あらすじ
魔神提督とスカイライダーの宿命の対決は、スカイライダーの勝利に終わった。
傷ついた魔神提督はアジトに引きこもる。
これを倒さんと潜入した洋が見たものは、魔神提督の認識票の、FX777のナンバーだった。
魔神提督こそが改造人間FX777=自分の父であるということに、洋は自分の目を疑うが...。
その名はFX777――希望か罠か?明かされる魔神提督の正体!
ついに最終決戦に突入した、仮面ライダーとネオショッカー。
死んだはずの両親が生きていたという真実に動揺する洋の助けになるべく、城茂に続き仮面ライダー2号=一文字隼人もまた、日本へと帰国。シリーズ中盤の客演編でも前後編2回、計4話に渡ってゲスト出演し、洋の兄貴分として定着した一文字隼人の再登場は嬉しい展開だ。
だが、スカイライダーに屈辱を味わわせられた魔神提督は、洋の心を引き裂く罠を仕掛けていた。
なんと、魔神提督こそが前回語られた、洋の父=改造人間FX777であるというのである。
たとえ因縁の宿敵であっても、父は殺せない。苦悩する洋の姿に、魔神提督はほくそ笑む。
果たして、改造人間FX777こそが洋の父であるという情報は、真実なのだろうか?
そしてその頃、アリコマンド養成所に仕掛けられていた蟻地獄に引きずり込まれた城茂は、一人の女性に助けられていた。その女性こそ、洋の母親だった。
そして城茂は、洋の母から、彼女たち夫婦を襲った悲劇の真相を聞かされることになる。
洋の両親の真実は何処にあるのか?混沌渦巻く戦場を見つめる、謎の龍の正体は?
今、最終決戦に向け、全ての謎と宿命が収束する。
父と母が生きていることを聞かされたスカイライダーは、無我夢中でその行方を探した。
だが、父が改造人間FX777として、ネオショッカーの大幹部になっていると知ったスカイライダーの胸は傷んだ。一方、ストロンガーは蟻地獄に引き込まれた。
父と母の真相を知ろうとするスカイライダーもまた、危機に立たされていた!
魔神提督の放つ毒ガスを、風上に移動することで躱したスカイライダー。
だが、魔神提督は、切り離した左腕や、入れ歯を武器として飛ばし、スカイライダーを攻め立てる。魔神提督の入れ歯には、改造人間の新造を弱らせる毒液が仕込まれていたのだ。
だが、スカイライダーはその入れ歯を弾き飛ばし、魔神提督の腕に直撃させる。
入れ歯に毒液が仕込まれていると、うっかり口の中を噛んだら大変なことになりそうだ。
切り札の毒液を逆に食らってしまった魔神提督は、たまらず撤退した。
「待て魔神提督!俺の父は何処にいるんだ!教えてくれ!」
だがその時、魔神湖の水中から巨大な龍がその姿を見せ、スカイライダーを監視していた。
果たして、スカイライダーが目撃したこの龍の正体とは…。
その頃、洋の両親が見つかったことを知った一文字隼人がアラスカから帰国し、ブランカを訪ねていた。谷から洋や城茂と連絡がつかないことを聞かされた一文字は、洋を追って魔神湖へ向かう。
一方、蟻地獄に引きずり込まれた城茂は、魔神湖の下流にある滝に流れ着いていた。
そこには、氷の棺に閉じ込められた男を、悲痛な目で見つめる、女性の姿があった。
一文字は仮面ライダー2号に変身し、魔神湖へ向けて新サイクロン号を飛ばす。
だが、両親の真実をどうしても知りたい洋は、既に魔神湖の魔神提督のアジトに潜入していた。
アジトの奥に乗り込んだ洋は、月光の間で眠りについていた魔神提督を発見する。
なんと、魔神提督の身体はどんなに傷ついても、月の光を浴びれば元に戻るというのだ。
大首領に授かったこの不死身の肉体こそ、魔神提督の強さの源だった。
月光の間で、洋は月明かりに照らされる魔神提督が、「FX777」の認識票を付けていることに気づく。それは、魔神提督こそが、改造人間FX777であることを証明するものだった。
では、魔神提督こそが、探し求めていた父親だったというのか?
