あらすじ
5年前、国際宇宙開発研究所の秘密研究員・奥沢正人は惑星開発用改造人間となる改造手術を受けたものの、手術の失敗によって醜い姿の怪人・死神バッファローに変貌した。
失敗を隠蔽すべく記録から抹消された彼は、ドグマに忠誠を誓いメガール将軍となったのだ。
度重なる作戦の失敗で追い詰められたメガール将軍は死神バッファローとなり、自分と違って改造手術が成功し、美しい姿を手に入れたスーパー1に挑戦する。
闇に葬られた改造手術──醜き死神と化した男の悲劇!
バチンガルを倒され、ついに全てのドグマ怪人を失ったメガール将軍。
帝王テラーマクロはメガール将軍に最後通牒を突きつけ、ドグマの守護神・カイザーグロウの像の前で不気味な儀式を行わせ、メガール将軍をスーパー1抹殺に向かわせる。
今、スーパー1とメガール将軍の死闘に終止符が打たれようとしていた。
その頃、一也のもとに、一人の女性が訪ねてくる。
池上妙子と名乗るその女性は、5年前に国際宇宙開発研究所に派遣された後、行方不明になった婚約者・奥沢正人の消息を探し、同じ研究所に所属していた一也を訪ねたのだった。
だが、一也も奥沢正人については知らなかった。そこで一也たちは、ジャパン宇宙開発研究所の所長である黒田の元を訪ね、そこで衝撃の事実を知る。
実は、奥沢正人は一也の前に惑星開発用改造人間の改造手術を受けたものの、当時の技術不足と、変身機能を組み込む際の致命的なミスによって手術は失敗。
結果、巨大なバッファローのような頭部を持つ、醜い姿に変貌してしまったのだという。
そしてこの失敗は闇に葬られ、全ての記録は抹消されていたのだった。
その後、奥沢正人は、ドグマに大幹部として迎えられ、メガール将軍となっていた。
すなわち、スーパー1とメガール将軍の戦いは、同じ惑星開発用改造人間同士の戦いという、仮面ライダーのテーマの一つである「同族との戦い」であったのだ。
前回登場したバチンガルが、スーパー1の設計図を用いたとはいえ惑星開発用改造人間の技術を再現するに至ったのも、メガール将軍を通してその技術をドグマが手に入れていたのだろう。
この事実を知った一也の前に、進退窮まったメガール将軍が挑戦してくる。
そして、メガール将軍は手術の失敗により変貌した姿・死神バッファローとなるのだった。
死神バッファローはこれまでスーパー1に倒されたドグマ怪人が眠る怪人墓場でスーパー1に決闘を挑む。そして、自分と異なり美しい姿となったスーパー1への呪詛を唱えるのだった。
だが、スーパー1はそんな死神バッファロー=メガール将軍を説得する。
今の技術なら、変身機能のミスを修正し、死神バッファローを完成した惑星開発用改造人間に戻すことが可能なのだ。そして、恋人である妙子の声に、メガール将軍の心は揺れる。
だが、狡猾な帝王テラーマクロは、メガール将軍に対して「保険」をかけていた。
メガール将軍をドグマに迎え入れる際に、脳に洗脳カプセルを埋め込んでいたのだ。
洗脳カプセルの効果で、メガール将軍は再び死神バッファローと化してしまう。
果たしてスーパー1は、悲劇の改造人間たる死神バッファローを倒せるのか。
今、スーパー1とドグマの戦いは、クライマックスを迎えようとしていた。
メガール将軍は、帝王テラーマクロの命を受けてドグマの本拠地へ向かった。
そして、帝王テラーマクロに謁見する。
ドグマ親衛隊は、全てのドグマ怪人を破壊され、ファイブ・ハンドを奪う作戦にも失敗したメガール将軍を責め、腹を切るように要求するものの、メガール将軍にも将軍の誇りがある。
