あらすじ
悪の秘密結社・バダンによって強化兵士へと改造され、その手先となっていた村雨良は、事故によって自我を取り戻す。姉の命を奪ったバダンと孤独な戦いを続ける村雨良は、人々のために戦う9人の仮面ライダーと出会い、仮面ライダーZXとして戦う決意をする。
10番目の勇者、その名はZX!復讐を乗り越え、大義のために立つ!
「仮面ライダースーパー1」放送終了後、第2期ライダーシリーズは完結した。
だが既に、第1作「仮面ライダー」放送から長期に渡って支持されてきた「仮面ライダー」シリーズには、幼少期を「仮面ライダー」を見て育った多くの年長のファンが存在していた。
そして、有志によるシリーズの復活を望むイベントも数多く開かれるようになっていた。
そのファンの思いが、原作者である石ノ森章太郎氏を突き動かすことになる。
1981年末のイベントで、石ノ森氏はもう一度、新たな仮面ライダーを作ることを公約。
そこに東映や講談社、日本コロムビアといった企業が賛同し、10番目の仮面ライダーの企画が動き出した。そうして企画された、平山亨Pが最後に出かけたライダーが、「仮面ライダーZX」だ。
ファンの声によって企画が成立し、公募によって名前が決定したZXはまさに、ライダー世代の熱意が生み出した仮面ライダーである。
「ZX」はこれまでのライダーと異なる、雑誌連載という形でスタートを切った。
敵組織であるバダン怪人は、グラビアに映える精密な造形と大胆なギミックで読者を魅了した。
そしてその雑誌連載終了後、シリーズ集大成として1984年の正月特番としてオンエアされたのが、この「10号誕生!仮面ライダー全員集合!!」である。
仮面ライダーZXの誕生から、先輩ライダーとの出会いで彼が仮面ライダー10号になり、バダンとの戦いに挑むまでを描いた作品となり、これが平山亨Pや阿部征司P、大野剣友会といった、初代「仮面ライダー」から関わってきたスタッフ陣の最後の「ライダー」作品となっている。
10人の仮面ライダーとバダン怪人軍団の決戦を描いた、空前のスケールの決戦シーンが見所だ。
仮面ライダーZXとは、バダン帝国によって改造された青年・村雨良が変身した姿である。
「忍者ライダー」の異名を持つその肉体には全身に隠し武器を内蔵しており、十字手裏剣や衝撃集中爆弾、マイクロチェーンといった隠し武器を駆使して戦う。
脳以外のほとんどの肉体をメカに置き換えた「パーフェクトサイボーグ」であり、人工ボディの全身に装備されたサーボモーターの働きで、恐るべきパワーを発揮することが出来る。
そして彼を改造したバダン帝国とは、ナチス残党によって組織された悪の帝国である。
南米に存在する巨大地下都市、バダン・シティを本拠地に、世界征服を目論んでいる。
その大幹部である暗闇大使は、かつてのショッカーの大幹部・地獄大使のいとこである。
過去に滅んだ悪の組織を研究してバダン強化兵士、そしてUFOサイボーグと呼ばれる強力な改造人間を生み出しており、ショッカーからジンドグマまでの全ての戦力を継承していると言えよう。
そしてバダンは物質を完全にエネルギーに変える恐怖の兵器・時空破断システムを開発。
これもあるいは、かつてGODが完成させようとしていたRS装置の発展系なのかもしれない。
バダンはこの時空破断システムで、地上のあらゆる物を消滅させようとしていた。
セスナのパイロットだった村雨良は、ジャーナリストである姉のしずかの頼みで、巷を騒がすUFOの調査のためにセスナを飛ばしている途中、バダンのUFOに捕らえられる。
そして、バダンの秘密を知ったしずかは良の眼の前で殺され、良もまた、脳以外の全身をメカに変えられ、組織の尖兵である強化サイボーグ兵士・ZXに改造されてしまう。
そのままバダンの一員として飛行操縦士になっていた良は、偶然、飛行事故によって記憶と自我を取り戻すと、日本へと脱出。姉と自分の肉体を奪ったバダンへの復讐を誓うのだった。
だが、バダンへの復讐のために戦っていたZXの前に、仮面の戦士たちが現れる。
それは、地球の危機を知って宇宙から帰還したスーパー1以下、9人の仮面ライダーだった。
復讐心で戦っていたZXに、彼ら先輩ライダーは大義のために生きる道を示す。
人間の自由のために戦う先達の存在に、ZXの心は揺れる。
だがそこに、バダン時代の戦友・三影英介=タイガーロイドが現れる。
そしてバダンもまた、日本で時空破断システムを起動させようとしていた。
バダンの野望を阻止するため、9人の仮面ライダーが阿修羅谷に急ぐ。
そしてZXもまた、過去の因縁に決着をつけるため、タイガーロイドに挑むのだった。
果たして仮面ライダーは、バダンの陰謀を阻止することが出来るのか。
そしてZXは復讐を乗り越え、大義のために戦う「仮面ライダー10号」となるのか?
