「電子戦隊デンジマン」第26話「デンジ姫の宇宙曲」感想

2024年9月1日日曜日

電子戦隊デンジマン 東映特撮YoutubeOfficial

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あらすじ

歌手・吹雪豪の大ヒット曲「銀河ハニー」にへドリアン女王は苦しめられていた。
その曲のメロディは、かつてデンジ星人がベーダー対策に使用していた悪魔祓いの曲と同じメロディだったのだ。電子戦隊は、ベーダーに狙われた吹雪豪を守る中で、「銀河ハニー」のメロディを地球にもたらしたのは、3000年前に地球を訪れたデンジ姫であったことを知る。
一方、ヘドリアン女王の命で悪魔祓いの曲を地球から消し去ることを命じられたベーダー怪物・レコーラーは、日本中のレコードを廃棄して日本から音楽を消そうとする。

ヒット曲に秘められた神秘のメロディ デンジ姫の想いが現代に蘇る

今回のベーダー怪物は蓄音機・レコードプレーヤーのベーダー怪物であるレコーラー。
ヘドリアン女王の命で、日本中から音楽を消し去り、全国で大ヒットする「銀河ハニー」の流行を止めることを目的としたベーダー怪物であり、巨大なレコード盤へ化けることが出来る他、レコード盤へと憑依してそのレコード盤を劣化・溶解する事が出来る。

ベーダー一族が躍起になって流行を止めようとした「銀河ハニー」とは、緑川の旧友である歌手・吹雪豪が作詞作曲し、全国的な流行を見せたヒット曲である。
吹雪豪自身が作曲したという触れ込みのそのメロディは、かつてデンジ星人がベーダー一族対策として作り上げた悪魔祓いの曲と同じメロディだった。

吹雪豪が悪魔祓いのメロディを奏でる者としてベーダー一族に狙われていることを知った電子戦隊は、当初これらのメロディの類似は偶然の産物と考えていたものの、やがて吹雪豪自身の口から、「銀河ハニー」のメロディはヒット曲に恵まれず世界中を放浪していた時、トルコの市場で見つけた古いレコード盤に納められていたメロディを原曲にしていたことを知る。
電子戦隊はこの事実から、銀河ハニーの基になった悪魔祓いのメロディは3000年前に地球を訪れたデンジ姫が地球にもたらし、トルコで伝承として伝えられたものであるのだと悟るのだった。

だが、レコーラーは日本中のレコード盤を破壊し、日本から音楽が消え去ってしまう。
果たして電子戦隊はレコーラーを倒し、デンジ姫が故郷を失った哀しみと怒りを込め、ベーダーに抗う力として地球に伝えたメロディを守り抜くことが出来るのか。

吹雪豪の新曲「銀河ハニー」が、日本中のヒットチャートを独占する大ヒットになった。
吹雪豪を演じるのは、現在も声優として活動する中尾隆聖氏。
「銀河ハニー」も、どこか中毒性のあるメロディとフレーズが印象に残る名?曲になっている。
ファンの前で銀河ハニーを披露する吹雪豪のステージを、緑川が鑑賞していた。
緑川と吹雪豪は、高校時代に共に音楽を志した親友同士であり、友人の吹雪豪がようやくヒット曲を出し、一躍人気歌手となったことを緑川は祝福する。
吹雪豪が作詞・作曲した銀河ハニーは爆発的なヒット曲となり、アスレチッククラブの子供達も銀河ハニーを歌って踊って楽しんでいた。吹雪豪はこの一曲でスターの座にのし上がったのだ。

街では竹の子族が銀河ハニーに乗って踊り、銀河ハニーは日本中を駆け巡った。
ベーダー魔城では、ヘドラー将軍たちがその様子をモニターで見ていた。
吹雪豪と銀河ハニーを何らかの作戦に利用するつもりなのだろうか?
だが、そこにヘドリアン女王が駆け寄ってきて、銀河ハニーの中継を止めさせる。
ヘドリアン女王は、銀河ハニーのメロディのせいで激しい頭痛に襲われていた。
ヘドリアン女王が言うには、銀河ハニーはベーダー一族を呪う悪魔祓いの曲だという。
ヘドラー将軍も、よくよく考えるとデンジ星でこのメロディを聞いたことがあるのだという。
頭痛に襲われるヘドリアン女王の命で、日本を席巻する銀河ハニーの大流行を止めさせるべく、ベーダー怪物・レコーラーが地上へと向かうのだった。

真夜中のキャンプ場で焚き火を囲みながら、ラジカセで銀河ハニーを流し、それに合わせて踊る若者たちの前にレコーラーが現れ、ラジカセを破壊した。
また別の場所では、自宅のレコードプレーヤーで銀河ハニーのレコードを流していた少女の目の前で、レコードがひとりでにレコードプレーヤーから外れ、宙を飛んで窓の外へと消えた。
少女がレコードを追って窓の外を見ると、そこにはレコーラーが立っていた。