あまりにも信じがたい真実に、洋の心は大きく揺さぶられる。
その頃、城茂は、先程の女性に介抱され、意識を取り戻していた。
城茂は、その女性が洋の母親であることに気づく。洋の母は無事だったのだ。
しかし、洋は父親が魔神提督として悪事を働いていたということに、大いに動揺していた。
「月の光を浴びれば、魔神提督が蘇ってしまう。例え父さんでも、地球を不幸にするネオショッカーは許されない…。今なら…今なら魔神提督を…!」
魔神提督の持っていた剣を手に取り、振りかざそうとする洋。しかし、どうしても出来ない。
洋の脳裏には、両親との楽しかった思い出がよぎっていた。
「駄目だ…俺には父さんは殺せない!」
すると、魔神提督が口を開いた。
「洋…どうした?今ならワシを殺せるぞ?」
「出来ないよ、父さん!」
「父と思うな!お前の敵!人間の敵と思え!」
「父さん!」
「洋!それではお前はワシを許すのか?ネオショッカーを許すのか!?」
父が、人間の敵である魔神提督であるということは、洋にとって耐え難いことだった。
そこに、2号が駆けつけ、洋に決断を迫る。
「月の光を浴びれば、魔神提督が蘇るなら…月の光の刺さぬ、暗いところへ行きましょう」
2号の静止も聞かず、洋は魔神提督を背負い、父を救おうとする。
「溶岩が燃える地底の入口は、あっちだ」
背負った魔神提督に促され、洋はアジトの奥深く、地底へと進んでいく。
そこに、怪しげな鼓動音が響く。それは、魔神提督の体内に仕込まれた爆弾の音だった。
「洋。この音が何の音かわかるか?心臓の音ではない。心臓に仕掛けられた時限爆弾の音だ」
「知っていたよ、父さん」
「何?お前は知っていてワシを…?」
「そうだよ。俺は、父さんと一緒に死ぬ覚悟は、出来ているよ」
なんと洋は、悪に染まった父の罪を共に背負い、共に死のうとしていたのだった。
だが魔神提督は、密かにほくそ笑む。
「馬鹿な奴め…この魔神提督は粉々になっても心臓が無事な限り、大首領の力で生き返ることが出来るのだ!」
そう。全ては魔神提督の狡猾な作戦だった。父を思う洋の心情を利用し、共に自爆した後、自分だけが大首領の力で蘇ることで、スカイライダーを抹殺する計画だったのだ。
では、魔神提督はやはり、洋の父親ではないのか?
その頃、城茂は洋の母から、洋の両親を襲った悲劇について聞かされていた。
だがそこに、洋の母を追って、アリコマンドたちが現れる。
城茂がアリコマンドを蹴散らしていると、なんとそこに巨大な龍が姿を現し、洋の母を咥えて連れ去ってしまった!到底見たことのない巨大な生物の出現に、城茂は戦慄する。
その龍は、先ほどスカイライダーを監視していた龍だった。
するとそこに、魔神提督を背負った洋が通りかかった。
「洋!どうしたんだ!それは!」
「この人は俺の父さんなんだ。俺の父、改造人間FX777は、魔神提督だったんだ」
「馬鹿な!お前は騙されてるぞ、洋!その男がお前の父親であるはずがない!」
城茂は、先程洋の母が訪ねていた、氷の棺を指差す。その中には、洋の父がいた!
城茂は、先程洋の母から教えられた、洋の両親を襲った悲劇について話す。
洋の父はネオショッカーの味方となることを断固として拒んだがために、見せしめとして氷漬けにされ、殺されていたのだった。事故現場で爆破された遺体は、アリコマンドの変装だった。
長沼博士がネオショッカーのアジトで見た洋の父は、確かに本物だったのだ。
さらに城茂は、洋の母が生きていたことを伝える。
全ての計画が露見した魔神提督は、洋を嘲笑い始めた。
「全ては貴様を苦しめる俺の策略だ!今頃気がついてももう遅い!時限爆弾は3分後に爆発する!木端微塵になれ!筑波洋!」
恐るべきは、魔神提督の執念。洋の身体に組み付き、自爆しようとする魔神提督。
城茂は、ストロンガーに変身する!
そこに2号も駆けつけ、2人のライダーは洋の身体から魔神提督を引き剥がす。
そして洋も、スカイライダーに変身した。
怒りのスカイパンチが炸裂するが、魔神提督は逆に、3人ライダーもろとも自爆しようとする。
しかし、3人ライダーは魔神提督を天高く投げ飛ばし、トリプルキックを炸裂させた。
ついに、魔神提督の身体は爆発四散したのである。
しかし、魔神提督のヘルメットと電子頭脳だけは、わずかに生き延びていた。
大首領に自らの復元を乞う魔神提督だが、既に魔神提督に最後通牒を発していた大首領はそれを受け入れず、魔神提督の電子頭脳を粉々に握り潰してしまう。
その巨大な腕は、スカイライダーを監視し、洋の母を攫った巨大な龍のそれだった。
暗黒星雲の帝王であるネオショッカー大首領の正体は、巨大な龍だったのだ。
スカイライダーたちは洋の母を救うために、大首領の大神殿に乗り込んでいく。
2号ライダーが奪った大神殿への地図を元に、大神殿へ突き進んでいく3人のライダー。
すると、大神殿では、洋の母が大首領の召使いとして、労働を強制されていた。