全ての戦いに終止符を打つため、正義と悪の最終決戦が阿修羅谷で展開される。
「悪の秘密結社・バダンとは、恐怖の科学力を持ち、第三帝国の野望を追う、ナチスの残党である。その指揮者・暗闇大使は、ショッカーの地獄大使の血縁で、全てを消滅させる最終兵器・時空破断システムを開発して、日本壊滅を企んだ。人類の自由のために戦う10人の仮面ライダーは、今、阿修羅谷でバダンの再生怪人軍団に最後の決戦を挑んだ!」
中江真司氏による、この作品の粗筋とバダン帝国について語ったナレーション。
それに続くOP映像は、「8人ライダーVS銀河王」時の映像に、スーパー1とZXを加えたもの。
ヘルダイバーに乗ったZXの勇姿に合わせた主題歌「ドラゴン・ロード」の串田アキラ氏による熱気あふれる歌声も、「ZX」ファン待望の映像化を盛り上げている。
「仮面ライダーは改造人間である。人類の自由のために、巨大な悪と戦うのだ!」
まずは1号からスーパー1までの9人ライダーの能力や誕生経緯を解説する総集編が挿入される。
自らの命を悪と戦う大義のために使い、命の限り戦った9人の勇者の歩みを振り返る映像だ。
そして10人目の仮面ライダー、ZXの誕生経緯へと、物語は移っていく。
南米・ブラジルで、当時大学生だった青年・村雨良は、新聞記者の姉・しずかと一緒に、UFOの噂を追ってアマゾンの奥地へセスナを飛ばしていた。
そして良としずかはそこで、激しい光を放ちながら飛行するUFOの一団を目撃する。
それは、悪の組織・バダン帝国の侵略兵器。UFOは激しい閃光を良たちが乗るセスナに放つ。
バダンに捕らえられた良としずかは電気椅子の処刑にかけられ、バダンの秘密を知ったしずかは良の眼の前で殺されてしまう。そして良は、脳だけを残して改造され、バダンの尖兵である強化サイボーグ兵士となってしまい、過去の記憶も自我も何もかもが奪われてしまう。
こうしてバダンの一員となった良は、バダンの本拠地、バダン・シティで同じくバダンによって強化サイボーグ兵士に改造された、三影英介という青年に出会う。
二人の技量は優劣つけがたく、優秀なサイボーグとしてバダンからその将来を嘱望される。
そして意気投合した2人は、互いにその実力を認め合うのだった。
バダンの飛行操縦士に抜擢された良だったが、ある時、墜落事故を起こしてしまい、その時のショックで偶然にも失われていた記憶と自我を取り戻し、自分が村雨良であることを思い出す。
記憶を取り戻し、組織への反抗心を抱いた良を、バダンは電磁解体機にかけ抹殺しようとする。
良は間一髪、その危機を逃れるが、バダンの本拠地は日本へ移動し、良の眼の前から消え去った。
バダンが用済みになった良を処刑しようとした電磁解体機とは、改造人間を分解する効力を持つ、デストロンの「改造人間分解光線」の発展系であるようにも思える。
日本に帰国した良は、かつての知り合いである海堂肇博士の元に身を寄せる。
海堂博士の名前の元ネタは、平山亨プロデューサーと阿部征司プロデューサーが「V3」で脚本を執筆した際の共同ペンネーム。
海堂博士は、父をバダンに殺された少女・一条ルミを引き取っていた。
