「仮面ライダー (新) (スカイライダー)」第38話「来たれ城茂!月給百万円のアリコマンド養成所」感想

2025年3月4日火曜日

仮面ライダー (新) (スカイライダー) 東映特撮YoutubeOfficial

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あらすじ

月給100万円という謳い文句に釣られて、若者たちが怪しい会社の面接に次々と集まった。
だが、彼らはネオショッカーのドクターメデオによって脳改造手術を受け、アリコマンドにされていた。これを知った洋は変装し、ネオショッカーのアジトに潜入するが…。

ウマい話には裏がある 若者を狙う月給100万円の闇バイト!

今回のネオショッカーの怪人は、ガマガエルの特性を備えたガマギラス。
カマキラスではない。
巨大な頭部を備えたそのユニークな容姿は、ガランダー帝国のガマ獣人の系譜も感じさせる。
左腕に備えた、「コブラ」のサイコガンのようなノズルからは人間を容易に溶解せしめる油を発射し、伸縮自在の舌を敵に絡ませ動きを封じる「ガマ舌絡み」や、顔のイボを取り外し爆弾として投げつける「イボ爆弾」を武器として備える、豊富な装備を備えた怪人だ。

そんなガマギラスの任務は、月給100万円という、令和の闇バイトの募集ですら聞かないような好条件の求人を新聞広告に掲載し、それに釣られて面接に訪れた若者から見込みのあるものを選別、合格したものを「アリコマンド養成所」に拉致し、アリコマンドの素体として確保することだ。

人の脳を弄ることを何よりの快楽にする狂気の科学者、ドクター・メデオによってアリコマンドに改造されそうとなる若者を救うため、洋は変装してアリコマンド養成所に潜入。
だが、その変装も露見してしまい、洋は脳改造を受ける寸前まで追い込まれてしまう。
そんな洋を救うべく、今また、海外から歴戦の勇者が帰国した。
天が呼ぶ、地が呼ぶ、人が呼ぶ。悪を倒すため現れた正義の戦士、仮面ライダーストロンガー=城茂が帰国したのである。果たしてストロンガーは、洋や若者たちを救えるのか。

ブランカでは、若者たちが月給100万円を謳う「マコリアインターナショナル」なる企業の求人広告に色めき立っていた。谷は、世の中にそんなウマい話は転がっていないと沼たちを戒める。
結局、若者たちはその求人に応募することを決めてしまうのだった。
その頃、洋は一人の女性が、怪しい男の乗った車に跳ねられそうになる現場を目撃した。

女性を助けた洋は、ブランカで事情を聞くことにした。
なんでも、女性の息子のユウイチロウが、1ヶ月前に「マコリアインターナショナル」の求人に応募。面接を受けに行ったきり、行方不明になってしまったのだという。
何度会社に電話しても、そんな男は来ていないと言い張るマコリアインターナショナルに、女性は警察に相談すると通告。それにより、命を狙われたのだ。
洋は、ユウイチロウの手がかりとなる、ユウイチロウが持っているものと同じお守りを受け取ると、変装してマコリアインターナショナルへ向かった。

マコリアインターナショナルでは、攻撃を感知して回避するスカイライダーの人形を、好きな武器を使って殺させ、その手腕を見て採用を決める狂気の面接が行われていた。
洋はその面接に合格、さらにはナイフを突きつけ面接官を脅し、面接に合格する。
どうでもいいが、アフロのかつらをつけ、付け髭を付けた洋の変装が、子門真人氏に見える…。

合格を勝ち取った若者たちは、トラックの荷台に載せられ、何処かへと運ばれていった。
それはあたかも、護送車のようだ。
しかし、さっきの面接に合格した若者たちも、それはそれで普通の人間ではない気はする。
若者たちを運ぶ車の道中では、がんがんじいが穴を掘り、ネオショッカーのアジトへ繋がる道を作ろうとしていた。さり気なく、ネオショッカーのアジトを突き止めているので凄い。
しかし、車が通ったはずみで土が跳ね、せっかく掘った穴は埋まってしまう。
「せっかく掘ったのにもう!けど今に見とけ、必ず中に入るさかいなぁ~!」

車が停車した先で待っていたのは、ネオショッカーのガマギラスとアリコマンドたちだった。
「100万円に釣られて来たか!貴様たちはアリコマンドとなるために、ここでドクター・メデオの脳改造の手術を受けるのだ!ドクター・メデオ!」
ガマギラスの声に応じて、白髪の老人が姿を現した。科学者と言うより祈祷師だ。
「また脳みそが弄れるわい!貴様の脳みそは重そうじゃ!」
あまりの恐怖に逃げ出そうとした若者は、高圧電流の流れる金網に触れて感電する。
そう、マコリアインターナショナルとは、アリコマンドの素材となる人間を集めるために、月給100万円というあり得ない条件に眼の眩んだ人々を集めるダミー会社だったのだ。
谷の言う通り、世の中にウマい話などあり得ないのである。

