「電子戦隊デンジマン」第14話「100点塾へおいで」感想

2024年7月18日木曜日

電子戦隊デンジマン 東映特撮YoutubeOfficial

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あらすじ

“100点塾”から支給される“万能鉛筆”のおかげで突如、優等生になった源一。
三太たちもその塾に誘われるが、そこには怪物・ジュクラーが待ち受けていた。
ジュクラーは「努力は無意味だ」と子供たちを洗脳し…。

怠惰へ誘う万能鉛筆 子供たちが危ない!

今回のベーダー怪物は鉛筆の姿をしたジュクラー。
ベーダー怪物が持つ伸縮自在の特性を自在に使いこなし、鉛筆サイズになって子供たちの筆箱に潜んだかと思えば、子供と同程度の身長になり子供に親しげに話しかけ、戦闘時には大人の体格となって戦うなど変幻自在の姿でデンジマンを翻弄した。

そんなジュクラーが進める作戦は、子供達を怠惰に陥れること。
そのために、勉強がからっきしなあまり、親に「100点塾」に入れられたアスレチッククラブの生徒である源一や塾に通う子供たちに、自動でテストの答案に正解が記入される万能鉛筆を支給。
勉強せずともテストで100点を取れるようになったことで努力の価値を軽んじるようになった子供たちは、「遊んで100点が取れるようになる」100点塾の方針で、塾に通っては遊び、塾長が教える勉強や親を憎む「嫌い嫌い音頭」を踊るようになり、怠け者へと変貌していく。
その事実が電子戦隊に知られて、心を入れ替えたに見えた子供たちだが、ジュクラーは彼らの心を籠絡するべく、100点を取れなくなり落ちこぼれれば誰からも相手にされなくなると、偽りの栄光で得た周囲からの称賛を手放すことを恐れる子供たちの心を揺さぶる。
果たして、デンジマンは子供たちの心をジュクラーから守ることが出来るのか…。

未来を担う子供たちを怠惰へ誘い、堕落させることで社会機能を麻痺させようと目論む悪の組織という構図は、この回の脚本を担当した上原正三氏が得意とする展開。
後年の「宇宙刑事ギャバン」の「魔空塾の天才たち」や「宇宙刑事シャイダー」の「突然!なまけもの」などで繰り返し描かれたこの展開は、努力を忘れ怠惰に生きる楽な道を歩む危険さや、上手い話には裏があるという普遍の教訓を教えてくれると共に、日常の裏に潜む、善意を装って人を食い物にしようとする悪意の存在を伝えてくれるものになっている。
また、100点塾の塾長に化けたヘドラー将軍が子供たちに踊らせる「嫌い嫌い音頭」は、「宇宙刑事シャイダー」の「不思議ソング」や「なんだなんだブギ」の源流とも言えるだろう。

勉強がからっきしな健一が、テストで100点を取った。周囲は驚き、健一を称賛。
先生も皆に、健一を見習って勉強するように話すのだった。
下校中、カンニングまで疑われるほど算数が苦手だった健一が、クラスで一人だけ100点を取ったことを信じられない子供たちは、健一から「100点塾」に通い始めたのだと教えられる。
しかし、その様子はミラーとケラーに監視されていた。

アンパンを大量に買い込んでいた青梅は、自転車で何処かへ向かう健一たちに出会う。
青梅は健一たちにアスレチッククラブにアンパンを運ぶように頼んだが、健一たちはアスレチッククラブを休み、100点塾へ向かってしまった。ひとり残された青梅は唖然とする。
100点塾へ着いた健一たち。だが、100点塾では子供たちが好き放題遊んでいるだけだった。
とても通えば100点が取れるような場所に思えず、不審に思う子供たち。

しかし、100点塾はベーダー一族が運営する施設だった。
ベーダー怪物・ジュクラーは、ヘドラー将軍の指示で鉛筆状の指から次々に鉛筆を生み出す。
やがて、ジュクラーは子供たちの人数分の鉛筆を生み出し、ヘドラー将軍とミラー、ケラーは塾長や塾講師に化け、子供たちの前に姿を表した。
ミラーとケラーは、新しく100点塾を訪れた子供たちに、「万能鉛筆」の入った袋を手渡す。
テストの時には万能鉛筆を使うように促された子供たち。
塾長に変装したヘドラー将軍は、子供たちに「嫌い嫌い音頭」を踊らせる。
勉強はしないのかと質問する子供たちだが、ヘドラー将軍たちは100点塾は「楽しく遊んで100点を取るのがこの塾のモットー」だと謳い、子供たちに「嫌い嫌い音頭」を踊らせるのだった。
「さあ!元気よく踊ろう!」
「嫌い嫌い嫌い!勉強嫌い!テストも嫌い嫌い!学校も嫌い!もひとつおまけにママも嫌い!」

翌日、テストを受けていた子供たちは、答えがわからず困り果てていた。
すると、万能鉛筆が勝手に動き出し、答案に正答を記入し始めた。
自分は何もせずに答案が正答で埋まっていくことに、笑顔を見せる健一たち。
アスレチッククラブに通う仲良し5人組はまんまとテストで100点を取り、先生の称賛や、クラスメイトの羨みの目を一身に浴びて笑うのだった。

