あらすじ
帝王・テラーマクロが守護神の像に流れる血を浴びて変身した不死身の怪人・カイザーグロウ。
いかなる攻撃も寄せつけないカイザーグロウの猛攻に苦戦する一也。
一也を救うため、玄海老師や弁慶たちが駆けつける。
右肩に刻まれた烙印を打て!師の最期が導く逆転の一撃!
ついに、闇の王国ドグマとの決着の時が来た。
帝王テラーマクロは、ドグマの守護神カイザーグロウの儀式によって、不死身の怪人に変貌。
スーパー1に最後の戦いを挑むのであった。
帝王テラーマクロが化身した怪人は、ドグマの守護神の名を冠したカイザーグロウ。
カラスの特質を持つ怪人で、帝王テラーマクロがドグマの守護神・カイザーグロウ像の返り血を浴びる儀式によって、その身体はいかなる攻撃を無効化する不死身の肉体と化している。
さらに、嘴からは銃弾を、左足の先からは強力なミサイルを放つ、全身が要塞の怪人だ。
不死身の肉体を持つ最強怪人と化した帝王テラーマクロは、その力でスーパー1を完全に圧倒。
赤心少林拳もファイブ・ハンドも効かない今、もはやスーパー1に打つ手はないかと思われた。
しかし、カイザーグロウには自身も知らぬ弱点が存在していた。
帝王テラーマクロが不死身の肉体と化すための儀式を行う直前、突如アジトにドグマにとって神聖な鳥であるカラスが迷い込み、帝王テラーマクロの右肩に止まった。
これを吉兆としたテラーマクロは、カラスを右肩に乗せたまま儀式を行っていた。
その結果、テラーマクロは右肩のカラスの足跡の部分にだけカイザーグロウ像の返り血を浴びることが出来ず、右肩が唯一にして最大の弱点となってしまったのである。
一也を助けに来た玄海老師との一騎打ちの中で、その弱点を見破られたカイザーグロウ。
しかし、ドグマの猛攻によって、赤心寺の拳士たちは全滅。
一也とは兄弟同然に育った弁慶や、一也を導いてきた玄海老師もその命を落としてしまう。
果たして一也は、死が最期に遺したカイザーグロウの弱点を突き、仲間の仇を討てるのか。
そして、テラーマクロに唯一の弱点を作ったカラスは、一体誰が送り込んだのか…。
壮絶な死闘の果て、ついにドグマの大幹部・メガール将軍を倒した仮面ライダースーパー1は、メガール将軍が遺したオルゴールロケットに刻まれた隠し地図を頼りに、命をかけてテラーマクロを倒すため、テラーマクロのアジトのある霊山へ向かう。
一方、帝王テラーマクロもまた、スーパー1との最終決戦への決意を固めていた。
「スーパー1に勝てるものは、もはや余以外にない…!」
霊山にたどり着いた一也はそこで、天までそびえるテラーマクロの城を目の当たりにする。
それはまるで、旧約聖書に記された、バベルの塔のような威容だった。
どのような罠が待ち受けているかもわからないが、行かねばならない。
ドグマを討ち滅ぼす使命感を胸に、沖一也は宿命の対決に向かう。
一也が現れた報告を受けたテラーマクロは、ドグマ親衛隊隊長に人払いの指令を出す。
するとそこに、味との外から一羽のカラスが迷い込んできた。
ドグマ親衛隊はカラスを処刑しようとするが、カラスはドグマの神の使者と呼ばれている鳥。
テラーマクロはこのカラスを吉兆の使者として、自らの右肩に停まらせる。
「余が怖くないとは面白い…これから後も、余がずっと可愛がってやるぞ…」
テラーマクロは玉座を移動させ、ドグマの守護神・カイザーグロウの像の前に移動する。
「ドグマの神・カイザーグロウよ!テラーマクロを不死身にさせたまえ…鋼を打ち砕き、どのような高熱・低熱ガスに耐えられる、不死身の身体にさせたまえ…」
そして、右肩のカラスも不気味に声を上げる。テラーマクロはそんなカラスを気に入った。
「ほう…そちも余と共に不死身になり、永劫に余に仕えるというのだな?よしよし…そちも不死身にしてやるぞ…!」
テラーマクロが剣をカイザーグロウの血に突き立てると、そこから透明な血液が吹き出した。