良は海堂博士から、自分の体が脳以外の全身の99%を機械に置き換えられた、パーフェクトサイボーグとして改造されてしまったことを聞かされて愕然とする。
「姉さんを殺し…俺をこんな身体にしたバダンを許せん…必ず復讐してやる!」
復讐の炎に燃える良は、ルミの静止も聞かずバダンと戦う決意を固めるのだった。
一方その頃、バダンの大幹部・暗闇大使は、バダンに拉致された科学者・伊藤博士たちに、恐怖の秘密兵器・時空破断システムを完成させていた。
時空破断システムとは、武器として使用されれば次元を超越し、物質とエネルギーの交換をすることで、一瞬にして全ての物質を消滅させることが出来る。
時空破断システムの完成は、世界の壊滅を意味するのだ。
暗闇大使は時空破断システムのテストを行い、一瞬にして巨大なビルや人間たちを消滅させてしまう。伊藤博士は、恐怖の兵器を生み出してしまったことに戦慄する。
だが、時空破断システムの完全な完成には、バダンニウム84という物質が必要だった。
伊藤博士たちは時空破断システムの完成を防ぐべく、アジトの脱出を計画する。
暗闇大使は、配下の怪人軍団を前に演説を行っていた。
多くのバダン怪人たちに紛れ、デストロンのカミソリヒトデや、ゲドンの獣人大ムカデ、ネオショッカーのガメレオジン、ドグマのカマギリガン、カメレキングも加わっている。
それこそが、バダンが過去の悪の組織のデータを継承している証である。
初出作品が古いカミソリヒトデと獣人大ムカデは、たまたまアトラクション用の着ぐるみが残っていたために登場したらしい。
「諸君!世界征服を誓った、歴史ある暗黒組織の数々も、長年に渡って屈辱にまみれてきた!今こそ、我がバダン帝国が、その夢を実現する時なのだ!」
暗闇大使は、ショッカーからジンドグマまでの、歴代の悪の組織を回想する。
「あらゆる組織が成し得なかった…世界征服の夢を!このワシが…バダン帝国が見事やり遂げてみせる!」
その頃、良はバダンが時空破断システムの実験で起こした怪事件について、海堂博士たちと話し合っていた。海堂博士は、これが行方不明になった伊藤博士が発明した時空破断装置が引き起こす現象の大規模なものであると判断し、良は伊藤博士がバダンに捕われていることを悟る。
このままでは、伊藤博士の生命も危ない。
さらに海堂博士から、世界中から超エネルギー物質・バダンニウム84が日本に運び入れられていることを教えられた良は、バダンのアジトの手がかりを掴み、その野望を阻止する決意を固める。
時を同じくして、バダンのアジトでは、伊藤博士たちがアジトからの脱走を決行していた。
暗闇大使はバダンの秘密を守るため、三影に伊藤博士たちの抹殺を命じる。
バダンの戦闘員・コンバットロイドに包囲された伊藤博士の前に、バダンが産んだもう一人のパーフェクトサイボーグ、タイガーロイドが現れる。それこそが、三影が変身した姿だった。
タイガーロイドは伊藤博士を用済みと断じ、鋭い牙で噛みついて伊藤博士を抹殺する。
三影は伊藤博士を抹殺したことを暗闇大使に報告し、暗闇大使もそれに満足する。
そして三影に次なる任務として、バダンに抗おうとする村雨良の抹殺を命じるのだった。
時空破断システムを完成させようとするバダンの陰謀を、9人ライダーも察知していた。