洋や若者たちは、アリコマンド養成所内の地下牢に囚われた。
そこには、既に脳改造を受け人間性を奪われた若者たちの成れの果てが囚われていた。
その中にただ一人、まだかろうじて人語を放す者がいた。
その胸にかかっていたお守りから、それがユウイチロウであったことが判明する。
だが、ユウイチロウは既に自分の名前も思い出せなくなっていた。
「思い出せない…もう自分が誰なのかがわからない…ただ、毎日少しずつ自分が、得体のしれない恐ろしいモノに変わっていくのだけが、良くわかるんだ…」
ネオショッカーの脳改造の恐ろしさを強調した、非常に秀逸な恐怖描写となっている。
自我を奪われ、少しずつ人間でないモノに変わっていく恐怖。
「人間の自由」を踏み躙るネオショッカーの魔手の恐ろしさが、見事に表現されている。

夜になり、がんがんじいは少しずつだが横穴を掘り進めていた。
地下牢に囚われた人々は、洋の手引で脱走計画を立てる。
施設を囲む金網に流れる2万ボルトの電流の電源の位置は、ユウイチロウが知っていた。
洋は隠し持っていたマッチで地下牢内の藁に火を付け、ボヤ騒ぎを起こす。
見張りのアリコマンドを洋が抑えているうちに、若者たちは地下牢を脱出。
ユウイチロウと、鍵開けの得意な若者が施設の電気コントロール室に向かう。
だが、扉の向こうから白い油が染み出てきた。
油によって、ユウイチロウたちは身動きが取れなくなってしまう。
「ゲ~コゲコゲコ!ガマの油地獄よ!脱走する奴は、こうしてやる!」
姿を現したガマギラスは、左腕から油を放ち若者の身体を溶かし、白骨化させるのだった。

施設の電気が消えたものの、戻ってきたユウイチロウは血まみれだった。
そして、洋たちは発見されてしまう。そこにいたのは、魔神提督だった。
「上手く化けたな、筑波洋…今度こそ貴様を殺してやる!」
洋は魔神提督に立ち向かうが、魔神提督は洋を捕まえ、ガマギラスにとどめを刺させようとする。
そこに、よせばいいのにドクター・メデオが割って入ってきた。
「これほどの男は二度と手に入りません。是非、もう一度脳改造の手術を行わせてください!」
まあ実際、仮面ライダーを悪の手先とすれば最強の怪人となることは、後年の「オーズ・電王・オールライダー レッツゴー仮面ライダー」で描かれた通り、人類最大の脅威になるのは間違いない。
とはいえ、魔神提督はここでスカイライダーを始末する千載一遇の好機を逃したことになる。

ブランカでは、連絡を入れない洋を皆が心配していた。そこに、一人の紳士が現れる。
「貴方は?」
「城…と申します」
「洋のお友達の、城茂くんですか?」
今回は不在だが、レギュラーキャストである叶茂に配慮し、苗字の方で名乗る城茂。
落ち着きを持ったただずまいといい、「ストロンガー」本編からの成長を感じさせる。
城茂と谷は、マコリアインターナショナルを訪ねたが、既にそこはもぬけの殻だった。
ビルの管理人から、部屋に落ちていたという怪しい地図をもらった城茂は、帰国した理由を話す。
「日本に、アリコマンド養成所が出来たという噂は本当かもしれない…」
城茂は、地図に示された地点へと向かうのだった。

アリコマンド養成所と思うわれる地点ヘ向け、バイクを飛ばす城茂。
ガマギラスはその接近を察知し、地雷での待ち伏せを仕掛けていた。
だが、城茂は地雷の爆発を回避。ガマギラスはアリコマンドに城茂を襲わせる。
ガマギラスはさらに、溶解油を城茂に噴射して攻撃。城茂はついに、ストロンガーに変身する。
「何だお前は?」
「変身…ストロンガー!天が呼ぶ。地が呼ぶ。人が呼ぶ!悪を倒せと俺を呼ぶ!俺は正義の戦士、仮面ライダーストロンガー!」
アリコマンドを蹴散らしながら名乗りを上げるストロンガー。
「ストロンガー」本編の不敵な立ち振る舞いは、今なお健在であることが嬉しい。
しかし、城茂のことは知っていてもストロンガーのことは知らないガマギラスも謎だ。
アリコマンドの一人を捕らえ、アリコマンド養成所の場所を尋問するストロンガー。
ガマギラスはアリコマンドの口を封じるため、イボ爆弾を投げつけるのだった。