ドグマの神・カイザーグロウから流れる血を全身に浴びた者は、未来永劫決して死なぬ、不死身の身体になるのだ。今、テラーマクロは、ドグマの神から不死身の洗礼を受けていた。
そして、テラーマクロの身体はカラスを模した不気味な怪人となる。
それこそ、ドグマの神の名を持つ最強怪人・カイザーグロウだった。
「スーパー1のファイブ・ハンドも、不死身となった余には空気も同然…!」
その頃、谷モーターショップでは、テラーマクロの城に一人で乗り込んだ一也を、ハルミたちが心配していた。そして、玄海老師と弁慶は、赤心寺の拳士を引き連れ、一也の加勢に向かっていた。
一方、一也はドグマ親衛隊と遭遇し、帝王テラーマクロの間に案内される。
一也と対面したテラーマクロは、なんと一也に、自らの息子になるように勧誘してきた。
「一也よ。余の息子になれ。余の息子になって、ドグマの継承者になるのだ。ドグマの組織がお前のものになる。お前は権力が欲しくないのか?人間の世に君臨する絶対的な権力が!」
だが、そんな甘言に乗る一也ではない。一也は人間の自由のために戦う仮面ライダーなのだ。
「断る!人間を支配しようとするものは、俺がこの手で打ち倒す!」
「交渉決裂だな…可哀想だが、お前はここで死なねばならん」
「死ぬか生きるかは、戦ってみた後でのことだ!行くぞ、テラーマクロ!」
交渉が決裂し、襲いかかってきたドグマ親衛隊を、一也は打ち倒す。
そしてテラーマクロに一気呵成に攻撃を仕掛けるが、テラーマクロは玉座から瞬間移動。
そして一也は、玉座に仕込まれていた拘束装置で身体を拘束され、変身が出来ない。
ドグマ親衛隊がそこに槍を投げつけるが、一也はそれを躱し、玉座の拘束装置を破壊した。
一也と再び対面したテラーマクロは、ついに不死身怪人・カイザーグロウへと変身する。
そして、テラーマクロとしての姿から想像もできないほど鋭い拳で、一也を圧倒するのだった。
そして、一也の拳は、不死身の肉体となったカイザーグロウには全く通じなかった。
反撃のジャイアントスイングで投げ飛ばされた一也は、スーパー1に変身する。
スーパー1とカイザーグロウは空中で交錯する。
しかし、幾多のドグマ怪人を打ち破ったスーパーライダー閃光キックすら、カイザーグロウには通じず、数々のピンチを打破してきたエレキハンドのエレキ光線、冷熱ハンドの超高温火炎・冷凍ガスの同時発射すら、カイザーグロウには何のダメージを与えることも出来なかった。
動揺するスーパー1を、カイザーグロウは左足からミサイルを発射して追い詰める。
ミサイルによってスーパー1は吹き飛ばされてしまうのだった。
傷ついた一也はなんとかその場から逃げ延びたものの、その身体には重症を負っていた。
薄れる意識の中で、テラーマクロの鐘の音が鳴り響く。
それはかつて、ドグマが山中への侵入者の行方を掴むために仕掛けた「ドグマ鈴鳴り地獄」だった。この術の術中にある限り、一也の行方はドグマに筒抜けだったのである。
鈴の音に苦しむ一也の前に、ドグマの追手の拳士たちが現れた。
一也は不屈の精神力で追手を倒すが、もはやその体力は限界に近い。
しかしそこに間一髪、玄海老師と弁慶、赤心寺の拳士たちが助けに現れた。
一也から不死身怪人カイザーグロウの脅威を伝えられた玄海老師は、不死身怪人といえども、生物である限りは必ず弱点があるはずだと一也を諭す。
だが、そうしている間にも、テラーマクロは直々に一也の抹殺に向かっていた。
そして、配下の拳士から玄海老師たちが現れたことを報告されたテラーマクロは、因縁の相手である玄海老師に対してもその闘志を燃やす。
「玄海と弁慶が?飛んで火に入る夏の虫…積年の恨みを晴らしてくれる…!」
