「バトルフィーバーJ」第30話「悪食雑食の料理長」感想

2024年3月13日水曜日

バトルフィーバーJ 東映特撮YoutubeOfficial

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あらすじ


ヘンショク怪人は、同じ味だけを一生追い求める怪人だった。
そんなヘンショク怪人に四郎が狙われ、ヘンショク怪人は四郎の持ち物や触れた物などを食べていき、いよいよ四郎自身さえも食べようとする。

悪食・雑食・偏食 歪んだグルメのヘンショク怪人

今回のエゴス怪人は、「偏食」という概念そのものを怪人にするという、唯一無二のモチーフが特徴であるヘンショク怪人。生物としてのモチーフはヒトデで、今回より登場した怪人製造機によってヒトデが変化し誕生する描写も描かれている。
子供を持つ家庭にとって、子供の偏食は悩みのタネ。何でも食べて育ってほしいけど、そう上手くはいかない。そんな「偏食」は、子供を育てる家庭にとって怪人ほどに恐ろしいのだ。
家庭の日常に根付いたモチーフ選びがユニークだが、一方その性質は、一度食べた味に執着し続け、人間を食べてしまうという恐ろしいもの。エゴスはヘンショク怪人にバトルフィーバー隊員の味を覚えさせ、バトルフィーバーを食べてしまおうと目論んでいるのだ。

サタンエゴスは怪人製造機を使ってヒトデを変化させると、ヘンショク怪人を生み出した。
飢えた御子に食いつかれれば今回の作戦は台無しになると、ヘッダー指揮官は鎖を使ってヘンショク怪人を縛り上げる。ヘンショク怪人は初めて口にしたものを生涯忘れずことが出来ず、その味を追い求め続ける性質を持っていた。そこで、ヘンショク怪人にバトルフィーバーの味を覚えさせて、食らってしまうことが今回のエゴスの作戦だ。

夏の気候に野生の血が騒ぐのか、ケニアは森で過ごしていた。
しかし、その隙をついたカットマンが、ケニアの服を盗んでしまう。
ケニアの汗が染み込んだ服の匂いに鼻を曲げるヘッダー指揮官。
しかし、ヘンショク怪人はそんなケニアの服を美味しそうに平らげてしまった。
悪食で雑食、その上人間が食べるものは嫌いな、名前の通りの偏食の権化であるヘンショク怪人は、ケニアの汗が染み込んだ服を食べることでケニアの味を覚えてしまう。
味を覚えてしまったことで、ヘンショク怪人はケニアの味のみを求め続ける存在と化した。
ヘンショク怪人は調味料をかけ味付けをしながら、ケニアの服を次々に食らっていく。
その光景のあまりの気持ち悪さに、さすがのサロメも表情を歪める。
ケニアを食らわずにいられなくなったヘンショク怪人を、サタンエゴスは野に放つ。

ヘンショク怪人の言動はユニークに演出されているが、人の味を覚え、その味に執着し続ける野獣としての恐ろしさは、むしろユーモラスさに隠れているからこその恐ろしさがある。
人の汗の味を好み、マヨネーズで味付けするおぞましさは、サロメでなくても顔を歪めてしまうほどだ。同時に、この回に込められた飽食の時代に食べ物を選り好みする子供たちに、何でも食べてすくすく育ち、たくましく生きてほしいというメッセージを思えば、食べ物を選り好みするヘンショク怪人のおぞましさを通して食べ物を選り好みする自分たちの行為を反省してほしい、という教育番組的な要素も感じる。

ケイコ隊員は、夏休みを迎えたマサルが、インベーダーゲームに夢中で筐体の前を動かないことに悩み、ケニアに相談していた。インベーダーゲームを「何だこりゃ?」と訝しむケニアだったが、以前、ゴースト怪人との戦いの前は自分もインベーダーゲームに夢中だったことは忘れたようだ。自然派のケニアにマサルを外に連れ出してもらおうとしたケイコ隊員。
泳げないマサルをプールに連れ出そうとするケニアだったが、ケニアの乗ったバイクのシートやハンドル、ヘルメットは既にケニアの味を求めるヘンショク怪人に食われていた。

無事にマサルをプールに連れ出したケニア。
ケイコ隊員だけでなく、トモコ隊員、マリアにフランスも加わって夏を満喫する一同。
マサルに泳ぎの見本を見せようと張り切って泳ぐケニアに反発したマサルは女性陣に連れられ別のプールで泳ぎの練習を始めた。張り切って泳ぎ、疲れて休んでいる間に眠ってしまったケニアの元に、いよいよケニア本人を喰らおうとするヘンショク怪人が現れた。
ヘンショク怪人はまず足に噛み付いたが、なんだか不味い。
それならばと七味唐辛子をかけてへそを食べようとするが、身を捩るケニアのせいで上手くいかず、業を煮やしたヘンショク怪人は焼肉のタレを付けてケニアを丸焼きにしようとするが、そこにフランスがケニアを呼びに来て、ヘンショク怪人は姿を隠す。
生だと不味いと不満を言うヘンショク怪人だが、サロメにプールにいる間に食べてしまうように促されると、身体を縮小させヒトデの姿に変わった。