その頃、がんがんじいはようやく横穴を掘り終えようとしていた。
一方、手術台に拘束されていた洋が目を覚ますと、眼前には高速回転する丸鋸が。
手術台の傍らでは、ドクター・メデオが不気味に笑う。
「筑波洋。頭蓋骨を切断し、これからお前の脳みそに、悪の心を埋め込んでやる…!」
こいつ、どんだけ脳みそが好きなんだ。
「少々痛いが、すぐ楽になる…」
だが突然、丸鋸の動作が止まった。ストロンガーがアリコマンド養成所に乗り込んだのだ。
ストロンガーに拘束を解かれた洋は、同じく捕まっていたユウイチロウを助ける。

洋は若者たちをストロンガーに任せ、ガマギラスと戦う。
一方、がんがんじいもついに横穴を掘り当て、アリコマンド養成所の敷地内に顔を出した。
だがその眼前に、洋に蹴り飛ばされたガマギラスが飛んできて、がんがんじいはビビる。
なんだか、飛田今太を思い出させる役回りだ。
だが、がんがんじいが掘った穴に引っかかったことで、ガマギラスに隙が生じた。
洋はその隙を見逃さず、スカイライダーに変身する!
「スカイ!変身!」

ストロンガーは電ショックで電流の流れる金網を破壊し、若者を逃がす。
そこに、ドクター・メデオが若者たちを追ってきた。
「こら!ワシの実験材料を返せ!」
「貴様か!残酷な手術をしたのは!許さん!電ショック!」
ストロンガー怒りの電ショックが炸裂し、ドクター・メデオは消滅するのだった。

ドクター・メデオを始末したストロンガーはスカイライダーと合流。
二人のライダーが相手では、ガマギラスももはや敵ではない。
ジープに乗って逃亡するガマギラスを追い、スカイライダーはスカイターボに、ストロンガーはカブトローに乗って挟み撃ちにする。ジープに飛び乗ったストロンガーは、ガマギラスを蹴り飛ばした。
それでも往生際が悪いガマギラスは、全力で逃げ続ける。

ガマギラスはガマの油を自分の体に塗りつけた。
それにより、スカイライダーのスカイキックが滑って威力を発揮しなくなってしまう。
組み付こうとしたストロンガーも、ガマギラスの身体を掴めない。
イボ爆弾を投げつけ、ガマ舌絡みでスカイライダーを捕らえたガマギラス。
ガマギラスはさらに、溶解油をスカイライダーに流し始めた。
このままではスカイライダーが溶けてしまう。まさかの大ピンチだ。

しかし、ストロンガーは電ショックでガマギラスを感電させ、電パンチを炸裂させる。
ガマの油を消費したガマギラスは、既に身体に塗った油も枯渇していた。
スカイライダーはその隙を見逃さず、スカイキックを炸裂させる。
さらに、スカイライダー99の技のひとつ、「スカイアームドロップ」が炸裂。
ガマギラスはついに敗れ去り、ストロンガーはスカイライダーの健闘を称えるのだった。

ユウイチロウや脳改造を受けた若者たちは病院に運ばれ、1ヶ月ほどで退院できるとのことだった。
城茂は再び海外に旅立とうとするが、谷たちはこれから祝杯を上げると城茂を引き止める。
「カラオケが出るまでは返しませんからね!」
取り戻した、一時の平和。戦士の休息の風景が、そこにはあった。

「カラオケが出るまでは~」というのは、城茂を演じた荒木しげる氏がカレッジフォークグループ「フォー・セインツ」のドラムスとしてデビューした経歴が元ネタなのだろう。
栄光の7人ライダーの中ではいち早くスカイライダーを助けに現れたストロンガーだが、オリジナルキャストでの客演は今回が初めて。この後、最終エピソードにも登場することになる。
ブランカを訪れた際の紳士的な態度からは、「ストロンガー」本編から歳月が流れた成長を感じさせる一方、悪との戦いではブラックサタンと戦っていた頃のように高らかに名乗りを上げながら戦闘員を蹴散らす、かつてと同じ不敵な様子を見せて楽しませてくれた。

アリコマンド養成所、というちょっとユニークにも聞こえるサブタイトルから一点、ネオショッカーの脳改造によって人間性を奪われた被害者の恐怖描写が秀逸なエピソードでもある。
脳改造を受け、徐々に自分が人ならぬモノへ変わっていく恐怖。
人間の自由を奪うネオショッカーの恐ろしさを描ききった、秀作エピソードだろう。

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