大首領は宿敵である洋の大切な人を下僕とすることで、倒錯した悦びを得ていたのである。
怒りを隠せないスカイライダーだが、今飛び出していっても勝機はない。
するとそこに、大首領がアリコマンドや直属のドクロ暗殺隊に語りかけ始めた。
「我は暗黒星雲の帝王にして、ネオショッカーの大首領なるぞ…!これより、我自ら地球侵攻の命令を下す。地球を、ネオショッカーの支配下に置くのだ!」
そう。ネオショッカー大首領の正体は、遠く宇宙の暗黒星雲から来た大怪獣だった。
かつて、銀河の王を名乗る銀河王とネオショッカーが手を結び地球を支配しようとしたのも、おそらくはネオショッカー大首領の仲介があったのだろう。
実際、「~VS銀河王」の企画時は、銀河王と同じく宇宙から来たネオショッカー大首領の正体に触れるという案もあったらしく、完成作品ではオミットされたのが惜しまれる。
大神殿の広間から下がらされた洋の母に、洋は声を掛ける。
親子はついに涙ながらの再会を果たしたのだった。
逃亡を促す洋だが、洋の母は、大首領からは誰も逃げられないと絶望した様子を見せる。
そこに2号とストロンガーも現れ、洋と洋の母親に、自分たちが大首領を引き付けている間に、大神殿の外に逃亡するように促す。だが、アリコマンドたちが彼らを発見した。
2号とストロンガーはアリコマンドやドクロ暗殺隊を蹴散らし、大神殿に突入。
するとついに、怒りのネオショッカー大首領がその巨体を現した。
仮面ライダーが虫けらにしか見えないほど、巨大な体を持つ怪獣だったネオショッカー大首領は、ただ歩き回るだけでも仮面ライダーを寄せ付けない、まさに怪物だった。
2号とストロンガーは大神殿を脱出し、魔神湖から地上に出ると、それを追ってきた大首領にライダーダブルキックを炸裂させるが、全くダメージを与えることが出来ない。
怒りのまま、ライダーたちを踏み潰そうとするネオショッカー大首領。
ネオショッカー大首領は通常のスーツの他に、ライダーたちとスケールを合わせた実物大の脚部の造形物が作られ、歩くだけでライダーを寄せ付けない規格外ぶりを演出している。
さらに、口から火炎放射を放つネオショッカー大首領に、2号とストロンガーは再度ライダーキックを炸裂させるが、何の効果もなく弾かれるだけに終わった。
だが、洋と洋の母を脱出させる時間を稼いだ2人は、一時撤退する。
その頃、洋と洋の母は、氷漬けにされた洋の父と再会を果たしていた。
父を氷漬けにされ殺された洋はネオショッカーへの怒りを胸に、父に別れを告げる。
するとそこに、ネオショッカー大首領が暴れた余波で発生した地響きが起こる。
地響きによって起きた落盤によって、洋の父は岩の下敷きになって消えるのだった…。
母をかばいながら、懸命に大神殿を脱出しようとする洋。
果たして洋は、母を無事に救出することが出来るのだろうか?
そして、あらゆる攻撃が効かない無敵のネオショッカー大首領を、倒すことが出来るのか…。
単なるネオショッカーとの最終決戦だけでなく、人間・筑波洋が両親の生存がほのめかされて心が揺らぐというドラマ性が付与された、劇的かつドラマチックな展開が白眉である最終三部作。
ヒーローとして迎える最大の危機だけでなく、人間として過酷な状況に陥り、心をえぐられるような哀しみと試練に耐える筑波洋の姿を描いた作劇は、シリーズ中盤からのメインライターを務めた江連卓氏ならではのもので、シリーズに新風を吹かせることに成功している。
単に筑波洋を抹殺するのではなく、実の父親を抹殺するか、あるいは一緒に死ぬか…という苦しみと絶望を与えようとする魔神提督の最終作戦は、まさに人間・筑波洋の優しさへの挑戦だった。
もし洋が自分を父親だと誤解したまま、正義のために自分を抹殺すれば、洋の心に決して消えない苦しみと絶望を刻み込むことが出来るし、自分を抹殺できなければ、共に自爆して自分だけ大首領に蘇生してもらうことが出来る。魔神提督からすれば、例えどちらに転んでも洋に深い絶望を与えることが出来る、洋の心を踏み躙る悪魔のような作戦だった。
もし偶然洋の母が城茂を助けていなければ、洋が「父」と心中していたことは想像に難くない。
城茂と洋の母の出会いは、洋の両親を思う思いが呼んだ奇跡とも思える。
「ストロンガー」の岩石大首領に続き、巨大な怪物がその正体だったネオショッカー大首領。
2号とストロンガーの攻撃が全く通用せず、歩き回るだけでライダーが手も足も出ない脅威の力は、シリーズ最後を締めくくるラスボスキャラクターとしての説得力も十分だ。
この巨体を表現するために、ライダーのミニチュアを使った特撮や、合成カット。
それに、実物大の頭部や脚、尾の造形物が用いられ、ライダーとの迫力の戦闘を演出している。
果たして、8人ライダーはこの暗黒星雲の帝王を倒し、地球の平和を取り戻せるのか?
そして筑波洋は、再会した母を守り抜くことが出来るのか。
今、8人の仮面ライダーと、ネオショッカーとの最終決戦が始まろうとしている。