帝王テラーマクロはメガール将軍に、自分のために死ねるかと問う。
「メガールよ…お前はワシのために死ねるか?」
「もちろんでございます。人間社会に絶望して、自殺しようとしていた私を救ってくれたのは、テラーマクロ。その時から、私めの命はあなた様のものでございます」
「余のために死ね。メガール」
「ははっ!我がドグマの前に立ちふさがるスーパー1を、例え相打ちになろうとも必ず倒してご覧にいれましょう!」
メガール将軍の覚悟に満足した帝王テラーマクロは、メガール将軍のドグマの守護神・カイザーグロウの像の前に向かわせる。
「よくぞ申した、メガールよ。ドグマの神カイザーグロウに、勝利を誓うが良いぞ…」
「ドグマの神カイザーグロウよ!このメガールに力を与え給え!」
カイザーグロウの像の赤い瞳が不気味に輝き、メガール将軍にエネルギーを与える。
「俺は人間が憎い!俺を醜い身体にした人間が憎い!スーパー1が憎い!」
「行け!メガール将軍…お前の憎しみをスーパー1に叩きつけるのじゃ!」
その頃、谷モーターショップに、一人の女性が訪ねていた。
池上妙子と名乗るその女性は、国際宇宙開発研究所に勤めていた一也に、自分の婚約者であり、5年前、城南大学の研究所から宇宙開発研究所に派遣された奥沢正人の消息を尋ねる。
奥沢正人は宇宙開発研究所に派遣された1ヶ月後に、消息不明となってしまったのだ。
一也はその手がかりを求め、ジャパン宇宙開発研究所の黒田所長を訪ねる。
だが、一也がジャパン宇宙開発研究所に到着すると時を同じくし、所長室に仕込まれていた爆弾が爆発。だが間一髪、黒田所長は難を逃れていた。一也は奥沢正人の行方を黒田所長に尋ねるが、黒田所長は、奥沢正人のことは「宇宙開発研究所のタブー」なのだと口を閉ざす。
しかし、婚約者である妙子のことを知った黒田所長は、ついに事実を告白し始めた。
奥沢正人は、宇宙開発研究所の秘密研究員として、改造人間の研究をしていた。
そして5年前に行われた惑星開発用改造人間の改造手術に、奥沢正人は志願していたのである。
しかし、手術は技術の未熟さと計算ミスによって変身メカに大きな狂いが生じ、手術は失敗。
惑星開発用改造人間No.1になるはずだった奥沢正人は、その翌日に姿を消したのだった。
奥沢正人の悲劇を知った妙子は、婚約の際に2人で買ったロケットを手に大いに悲しむ。
彼女たちは、お揃いのロケットを2つ買って、それぞれの胸につけていた。
その中に、お互いの写真を入れて。
黒田所長は10日前に奥沢正人から電話があり、今は東京にいるはずだと情報を伝えるが、そこにドグマファイターが襲撃し、黒田所長がドグマファイターの剣に刺され絶命する。
ドグマファイターは奥沢正人の正体を調べるのを止めるように要求してきた。
一也はドグマファイターを倒し、奥沢正人の消息を知るべくドグマを追った。
ハルミと妙子は谷と合流し、一也の持つ発信機の信号を追って一也を追う。
ドグマを追う一也を待ち受けていたドグマファイター部隊は、渦巻き戦法で一也に襲いかかる。
一也はその攻撃を次々に躱し、反撃でドグマを全滅させるが、そこにメガール将軍が現れた。
「沖一也!ドグマの前に立ちはだかる唯一人の男!今こそ貴様と雌雄を決するぞ!」
馬に乗って襲いかかるメガール将軍を、反撃の蹴りで落馬させた一也は、奥沢正人の行方についてメガール将軍に尋ねるが、メガール将軍は聞く耳を持たない。
そして、メガール将軍は巨大な頭部を持った異形の怪人・死神バッファローに姿を変えた。