1号とアマゾンが、バダンニウム84を輸送するフェリーに接近したのである。
そして村雨良もまた、バダンの動きを察知し、バダンニウム84の輸送部隊の行方を追っていた。
同じ頃、ライダーマン=結城丈二と、地球に帰還していたスーパー1=沖一也は、V3=風見志郎から連絡を受け、日本に結集していた。再会の喜びもそこそこに、3人のライダーはバダンについて話し合う。だが、9人ライダーが手を尽くしても、バダンのアジトは発見できなかった。
そこで風見志郎たちは手分けをして、バダンニウム84の輸送ルートを潰すことにした。
9人ライダーは各地の輸送ルートへむけ、マシンを飛ばす。
バダンは7つもの輸送ルートを用意し、バダンニウム84をアジトに運び入れようとしていた。
だが、その各地に仮面ライダーが出現する。
1号ライダーと2号ライダーが、バダンニウム84を積んだトラックに飛び移る。
そして輸送を担当していた、バダンのタカロイドを蹴散らすと、トラックを破壊するのだった。
別ルートでは、V3がドクガロイドを蹴散らし、バダンニウム84を積んだトラックを破壊。
さらに別ルートでは、アマゾンライダーとスカイライダーがバラロイドと交戦。
やはりトラックを破壊して、バダンニウム84の運搬を阻止した。
その戦いの跡地に駆けつけた村雨良は、自分以外にもバダンと戦う存在が居ることを訝しむ。
ストロンガーはアメンバロイドと戦い、電ショックでトラックを破壊。
Xライダーはヤマアラシロイドと戦い、やはりバダンニウム84の運搬を阻止する。
そして、ライダーマンとスーパー1がコンバットロイド部隊と交戦する中、村雨良が戦場に到着。
あろうことか、ライダーマンとスーパー1を、バダンニウム84を狙う存在と勘違いしてしまう。
かつて、ストロンガーをデルザー軍団打倒の邪魔になると勘違いしていたライダーマンが、今度はバダンニウム84を狙う敵だと勘違いされてしまった。
村雨良は変身ポーズを決め、パーフェクトサイボーグ・ZXに変身。
スーパー1の静止も聞かず、2人のライダーを敵だと思って攻撃を仕掛けてしまう。
ライダーマンはロープアームでZXの動きを封じようとするが、ZXのパワーは凄まじく、ライダーマンとスーパー1の二人がかりで抑える事が出来ない。だがそこに、V3が駆けつけた。
「ZX!俺たちは仲間だ!バダンが世界征服の本拠を、この日本に置いたんだ!」
「俺達の目的は、時空破断システムの破壊にある!」
「じゃあ俺と同じ?君等は一体…?」
「悪の組織のために改造された…『仮面ライダー』さ!」
誤解を解いたZXは、ライダーマンとスーパー1に謝罪する。
だがその頃、バダンニウム84を積んだトラックが、バダンのアジトに到着しようとしていた。
いくつもの輸送ルートを設定していたバダンは、ついにバダンニウム84の輸送に成功していた。
そして時空破断システムの起動には、コンテナ1台分のバダンニウム84で十分だったのである。
風見志郎たちは、良に「仮面ライダー」の宿命を伝えるため、自分たちの遍歴を収めたビデオテープを見せていた。いつの日か新たな「仮面ライダー」が生まれることに備えていたのだろうか?