健一たちは、すっかり学校やアスレチッククラブに来なくなり、遊び回っていた。
赤城たちはそんな健一たちを心配し、様子を窺っていた。
学校にも行かず遊び回っている健一たちを咎める青梅だが、健一たちは学校に行かなくてもテストで100点が取れるし、有名中学校にも行けると人生を舐め腐った態度を取る。
彼らの親も、生活態度が悪化した彼らを咎めるどころか、成績が良くなったことを喜びテストで100点取る度に500円のお小遣いを渡す契約をしてしまい、金遣いの荒さに拍車をかけていた。
黄山はアスレチッククラブで体を鍛えて学校に通うように促すが、子供たちは「人間の命など宇宙の時からすればほんの束の間、瞬き」、「虚しいもの」、「だから面白おかしく暮らさないと」などと屁理屈を捏ね、まともに話を聞かない。
すっかり変わってしまった健一たちの様子に、赤城たちはベーダー一族の暗躍を感じ取る。

ベーダー魔城では、ミラーとケラーが100点塾に通う子供たちを怠け者に堕落させることに成功した報告をしており、その報告を受けたヘドリアン女王が満足げに高笑いしていた。
ヘドラー将軍は、100点塾を東京に40校、全国に300校ほど開講する準備を進めており、この作戦が成就すればわずか2年間で日本全国の少年少女が怠け者になってしまうのだという。
ヘドリアン女王は、300校では少なすぎると言い出し、1000校の開校を目標にして、六ヶ月で日本全国の少年少女を怠け者にするように命ずるのだった。

ベーダー一族は100点塾のチェーン化を進め、日本中で子供たちが100点塾に通い始めた。
100点塾を探り始めた赤城たちは、子供たちがヘドラー将軍たちに促され「嫌い嫌い音頭」を踊っている現場を目撃し、100点塾の裏にベーダー一族が暗躍していることを掴む。
そこに、ジュクラーが襲撃してきた。
赤城たちはデンジスパークし、襲い来るダストラーたちを蹴散らす。
ジュクラーは巨大鉛筆を投げつけ攻撃するが、デンジレッドたちのデンジスティックの直撃を喰らって不利を悟ると、鉛筆大の大きさに縮小して逃亡するのだった。

デンジレッドたちは100点塾の奥に侵入。しかし、ヘドラー将軍たちは既に逃げていた。
子供たちが首から下げている袋を見つけたデンジマンたちは、デンジスコープで袋に入っていた鉛筆を透視。だが、その鉛筆はただの鉛筆だった。
健一たちは電子戦隊と彼らの母親の立ち会いのもと、普通の鉛筆で算数のテストを解かされる。
だが、万能鉛筆に頼って怠けきっていた彼らは、もちろん100点を取れるわけがなかった。

電子戦隊の面々は、健一たち5人を100点塾に行かせないために、手分けして彼らの家で子供たちを見張り、家から出さない方針を取った。
健一が退屈を持て余していると、筆箱の中から健一を呼ぶ声が聞こえてきた。
筆箱から万能鉛筆が立ち上がり、健一に話しかけてくる。
万能鉛筆はデンジマンたちの接近を察知し、筆箱に入っていた普通の鉛筆と袋の中身を入れ替えていたのだった。万能鉛筆は健一の手のひらの上で子供の体格のジュクラーに姿を変え、さらに人間サイズに拡大すると、100点塾に来るように健一を誘う。
「100点塾においでよ。このままじゃ落ちこぼれだぞ。みんなに相手にされないぞ、先生にも仲間にも。それでいいのか?おいでよ、100点塾へ!」
「駄目だ駄目だ!ベーダー一味は恐ろしい!そう言ってた、赤城コーチが!お前帰れ!」

100点を取って周囲から称賛された記憶を刺激し、落ちこぼれれば誰からも相手にされなくなると健一を煽り、100点塾へ連れて行こうとするジュクラーだが、ベーダー一味の恐ろしさを電子戦隊から聞かされていた健一はその誘いを毅然と拒否する。
だが、ジュクラーは大人の体格に拡大。さらに巨大な幻影となって健一を襲う。
巨大なジュクラーの幻影の脅迫に屈し、ついに健一は「塾に行く」と言ってしまう。

健一を心配し、一緒に食事をしようと部屋を訪ねた青梅は、健一の姿が部屋にないことに気づく。
青梅からの通信を受けた電子戦隊が部屋を確認すると、子供たち5人全員が部屋からいなくなっていた。ベーダー一族の脅迫を受け、塾へ連行されたのだ。
緑川は慌てて100点塾へ向かったが、そこは既にもぬけの殻だった。
チーコと遭遇した緑川は、チーコから子供たちがマイクロバスに乗っていったことを聞かされる。
慌てて走っていく緑川の様子を見たチーコは、緑川がデンジマンであると半ば確信するのだった。

