の鐘は鳴り終わろうとしている。ライオンサンダーは隣のビルの屋上から、最大出力のC光線を発射。警官隊を打倒し、反射板で光線を反射させコットン博士の部屋を狙い撃つ。
コットン博士の部屋は爆発炎上し、ライオンサンダーは、一也との知恵比べの勝利を確信する。
だが、一也は事前にコットン博士の部屋に替え玉となるダミー人形を用意し、ライオンサンダーの裏をかいていた。知恵比べに敗北したライオンサンダーは、ドグマファイターを一也に差し向ける。だが、もはやドグマファイターは一也の敵ではなかった。
「俺が相手だ!頭脳では負けたが、力では負けぬ!行くぞ!ライオンサンダー鉄の爪!」
知恵比べに負けた今、ライオンサンダーに残された誇りは力のみ。
一也はそんな歪んだ心と力を粉砕すべく、変身の呼吸でスーパー1に変身する。
ライオンサンダー電磁剣を振るうライオンサンダーに、スーパー1の拳が炸裂。
ライオンサンダーはさらにC光線を放つものの、スーパー1はそれを躱して跳躍。
さらに、レーダーハンドにチェンジすると、偵察用ロケットであるレーダーアイをミサイルとして発射する隠し技で、ライオンサンダーの額の回路を破壊、C光線を封じる。
最大の武器を失ったライオンサンダーに、スーパー1は冷熱ハンドの超高温火炎、そしてとどめの「スーパーライダー閃光キック」を放ち、ライオンサンダーを倒すのだった。
こうして、コットン博士は守られた。
だが、親友と思っていた小針を自らの手で倒した一也の心は浮かない。
大学時代、小針と一緒に写った写真を、一也は破り捨てる。
共に競い合った親友との思い出に、決別するかのように…。
今回は、主人公が親友と思っていた相手が内心で劣等感や憎悪を抱いており、悪の組織に魂を売って怪人・ライオンサンダーになってしまうというドラマ性が秀逸なエピソード。
初代「仮面ライダー」に登場する、同様のドラマ性を持って本郷猛=仮面ライダーに挑戦した、ショッカー怪人・さそり男のリメイク的なキャラクターとも言える。
自らの自尊心を満たすためにあえて一也にコットン博士暗殺を予告し、改造人間としての性能でも、頭脳でも一也に勝るところを見せつけんとした歪んだ心の描写が秀逸だった。
強敵・ライオンサンダーとの戦いを打開する決め手として、レーダーハンドの隠し機能、レーダーアイをミサイルとして用いる戦法も初披露され、切り札的な運用で印象に残ることになった。
後に登場するドグマ怪人・バチンガルがファイブ・ハンドを奪った際、レーダーハンドは戦闘用でないので必要ないと考え、案の定レーダーアイによる攻撃を受ける展開があるのだが、バチンガルもこの回をちゃんと見ていればそんなヘマもせずに済んだだろう。迂闊だ…。