9人もいると、やることがマメではある。
良は、風見志郎、結城丈二、そして沖一也から、彼らが人間であることを奪われながらも復讐のためではなく、人類の自由を守るという大義のために戦う戦士であることを聞かされる。
「正直言って、驚きました。俺と同じ境遇にさせられた人間が、9人もいるなんて…」
「君と同じ哀しみや苦しみを持っている。皆、一度は君と同じように復讐に燃えたんだよ」
「一度は?」
「今はただ、我々の力が必要とされる限り、戦い続けるだけさ!」
良に復讐のためではなく大義のために戦う意義を語るのが、家族を殺されたことでその復讐を願いながら、大義のために戦う1号2号の姿を見てその復讐心を捨てた風見志郎であるのが見事。
かつて復讐に燃える結城丈二を諭したように、一度は復讐心に燃えた風見志郎だからこそ、復讐心に囚われる良の心を動かすことが出来るのだ。
そこに、1号から、ついにバダンのアジトを発見したという通信が入る。
それは、阿修羅谷の巨大なダム。
連絡を受けた風見志郎、結城丈二、沖一也、そして良は、散開して阿修羅谷に向かう。
だが、マシンを飛ばす良の前に、三影が現れた。
「お前とはこんなふうに会いたくなかった…俺はバダンにこの命を捧げた。バダンに歯向かう奴は、たとえ親友のお前でも許せん!来い!」
「行かせてくれ三影。俺はお前とは戦いたくないんだ!」
「行きたくば…この俺を殺ってから行け!」
もはや問答無用。バダンへの忠誠を誓った三影は、タイガーロイドに変身して襲いかかる。
良もまた覚悟を決めて、ZXに変身する。
タイガーロイドは背中に装備した大砲を連射し、ZXを砲撃する。
「待て!タイガーロイド、目を覚ませ!お前は悪のバダンにまで忠誠を尽くすことはない!」
「腐れきったこの世に悪も善もない!強い者が生き残る、勝ち残った者こそ善なのだ!」
善悪の基準に厭世的な態度を持つタイガーロイドは、短い出番ながらキャラが立っている。
大砲を絶え間なく連射するタイガーロイドの猛威に、ZXは接近することも出来ない。
だがZXは砲撃を受けながら、タイガーロイドの砲撃には0コンマ7秒の隙があることを見抜いた。
ZXは砲撃の間の僅かな隙に、衝撃集中爆弾を投げつけ爆破。タイガーロイドを転倒させる。
その隙に接近すると、マイクロチェーンを絡みつかせ、高圧電流を放電しダメージを与えた。
そして、最後のトドメのZXキックを放ち、親友との死闘に勝利する。
敗北を認めて散った三影に、良は親友を倒した哀しみを胸に刻むのだった。
だがついに、バダン時空破断システムにバダンニウム84のセットを完了してしまう。
赤く染まった空に稲妻が走ると、いくつもの高層ビルが一瞬にして姿を消してしまった。
ZXはヘルダイバーを飛ばし、阿修羅谷に急ぐ。
そして、阿修羅谷についに9人の仮面ライダーが駆けつけた。
さらに、復讐のためではなく、大義のために戦う決意を固めた、「仮面ライダー」ZXも!
「おのれZX!貴様も仮面ライダーの仲間入りをしたのか!」
ZXの反逆に怒る暗闇大使は、怪人軍団を呼び出した。
「仮面ライダー!ここがお前たちの墓場だ!」
「おのれ!地獄大使!」
「地獄大使だと?あんな奴と一緒にするな!ワシはバダンの総指揮者、暗闇大使だ!」
1号ライダーに地獄大使と間違われた暗闇大使は憤慨する。地獄大使とは仲が悪かったらしい。
暗闇大使は怪人軍団を差し向け、10人ライダーもまた、怪人軍団に立ち向かう。
ここに、正邪の一大決戦が幕を開けた。
「ライダーアクション」をBGMに、次々に怪人軍団を蹴散らしていく10人ライダー。
さらに、「輝け!8人ライダー」をバックに、1号ライダーのライダーキックが、2号ライダーのライダー投げが。次々にバダンの怪人たちを打ち破っていく。
スーパー1は冷熱ハンドの超高温火炎を、ストロンガーは電ショックを。
XライダーのXキックも冴え渡り、バダンの怪人たちはみるみるその数を減らしていった。
劣勢を悟った暗闇大使は、切り札である人質作戦を決行する。
なんと、いつの間にやら海堂博士とルミがバダンに捕まってしまっていた。
だが、スーパー1が素早い動きで跳躍し、海堂博士たちを捕らえるコンバットロイドを撃退。
尺が短いからとはいえ、人質に臆することもないストロングスタイルだ。
切り札である人質作戦も失敗した暗闇大使は、ついに時空破断システムを起動させる。
「おのれ仮面ライダー!まとめて片付けてやる!時空破断パワーを受けてみろ!」
時空破断システムから放たれた稲妻に打たれた10人ライダーは、暗黒の異空間に飛ばされた。
「どうだ!時空破断パワーの前では、手も足も出まい!」
時空破断システムによって苦しむライダーたちだが、その劣勢の中でも彼らは、暗闇大使の体内に時空破断システムのコントロール装置があることを見抜いていた。
だがそれは、暗闇大使を倒さなければ時空破断システムは止められないということ。
ZXは、自らが命をかけて突破口を開くことを宣言する。
「ZX!貴様死ぬ気か!」
「俺の身体は、今日のためにあったことを…V3!貴方が教えてくれた!先輩、ありがとう!」
改造された身体を、大義のために戦うことに使うことを9人の勇者から教えられたZXは、自らもまた、大義のために命をかけて戦う戦士となることを誓ったのだ!