緑川は喫茶店のマスターに頼み、店の休業日にレコードプレーヤーを借りて銀河ハニーのレコードを再生した。怪物に襲われた若者が皆銀河ハニーを聞いていたことに疑いを持ったのである。
すると、程なくしてレコードプレーヤーは爆発。さらに、飛び出したレコードが宙を飛んで緑川を襲い始めた。緑川はデンジグリーンになり、デンジスコープでレコーラーを発見する。
逃亡するレコーラーを追うデンジグリーンの前にダストラーたちが現れた。
デンジレッドとピンクも、デンジマシーンに乗って駆けつける。
だが、レコーラーは巨大なレコード盤となって逃亡した。

電子戦隊は、デンジランドに銀河ハニーのレコードを持ち込み、レコードを調べることにした。
あきら曰く、イントネーションが独特な曲。黄山曰く、トルコかアルジェリアの民謡。
だが、何故ベーダー一族が銀河ハニーを聞く人を襲うのか、その理由がわからない。
すると、アイシーが銀河ハニーは悪魔祓いの曲であり、ベーダー一族を追い払うためにデンジ星で作られたものだと話し始めた。あまりに突拍子のない話に、青梅は笑ってしまう。
しかし、銀河ハニーは吹雪豪が5年がかりで作曲した曲のはず。
偶然似てしまったのか、それともまさか、宇宙からインスピレーションを受けたのか。
赤城は、3000年前に地球を訪れたデンジ姫が、悪魔祓いの曲を地球にもたらしたと推測し、吹雪豪は銀河ハニーのメロディが悪魔祓いの曲と知らず、ベーダーに狙われているのだと考えた。
親友が作曲したはずの曲が、本当にデンジ姫がこの地球にもたらした悪魔祓いの曲を基にした曲なのか。緑川は吹雪豪に会い、銀河ハニーに原曲があるのかを尋ねることにした。

銀河ハニーを聞いた人が怪物に襲われる事件が多発しながら、銀河ハニーの流行は止まらない。
電子戦隊や、チーコたち警官は街で銀河ハニーに合わせて踊る竹の子族を静止するものの、向こう見ずな竹の子族たちは聞く耳を持たなかった。
一方、吹雪豪のもとを訪れた緑川は、銀河ハニーの原曲の存在を尋ねる。
だが、自分が作曲した銀河ハニーが盗作だと疑いをかけられたように思った吹雪豪は反発。デンジ姫が地球に来た確証が欲しいだけだと訴える緑川を無視し、歌番組の撮影に向かってしまった。
親友を心配し、必死に静止する緑川だが、吹雪豪はせっかく掴んだ成功のチャンスを邪魔されるものと思い込み、ベーダーに狙われているという忠告に聞く耳を持たない。

その頃、銀河ハニーに乗って踊っていた竹の子族が、レコーラーに襲われた。
空間が緑色に染まる中、竹の子族は気を失い、通りかかったバイクも爆発する。
そして、レコーラーの魔手はついに吹雪豪本人に向かった。
ステージでバックバンドとともにリハーサルを行っていた吹雪豪の周囲で、機材が爆発。
レコーラーが吹雪豪に襲いかかるが、間一髪、デンジグリーンとレッドが助けに入った。
レコーラーはレコード爆弾を投げつけ撤退する。

自身がレコーラーに襲われたことで、銀河ハニーのメロディが悪魔祓いの曲だと認めた吹雪豪は、原曲のレコード盤を緑川たちに見せる。いい曲が作れず悩んでいた吹雪豪は、ギターを手に世界中を放浪していた際、トルコの市場でこのレコード盤に出会ったのだという。
何故トルコに、3000年前にデンジ姫がもたらした曲が伝承されていたのか?
赤城は、地図が描かれた時代より後の時代に発見されたはずの南極大陸が宇宙から見た構図で描かれていた、ピーリー・レイースの南極地図もトルコで発見されたことから、デンジ姫たちがその地図を作り上げたのではないかと推測。
マヤ族の宇宙天文学や、古代エジプトのピラミッドの謎、ナスカ高原の地上絵。
電子戦隊は、およそこの世に伝わるオーパーツと呼ばれるものは、デンジ姫が地球にもたらした超科学の産物が世界中に遺されたもののではないかという結論に至る。

緑川たちは、銀河ハニーの原曲のレコード盤を再生した。
そのメロディを聞いた電子戦隊の脳裏に、故郷を失った悲しみを抱きながら、共に生き残ったデンジ星人たちに希望の灯を灯そうとしたデンジ姫の優しい笑顔が浮かぶ。
あきらは涙を流し、親兄弟を殺され、故郷を追われたデンジ姫の悲しみを感じ取る。
3000年の時間と空間を超えて、デンジ姫はこの地球に来たのだ。

銀河ハニーがベーダー一族に狙われる理由は判明したが、世間的に大ヒットしている銀河ハニーと吹雪豪の人気は留まるところを知らず、リサイタルの依頼は殺到した。
電子戦隊の面々は観客に紛れ、吹雪豪を護衛することになった。
ベーダー一族も、電子戦隊の護衛を受けた吹雪豪の暗殺に近づくことが出来ず、ヘドリアン女王は世界中で銀河ハニーが大流行するかもしれない恐ろしさに震え上がる。
ヘドラー将軍は女王の不安を解消すべく、レコーラーに次なる作戦を命じるのだった。