本編では語られていないが、劇場版の準備稿において、テラーマクロはかつて「空飛ぶ火の車」の秘密が刻まれた粘土板を手に入れるために赤心少林拳に入門、玄海老師の兄弟弟子だったが、師を殺害して粘土板を奪ったという過去がある…という経緯が語られていたらしく、玄海老師がドグマに立ち向かう一也に度々手を貸したのも、この因縁があったからだろう。
そしてついに、ドグマの追手が傷ついた一也を発見してしまう。
「一也はこれからも大勢の人々のために戦わねばならん!ここは我々だけで戦おう!」
最愛の弟子を守り抜く決意とともに戦う玄海老師の前に、テラーマクロが現れた。
「玄海!今日という今日は赤心少林一派を、根絶やしにしてくれるわ!」
「黙れテラーマクロ!この世に悪の栄えた試しはない!」
赤心寺の拳士たちは懸命にドグマファイターに立ち向かうが、一人、また一人と倒されていく。
そして、孤軍奮闘していた弁慶もまた、一也に向けて射られた矢から一也を守るべく、その盾となり、敵の矢を身体に受けて息絶える。その最期は、まさに武蔵坊弁慶の再来だった。
「動くな一也!今動けばお前は回復できん!弁慶の死が無駄になるぞ!」
一也を回復させる時間稼ぎのため、玄海老師はテラーマクロに挑む。
だが、怪人すら倒す玄海老師の拳も、不死身の肉体の前には無力だった。
このまま、玄海老師すら倒されてしまうのか?
だが、玄海老師が飛び蹴りを仕掛けると、テラーマクロの右肩からカラスが離れた。
そして、その飛び蹴りがテラーマクロの右肩に直撃し、ダメージを与える。
そう、テラーマクロは右肩にカラスを乗せたまま守護神カイザーグロウの返り血を浴びたため、右肩にあるカラスの足跡だけは血を浴びられず、そこが唯一の弱点になっていたのである。
それはあたかも、北欧神話の英雄ジークフリートが、ドラゴンの血を浴び不死身になったものの、菩提樹の葉が背中に張り付いていたことでその部分だけが弱点になった神話の再現だった。
ついにテラーマクロの弱点を見出した玄海老師は、一也にそれを伝える。
しかし、テラーマクロはカイザーグロウに変身。
ミサイル攻撃を連射し、ついに玄海老師すら倒してしまうのだった。
兄弟弟子のみならず、再愛の師をも奪われた一也は、怒りのままに変身。
ついに、カイザーグロウとの最終決戦に挑む。
怒りでその瞳を赤く輝かせたスーパー1は、カイザーグロウの右肩を集中攻撃。
キックやパンチ、そしてエレキハンドのエレキ光線で右肩を痛めつける。
そしてトドメの、スーパーライダー月面キックが炸裂し、カイザーグロウはドグマの不滅を叫びながら、爆発四散するのだった。こうしてついに、ドグマとの死闘に終止符が打たれたのである。
だが、一也も知らぬところで、新たなる悪がこの地球に現れようとしていた。
カイザーグロウに唯一の弱点を作ったカラスが、そのアジトに戻る。
そして、銀色の宇宙服を纏った、謎の存在にテラーマクロの最期を伝えるのだった。
「時こそ来たり。いよいよ我ら、ジンドグマの時代が来たぞ…!」
果たして、ジンドグマとは一体何者なのか。スーパー1の戦いは、まだ終わっていなかった…!
高い人気を獲得していながら、放映局の都合によって放送時間帯の変更を余儀なくされた「仮面ライダースーパー1」は、その変更に合わせ、新展開への移行を行うことになった。
それに伴い、ドグマの壊滅、玄海老師や弁慶の退場という形で既存の設定の整理が行われ、物語が劇的に動く中盤のクライマックスとなったのがこのエピソードだ。
弁慶や玄海老師の死、不死身の肉体を得たことでボスキャラクターとしての圧倒的な強さを演出したカイザーグロウの強敵描写や、北欧神話を思わせる弱点の発覚など、劇的な展開でドグマとの決着が描かれ、否応なしに盛り上がる展開の連続となっている。
こうしてついに、帝王テラーマクロとともに闇の王国ドグマは滅んだ。
しかし、その壊滅を待ち望んでいたかのように、新たなる悪・ジンドグマが現れる。
スーパー1の戦いは、まだ終わらない。