暗闇大使の影に向けて突撃するZX。9人ライダーもその後に続く。
「みんなのエネルギーをひとつにまとめるんだ!」
「ライダーシンドローム!!」
10人ライダーのベルトからエネルギーが迸り、エネルギーの火花が暗闇大使を撃つ!
かつて、岩石大首領戦で7人ライダーが見せたエネルギーの結集だ。
その技名が「ライダーシンドローム」、意訳するならばライダー世代の熱意の結晶というのが、ファンの熱意が産んだ「ZX」が加わった10人ライダーの技名に相応しい。
ライダーシンドロームのエネルギーで怯んだ暗闇大使。
ZXはそこに、全身を赤く輝かせたZXイナズマキックを叩き込む!
「暗闇死すとも…バダンは滅びず…!バンザーイ!!」
かつての地獄大使がそうであったように、暗闇大使もまた、自らの組織の不滅を叫び散る。
そしてそれに呼応するように、時空破断システムも大爆発を起こしてこの世から消えた。
だが突如空に、巨大な髑髏の幻影が浮かび上がる。それこそが、バダン首領の姿だった。
海堂博士はそれを、「悪霊のエネルギーに違いない」と推測する。
バダン首領は高笑いを上げながら、何処かへ消え去っていく。
ZXはバダンの底知れなさに戦慄する。
こうして正邪の一大決戦は、正義の勝利で幕を閉じた。
9人のライダーは、10人目の仮面ライダーとなったZXを称える。
「ZX。君に我々9人は助けられた」
「ZX。君は我々の仲間、仮面ライダー10号だ!」
「おめでとう。仮面ライダー10号!」
「俺は…仮面ライダー10号!」
こうして今ここに、大義のための戦う10人目の仮面ライダーが誕生した。その名はZX。
良と海堂博士、ルミは、再び世界中に散っていく9人のライダーを見送る。
良はその姿に、自分がこれから成すべき使命を感じ取っていた。
「素晴らしい仲間たちだ。俺は9人の勇気に、自分の生きる道を見つけることが出来たんだ!」
「仮面ライダー。不滅のヒーローたち。またこの世に危機の訪れる時、再び現れてくれるだろう。さらば、我らの仮面ライダー!」
エンディングテーマは、「レッツゴー!! ライダーキック」。
仮面ライダーの不滅と別れを告げるこのナレーションで、10人のライダーの戦いは幕を閉じた。
1時間特番に加え過去シリーズの総集編要素も兼ね備えた特番ながら、それまで雑誌連載で展開してきた「ZX」の待望の映像化ということもあり、村雨良が復讐心を捨て大義のために戦う「仮面ライダー」となるまでのドラマをしっかりと描いたスペシャル作品。
親友となった三影英介と善悪の基準の信念の相違で戦うことになるドラマチックな展開も短い尺の中で描かれ、単なるお祭り作品に終わらないドラマ性を持たせる意地を感じる。
復讐心に囚われていたZXの心を動かすのが、同じく復讐心から改造人間になることを志願していた過去のあるV3や、そのV3のおかげで復讐心を捨てることが出来たライダーマンであるというキャラクター配置も上手い。また、TVシリーズでは他のライダーとの共演がなかったスーパー1が先輩ライダーと絡んでいるのも、ファンサービスとして嬉しいところだ。
こうして10人目の仮面ライダー・ZXが誕生し、全ての悪の帝国の遺産を受け継いだバダンとの戦いも、ひとまず終わりを告げた。10人の仮面ライダーは、世界の何処かへと去っていく。
だが再び悪が現れた時、彼らは必ず現れるはずだ。ありがとう、僕らの仮面ライダー!
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