その姿を目の当たりにした一也は、死神バッファローの異形の姿こそ、改造手術が失敗したことによる副作用であり、メガール将軍こそが奥沢正人ではないかという可能性にいきつく。
だが、死神バッファローはその問いに答えることなく、ショルダータックルで一也に襲いかかる。
一也はスーパー1に変身するが、死神バッファローは、スーパー1をドグマ怪人が眠る怪人墓場へと誘導し、スーパー1もブルーバージョンでそれを追った。
怪人墓場には、かつてスーパー1に倒された幾多の怪人の墓があった。
そして、墓に青い血が流れると同時に、これまで倒された怪人の頭部が出現する。
「仮面ライダースーパー1!ここはお前に敗れ、恨みを抱いて死に果てた、ドグマ怪人の墓場だ!スーパー1よ!今こそ怪人たちの恨みを晴らしてやるぞ!」
「黙れメガール!ドグマが悪の王国を目指し、人間を苦しめる怪人を製造しなければ、こんなことにはならなかったんだ!」
呪詛を唱えるメガール将軍に、敢然と反論するスーパー1。
「スーパー1よ!貴様は美しい…貴様には、醜い怪人の哀しみがわかるまい!」
「悪いのはドグマの心だ!人間の世界に君臨しようとする、貴様たちドグマの陰謀だ!」
「黙れ黙れ!俺は貴様が憎い!宇宙開発用改造人間として、人間どもの期待を一身に集めている、貴様が憎い…死ね、スーパー1!」
メガール将軍の号令とともに、ドグマ怪人の頭部が宙を飛び、スーパー1に襲いかかる。
ドグマ怪人の怨霊を払い除けたスーパー1に、メガール将軍が襲いかかる。
「メガール将軍!何故俺を憎む!何故人間を憎む!」
戦いの中、転倒したメガール将軍は、胸元からロケットを落とす。
それは、妙子が奥沢正人と愛を誓いあった、約束のロケットだった。
その中には、妙子の写真が収められている。
やはり、メガール将軍の正体は、奥沢正人だったのだ。
「この俺こそ、宇宙開発用改造人間、第1号になるべき人間だったのだ!手術が失敗して、野獣のような身体になってしまったこの俺の!哀しみを!お前なんかにわかってたまるか!」
それは、本来なら、人類の宇宙開発の夢と希望を一身に背負う惑星開発用改造人間となるはずだったにも関わらず、計算ミスによってその未来を全て奪われた男の哀しみの叫びだった。
惑星開発用改造人間第1号の失敗から、5年の歳月を経て完成した惑星開発用改造人間・スーパー1とは、第1号の失敗を超えて完成した改造人間である、という意味の名前だったのかもしれない。
スーパー1の美しい身体も、メガール将軍の憎しみを刺激し続けていたのであろう。
そして、メガール将軍が国際宇宙開発研究所を襲ったのも、あるいはその復讐だったのか。
だがスーパー1は、必死にメガール将軍に呼びかける。
惑星開発用改造人間としてスーパー1を完成させた現在の技術なら、死神バッファローと化した奥沢正人の変身メカを修復し、正しい惑星開発用改造人間に戻すことが出来るのだ。
「奥沢さん。あれから研究は進み、貴方の変身メカは直るんだ!俺の身体を見れば、わかるはずだ!貴方は手術を受ければ、俺と同じようになれるんだ!」
「もう遅い!手遅れだ!」
「手遅れではない!それに奥沢さん。妙子さんは、今でも貴方を愛しているぞ!」
そこに、谷に連れられた妙子が現れ、メガール将軍、いや奥沢正人と再会する。
2人は、誓いのロケットを重ね合わせる。
そしてスーパー1や谷たちは、懸命に奥沢正人の人間の心に呼びかけるのだった。
だが狡猾なドグマ、そして帝王テラーマクロは、メガール将軍の人間の心が蘇る時に備え、その脳内に洗脳カプセルを仕込んでいた。