ケニアの見せる泳ぎなど真似してられないと反発し、女性陣に甘やかされていたマサル。
フランスに呼ばれたケニアは、そんなまさるをスパルタ教育で泳がせようとする。
そんなスパルタ教育が奇跡的に功を奏して、泳げるようになったマサル。
ケイコ隊員はケニアにいまいち意気地のないマサルを鍛えてもらおうと発案する。
そこに、ヘンショク怪人が変化したヒトデが迫っていた。
だが、ケイコ隊員が偶然それを発見し、気味悪がったフランスが外に投げ飛ばす。
道路に落ちたヘンショク怪人は、車に轢かれぺしゃんこになってしまった。
サロメは呆れた様子でぺしゃんこのヘンショク怪人を基地に連れ帰り、ヘッダー指揮官も呆れてゴミ箱に捨ててしまったが、ヘンショク怪人には再生能力があった。
どうにも不味くて食べられないケニアに不満たらたらのヘンショク怪人だが、サロメは外が不味いものは中身は美味しいととある作戦を提案する。

ケニアはマサルを山に連れ出し、野性的な生き方を教えようとしていた。
自然の贖罪を鍋で煮込み、何でも食べろと教えるが、現代っ子のマサルは当然反発する。
そこに、サロメが接触し、マサルにヘンショク怪人が変化したヒトデを渡すと、何でも食べろと無理難題を言ってくるケニアに意趣返しとばかりに食べさせてしまうように促した。
まんまとマサルはケニアにヒトデを渡し、何でも食べろと言うならヒトデを食ってみろと迫るが、そんなことを気にもしないケニアはヒトデを煮て食べてしまう。
あまりの光景に、食べろと迫ったマサルも流石に心配になっていると、ケニアが腹痛に苦しみ始めてしまった。体の内部から食い破られる痛みに苦しむケニア。

外から食べると美味しくないなら、体の内部から食い破ろうとするヘンショク怪人の恐怖描写はかなり生々しく恐ろしい。何かとうるさいだけでなく、何でも食べろと言ってくるケニアへの反抗心の結果、命の危機を招いてしまったマサルの後悔もひとしおだ。

ケニアの胃袋の中で、噛み砕かれたヒトデが再生して体内を食い破ろうとしていた。
つまらない反抗心で命の危機を招いてしまったことをさすがに反省したマサルは泣いて謝る。
ジャパンはケニアに毒を飲ませ、毒に耐えかねたヒトデを吐き出させる荒療治を決断。
それは、野生で生きてきたケニアの生命力に賭ける一か八かの賭けだった。
胃に流れ込んできた毒に拒否反応を起こしたヒトデがケニアの体内から出たところに、ジャパンはすかさず解毒剤をケニアに飲ませ、ケニアはなんとか一命をとりとめる。
マサルが怒りのあまりヒトデを踏みつけ、蹴り飛ばすとヒトデはヘンショク怪人に戻った。
逃亡したヘンショク怪人と、ケニアを除いたバトルフィーバーは戦う。
だが、5人が揃わない以上、バトルフィーバーも決め技のペンタフォースを撃てない。
決め手を欠き、苦戦するバトルフィーバーだったが、そこに息を吹き返したケニアが駆けつけた。食べられかけただけでなく、調味料をかけられた恨みを晴らさんとするケニア。
バトルフィーバーは名乗りを上げ、ついにヘンショク怪人との決戦が始まった。
ヘンショク怪人にケニアの飛び蹴りが決まる。そこに、ヘンショクロボが現れた。

バトルフィーバーはまずペンタフォースでヘンショク怪人を撃破。
続けてバトルシャークを呼び、バトルフィーバーロボを出動させる。
バトルフィーバーロボはチェーンクラッシャーでヘンショクロボを絡め取り、転倒させる。
さらに、巨大ヒトデ攻撃で反撃を受けながらもフィーバーアックスを投げつけダメージを与えたところに、電光剣唐竹割りを炸裂させ、ヘンショクロボを粉砕した。

チェーンクラッシャーは、「超合金バトルフィーバー」では両腕に実際のチェーンを付けることで再現されていた装備。バトルフィーバーロボのデザインや、超合金バトルフィーバーの開発を担当した村上克司氏により、エレガントさを意識して付けられた装備だ。
チェーンという洗練された工業製品を素材として用いることで、ただ厳つい鎧武者ロボットだけにすることなく洗練されたイメージを打ち出した、村上克司氏の美学の現れといえる。

こうして、ヘンショク怪人は打ち破られ、平和な日常が戻った。
心を入れ替えたマサルはケニアとともに野外生活を送り、鍛え直すことにした。
現代人の生活は何かを忘れていないだろうか、
自然に帰れ、邪悪なエゴスに負けない体を作るのだ。夏こそ、君たちの季節だ!

大自然で育ったケニアの生命力がエゴスを打ち破ったというオチで、インドア派の現代っ子が増えてきた時代背景に対して警鐘を鳴らすメッセージ性を打ち出しているエピソード。
良くも悪くも、現代社会は都市開発による遊び場の減少や家庭用ゲーム機の普及などでよりインドア派の現代っ子が増えていくことになり、こういった自然に帰ろうというメッセージを打ち出す作品も多かったものの、だんだんとその数を減らしていくことになる。
そういった意味では、自然の中で遊びたくましく育った強い子、がまだ理想とされていた時代背景を映し出すエピソードであるとも言えるだろう。

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