レコーラーは、日本中のレコード店を襲い、目から放つ熱線でレコードを溶かす草の根作戦で、銀河ハニーを奏でるレコードを日本から根絶する作戦に出た。
ラジオ局でもレコードが溶け、レコーラーの被害は全てのレコードに及んでしまう。
テープレコーダーも逆回転して爆発。そして、日本中から音楽が消えてしまった。
ヘドリアン女王は、これで安眠できると高笑い。
デンジ星から来た1枚のレコードが、逆に日本中から音楽を奪う結果になってしまった。

電子戦隊の面々は、銀河ハニーの原曲を大型蓄音機で流し、ベーダーを誘き出す作戦に出た。
ヘドリアン女王は、デンジ星人の呪いの声にオーバーリアクションで苦しみ続ける。
ヘドラー将軍も流石にダメージを受ける中、レコーラーが蓄音機の破壊に向かった。
ついにレコーラーが銀河ハニー原曲のレコード盤がセットされたレコードプレーヤーに辿り着き、その破壊に乗り出したその時、デンジマンが現れた。

「見よ!電子戦隊!デンジマン!!」
デンジマンとレコーラーの最終決戦が始まった。
連携攻撃でレコーラーを翻弄するデンジマンだが、レコーラーも槍を振り回し反撃。
デンジマンはデンジブルーの猿回り、デンジイエローのイエローヘッドバット、そして最後のトドメのデンジブーメランのトリプル攻撃を炸裂させ、レコーラーに大ダメージを与える。

巨大化したレコーラーを前に、デンジタイガーが発進し、ダイデンジンが降臨。
レコード爆弾を大量に投げつけ、ダイデンジンを追い詰めるレコーラー。
だが、ダイデンジンも反撃の電子満月斬りを炸裂させ、レコーラーを倒すのだった。

こうして、街に音楽と平和が戻った。吹雪豪は竹の子族に混ざり、皆で音楽を楽しんでいた。
その様子を、電子戦隊は笑顔で見つめる。
人間にとって、音楽がどんなに大事なものか。
今度の事件を通して、そのことを嫌と言うほどに思い知らされたデンジマンであった。

銀河ハニーというヒット曲を通して、デンジ姫たちデンジ星人が地球の歴史に関与してきたことが発覚する、宇宙スケールの壮大な世界観を描いたエピソード。
地球に辿り着いたデンジ姫が、デンジ星人たちに地球人とともに生き、地球の歴史を作ってベーダー一族から地球を守るように託したことは劇場版で語られていたが、今回のエピソードで(電子戦隊の推測とはいえ)世界中のオーパーツにデンジ星人が関与してきたことが語られ、彼らがデンジ姫が言い残したように地球の歴史を作ってきたことが証明されたことになる。

3000年の時間と空間を超えて伝えられてきたメロディが、デンジ姫の抱いていたベーダー一族への怒りと悲しみを電子戦隊に伝えるシーンは、電子戦隊が遥か祖先のデンジ星人から受け継いだベーダー一族と戦う使命を継承する、壮大なスケールをもって演出されていた。
「電子戦隊デンジマン」のメインライターを務めた上原正三氏が得意とする、親から子へ、そしてその子へと、一族の使命と人の想いが受け継がれていく壮大なスケールのドラマが劇場版に続いて描かれており、デンジマンの物語を神話的スケールに拡張している。

ヒット曲の大流行が題材となるエピソードでは、「スパイダーマン」の「恐ろしきヒット曲! 歌って踊る殺人ロック」の劇中歌「スパイダーマンフギ」、後発作品では「宇宙刑事シャリバン」の「美少女歌手が歌う危険なヒットソング」劇中歌の「まぼろしブルース」、「宇宙刑事シャイダー」の「青ガキ隊大キライ」の「なんだなんだブギ」、「時空戦士スピルバン」の「黒ミサはカゲキなビートで」の「黒ミサロック」といった数々の名曲・迷曲が渡辺宙明氏の手で作曲され絶大なインパクトを遺してきたが、このエピソードの「銀河ハニー」もこれらと肩を並べる名曲だ。
こうしたヒット曲の流行が関わるエピソードでは、社会風刺的な要素としてヒット曲の流行の裏に悪の組織の陰謀があり、それに煽動された若者が暴走する、などのパターンが多く、悪の組織がヒット曲を作り陰謀を企てることが多い。
一方、この「デンジ姫の宇宙曲」は、ヒット曲が悪の組織を祓うための悪魔祓いの曲であり、ヒット曲を社会から排除するために悪の組織が暗躍するという作劇になっており、意外と珍しい展開になっている。銀河ハニーのメロディに苦しむヘドリアン女王の姿は、子供が好む流行歌のノリについていけない母親の姿の風刺と言えるかもしれない。

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