「メガールにはまだ、人間の心がすこーし残っていたようじゃな…メガールに余は裏切れぬ。メガールの脳には、服従カプセルが埋め込んであるのじゃ」
帝王テラーマクロの鈴の音が響き、洗脳カプセルが奥沢正人の心を闇に染める。
苦しみの果てにメガール将軍は、完全なドグマ怪人へ変貌してしまうのだった。
完全なドグマ怪人となった死神バッファローには、もはや誰の声も届かない。
スーパー1にとどめを刺すべく、ショルダータックルの態勢に入った死神バッファロー。
そこに、妙子が彼を止めるべく立ちはだかった。
だが、死神バッファローはその歩みを止めることなく、妙子をその手にかけてしまう。
完全に人間の心を失った死神バッファローに、スーパー1の怒りが爆発した。
巨大な鉄球を振り回す死神バッファローに、スーパー1は怒涛の反撃を叩き込む。
そして、エレキハンドのエレキ光線を炸裂させ、怯んだ死神バッファローに、とどめのスーパーライダー閃光キックを叩き込む。死神バッファローは、一瞬、奥沢正人の姿に戻りながら、爆散するのだった。そしてそこには、恋人への愛を誓ったロケットが残されていた。
「メガール将軍は、心の何処かで妙子さんを愛していたんだ…」
そしてそのロケットには、帝王テラーマクロがいるドグマの本拠地への地図が刻まれていた。
「妙子さん。貴女の大切な人を、悪魔の使いにした帝王テラーマクロを、俺が必ず倒します!」
一也はロケットに刻まれた地図を頼りに、ドグマの本拠地へと向かう。
行く手には、死が待っているかもしれなかった。
沖一也は、決意も新たに最後の戦いに向けて疾走を開始した!
「惑星開発用改造人間」という、人類の希望として誕生した、ポジティブな動機で誕生した仮面ライダーであることがドラマ面での特徴だった「スーパー1」。
しかしこのエピソードにおいて、第1話より幾度となく死闘を繰り広げていたメガール将軍が、同じ惑星開発用改造人間として改造手術を受け、その失敗により人間社会に絶望したという、スーパー1の負の鏡像であったという作劇がなされたことで、「仮面ライダー」シリーズの骨子とも言える「同族との戦い」というテーマを、「スーパー1」に導入せしめた。
このエピソードは、人類の宇宙開発の夢と希望のために生まれた明るいヒーローだった「スーパー1」に「仮面ライダー」シリーズらしい負の側面、深みを与えた見事なエピソードになっている。
いびつなほどに巨大な頭部を備えた死神バッファローの異形の姿もまた、改造手術の失敗により変身メカが狂ってしまった成れの果てという設定にこれ以上内説得力を与えており、「同族との戦い」でありながら仮面ライダーと怪人に容姿の違いがあることにも説明がつけられているところが見事である。失敗作だった第1号=死神バッファローを超えるべく技術を高められたスーパー1は、失敗作の死神バッファローと異なり美しい容姿を持っているのだ。
普通の人間に戻れなくなり、変身しても異形の姿となる哀しみを背負った死神バッファローは、まさに「スーパー1」を「仮面ライダー」シリーズの一作たらしめた存在と言えるだろう。
そして人間に戻ろうとしたメガール将軍に、「保険」として洗脳カプセルを仕込んでいたドグマ、帝王テラーマクロの恐ろしさもまた強調された。
ドグマの理想とは、帝王テラーマクロが全てを管理する、管理社会のディストピアなのだ。
だからこそ、自由を守る戦士である「仮面ライダー」が立ち向かわなければならない。
メガール将軍が倒れ、ついにドグマの本拠地も判明した。
闇の王国ドグマとの決着の日も近い。
だが、新たなる悪もまた、この地球に迫ろうとしていることを、沖一也はまだ知る由もない…。