緑川はデンジグリーンにデンジスパークし、デンジランドに通信を入れる。
子供たちがマイクロバスに乗って攫われたことを知ったデンジマンは、空と陸からマイクロバスを捜索開始。デンジレッドとイエロー、グリーンがデンジマシーンとデンジバギーで陸を捜索し、ブルーとピンクがデンジタイガーに乗って空から捜索を始めた。
だが、デンジタイガーの前に、ベーダーの戦闘機隊が出現。
デンジタイガーはミサイルで戦闘機隊を撃墜し、捜索を再開する。

デンジレッドたちはマイクロバスを発見。
マイクロバスでは、無理やり拉致された子供たちが泣き叫んでいた。
バスを追うデンジマンたちは、待ち構えていたダストラーの砲撃を受ける。
爆煙が大地を包む中、デンジレッドはデンジマシーンのデンジマシンガンでダストラーを一掃。
空から迫るベーダー戦闘機隊は、デンジバギーの対ベーダー無反動砲で撃墜した。

だが、足止めを食っている間にバスを見失ったデンジマン。
急いで子供達を救わなくては洗脳されてしまう。
デンジブルーはデンジタイガーのレーダーでバスの行方を掴み、ベーダーの要塞へ突入を開始。
ベーダー要塞では、ミラーとケラー、ジュクラーが子供たちを要塞内部へ連れ込もうとしていた。
だがその前に、デンジマンたちが立ちはだかる。

「見よ!電子戦隊!デンジマン!!」
「抹殺せよ!」
デンジマンとベーダー一族の決戦が始まった。
ダストラーを蹴散らすデンジマンに、ジュクラーは鉛筆爆弾を投げつける。
デンジジャンプでそれを躱したデンジマンに、ジュクラーは手に持った鉛筆爆弾を身体に備えた鉛筆削りで削り、その削りかすを噴出して攻撃する。
さらに、「ジュクラー伸び縮み」で子供の体格に縮小したジュクラーは、小柄な体格とスピードを活かしてデンジマンを翻弄。デンジレッドはデンジパンチを決め、ジュクラーを吹き飛ばすが、ジュクラーは鉛筆サイズまで縮小して身を隠した。
デンジマンの足元から鉛筆爆弾を投げつけたジュクラーは、今度は逆に巨大化。
デンジマンはデンジタイガーを呼ぶ。すると、ジュクラーはそれに怯えて再び等身大に縮小した。
デンジマンはその機を逃さず、デンジスティックを投げつけてジュクラーにダメージを与える。
そして、最後のトドメのデンジブーメランを炸裂させ、ジュクラーを打ち破るのだった。

こうしてジュクラーは倒され、100点塾による子供たちの怠け者化計画は阻止された。
ナレーターからの子供たちへのメッセージで、この回は締められる。
「君たち、近所に100点塾が出来たら気をつけ給え。遊んで100点取れる塾なんて、インチキに決まってるんだからね!じゃあ、また会おう!」

鉛筆サイズまで縮小するだけでなく、獲物である子供と同じ目線となる子供の体格にもなるジュクラーのユニークさが面白いエピソード。
造形物としても、大人の体格と子供の体格で2種類スーツが作られており、細胞組織を組み替えて拡大縮小自由自在であるベーダー怪物の特性が見事に表現されている。
鉛筆を使った武器として、鉛筆削りの削りかすを撒き散らす攻撃もユニークだ。
そして、子供たちを100点塾へ誘う際に、一度労せずして100点を取り味わった称賛を失うことの恐ろしさを囁くことで子供たちを籠絡しようとする恐ろしさも秀逸。
一度浴びた称賛を失うことの恐ろしさを説くジュクラーの籠絡は、一度得た称賛を手放せない人間の心理をついた恐ろしいものだと言える。
SNS時代の現代、何かを批判した発言で多くの「いいね」を獲得し、その称賛を忘れられず次から次に何かを批判し続けて称賛を得ようとすることしか出来なくなってしまう人が数多くいることを思えば、一度得た称賛を手放せない人間の心理をつくのは恐ろしいほどに的確な手法だ。

今回も、ヘドラー将軍が直々に塾長として子供たちに「嫌い嫌い音頭」を踊るように促し、100点塾のチェーン展開を精力的に実施して汗を流し現場で活躍している。
ヘドリアン女王による無茶な出店目標にも決してNoと言わないその姿は、中間管理職の鑑だ。
ヘドリアン女王やミラー、ケラーから信頼が厚いのも納得である。

今回はダイデンジンが発進しない代わりに、デンジタイガーやデンジマシーン、デンジバギーといったビークルが活躍しているのも印象に残る。
ベーダー戦闘機隊を蹴散らすデンジタイガーやデンジバギー、爆煙を突破しデンジマシンガンでダストラーを一掃するデンジマシーンの活躍が見ていて楽しい。
また、一度は巨大化したジュクラーが、デンジタイガーを見て怯えて再び等身大に縮小し、デンジマンがそこにとどめを刺すというパターン破りの展開がされていて新鮮な印象だ。
以前のバーラーの回(第12話)といい、毎回のロボと巨大怪人の巨大戦が定番だからこそ、時折こういったパターン破りの回が挿入されることで毎回の視聴を飽きさせない工夫が嬉しい。

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